グラベルロードにいま一番注目「GTとは実は、Good Timeの略なんだ」 米GTゼネラルマネージャーにインタビュー

by 中村浩一郎 / Koichiro NAKAMURA
  • 一覧

 スポーツ自転車の歴史に長くその名を残すGT(ジーティー)。1980年代のBMXレース界を席巻することから始まり、フレーム上部にもう一つの三角形を作る『トリプルトライアングル』という独自のフォルムをブランドイメージとして、多くの名作フレームを世に送り出してきた。MTBでは多くの世界チャンピオンを生み、ロードバイクでも熱狂的なファンを獲得してきたGTはいま、スポーツ自転車に何を見ているのか。現在のGTを統括するゼネラルマネージャーであるティム・イノール氏に、話を聞いた。 (文・中村浩一郎 写真・米山一輝)

ティム・イノール(Tim Inall) GT Bicycle担当グローバルゼネラルマネージャー。20代の頃にトライアスロンを始め、他業界で働きながらもトライアスリートとしての情熱を失わず、ついに自転車ビジネスに参入。2013年よりGTブランド全体の舵取りを行う、ブランドとしてのトップの地位に就くティム・イノール(Tim Inall) GT Bicycle担当グローバルゼネラルマネージャー。20代の頃にトライアスロンを始め、他業界で働きながらもトライアスリートとしての情熱を失わず、ついに自転車ビジネスに参入。2013年よりGTブランド全体の舵取りを行う、ブランドとしてのトップの地位に就く

世界チャンプも生んだ名車も多い、GTのものづくり思想

―― GTは長く、ダート、土の上を走るスポーツバイクとしての高い評価を、長く受けてきましたね。

 「ありがとう。ここのところ2年連続、GTレーシングチームはダウンヒルで世界チャンピオンを獲っているからね。’13年は女子でレイチェル・アサートンが、去年は男子でジー・アサートンが。それにダン・アサートンはエンデューロ競技で高い成績を残してくれている。彼らアサートン・ファミリーは、単にGTというバイクに乗るだけではなく、いまは開発にも加わってくれている。それが、ダートでの高い評価につながっているんじゃないかな」

2年連続でUCIチームランキング1位を獲得した「GTファクトリーレーシング」の原動力、MTB界最強のアサートン3兄妹。(左から)ダン、ジー、レイチェル・アサートン2年連続でUCIチームランキング1位を獲得した「GTファクトリーレーシング」の原動力、MTB界最強のアサートン3兄妹。(左から)ダン、ジー、レイチェル・アサートン

―― そしてGTはアメリカの、それも南カリフォルニアの空気感を伝えてくれるという印象の強いブランドでもあります

 「それはいまもまったく変わっていないよ。バイクに乗ってどこまでも走っていきたい、子どもの頃に自転車に乗った時に感じた自由な感じ。その『フリーダム』を、常に伝え届けていきたいとGTは考えている。『GT』というブランド名は、ご存知の通り創始者でありビルダーでもあったゲーリー・ターナーの頭文字。彼が自分の息子のために作ったBMXから全ては始まっているんだけれども、最近では『GTとは実は Good Time の略なんだ』ってことにしてもいいんじゃないか、なんて社内では話し合ってもいるよ(笑)」

―― ロードバイクなどでも『トリプルトライアングル』を採用した名車をいくつも作り出してきました

 「ライダーが望むバイクを作り続けるのが、バイクブランドの使命だからね。だからGTは今、ダートだけでなくライフスタイルとして使われるスポーツバイクにも、その幅を広げている。ロードバイク、キッズバイク、アーバンバイク。幅広い範囲でGood Timeを感じてもらえるバイクを提供し続けているんだ」

ロードバイクはゴルフと似ている、トップのものが最高なわけではない

―― そんなGTが、いま一番注目しているジャンルは?

 「世界的に大きな流れとなっている、いわゆる『グラベルロード』だ。でもこれは単にグラベル(砂利道)を走るためのロードバイクじゃない。まず、こういう背景を理解してほしい」

 「私たちはロードバイクというスポーツを言わばゴルフのようなものだと捉えている。トップにはツールドフランスなどのグランツールといった、テレビなどでも注目されるレースがあって、それを走るレーサーたちがいる。彼らレーサーに憧れてスポーツバイクに乗り始める人々も多いものだ。でも彼らの乗るバイクは、レースでの優勝を目指して作られたものなので、それをそのまま乗ってしまうと、一般の人にはフレームは硬すぎたり、繊細すぎたり、ポジションが戦闘的すぎたりして、描いていたイメージとはかけ離れたものになってしまうことが多いんだ。ゴルフのクラブでも、同じことが起こりがちだ」

 「プロが使うものが、一般のライダーにも最高の機材であるかというと、決してそうじゃない。一瞬のスピードを求めるのではなく、一日中Good Timeを感じられるバイク。自転車に乗ることの楽しさを感じられるのが、このグラベルロードなんだ。GTでは、アドベンチャーバイクと呼んでいるけれども」

頭の中でのイメージと、体が感じるものを近づける新作グラベルロード

「GRADE」(グレード)は、オンロードからオフロードまで、あらゆる路面に対応する“エンデュロード”だ「GRADE」(グレード)は、オンロードからオフロードまで、あらゆる路面に対応する“エンデュロード”だ

