マイヨ・アルカンシエルが躍動クフィアトコフスキーがアムステルゴールドレース初優勝 18人のスプリントを制する

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 春のクラシックシーズン後半戦、アルデンヌクラシックの初戦となるアムステルゴールドレース(UCIワールドツアー)が4月19日にオランダで開催され、世界王者の証であるマイヨ・アルカンシエルを着るミハウ・クフィアトコフスキー(ポーランド、エティックス・クイックステップ)が初優勝を果たした。コース最大の難所・カウベルグの上りで絞られた18選手によるゴールスプリントに勝利し、第50回記念大会を制した。

ミハウ・クフィアトコフスキー(ポーランド、エティックス・クイックステップ)が世界チャンピオンの証、マイヨ・アルカンシエルを着てアムステルゴールドレースを制したミハウ・クフィアトコフスキー(ポーランド、エティックス・クイックステップ)が世界チャンピオンの証、マイヨ・アルカンシエルを着てアムステルゴールドレースを制した

34カ所の上りと“1000のカーブ”

 1966年に初開催され、クラシックレースの中では比較的新しいと言われるアムステルゴールドレース。今年は第50回の記念大会。オランダのビールメーカーであるアムステル社がメーンスポンサーを務めているが、同社はかつてアマチュアロードレースチームを抱えていた時代があり、現在ではホビーライダーやファンをも含めた一大イベントとしてこの大会を運営している。

名物の「カウベルグ」を行く集団名物の「カウベルグ」を行く集団

 春のクラシックシーズンは、オランダやベルギー南部・ワロン地域の丘陵地に舞台を移し、「アルデンヌクラシック」と呼ばれるクライマーやパンチャー、オールラウンダーが主役となるレースが行われる。その初戦となるアムステルゴールドレースは、オランダ南部リンブルフ州の都市・マーストリヒトをスタートし、近郊の街の大小3つの周回を反時計回りにめぐるルートが採用される。特徴はスタートから繰り返し続く34カ所の上りのほか、“1000のカーブ”と例えられる狭く曲がりくねった道。今回は258kmで争われ、獲得標高は4000mを超える。

 この大会名物の坂「カウベルグ(登坂距離1.2km、平均勾配5.8%、最大勾配12%)」は健在。これまで幾多の名勝負を生んだポイントだが、同地で2012年に開催された世界選手権ロードレースを機にこの大会でも、カウベルグを4回通過し、最後の1回は上り終えてからさらに1.8km走った先にゴールが設けられるようになった。

 レースはスタートから28km地点で形成された6人の逃げ集団がしばらくの間先行。65km地点でメーン集団に対し8分以上のリードを奪ったが、その後は差が縮小していった。残り52kmのグーテンベルグの上りで、逃げメンバーはローレンス・デフリーズ(ベルギー、アスタナ プロチーム)、ヤン・ポランツェ(スロベニア、ランプレ・メリダ)、リーナス・ゲルデマン(ドイツ、クルトエナジー プロサイクリング)の3人に絞られる。そして、メーン集団も来たる勝負どころに向けてペースを上げていった。

ニバリらの動きでレースが活性化

レース終盤に動きをみせたニバリレース終盤に動きをみせたニバリ

 レースが動き始めたのは残り37km。上りを利用してデイヴィッド・タナー(オーストラリア、イアム サイクリング)とサイモン・クラーク(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)がメーン集団から抜け出すと、さらに7選手が追走集団を形成。そこにはヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、アスタナ プロチーム)、トニー・マルティン(ドイツ、エティックス・クイックステップ)といった有力選手が加わり、レース全体がペースアップしていく。序盤から逃げていたデフリーズとポランツェも粘ったものの、残り30kmを前に遅れ始め、タナーとクラークが先頭に。やがてニバリらも合流し、3回目のカウベルグを通過。メーン集団に対し14秒のリードをもって最後の周回コース(残り18km)へと入っていった。

 残り15kmとなったところでニバリがペースアップを図ると、クラークとマルティンが対応。先頭が3人になると各選手の思惑が一致せず、ニバリがマルティンに対し苛立つ場面も見られた。その間隙を縫ってクラークがアタックを決め、独走を開始。ニバリとマルティンはメーン集団に吸収された。

 力強い走りを見せたクラークだったが、BMCレーシングチームやモビスター チームがペースコントロールを行うメーン集団のスピードには勝てず、残り8kmで捕まってしまった。代わって、ヤコブ・フルサング(デンマーク、アスタナ プロチーム)がアタックを決め、フレッヒ・ヴァンアーヴルマート(ベルギー、BMCレーシングチーム)が続く。しかし、フルサングのみが前を引き続ける状態でペースが上がらず、残り4kmでメーン集団に引き戻された。

勝負のカウベルグ4回目 優勝争いに残ったのは18選手

 終盤にかけて散発したアタックはすべて失敗に終わり、集団は1つのまま最大の勝負どころとなるカウベルグ4回目の上りへ。その直前の下りでは時速70〜80km/hの中、激しいポジション争いが繰り広げられたが、オリカ・グリーンエッジを先頭にカウベルグの上りに入った。

 上り始めで先頭に立ったのはベン・ヘルマンス(ベルギー、BMCレーシングチーム)。これにマチェイ・パテルスキー(ポーランド、CCCスプランディ・ポルコヴィツェ)らが続く。そして、頂上まであと少しのタイミングで満を持して仕掛けたのは、前回覇者のフィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシングチーム)だ。

