最終ステージは大統領が祝福NIPPOの山本元喜と黒枝士揮がツアー・オブ・ターキー完走 総合はデュラセックが逆転優勝

  • 一覧

 4月26日から開催されていたツアー・オブ・ターキーが、5月3日にトルコ最大の都市、イスタンブールでの第8ステージで閉幕した。第6ステージで逆転したクリスチャン・デュラセック(クロアチア、ランプレ・メリダ)が総合優勝、山本元喜と黒枝士揮(NIPPO・ヴィーニファンティーニ)もチームの活躍を支え、無事に荘厳なモスクが建ち並ぶイスタンブールの旧市街にゴールした。 (レポート 田中苑子)

セルチュクの遺跡群からスタートした第7ステージセルチュクの遺跡群からスタートした第7ステージ
大勢の観客が詰めかけた第6ステージのスタート地点大勢の観客が詰めかけた第6ステージのスタート地点
ツアー・オブ・ターキーを戦ったNIPPO・ヴィーニファンティーニの選手たちツアー・オブ・ターキーを戦ったNIPPO・ヴィーニファンティーニの選手たち

2つの山岳ステージで決した総合争い

第3ステージ、荒々しい山を越えてゴールをめざす選手たち第3ステージ、荒々しい山を越えてゴールをめざす選手たち

 地中海沿いのビーチリゾート、アランヤからスタートした今年のツアー・オブ・ターキー。その後、トルコ南部を西へと進み、第3ステージでは1級山岳、第6ステージでは2級山岳での山頂ゴールが設定され、その2つのステージで総合成績は大きく動いた。

 第3ステージは大会唯一の本格的な山岳ステージで、これまでの観光客が多く集まるリゾート地とは大きく雰囲気が異なり、トルコ山間部の小さな町を縫っていくようなコースレイアウトだった。雪を被った山々に囲まれた牧歌的な風景のなか、地元の人たちが畑作業の手を止めて声援を送り、ゴール地点では、老若男女問わずたくさんの人が、麓の街からバスで観戦に詰めかけていた。

地元の人たちがトルコ国旗を持って応援する地元の人たちがトルコ国旗を持って応援する
第3ステージ、ゴール地点、1級山岳のゴグベリ峠をめざす第3ステージ、ゴール地点、1級山岳のゴグベリ峠をめざす

 その山岳ステージを制したのは43歳のダビデ・レベッリン(CCC・スプランディポルコウィチェ)だった。ステージ優勝とともに総合成績で2位のクリスチャン・デュラセック(クロアチア、ランプレ・メリダ)に7秒差で首位に立った。

最難関ステージとなる第3ステージを制したダビデ・レベッリン(CCC・スプランディポルコウィチェ)最難関ステージとなる第3ステージを制したダビデ・レベッリン(CCC・スプランディポルコウィチェ)
レースを見終えて、家路に着く地元の観客たち。娯楽の少ない場所において、自転車レースの人気は計り知れないレースを見終えて、家路に着く地元の観客たち。娯楽の少ない場所において、自転車レースの人気は計り知れない
第4ステージ、海沿いのマルマリスからスタート第4ステージ、海沿いのマルマリスからスタート
第6ステージ、緩やかなアップダウンを越えていく第6ステージ、緩やかなアップダウンを越えていく

 そして第6ステージは、遺跡や古城が残るセルチュクの街から、残り3kmから一気に2級山岳の山頂ゴールへを駆け上がる。これをペッロ・ビルバオ(スペイン、カハルーラル)が制し、総合リーダーのレベッリンが19位と遅れたため、このステージで6位に入ったデュラセックが新しく総合成績で首位となった。

 「失うものは何もないと思い、総合逆転をめざして挑戦したステージだった」と振り返るデュラセック。最終日前夜には38度を超える発熱があったというが、そのままデュラセックがターコイズブルーのリーダージャージを、最終日まで守り切った。一方、第6ステージを終えて、総合2位に付けていたレベッリンだったが、最終ステージで犬と接触し、落車リタイアという不運に見舞われてしまった。

第7ステージ、イズミルのゴール地点には大勢の観客が集まった第7ステージ、イズミルのゴール地点には大勢の観客が集まった
ゴール地点に集まった民族衣装を身に付けた子どもたちゴール地点に集まった民族衣装を身に付けた子どもたち

 近年、山岳ステージが増えてきているツアー・オブ・ターキーだが、以前よりスプリンター向きのレースと言われるとおり、今年も多くのステージがゴールスプリントの展開となった。マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、エティックス・クイックステップ)が安定した強さでステージ3勝し、ポイント賞ジャージを獲得した。

総合優勝したクリスチャン・デュラセック(クロアチア、ランプレ・メリダ)総合優勝したクリスチャン・デュラセック(クロアチア、ランプレ・メリダ)
大統領が駆けつけた最終日の表彰式大統領が駆けつけた最終日の表彰式