―― それを体現しているのが最新モデルのGRADE(グレード)ですね

 「その通り。頭の中でのプロレーサーたちのイメージと、実際に体が感じるものを近づけるバイクが、GRADEだ。これは、とにかく一日中乗り続けられるように、乗り手に最高のライディング感覚を感じてもらうために設計された一台だ」

 「太いタイヤと細いシートステーで乗り心地はしなやかに。ディスクブレーキの強力かつ操作しやすい制動力。BBハイトは高く、ハンドルも下が軽く広がっているので車体操作もしやすい。フォークはしなやかで快適だけれども、スルーアクスル(太く貫通した前輪の軸)の高い剛性感で安定したブレのないコーナリングが楽しめる」

 「このバイクはグラベルも走れるけれど、それ以上に、どんな路面でも一日中走りの楽しさを感じ続けられる自転車だと考えて欲しい。ほら、この大きな写真を見てくれれば、GRADEの存在意義、すべてのストーリーを理解してもらえると思う」

 「左に舗装路が写っている。彼はこの舗装路をGRADEに乗って走り続けてきたんだなとわかるだろう。そして山の中まで走ってきた時に、ちょっと遊べそうな土のバンクを見つけた。そこで冒険心が騒ぐんだ。「ここを走ってしまえよ」って。そして彼は土の上まで、イメージ通りに走り抜けるんだ。裏話をすれば、このライダーは、このバイクの開発者であるアンディって男なんだけどね(笑)」

―― グッド・タイム・アドベンチャーというところですか(笑)

 「冒険心さえあれば、どこでも楽しく走れるということさ。例えば東京だったら、通勤に使えば、通勤そのものが楽しくなるだろう。仕事が終わったら、あるいは仕事をさぼってでも(笑)、そのまま郊外に走り、山の中まで走っていってしまう。いや、走って行きたくなってしまうような楽しさを感じられるんだね」

XC用MTBも『再定義』、車体を操作し狙ったラインをズバリと走れる

―― ダートライディングの楽しさを知り尽くしたGTならではのバイクですね

新作XCバイク「HELION」(ヘリオン)では、新しいAOS(ANGLE OPTIMIZED SUSPENSION)を採用新作XCバイク「HELION」(ヘリオン)では、新しいAOS(ANGLE OPTIMIZED SUSPENSION)を採用

 「そう。GRADEだけじゃない。GTは長距離向けクロスカントリーMTBも『再定義』したんだ。新作のHELION(ヘリオン)では、リアサスシステムAOSの利点を最大限生かせるようよう、バイク全体の構成思想も見直した」

―― AOSとは、熟練MTBライダーに密かな人気を保ち続けたGT独自のシステム『i-Drive』の軽量進化版ですね?

 「よくご存知だね。路面の凸凹を『吸収』するだけではなく『前に押し出す力』に変えるi-Driveを、さらに軽く滑らかな動きにしたAOSなら、ペダルをぐいぐい踏んでもタイヤは滑ることなく、つまり技術に乏しいライダーでも安全に走り続けられるんだ。このAOSの利点とを最大限味わってもらうために、トップチューブを長めにさらに上りやすく全体の安定性も増やした。その一方で、ステムを短く、ハンドル幅を広くしたことで、バイク全体の操作性を格段に高めた」

 「オフロードライディングの楽しさを一言にすれば、車体と一つになってコントロールして、狙ったラインをズバリとトレースして走ること。レースで速く走ることだけじゃない、この走りの楽しさを感じてもらうためのMTB。これが『クロスカントリーMTBの再定義』ということなんだ」

―― なるほど、まさにGood TimeのためのGTですね

 「乗る人すべてに走りの楽しさを感じてもらうためにGTはあるんだ。GTで働くみんなが、バイクに対して情熱を持っているし、昔から乗っているサイクリストの多くが、GTのバイクにどこかで触れていてくれている。そんなみんなの気持ちを大切にしていきたいからね。これから本当にGTはGood Timeの略だ、って言ってもらってかまわないよ。僕らもべつに、否定はしないと思うよ(笑)」

【取材協力 ライトウェイプロダクツジャパン】

中村浩一郎聞き手 中村浩一郎(なかむら・こういちろう)

学生時代に始めた自転車専門誌編集部員を皮切りに、世界MTBレースシーンをレポートするなどMTB関連記事を執筆し続けて四半世紀。現在はローカルのない根無し草の風来坊MTBライダーとして、各地のコース、トレールを走り続ける日々。執筆、翻訳、通訳、ツアーガイド手伝いなど、コピーライティングとリアルライディングを通して、特にMTBの楽しさを伝え続けているつもり。表沙汰にできる主な執筆物はFacebookにて。https://www.facebook.com/pandasonic.nakamura(写真:伊東秀洋)

この記事のコメント

利用規約順守の上ご投稿ください。

関連記事

この記事のタグ

GT インタビュー

  • 一覧

新着ニュース

もっと見る

ピックアップ

e-BIKE最新特集

スペシャル

自転車協会バナー

ソーシャルランキング

インプレッション

インプレッション一覧へ

連載