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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<108>開幕迫るジロ・デ・イタリア 個人総合のコンタドールとポートら有力選手をピックアップ

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 今年最初のグランツール、ジロ・デ・イタリアの開幕が目前に迫ってきました。今回の週刊サイクルワールドでは、総力を挙げてジロのレース分析、選手動向をチェックしながら有力な注目選手たちを押さえていきます。開幕は5月9日の土曜日。おなじみのリーダージャージ、マリアローザのごとくバラ色の日々を満喫していきましょう!

実力派アシストをそろえたチーム戦の様相

 4月29日、ジロを主催するRCSスポルト社が出場全22チームの暫定ロースター(出走者)を発表した。その後、各チームからも正式メンバーの発表が徐々に行われている。

 大会最高の名誉である個人総合時間賞、マリアローザ争いはアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)とリッチー・ポート(オーストラリア、チーム スカイ)の2人の力が一歩抜け出している印象だ。

総合優勝争いの有力候補と目されるアルベルト・コンタドール(ティレーノ~アドリアティコ2015)<写真・砂田弓弦>総合優勝争いの有力候補と目されるアルベルト・コンタドール(ティレーノ~アドリアティコ2015)<写真・砂田弓弦>

 過去の実績でライバルを凌駕するコンタドール。今シーズンはジロとツール・ド・フランス両方を制覇する“ダブル・ツール”に挑戦。2016年シーズンでの現役引退を視野に、キャリアの集大成となる日々を送る。今年の2月から3月にかけては、3つのステージレースに参戦してきた。総合優勝はなく、落車に巻き込まれるシーンもあったが、本人は調整が順調に進んでいることを強調。かねてから調整レースで勝利を狙うことは少なく、ここ数レースの順位に大きな問題はないだろう。4月中は慣れ親しんだスペイン・カナリア諸島でのトレーニングに集中した。薬物違反による成績抹消となった2011年の悔しさを晴らすべく、スタートラインに立つ。

リッチー・ポート(左)はシーズン9勝という好調でジロに挑む(パリ~ニース2015)<写真・砂田弓弦>リッチー・ポート(左)はシーズン9勝という好調でジロに挑む(パリ~ニース2015)<写真・砂田弓弦>

 一方で今シーズン好調な成績を残しているのがポート。ここまでにすでに9勝を挙げており、3月以降出場したステージレースでは負けなし。得意のタイムトライアルでアドバンテージを得られる強みはもちろんのこと、山岳・TTどちらか特化することなく全ステージをトータルに走りきる安定感も身に付けている。一方で、初のグランツール参戦だった2010年ジロ(総合7位)以来、総合上位で3週間を走り切ったケースはないのが不安材料。アシストとしての出場も多かったとはいえ、中盤ステージ以降で調子を落としたり、トラブルに巻き込まれるといったケースがあった。絶対エースとして臨む今回は何が何でも避けたい部分だ。

 両者にとって、アシストの戦力充実も心強い。コンタドールの脇を固めるのは、新加入のイヴァン・バッソ(イタリア)を筆頭に、ロマン・クロイツィゲル(チェコ)、マイケル・ロジャース(オーストラリア)ら。ポートには、新人賞のマリアビアンカ候補のセバスティアン・エナオ(コロンビア)、自身も総合上位を狙えるレオポルド・ケニッグ(チェコ)、ミケル・ニエベ(スペイン)ら。スカイには、有力スプリンターのエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア)も控えており、彼の起用法が両チームの覇権争いにおけるポイントになる可能性もある。

タイムトライアル能力が向上しているリゴベルト・ウラン(ティレーノ~アドリアティコ2015)<写真・砂田弓弦>タイムトライアル能力が向上しているリゴベルト・ウラン(ティレーノ~アドリアティコ2015)<写真・砂田弓弦>

 他の選手たちも虎視眈々と頂点を狙っている。前回総合2位のリゴベルト・ウラン(コロンビア、エティックス・クイックステップ)は、このところTTスキルが飛躍的に向上。TTステージで上位を狙えるまでのレベルに達している。同5位のドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、アージェードゥーゼール ラモンディアル)は今シーズン2勝と好調。苦手のTTを上手くクリアし、山岳での勝負に挑みたい。

 前回総合3位のファビオ・アール(イタリア、アスタナ プロチーム)は、前述の4人と並んで「ビッグ5」と目される。しかし、4月に腸炎を患い調整レースをすべて欠場。体重が5kg落ち、現在もベスト体重(60kg)から3kgほど少ない状況にあるという。何とか立て直して本番を迎えられるか。