国を挙げてのロードレース大会

 レースは、石灰棚が連なるパムッカレやセルチュクの遺跡郡などトルコの観光地を巡ってきたが、最終日はイスタンブール最大の観光名所である旧市街のスルタンアフメトモスク(ブルーモスク)やアヤソフィアの前からスタート。2階建ての美しいガラタ橋や、ヨーロッパ大陸とアジア大陸を結ぶ第一ボスポラス大橋を通り抜け、その後旧市街へと戻り、旧市街の外周を使っての周回レースとなる。

第8ステージ、選手たちがイスタンブール旧市街の周回コースへと向かう第8ステージ、選手たちがイスタンブール旧市街の周回コースへと向かう

 今大会でもっとも華やかな場所でのレース。東京で例えるなら、レインボーブリッジを通過して、皇居の周りで周回レースが開催されるようなイメージだろうか。

 大規模に道路を封鎖して、街の中心部でレースができる背景は、正式な大会名が「プレシデンタル(大統領の)・ツアー・オブ・ターキー」という点にある。大統領の名を冠した大会、つまり国を挙げての開催なのだ。

 最終日にはレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領が駆けつけ、今年の1月に旧市街で自爆テロがあったこともあり、厳重な警備体制のもとで開催された。大統領が笑顔でプレゼンターを務める表彰台の上では、銃を構えた警備員が目を光らせるという、ものものしい雰囲気だったが、大きな混乱もなく、無事に大会の全行程が終了した。

最終ステージの表彰式に登場した大統領。頭上では銃を抱えた警備員の姿が最終ステージの表彰式に登場した大統領。頭上では銃を抱えた警備員の姿が

プロでの生き残りをかけ成長図る山本と黒枝

 今大会に出場していた日本人の2選手、山本元喜と黒枝士揮(NIPPO・ヴィーニファンティーニ)は、チームメートのダニエーレ・コッリ(イタリア)が第4ステージで2位となり表彰台に上るなど、チームの好成績を支えた。その一方で、これまでに経験のないワールドツアーチームが多く参加するレベルの高いステージレースを走り切ったことで、それぞれに明確な課題が見つかり、次のステップに繋げていく。

第4ステージで逃げに乗った山本元喜(NIPPO・ヴィーニファンティーニ)第4ステージで逃げに乗った山本元喜(NIPPO・ヴィーニファンティーニ)

 第4ステージで、昨シーズンからの目標であった「逃げに乗る」ことに成功した山本元喜。その後も逃げに乗ろうと果敢にアタックを繰り返す場面が見られ、第6ステージでは、単独でブリッジをかけようと先行するも、このときは先頭に追いつくことはできなかった。しかし「逃げが決まるのかどうかという集団の雰囲気がわかるようになり、あとはもっと力を付けて、タイミングを合わせられるようになりたい」と振り返る。「まだワールドツアーやHCのレースで、逃げ切れるほどの力はないが、これからチームが参加するアジアのレースでは、十分に逃げ切れるレースがあると思うので、そこをめざしていきたい」と今後の抱負を語る。

第6ステージ、逃げに乗ろうと単独で追走する山本元喜(NIPPO・ヴィーニファンティーニ)第6ステージ、逃げに乗ろうと単独で追走する山本元喜(NIPPO・ヴィーニファンティーニ)
“プロ1年目”の福井響メカニック(NIPPO・ヴィーニファンティーニ)がレース後にバイクを洗う“プロ1年目”の福井響メカニック(NIPPO・ヴィーニファンティーニ)がレース後にバイクを洗う
山岳ステージで、観客が黒枝士揮(NIPPO・ヴィーニファンティーニ)のサドルを押す。思わず苦笑い山岳ステージで、観客が黒枝士揮(NIPPO・ヴィーニファンティーニ)のサドルを押す。思わず苦笑い

 鹿屋体育大学時代は“スプリンター”として、評価されてきた黒枝士揮は、「今回、スプリントをしたいと思っていたが、スピード域があまりにも違い、その目標は叶えられなかった」と話す。世界のトップスプリンターが集まっていた今大会では、UCIワールドチームを中心に、隊列を組んでのハイスピードなスプリントが展開され、身体が小さく、体重も軽い黒枝は苦戦を強いられた。

 「軽さを生かして、上りをこなせるようにならないといけない。そして、上りのあとの小集団のスプリントで勝つような選手になりたい」と黒枝。上りの苦手意識は強いものの「この先、上れる脚を作らないと、このレベルでは走れない」と、危機感を募らせる。今後、トレーニング方法を見直し、本格的に脚質の改善に取り組むという。

スタートラインに並んだ山本元喜(左)と黒枝士揮(右/NIPPO・ヴィーニファンティーニ)スタートラインに並んだ山本元喜(左)と黒枝士揮(右/NIPPO・ヴィーニファンティーニ)

この記事のコメント

利用規約順守の上ご投稿ください。

関連記事

この記事のタグ

ロードレース

  • 一覧

新着ニュース

もっと見る

ピックアップ

e-BIKE最新特集

スペシャル

自転車協会バナー

ソーシャルランキング

インプレッション

インプレッション一覧へ

連載