ミラノ〜サンレモに続き今季モニュメント2冠デゲンコルプがパリ〜ルーベ初制覇 7人のヴェロドローム決戦スプリントに勝利

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 石畳での激しい攻防で知られる春のクラシックレースの花形、「パリ〜ルーベ」が4月12日にフランスで開催され、ジョン・デゲンコルプ(ドイツ、チーム ジャイアント・アルペシン)が初優勝を果たした。優勝争いはゴール地のルーベ・ヴェロドロームまでもつれ込み、この大会では近年珍しい7人の小集団によるスプリントをデゲンコルプが制した。

ジョン・デゲンコルプ(ドイツ、チーム ジャイアント・アルペシン)が“クラシックの女王”パリ〜ルーベを初制覇。屋外ヴェロドローム(自転車競技場)でのゴール決戦を制したジョン・デゲンコルプ(ドイツ、チーム ジャイアント・アルペシン)が“クラシックの女王”パリ〜ルーベを初制覇。屋外ヴェロドローム(自転車競技場)でのゴール決戦を制した

晴れても“北の地獄” ぬかるんだ石畳で落車が続発

 例年通りパリの北北東約70kmに位置するコンピエーニュをスタートし、ベルギー国境に近い街・ルーベを目指すレース。今年は253kmに設定された。握りこぶし大の石が敷き詰められた石畳(パヴェ)の区間(セクター)がレースを左右する大きな要素となり、今回は全27セクター、総距離52.7kmの石畳がコースに組み込まれた。石畳では落車やパンク、メカトラブルが多発するほか、この時期特有の変わりやすい天候によって、泥が浮き出したり、砂埃が舞ったりと、路面状態の変化も選手たちを苦しめる。大会の伝統や格式の高さから“クラシックの女王”と言われるが、一方でコースコンディションの凄まじさから“北の地獄”との呼び名さえ存在する。

前回大会優勝のニキ・テルプストラ(ベルギー、エティックス・クイックステップ)前回大会優勝のニキ・テルプストラ(ベルギー、エティックス・クイックステップ)

 今年は、最近10年間で7回にわたり優勝を分け合ってきたファビアン・カンチェッラーラ(スイス、トレック ファクトリーレーシング)、トム・ボーネン(ベルギー、エティックス・クイックステップ)がともに負傷により欠場。ボーネンに代わってチームのエースを務める前回優勝のニキ・テルプストラ(ベルギー)や、4月5日のツール・デ・フランドル王者のアレクサンドル・クリツォフ(ノルウェー、チーム カチューシャ)、このレースをもってロード界のトップシーンからの引退を表明しているブラッドリー・ウィギンス(イギリス、チーム スカイ)らに注目が集まった。

 レースは現地時間10時30分にスタートし、30kmを過ぎたあたりでアレクシー・グジャール(フランス、アージェードゥーゼール ラモンディアル)ら9選手が逃げ集団を形成。76km地点でメーン集団に対し、この日最大となる9分40秒のリードを得る。

 天候こそ晴れたものの、前日の雨の影響が石畳に表れ、ぬかるんだ路面で落車が続出。有力選手の1人、スティーン・デヴォルデル(ベルギー、トレック ファクトリーレーシング)が鼻から出血しそのままリタイアするなど、ダメージを負った選手が次々とレースから去っていった。

石畳を進むメーン集団石畳を進むメーン集団

激しさを増す主導権争い ウィギンスが有終の美へアタック

 スタートから98.5km地点で最初の石畳区間を迎えると、以降はゴール直前まで断続的に石畳と舗装路が繰り返される。石畳区間には、距離や路面状態などを基準に1から5までの難易度が設定される。最も難易度が高い5つ星パヴェは3カ所。その最初に登場するセクター18のトルイー・ド・アーレンベルグ(距離2.4km、158km地点)に向けては、有力チームがスプリントさながらのトレインを形成し、エースを好位置へと送り込もうと試みる。

 ところが、メーン集団内で注目選手に次々とトラブルが発生。ペテル・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ)がコースアウト、ゲラント・トーマス(イギリス、チーム スカイ)はこの日2回目となるパンクで後方へと下がってしまう。いずれも集団前方へと戻ったものの、脚を使う形となってしまった。

思うようなレースができなかったペテル・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ)思うようなレースができなかったペテル・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ)

 逃げ集団の通過から5分50秒後、メーン集団がアーレンベルグを通過。力のある選手たちは落車やパンクといったトラブルなくクリアしていく。そして、レースを活性化させるべく各チームの2番手、3番手クラスの選手たちによるアタックが見られ始めた。

