別府史之は集団コントロールで貢献クリツォフが“クラシックの王様”ツール・デ・フランドル初優勝 テルプストラとの一騎打ち制す

  • 一覧

 “クラシックの王様”と称されるワンデーレースの最高峰「ツール・デ・フランドル」が4月5日、ベルギーで開催され、アレクサンドル・クリツォフ(ノルウェー、チーム カチューシャ)がニキ・テルプストラ(オランダ、エティックス・クイックステップ)との一騎打ちを制して大会初制覇を果たした。また、トレック ファクトリーレーシングの別府史之が2年ぶりに出場し、チームに貢献した。

アレクサンドル・クリツォフがツール・デ・フランドル初制覇を飾ったアレクサンドル・クリツォフがツール・デ・フランドル初制覇を飾った

大本命不在のレース

 ツール・デ・フランドルは“モニュメント”と称される世界5大クラシックレースの中でも最も権威ある大会。次々と現れる石畳と急坂が選手を苦しめる過酷なレースだ。今年は264kmで争われ、19の登坂区間が設けられた。特に難易度が高いのはコッペンベルグ、アウデ・クワレモント、パテルベルグという3つの急坂。コッペンベルグは最大勾配22%に及ぶ。周回コースで3度通過するアウデ・クワレモントは2.2kmと距離の長い丘で、2度通過するパテルベルグは登坂距離360mながら最大勾配20%で、最後の勝負どころとなる難所だ。

 今大会は、3度の優勝経験をもつファビアン・カンチェッラーラ(スイス、トレック ファクトリーレーシング)、トム・ボーネン(ベルギー、エティックス・クイックステップ)の2人がけがで欠場し、大本命が不在のなかで行われた。

 レース開始から熾烈なアタック合戦が繰り広げられ、7人の逃げ集団が形成された。逃げて存在感をアピールしたいプロコンチネンタルチームの選手のほか、ラースユースティング・バク(ベルギー、ロット・ソウダル)や、ジェス・サージェント(ニュージーランド、トレック ファクトリーレーシング)といった有力チームのアシスト選手らも送り込まれた。

アシストとして走ったブラッドリー・ウィギンスアシストとして走ったブラッドリー・ウィギンス

 メーン集団ではチーム スカイがコントロールする場面が目立った。3月27日に開催されたフランドルの前哨戦「E3ハーレルベーク」を制し、29日の「ヘント~ウェベルヘム」でも3位に入ったゲラント・トーマス(イギリス)で勝負する態勢だ。また4月12日のパリ~ルーベを最後にロードレースのトップシーンを退き、トラックへの転向を表明しているブラッドリー・ウィギンス(イギリス)もアシストとして集団コントロールに貢献。ウィギンスはレース中盤、コーナーで他の選手と接触して落車し、痛がる場面もあったが、集団に復帰した。

 逃げ集団では、先頭を走っていたサージェントが、選手たちの横をすり抜けようとしたニュートラルサービスカーに接触され落車。路面に強く打ちつけられリタイアしてしまうというハプニングが発生した。その後も、FDJのチームカーにニュートラルサービスカ―が追突し、チームカーの前にいたセバスティアン・シャヴァネル(フランス、FDJ)が跳ね飛ばされ、リタイアしてしまった。

意表をつくアタックが炸裂

 残り118km、メーン集団では第6セクションのモーレンベルグでアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)がアタックを仕掛け、単独で飛び出した。すぐに吸収されたものの、これ以降、何人もの選手がアタックを繰り出し、次第にペースが上がって逃げ集団との差が縮まっていった。

 49kmで逃げ集団が吸収されると、たびたび積極的な動きを見せてきたグライペルが再び単独でアタックし、激坂のコッペンベルグに入った。グライペルから少し遅れて上り始めたメーン集団は、スティーン・デヴォルデル(ベルギー、トレック ファクトリーレーシング)が先頭で上り、トーマスが続いた。集団後方では厳しい勾配のため止まってしまい、自転車を担いで上る選手たちの姿が見られた。

