女性のバイクブランド「Liv」を愛用専業主婦から台湾の自転車文化振興の表舞台へ 劉麗珠さんインタビュー

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台湾でのサイクリング文化を担う劉麗珠さんへCyclistがインタビュー(写真・中林正二郎)台湾でのサイクリング文化を担う劉麗珠さんへCyclistがインタビュー(写真・中林正二郎)

 速いことが「是」ではなく、ひとりで走れないことは「非」ではない――自転車文化を広める台湾のNPO団体「自行車新文化基金會(サイクリング・ライフスタイル・ファウンデーション)」のCEOで、世界最大の自転車メーカー「ジャイアント」創業者の娘、劉麗珠(リュウ・リージュ)さんから発せられるメッセージは明確だった。それは女性にとって頼もしく響くだけでなく、サイクリングを愛するすべてのひとに走る意欲を与える力を持っていた。台湾で盛り上がりを見せるサイクリング文化の立役者、劉さんにCyclist記者がインタビューした。

台北のシェアサイクル成功の立役者

 サイクリング中、皆から「Vicky(ヴィッキー)」と呼ばれ親しまれる劉さん。自転車の事業に関わることになったきっかけは、2008年に「下の息子が大学へ入り、親の手を離れたこと」だという。それまで、米ノースカロライナ州で2人の息子を育てる専業主婦だったが、サイクリング・ライフスタイル・ファウンデーションCEOとして台湾に呼び戻されたのだ。

富山の旅館「つるぎ 恋月」で着物姿を披露した劉麗珠さん(写真・中林正二郎)富山の旅館「つるぎ 恋月」で着物姿を披露した劉麗珠さん(写真・中林正二郎)

 サイクリング・ライフスタイル・ファウンデーションでは、ヒルクライム大会「台湾KOM」をはじめ自転車イベントが目白押しの「台湾サイクリングフェスティバル」を立ち上げるなど、イベントの企画・運営を手がけた。ほかに、台北~新台北市間の川沿いのレンタサイクル事業を展開している。

 レンタサイクルの貸出場所は25カ所で、借りた自転車はどこで返却をしてもいいそうだ。記者が、これはレンタサイクルというよりもバイクシェアリングの発想に近いのではないかと尋ねると、「ほんとにそうね。借りたところ以外に返却したいところがあれば、店員に連絡すればいいだけなのだから、とても便利なシステムです。そしてこの経験が、次にオファーされた仕事でも生きてきました」と語り始めた。

 劉さんは2012年から1年間、台北市内のバイクシェアリングシステム「ユーバイク」プロジェクトのジェネラルマネージャー(GM)として招へいされた。ユーバイクは現在、ポート数が196カ所、全6400台で、自転車1台につき1日10回以上の稼働があるという。市民や観光客の足として活用され、台北の“顔”のひとつになっているが、それも劉さんの働きがあったからこそ。

バイクシェアリングシステム「ユーバイク」は現在ポート数が196カ所、全6400台にまで増設された(写真・柄沢亜希、2013年)バイクシェアリングシステム「ユーバイク」は現在ポート数が196カ所、全6400台にまで増設された(写真・柄沢亜希、2013年)

 それまでユーバイクの運用は、成功しているとは言い難かったそうだ。「2009年の始動後はポートが11カ所、全500台と小規模で利用者も少なかった」と劉さんは振り返る。2012年に市がテコ入れに乗り出した際、ジャイアントが全面協力に名乗りを挙げ、民間企業が設備管理や運営を担う「BOT(build, operate and transfer)」モデルの先駆例として進められることになったのだ。

 「ジャイアントがユーバイクに携わることを決めたのは、自転車メーカーとして『バイクシェアリングシステムがうまくいけば、自転車を買う人も増える』という確信があったからです。ジャイアント創設者である父・劉金標(キング・リュウ)からの『ぜひに』という後押しもあり、プロジェクトのGMとして働きましたが、とにかくやることが山積み。ポートを30カ所増設し、自転車のデザインやカラーも市民が親しみやすく視認性の高いものへと刷新しました。設置場所やスタッフ探し、適正な料金設定には特に苦労しました」