 アタックとそれを封じる動きが激しさを増す中、メーン集団の一部が踏切で足止めを余儀なくされてしまう。遮断機が下りる脇をすり抜ける選手や、大会役員の静止を振り切って通過していく選手も見られたが、国際自転車競技連合(UCI)のルールに基づき、一時的に集団をニュートラル状態にして後続の復帰を待つ措置が取られ、レース展開には大きな影響が及ばないよう配慮がなされた。

 中盤は、実力者を多くそろえるエティックス・クイックステップがメーン集団の主導権を握って進行。散発するアタックをすべて封じたほか、パヴェと強い横風を利用して集団の分断を図るなど、チーム戦術を生かして優位に展開した。

 レース後半、攻防が激しさを増したのもエティックス・クイックステップの動きからだった。5つ星パヴェの1つ、モンス・アン・ペヴェル(距離3km、204.5km地点)でエース格の1人であるスティーン・ヴァンデンベルフ(ベルギー)がアタックに成功。単独で逃げ集団の追走を開始した。メーン集団はロット・ソウダルが牽引を開始。しかし、セクター8のポン・ティボー(難易度3、距離1.4km、214km地点)でラースユティング・バク(デンマーク)が観客のいる沿道へ突っ込んで落車してしまうなど、思うように前とのタイム差を縮められない。代わってイェンス・デビュッシェール(ベルギー)ら数人が追走集団の形成を試みるが、これも失敗に終わる。

“最後のロードレース”として臨んだブラッドリー・ウィギンス(イギリス、チーム スカイ)“最後のロードレース”として臨んだブラッドリー・ウィギンス(イギリス、チーム スカイ)

 そんななか、セクター7のテンプレーヴ・トゥ・ムーラン・ド・ヴェルタン(難易度2、距離500m、220km地点)でウィギンスがアタック。一気のペースアップに反応できたのはデビュッシェールとズデニェック・シュティバル(チェコ、エティックス・クイックステップ)だけ。あっという間にヴァンデンベルフに追いつく。このまま4人が先頭を追うものと思われたが、各選手の思惑が一致せず、結局4kmほど先行したのちメーン集団へと引き戻されてしまった。

7選手の力勝負 最終決戦はヴェロドロームへ

 レースは決定的な動きがみられないまま進み、メーン集団は逃げ集団をキャッチ。その直後にユルヘン・ルーランツ(ベルギー、ロット・ソウダル)とボルト・ボジッチ(スロベニア、アスタナ プロチーム)がアタックを成功させ、残り約20kmでの逃げ切りを目指す。やがてルーランツが単独先頭になり、最後の5つ星パヴェであるカルフール・ド・ラルブル(距離2.1km、236.5km地点)へと突入する。勝負を左右する仕掛けどころだが、強風の影響もあってメーン集団から飛び出す選手は現れなかった。

カルフール・ド・ラルブルを単独先頭で通過するユルヘン・ルーランツ(ベルギー、ロット・ソウダル)カルフール・ド・ラルブルを単独先頭で通過するユルヘン・ルーランツ(ベルギー、ロット・ソウダル)

 重要な局面は残り12kmで訪れた。ルーランツを吸収しメーン集団のペースが緩んだ一瞬のタイミングで、イヴ・ランパート(ベルギー、エティックス・クイックステップ)がアタック。これに続いたのは、フレッヒ・ヴァンアーヴルマート(ベルギー、BMCレーシングチーム)。レースを終始コントロールしたエティックス・クイックステップ勢は、これによって集団牽引を行う必要がなくなった。また、実力者のヴァンアーヴルマートが抜け出したこともあって、みるみるうちにリードが広がっていった。

 先行する2人に何としても追いつきたい選手たち。デゲンコルプ擁するチーム ジャイアント・アルペシンは、まずベルト・デバッケル(ベルギー)を先行させ、その後デゲンコルプが合流。残り10km、デバッケルに発射されるようにしてデゲンコルプはさらにペースアップ。約4kmの単独追走の末、先頭2人に追いついた。

先頭を追うズデニェック・シュティバル(チェコ、エティックス・クイックステップ)先頭を追うズデニェック・シュティバル(チェコ、エティックス・クイックステップ)

 トップスプリンターであるデゲンコルプに対し、ゴール前でのスピードで不利に立たされるヴァンアーヴルマートとランパートは先頭交代を拒否。一瞬ヴァンアーヴルマートが先頭に立つシーンもあったが、積極的に引く素振りではない。後方では、シュティバル、ラルス・ボーム(オランダ、アスタナ プロチーム)、マルティン・エルミガー(スイス、イアム サイクリング)、イェンス・クークレール(ベルギー、オリカ・グリーンエッジ)が追走集団を組んで前を行く3選手を目指す。残り5kmを切ったところでシュティバルが抜け出し、1人で先頭集団へのジャンプアップを試みた。

