「Cyclist」×「モンベル」コラボレーション企画海外を走ると決めた時「人生が変わった」 旅サイクリストの山下晃和さんがトークショー
国内外で自転車ツーリングの経験が豊富な山下晃和さんによるトークイベント「旅サイクリストのすすめ ~人生を変える自転車旅~」が4月17日、東京・品川のハーベステラス品川店で開催された。「Cyclist」とアウトドアブランド「モンベル」のコラボレーション企画で、山下さんはこれまでに旅した国々の風景やグルメなど自転車旅の魅力、そして自転車への荷物の積み方など実践的なアドバイスをたっぷりと語った。 (文・平澤尚威、写真・上野嘉之)
“死に物狂い”から生まれた最高の写真

イベントはアジア3カ国(ネパール、インド、バングラデシュ)での自転車旅の様子まとめた映像の上映からスタート。山下さんが「お気に入り」という映像からは、旅の楽しさや、走ってきた国々の文化、空気感が伝わってくる。参加者たちは食い入るようにスクリーンを見つめ、一気に自転車旅の世界に引き込まれた。
続いて、山下さんはこれまでに撮ってきた美しい風景や建物の写真を紹介。ネパールの標高4850mの高地にある山小屋「ハイキャンプ」まで上った時には、高山病にかかって頭痛や手足の冷え、意識が遠くなるような感覚に陥ったという。しかし「苦しい思いをしながら上った時に、後ろを振り返って撮った“死に物狂い”の写真が最高だったんです」と、苦難の末に感動を得られたエピソードを語った。ほかにもボリビアやメキシコ、カンボジアなど、さまざまな国での冒険談が次々と語られた。
経験に培われたハウツーを伝授

旅に欠かせないのは、もちろんグルメ。山下さんが各国で食べてきた料理のなかから、「安くておいしいもの」というテーマで「世界の美食ランキング」トップ3を紹介した。3位はニカラグア共和国の、米と牛肉の郷土料理「ガジョピント」。2位はネパールの豆と米の定食「ダルバート」。そして栄えある1位はチキンとサフランライスを使ったタイの「カオモッガイ」。豚肉が禁止されているイスラム教徒たちが食べる鶏肉料理だ。
この日のトークイベントは食事つき。彩り豊かでボリュームもあるタイ料理「ガッパオ」とともに、山下さんが「おいしくて、物価の安いアジア諸国では1杯5円程度で飲めるんです」とオススメするドリンク「チャイ」が提供された。

さらに、山下さんが長年のツーリング経験から培ってきた自転車旅のハウツーを伝授。発展途上国でも入手しやすい26インチタイヤを使っていること、デジタル機器など重い荷物はなるべく前に積むこと、シュラフや予備のタイヤは劣化させないために日除けをすること――などの極意を、愛用のランドナー(ツーリング用自転車)を使いながら解説した。
自転車旅に適したシューズについては、「ビンディングタイプがいいかどうかは賛否両論があります。脚力に自信がなければビンディングの方がいいが、個人的には降りてすぐ次の行動に移れるトレッキングシューズがオススメです」とアドバイスした。
“スイッチ”が入った瞬間が一番熱い
イベントには、山下さんの友人で、5万8000kmを走破した世界一周の旅から帰国したばかりの旅サイクリスト、昼間岳(ひるま・がく)さんも来場した。山下さんからゲストとして紹介された昼間さんは、「どこを走っても人から親切にしてもらえて、交流できることが自転車旅の魅力です。普通の旅では見られない風景を見ました」と長い旅の経験を語った。

最後に山下さんは、「人生を変える自転車旅」というイベントタイトルにちなんで、自分の人生が変わった瞬間を明かした。
「自転車旅をしていて、人生が変わったとは思っていません。でも、どこで“スイッチ”が入ったかというと、『自転車で海外を走ろう』と決めた瞬間です。この瞬間が、一番熱い。自分の力で海外に行こう、自転車を買おう、必要なアイテムを集めよう――そう考えている時に、人生が変わったと思います。みなさんにもそれを感じてもらいたいです」と、参加者たちの背中を押してトークを締めくくった。
旅立つサイクリストを後押し
トークショーに参加した埼玉県の医療ソーシャルワーカー、二瓶健太郎さんは、ゴールデンウィーク明けから自転車で東日本縦断の旅に出るという。トーク後の質問タイムでは、長時間走るため「走行中のお尻の痛みが心配です」と相談。これに対して山下さんは「荷物はバックパックなどで体につけるのではなく、なるべく自転車に積むようにした方がいい」とアドバイスした。二瓶さんは「海外を自転車で旅した方の話はなかなか聞けないし、どの話も臨場感がありました」と感想を語った。

その後のプレゼント抽選会では、自転車旅に便利なモンベルのサイクル・アクセサリーや、山下さんのサイン入り著書『自転車ロングツーリング入門』などが贈呈された。また、フロントバッグの当選者が辞退し、これから旅に出る二瓶さんに譲るという粋な心遣いも。
千葉県のフラダンス講師、小林恵さんは、自転車仲間の男性たちが走るスピードについていけないことが、ずっと悩みだったという。ところがこの日のトークショーですっかり考え方が変わったようで、「いままで自分が知らなかった自転車の楽しみ方あることがわかって、モチベーションが上がりました。自分のペースで走るツーリングっていいなって思いました」と声を弾ませていた。