パートナーや子供と過ごす週末サイクリング

 その事業手腕や数々の功績に加えて、記者が驚かされたのは、「50歳になるまで自転車に乗ったことがなかったの」と笑いながら打ち明けた事実だ。日台の自転車業界関係者ら約30人と富山でおよそ70kmのサイクリングを共にした際、劉さんが自転車に乗る姿はいかにもこなれていて、楽しみ方を熟知したサイクリストそのものだったからだ。

自転車の魅力のひとつは、「夫と一緒にライドができること」と劉麗珠さん。愛車は特注のレッドカラー(写真・中林正二郎)自転車の魅力のひとつは、「夫と一緒にライドができること」と劉麗珠さん。愛車は特注のレッドカラー(写真・中林正二郎)

 「アメリカ在住時は、水泳競技に打ち込む息子たちの影響で水泳の審判の資格を持っていましたし、夫と共にたしなむゴルフではクラブの『女子ゴルフ連盟』のリーダーを務めもしましたが、自転車にはちっとも乗ったことがありませんでした。だからといって気負いはなく、父から自転車関係の仕事をしてみないかと言われた時には、『オッケー、ただゴルフを自転車に替えればいいんだわ』と思っただけでした」

女性としてのサイクリングの魅力をCyclist記者に語る劉麗珠さん(写真・中林正二郎)女性としてのサイクリングの魅力をCyclist記者に語る劉麗珠さん(写真・中林正二郎)

 台湾で自転車を始めて気づいた魅力は、「夫と一緒にライドができること」だった。それまでアメリカでゴルフも共に楽しんできた劉さんにとって、アクティビティの際にパートナーと過ごせるかどうかはとても大切なこと。共に乗り始めて数年、いまではサイクリングは、2人にとって週末の大切な“ワンデーイベント”になっているという。

 「ゴルフは大勢でプレーして、必ずしも夫と同じ組で移動できるとは限らないし、水泳では話しながらエクササイズを楽しむことは不可能。けれど、自転車は2人だけで1日を過ごせる。早朝に一緒に出発して、帰宅するまでの80~90km、テイクアウトできるおいしい食べ物を街角で探したり、日差しを浴びてエクササイズを楽しんだりしながらリラックスした時間を過ごせます。夫やボーイフレンドと一緒なら、なおさら素晴らしい経験になると思うわ」

劉麗珠さん(手前)は家族や仲間とのサイクリングが休日のリラックス法だとか(写真・中林正二郎)劉麗珠さん(手前)は家族や仲間とのサイクリングが休日のリラックス法だとか(写真・中林正二郎)
自転車アクセサリーブランド「WTB」の郭淑芬さん(左)は劉麗珠さんのサイクリング仲間(写真・中林正二郎)自転車アクセサリーブランド「WTB」の郭淑芬さん(左)は劉麗珠さんのサイクリング仲間(写真・中林正二郎)

 誰と何をするか、それはサイクリング体験が持つ意味を左右する重要な要素に違いない。女性の場合、母親になったとしても変わらないどころか、もっと価値のあるものになるかもしれない。劉さんは「サイクリングは、母子がお互いを近くに感じることができるスポーツ。走り終わったら、ぜひランチでも一緒に食べに出かけて」とアドバイスした。

 さらに劉さんは、「男性・女性のどちらから誘ったとしても、初めてのライドでは、ロードバイクではなく安定した自転車から始めることが大切ね」と指摘。そして「乗り終えた誰もが『またサイクリングしたい』と思えるのって素敵だもの」と目を輝かせた。

普段はジャージ姿の劉麗珠さん(右から3番目)ら女性サイクリストが着物・浴衣を着て写真撮影(写真・中林正二郎)普段はジャージ姿の劉麗珠さん(右から3番目)ら女性サイクリストが着物・浴衣を着て写真撮影(写真・中林正二郎)