 残り2.5kmでシュティバルが先頭3選手に追いつくと、チームメートのランパートがアタック。しかしライバルを置き去りにするまでには至らず。また、追走集団もボームやエルミガーによる必死の走りが実り、最後のパヴェセクターであるルーベ(難易度1、距離300m)でついに先頭集団に合流。ラスト1.5kmで7選手が優勝を争うこととなった。

 いよいよゴールのヴェロドロームへ。1周半走ってフィニッシュラインを迎える。先頭に立ったのはランパート。シュティバルが番手を確保し、その後ろにデゲンコルプが控える。ラスト1周の鐘が鳴るのをよそに、7選手ともにスローペースで慎重にスプリントタイミングを計る。第3コーナーに入り加速したのはシュティバル。しかし、スピードで上回るデゲンコルプが難なくかわすと、第4コーナーを抜けそのままフィニッシュラインへ。両手を高々と突き上げ、歓喜の瞬間を迎えた。

万全の走りで勝利に結びつけたデゲンコルプ万全の走りで勝利に結びつけたデゲンコルプ

記録尽くしのデゲンコルプ 「チームあっての勝利」

石畳のトロフィーを高々と掲げるデゲンコルプ石畳のトロフィーを高々と掲げるデゲンコルプ

 追走、集団牽引、そしてスプリントと、あらゆる展開に対応し勝利を収めたデゲンコルプ。3月22日のミラノ〜サンレモ初優勝が記憶に新しいが、その3週間後に新たな勲章を手にした。クラシックレースの中でもとりわけ歴史と伝統のある“モニュメント”と呼ばれる大会を制したのは、これで2回目となる。

 レース後のインタビューでは、「パリ〜ルーベで勝つことを夢見ていた。そのための努力はしてきたし、チームメートもよく働いてくれた。(レース展開的に)大人数での優勝争いになりそうだったので、思い切って自分から仕掛けることにした。ミラノ〜サンレモ、パリ〜ルーベともにチームあっての勝利だ」と喜びを口にした。

 ドイツ人選手の優勝は、第1回大会までさかのぼり、1896年のヨーゼフ・フィッシャー以来2人目。ミラノ〜サンレモとの2冠は、1908年のシリル・ヴァンホーヴェルト(ベルギー)、1986年のショーン・ケリー(アイルランド)以来、史上3人目の快挙だ。

 レースを優位に進めたエティックス・クイックステップは、シュティバルが2位。見せ場を作ったネオプロ(プロ1年目)のランパートは7位。北のクラシックではたびたび優勝争いを演じたヴァンアーヴルマートは3位に終わり、ゴール直後には悔し涙を流した。

表彰台に立つ上位3選手表彰台に立つ上位3選手

 2連覇を狙ったテルプストラは15位。「ロードキャリア最後の夢」としてパリ〜ルーベ制覇に挑んだウィギンスは18位で、今後は2016年リオ五輪での金メダル獲得を目指すトラック種目に比重を置く。なお、完走は133選手(出場199選手)。レース中盤の踏切通過に関しては、危険行為による失格などのペナルティは課さないと発表された。

 春のクラシックシーズンは後半戦へ。オランダやベルギー南部のワロン地域が舞台のアルデンヌクラシックへと移っていく。19日のアムステルゴールドレースからは、アップダウンを得意とするオールラウンダーやクライマー、登坂力に長けるパンチャーが主役となる。

文 福光俊介・写真 砂田弓弦


パリ〜ルーベ2015結果
1 ジョン・デゲンコルプ(ドイツ、チーム ジャイアント・アルペシン) 5時間49分51秒
2 ズデニェック・シュティバル(チェコ、エティックス・クイックステップ) +0秒
3 フレッヒ・ヴァンアーヴルマート(ベルギー、BMCレーシングチーム) +0秒
4 ラルス・ボーム(オランダ、アスタナ プロチーム) +0秒
5 マルティン・エルミガー(スイス、イアム サイクリング) +0秒
6 イェンス・クークレール(ベルギー、オリカ・グリーンエッジ) +0秒
7 イヴ・ランパールト(ベルギー、エティックス・クイックステップ) +7秒
8 ルーク・ロウ(イギリス、チーム スカイ) +28秒
9 イェンス・デビュッシェール(ベルギー、ロット・ソウダル) +29秒
10 アレクサンドル・クリツォフ(ノルウェー、チーム カチューシャ) +31秒

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