連覇を狙ったジルベール(中央)連覇を狙ったジルベール(中央)

 2012年の世界選手権ロード、昨年のこの大会と、カウベルグで決定的なアタックを決めて勝利を手繰り寄せたジルベールだが、今回はこれまでと同じようにはいかなかった。スプリンターのマイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)の徹底マークにあい、独走に持ち込むことができない。牽制状態となったところに次々と選手が後方から追いつき、結果的に18選手が一団となってラスト1kmのフラムルージュを通過する形に。現在のゴール設定になって以来初めて、勝負はゴールスプリントに委ねられることになった。

 迎えた最終局面。複数のメンバーを残していたBMCレーシングチームが集団を牽引し、その横からはラーシュペッテル・ヌールハウ(ノルウェー、チーム スカイ)、アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター チーム)などが前方へと姿を現す。しかし、ここで最も鋭い加速を見せたのは、純白に虹を表す5色のラインをあしらったマイヨ・アルカンシエルのクフィアトコフスキーだった。集団中ほどからのスプリント開始だったが、スピードに乗るとライバルの追随を許さず、最後は後ろを確認する余裕を見せながら両手を広げてフィニッシュラインを通過。嬉しいアルデンヌクラシック初優勝の瞬間だ。

18選手でのゴールスプリントをクフィアトコフスキーが制した18選手でのゴールスプリントをクフィアトコフスキーが制した

24歳で王者の風格 有言実行のクラシック制覇

 クフィアトコフスキーは24歳。プロトンの若きゴールデンエイジと言われる1990年生まれのトップライダーの1人だ。昨年の世界選手権ロードレースでは独走で優勝し、栄光のジャージ「マイヨ・アルカンシエル」を獲得。今シーズンはここまで、3月上旬のパリ〜ニースのプロローグにおける1勝にとどまっていたが、総合首位のマイヨジョーヌを5日間着用して総合優勝争いを演じるなど、出場するレースではしっかりと存在感をアピールしていた。そして、早くから「優勝を狙う」と宣言して臨んだアルデンヌクラシックで初勝利。第50回大会を彩るマイヨ・アルカンシエルでの優勝で、世界王者としての強さと風格を見せつけた。

 レース後の記者会見では、「最後の数キロは本当に苦しかった。ただ、(ライバルの)みんなも疲れている様子だったので、何とか勝つことができた。何事も諦めないことが大切。クラシックレース優勝という夢が叶ったので、まずはこの勝利を喜びたい」と語った。また、終盤で先頭集団に加わったチームメイトのマルティンの動きについて問われると、「彼が逃げ狙いのアタックに対応するのは予定通りだった」と説明。チームの作戦がピッタリと噛み合った勝利であることを強調した。なお、大会史上4人目のマイヨ・アルカンシエルでの優勝者となった。

表彰台で大会スポンサーのアムステルビールを飲み干してみたクフィアトコフスキー表彰台で大会スポンサーのアムステルビールを飲み干してみたクフィアトコフスキー

 初優勝を狙ったバルベルデは3回目の2位。アルデンヌクラシックで唯一勝利を挙げられずにいる大会だが、今回も勝つことができなかった。スプリンターでただ1人生き残り、ゴールスプリントで有利と見られたマシューズは3位。絶好の展開だったが、立て続けに訪れた急坂によるダメージが最後の最後に出てしまう格好となった。

メーン集団の先頭に立つ山本元喜(NIPPO・ヴィーニファンティーニ)メーン集団の先頭に立つ山本元喜(NIPPO・ヴィーニファンティーニ)

 日本人選手も2人出場した今大会。別府史之(トレック ファクトリーレーシング)は終始集団の前方をキープし、アシストとしての役割を全うした。山本元喜(NIPPO・ヴィーニファンティーニ)も後半までメーン集団内を走行。それぞれリタイアしたものの、次につながる形でレースを終えている。

 アルデンヌクラシックは残り2戦。22日は最大勾配22%の激坂・ユイの壁が選手を待ち受けるラ・フレーシュ・ワロンヌ(205.5km)、26日は最古のクラシックレースであるリエージュ〜バストーニュ〜リエージュ(253km)が開催される。日本人選手は、別府と新城幸也(チーム ヨーロッパカー)が両レースへの出場を予定している。

文 福光俊介・写真 砂田弓弦


アムステルゴールドレース結果
1 ミハウ・クフィアトコフスキー(ポーランド、エティックス・クイックステップ) 6時間31分49秒
2 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター チーム)
3 マイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)
4 ルイ・コスタ(ポルトガル、ランプレ・メリダ)
5 フレッヒ・ヴァンアーヴルマート(ベルギー、BMCレーシングチーム)
6 トニー・ガロパン(フランス、ロット・ソウダル)
7 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、エティックス・クイックステップ)
8 エンリーコ・ガスパロット(イタリア、ワンティ・グループゴーベル)
9 マチェイ・パテルスキー(ポーランド、CCCスプランディ・ポルコヴィツェ)
10 フィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシングチーム)
DNF 別府史之(トレック ファクトリーレーシング)
DNF 山本元喜(NIPPO・ヴィーニファンティーニ)

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