 その他、総合7位に入った2008年以来の出場となるユルヘン・ヴァンデンブロック(ベルギー、ロット・ソウダル)、2012年の総合王者ライダー・ヘシェダル(カナダ、チーム キャノンデール・ガーミン)、マリアローザ着用実績のあるベニャト・インチャウスティ(スペイン、モビスター チーム)らも上位をうかがう。

 勝負の行方は、59.4kmの長距離個人TTで争われる第14ステージがポイントになる。有力選手たちがどのような結果になるかで、終盤の山岳ステージの動きが見えてくることだろう。

ポイント賞はスプリンターに輝くか チャンスは7ステージ

 大会主催者が設定したスプリントステージは7つ。ポイント賞のマリアロッソパッショーネは、3年連続でスプリンターが袖を通すことになりそうだ。

北のクラシックでは好アシストを見せたアンドレ・グライペル(ツール・デ・フランドル2015)<写真・砂田弓弦>北のクラシックでは好アシストを見せたアンドレ・グライペル(ツール・デ・フランドル2015)<写真・砂田弓弦>

 スプリンター勢をリードするのは、5年ぶり出場のアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)。今年は北のクラシックで再三の好アシストを見せ、ジロに向けて最終調整として臨んだツアー・オブ・ターキーでステージ勝利。普段から賞レースに色気を見せない彼だが、勝利を重ねれば自ずとポイント賞ジャージが手に入ることだろう。グレゴリー・ヘンダーソン(ニュージーランド)が発射台を務め、レース終盤のロットのトレインも見ものだ。

マイケル・マシューズ(前から2人目)はスプリント力だけでなくパンチ力も強み(アムステル・ゴールドレース2015)<写真・砂田弓弦>マイケル・マシューズ(前から2人目)はスプリント力だけでなくパンチ力も強み(アムステル・ゴールドレース2015)<写真・砂田弓弦>]

 続くのは、前回6日間のマリアローザ着用を果たしたマイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)。アムステルゴールドレース3位など、充実のクラシックシーズンを経て、ジロではどんな走りを見せるか。

 過去5度のステージ2位を経験しているジャコモ・ニッツォーロ(イタリア、トレック ファクトリーレーシング)は、悲願のステージ優勝を目指す。前回はポイント賞2位。シルバーコレクター脱却なるか。前回最終ステージを制したルカ・メズゲッツ(スロベニア、チーム ジャイアント・アルペシン)は今シーズン1勝にとどまっているものの、ジロではエンジン全開となることだろう。

 落車負傷でクラシックシーズンを棒に振ったトム・ボーネン(ベルギー、エティックス・クイックステップ)は、ジロに雪辱を期す。ウランをアシストするチームオーダーとなっているが、チャンスがあればスプリントも狙う。そのほか、サーシャ・モドロ(イタリア、ランプレ・メリダ)、フアンホセ・ロバト(スペイン、モビスター チーム)も注目。ダニエーレ・コッリ(イタリア、NIPPO・ヴィーニファンティーニ)も評価が高まっている1人だ。

日本勢は別府、石橋の参戦が濃厚

アルデンヌクラシック3連戦出場を経て、ジロ・デ・イタリアに挑む別府史之(ラ・フレーシュ・ワロンヌ2015)<写真・砂田弓弦>アルデンヌクラシック3連戦出場を経て、ジロ・デ・イタリアに挑む別府史之(ラ・フレーシュ・ワロンヌ2015)<写真・砂田弓弦>

 今回も日本人選手の参戦が濃厚だ。早くから出場意思を表明していた別府史之(トレック ファクトリーレーシング)は予定通りジロに臨む。シーズンインの段階からジロに合わせた調整を進めており、4月下旬のアルデンヌクラシックでは3戦連続の好アシスト。集団内でのポジショニングや、レースコントロールに定評があり、今回もエーススプリンターのニッツォーロを盛り立てる。レース展開やコース特性によっては、自らが逃げを打ってチャンスを獲得するかもしれない。

 念願のジロ初出場となるNIPPO・ヴィーニファンティーニからは、石橋学が暫定エントリー。チームは若い選手が多く、エースのダミアーノ・クネゴ(イタリア)やコッリらを除けばほぼ横一線でのメンバー選考にあって、これまでのレースで登坂力をアピールし、アシストとしての能力を示した石橋がチャンスを勝ち取った格好だ。

