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“自転車革命都市”ロンドン便り<22>「ツイードラン」の元祖はロンドンにあり 年に1度のイベントへ700人が大集合

by 青木陽子 / Yoko AOKI
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2015年の「ザ・ツイードラン」でいちばん笑いを集めていた付け髭(?)のふたり組。エクステンション用のつけ髪を買ってきて作ったのだそう2015年の「ザ・ツイードラン」でいちばん笑いを集めていた付け髭(?)のふたり組。エクステンション用のつけ髪を買ってきて作ったのだそう

 「ツイードランの辞書に”おめかししすぎ”という項目はありません。ツイードスーツ、プラスフォーズ(ニッカーボッカー)、蝶ネクタイ、ハンチングなどをぜひお召しください」

 ――公式サイトのエチケットという項目の冒頭にいきなりこう書かれている「ザ・ツイードラン」。名古屋で行われたイベントが以前Cyclistでも紹介されていましたが、いまや日本はもちろん世界の各都市で姉妹イベントが開かれています。でもツイードと言えば英国。もちろんこのイベントの元祖はロンドンです。2015年は4月に開かれ、今年もコスプレ好きイギリス人を観察しに行ってまいりましたのでそのご報告です。

立派でレトロな口ひげ

左が主催者のテッドさん。右の男性の口ひげディテールがすごいのでよくご覧あれ左が主催者のテッドさん。右の男性の口ひげディテールがすごいのでよくご覧あれ

 時間になるだいぶ前から、集合場所のトラファルガースクエアは「時代劇のエキストラのみなさんですか?」と間違われそうな出で立ちの人でぎっしり。今年は700枚のチケットが完売したとか。

 さっそく、“これは”と思うお召し物のみなさんに今日のコーディネートのポイントを聞いて回りました。まずはなんといっても立派なひげを蓄えている男性の多いこと。もう何年も、とくに英米文化圏ではヒゲブーム、レトロな床屋ブームが続いているのですが(チームスカイのウィギンスやアイゼルのヒゲはこれ)、ここにはさらに手の込んだ口ひげの殿方が大勢集ってきました。口ひげの先をこよりのように細く捻って持ち上げている人も。お手入れ大変そう!

ライドを先導したり、交通整理をしたりするボランティアの女性たち。スタッフだけれどおしゃれも忘れていないライドを先導したり、交通整理をしたりするボランティアの女性たち。スタッフだけれどおしゃれも忘れていない
「英国人の夏のピクニック」をテーマにしてきたというヒゲも立派な男性はLa Bowtiqueというボウタイ屋さん。さすがにキマってました「英国人の夏のピクニック」をテーマにしてきたというヒゲも立派な男性はLa Bowtiqueというボウタイ屋さん。さすがにキマってました

 多くの参加者が着ているツイードもいろいろ。本来、本格的なツイードは、自分の領地の自然の色に合わせてツイードメーカーにあつらえさせるものなのだそうで、スコットランドのタータンチェックのように、“その世界”ではツイード生地を見ればどこの誰の家のものかわかるのだそうです。もちろんいまでは堅苦しいことなしにみなさん好きな色柄を着ていますが、ツイードにもいろいろなバリエーションがあるのだなぁと感心。

 女性も負けじと、たっぷりと整髪料をつけた髪をレトロ風に高く「盛って」、花を自分から自転車までビッシリつけたりと、頑張っています。お洋服は、イギリスに多いチャリティショップ(寄附された不要品を売ってNGOの活動資金に充てるしくみ)で手に入れている人が多いようです。おじいちゃん、おばあちゃんの若いときの服という人も。

猛烈にかわいかった兄弟は、お母さんがペダルを踏む1947年製の3輪パシュリーで参加。お父さんと長男くんは別のタンデム自転車で。いちばん目立っていた一家猛烈にかわいかった兄弟は、お母さんがペダルを踏む1947年製の3輪パシュリーで参加。お父さんと長男くんは別のタンデム自転車で。いちばん目立っていた一家
こちらも毎年ワンちゃんと一緒に参加している女性。今年もベストドレッサー賞を狙っていたに違いない美しさ!こちらも毎年ワンちゃんと一緒に参加している女性。今年もベストドレッサー賞を狙っていたに違いない美しさ!