女性らしさを生かす魅惑のブランド「Liv」

 劉さんは、サイクリングをファッションとしても楽しんでいる。そのカギとなるのは、ぴったりとした機能的なジャージと、機材を含めたカラーコーディネート。ぴったりとした服は「スタイル抜群でなくても、自転車の上では誰もがかっこよく見えるから不思議。とってもセクシーに見える」とお気に入り。曰く、「始めて2カ月は隠すようにスカートを着たこともあったけれど、すぐに脱ぎ捨ててしまったわ」。

「富山湾岸サイクリング2015」では、堀川優さん(中央)、劉麗珠さん(左から3人目)らLivジャージに身を包んだ女性サイクリストが集まった(写真・中林正二郎)「富山湾岸サイクリング2015」では、堀川優さん(中央)、劉麗珠さん(左から3人目)らLivジャージに身を包んだ女性サイクリストが集まった(写真・中林正二郎)
劉麗珠さんの愛車にはスワロフスキーを用いた特注ロゴが輝く(写真・中林正二郎)劉麗珠さんの愛車にはスワロフスキーを用いた特注ロゴが輝く(写真・中林正二郎)

 愛車のジャイアントの特別仕様車は、「(自家用車の)真っ赤なポルシェと同じ色にしてもらいたくて」とこだわりのレッドカラーでコーディネート。ヘッド部分には、スワロフスキーのクリスタルで装飾した特注のロゴがあしらわれていた。

◇         ◇

 記者が今回のサイクリングで試乗をさせてもらったのは、女性向けブランド「LIV」(リブ)のロードバイク「AVAIL ADVANCED PRO(アヴェイル アドバンスド プロ)」。ディスクブレーキを装備し、制動性を高めながら軽快な走りを実現したモデルだ。カラーリングはマットなブラックを基調に、パープル、レッド、ホワイトがほどよいバランスでペイントされている。

「AVAIL ADVANCED PRO」(写真・中林正二郎)「AVAIL ADVANCED PRO」(写真・中林正二郎)

 ほかに、ジャイアントの広告でモデルを務め、普段はクロスバイクを乗りこなしているという堀川優さんは「AVAIL 3」に試乗。ロードバイクに初めて乗る人の不安をなくしてくれるサブブレーキが標準装備されている。この日がロードバイクで2回目のライドだという堀川さんは、「ウエアも自転車も好きな色づかい。おしゃれを楽しみながらスポーツができるのって、乗っててテンションがあがる。時間が経つのが早い!」と嬉しそう語った。

ボトルホルダーのカラーコーディネートもばっちり(写真・中林正二郎)ボトルホルダーのカラーコーディネートもばっちり(写真・中林正二郎)
サブブレーキ付の「AVAIL 3」にも色が合ったライトとメーターをセット(写真・中林正二郎)サブブレーキ付の「AVAIL 3」にも色が合ったライトとメーターをセット(写真・中林正二郎)
ラチェットダイヤルが印象的な「LIV FAMA」(写真・中林正二郎)ラチェットダイヤルが印象的な「LIV FAMA」(写真・中林正二郎)

 バイク本体だけでもおしゃれに仕上がっているのに、取り付けられていたボトルホルダー、ライトといったアクセサリーまでもがすっきり同系色にまとめられていた。聞けば、「バイクの販売に合わせて新登場したカラー」(ジャイアント広報担当者)なのだという。

 また、ロードバイク用シューズの締め付け調整で普及しているラチェットダイヤルを配したスニーカー「LIV FAMA」も登場した。カラーは、アヴェイル アドバンスド プロなど今シーズンのモデルの色に合わせて展開されている。すみずみまでカラーコーディネートができる製品ラインナップに、女性ブランドLivを身にまとう安心感と心地よさを覚えた。

「AVAIL 3」でサイクリングを楽しんだ堀川優さん(写真・中林正二郎)

■「Lytro Illum(ライトロ イルム)」の画像について

 ライトロ社のカメラ、ライトロ イルムで撮影した画像は、撮影後にピント位置を変えられる点が最大の特徴です。マウスのクリック、スマホの場合画面のタッチで背景・前景といったピント調整を楽しんでください。

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