 トレック ファクトリーレーシング、NIPPO・ヴィーニファンティーニともに、チームからの正式発表が待たれる。

ジロ序盤ステージの展望

・第1ステージ(5月9日、サン・ロレンツォ・アル・マーレ~サンレモ、17.6kmチームTT、難易度3)
ミラノ~サンレモでもおなじみの海岸線を西へと向かうチームTT。同レースの勝負どころであるチプレッサ、ポッジオの上りは通過せず、海沿いを一直線。ほぼフラットなレイアウトでチーム力が試される。

・第2ステージ(5月10日、アルベンガ~ジェノヴァ、177km、難易度2)
大会最初のスプリントステージ。海からの風がレースを左右する可能性もある。終盤はジェノヴァ市街地の周回コース。激しいスプリントが予想される。

ジロ・デ・イタリア2015 第3ステージ コースプロフィール ©RCS SPORTジロ・デ・イタリア2015 第3ステージ コースプロフィール ©RCS SPORT

・第3ステージ(5月11日、ラパッロ~セストリ・レヴァンテ、136km、難易度3)
中盤に標高1000m前後の山々を通過する中級山岳ステージ。2級山岳バルバジェラータからゴールまでは約44km。スプリンターが生き残ることができれば、勝機がグッと高まる。

・第4ステージ(5月12日、キアーヴァリ~ラ・スペツィア、150km、難易度4)
スタートからゴールまでアップダウンが繰り返される。3級山岳ポイントが3つ登場。最後に登場するビアッサからゴールまでは約10km。逃げ集団やアタックを成功させた選手にチャンスが出てきそうだ。

今週の爆走ライダー-シュテファン・キュンク(スイス、BMCレーシングチーム)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシストや逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 ミヒャエル・アルバジーニ(オリカ・グリーンエッジ)がステージ2勝を挙げるなど、地元スイス勢が高いモチベーションで臨んだツール・ド・ロマンディ(UCIワールドツアー、4月28日~5月3日)。雨の第4ステージをただ1人逃げ続け、大きな勝利を得たのが弱冠21歳のキュンクだ。

雨中の第4ステージ、独走で逃げ切ったシュテファン・キュンク(ツール・ド・ロマンディ2015) ©BMC RACING TEAM雨中の第4ステージ、独走で逃げ切ったシュテファン・キュンク(ツール・ド・ロマンディ2015) ©BMC RACING TEAM

 昨年まで2年間は現チームの育成部門で走り、今年トップチーム入り。一方、トラックでは早くからその名を知られた存在だった。2月のトラック世界選手権では、4km個人追抜でマイヨ・アルカンシエルを獲得。昨年の世界選手権ロードではアンダー23個人TTで銅メダルを獲得するなど、自信を持つ独走力で今回のロマンディでの勝利にもつなげた。

 スポーツとは無縁の家庭に育ったという彼だが、自転車との出会いが人生を変えたという。レースへの出場方法を相談された母が、往年の名選手アレックス・ツェーレ主宰のチームに問い合わせたのがきっかけだったのだとか。チームに加入し2レース目での初勝利が、キャリアの第一歩だった。

独走力のあるスイス人、シュテファン・キュンク(ツール・ド・ロマンディ2015) ©BMC RACING TEAM独走力のあるスイス人、シュテファン・キュンク(ツール・ド・ロマンディ2015) ©BMC RACING TEAM

 スイス人で、なおかつ独走力自慢とあれば、思い浮かぶのはあの男、ファビアン・カンチェッラーラ(トレック ファクトリーレーシング)。だがキュンクに言わせれば、「まずは自分のキャリアに集中する。メディアが書きたいこと(カンチェッラーラ2世など)は理解しているが、私が深く考えることでもない。ビッグネームにどうやって勝つかをイメージすることが先決」。大物となる予感は十分だ。

 シーズン序盤は、ファンや関係者に将来への期待を抱かせる走りを見せた。これからは、どのようなタイプのライダーになるべきかを見極めることとなる。そのきっかけづくりとして、ジロでグランツールデビューを果たす予定だ。

文 福光俊介

福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、気がつけばテレビやインターネットを介して観戦できるロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。2011年、ツール・ド・フランス観戦へ実際に赴いた際の興奮が忘れられず、自身もロードバイク乗りになる。自転車情報のFacebookページ「suke’s cycling world」も充実。本業は「ワイヤーママ徳島版」編集長。

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