記念撮影は、ハイ、「ツイーーード」!

 出発前には全員で記念撮影をするのですが、ナショナル・ギャラリー前の大階段で並ぶと、なんとも絵になります。たまたま居合わせた大勢の観光客のみなさんも大興奮、シャッターを押しまくっています。そりゃそうですよね。

「ザ・ツイードラン」の参加者700人がナショナル・ギャラリー前の大階段で全員で記念撮影。取り囲む観光客が様子を見ようとギュウギュウ押してきてなかなか記念撮影できないほどの人気「ザ・ツイードラン」の参加者700人がナショナル・ギャラリー前の大階段で全員で記念撮影。取り囲む観光客が様子を見ようとギュウギュウ押してきてなかなか記念撮影できないほどの人気

 チーズならぬ「ツイーーード」の掛け声で笑顔を作り、これもいつからか毎年のお約束になった、帽子を一斉に投げて景気をつけたら、いよいよライドのスタートです。今年はビッグベンのある国会議事堂、女王陛下のバッキンガム宮殿など都心を走るおよそ20kmのコースが設定されました。

テムズ川をわたる、国会議事堂前の橋でも観光客が大喜びテムズ川をわたる、国会議事堂前の橋でも観光客が大喜び

 700人が走るので、当然路上は自転車で埋め尽くされます。一大観光地エリアなので、ひしめいている観光客のみなさんが気付いては大喜びでシャッターを押し始め、行く先々で交通が麻痺。でもみんな笑顔でした。はち合わせたクルマのドライバーから文句が出ると、前輪が巨大なオーディナリーに乗った紳士が、高いところから帽子をひらりと外して「こりゃ失礼! 年に1回の行事でしてね、すぐに通り過ぎますのでご勘弁を」と時代がかった口調で説明すると、ドライバー氏も苦笑いして「まぁしょうがねぇな」。

20台くらいいたオーディナリーの女性。オーストラリアはタスマニアにこれ専門に作っているオーディナリービルダーがいて、その人の作品だそう20台くらいいたオーディナリーの女性。オーストラリアはタスマニアにこれ専門に作っているオーディナリービルダーがいて、その人の作品だそう
イギリス風のピクニックに欠かせないのは紅茶、サンドイッチ、「それに犬」とぬいぐるみ持参の男性イギリス風のピクニックに欠かせないのは紅茶、サンドイッチ、「それに犬」とぬいぐるみ持参の男性

 途中のお茶休憩とピクニック休憩では、これもレトロなスタイルで紅茶が振る舞われます。ロンドンも最近はコーヒー人気ですが、ここではコーヒーなど出ません。トラディショナルな紅茶だけ。おやつはスコーンとキューカンバーサンドイッチ。あくまでも正統派、古臭さが大切です。こうしてライドは夕方まで続き、その後はシャンパンが振る舞われるダンスパーティーがあり、その日のベストドレッサー賞の発表などがありました。

 イギリス人なら誰の家にも1着くらいは眠っているツイードをフックにしたこと、自分の国や街の歴史で遊ぶものであること、自転車でのマスライドであること…そのあたりのコンビネーションが見事にマッチしているこのイベント。日本でもたとえば江戸をテーマにしたマスライドイベントなんてできたら楽しそうですが、どうでしょうか?

途中のティーブレイク。最近はコーヒーを飲む人が増えているイギリスだけれど、ここはしっかり紅茶のみ途中のティーブレイク。最近はコーヒーを飲む人が増えているイギリスだけれど、ここはしっかり紅茶のみ
ハイドパークで小休止中におしゃべりしたカップル。このふたりのように、レトロ風味の新しい自転車で参加している人が多かったハイドパークで小休止中におしゃべりしたカップル。このふたりのように、レトロ風味の新しい自転車で参加している人が多かった
青木陽子青木陽子(あおき・ようこ)

ロンドン在住フリー編集者・ジャーナリスト。自動車専門誌「NAVI」、女性ファッション誌などを経て独立起業、日本の女性サイトの草分けである「cafeglobe.com」を創設し、編集長をつとめた。拠点とするロンドンで、「運転好きだけれど気候変動が心配」という動機から1999年に自転車通勤以来のスポーツ自転車をスタート。現在11台の自転車を所有する。ブログ「Blue Room」を更新中。

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