積極的なアタックを何度も見せたフレッヒ・ヴァンアーヴルマート積極的なアタックを何度も見せたフレッヒ・ヴァンアーヴルマート

 しかし決定的なアタックにはつながらず、その後もグライペル、フレッヒ・ヴァンアーヴルマート(ベルギー、BMCレーシング)、ユルヘン・ルーランツ(ベルギー、ロット・ソウダル)らが立て続けにアタックするも不発に終わった。

 そして、第17セクションのクルイスベルグを上りきって集団のペースが緩んだタイミングで、テルプストラが一気に加速し、クリツォフがすかさず追随。勝負所となる最後のアウデ・クワレモント、パテルベルグを前に、残り28kmから逃げ切りを図った。クリツォフはミラノ~サンレモ、テルプストラはパリ~ルーベを昨年に制しており、ともにモニュメント2つ目のタイトルがかかる実力者だ。

 先頭の2人は30秒までリードを広げ、3度目のアウデ・クワレモントへ突入。メーン集団では優勝候補と目されたトーマスがアタックを仕掛けるも、ズデニェック・シュティバル(チェコ、エティックス・クイックステップ)が対応。テルプストラのチームメートであるシュティバルを連れていくのは不利と判断したのか、それとも脚が残っていなかったのか、トーマスは途中で失速しメーン集団と合流した。

テルプストラの動きを封じたクリツォフが完勝

 最後の上りとなる2度目のパテルベルグでも、先頭の2人はメーン集団に30秒のリードをキープ。この2人でゴールを争えば、トップスプリンターであるクリツォフが有利な状況だ。しかし、テルプストラはアタックするどころか前に出ることもできない。パテルベルグを越えると13kmの平坦区間を残すのみ。メーン集団からはヴァンアーヴルマート、ぺテル・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ)が抜け出し、約15秒差で先頭の2人を追った。

パテルベルグで激しい争いを繰り広げるアレクサンドル・クリツォフ(右)とニキ・テルプストラパテルベルグで激しい争いを繰り広げるアレクサンドル・クリツォフ(右)とニキ・テルプストラ

 クリツォフとテルプストラは先頭交代して逃げ切りを確実なものにしていった。スプリントで不利なテルプストラだが、後続の2人と合流して混戦に持ち込むという判断はせず、クリツォフとの一騎打ちに臨んだ。15秒のリードを保ったまま、残り3kmへ。テルプストラは先頭交代をやめチャンスをうかがい、クリツォフはアタックされないように注意を払いながらゴールが近づく。牽制状態の末、残り200mでテルプストラがスプリントを開始。しかし、自らの土俵に持ち込んだクリツォフが格の違うスプリント力を見せつけ、第99回ツール・デ・フランドルを制した。

 昨年のクリツォフはミラノ~サンレモを制覇し、ツール・ド・フランスでステージ2勝を挙げるなど、スプリンターとして一気にブレイク。今シーズンもここまで9勝を挙げるなど好調を維持していた。そしてワンデーレースにおける最高峰の栄冠を手に入れ、クラシックレーサーとしての評価を確固たるものにした。この日、会場まで応援に来ていた妻と子に最高の勝利をプレゼントした。

表彰式に臨んだ(左から)ニキ・テルプストラ、アレクサンドル・クリツォフ、フレッヒ・ヴァンアーヴルマート。クリツォフは子供を連れて壇上に上がった表彰式に臨んだ(左から)ニキ・テルプストラ、アレクサンドル・クリツォフ、フレッヒ・ヴァンアーヴルマート。クリツォフは子供を連れて壇上に上がった

 2位にはテルプストラ、3位には終盤に追い上げるも惜しくも届かなったヴァンアーヴルマートが入った。別府は序盤から後半にかけてメーン集団のコントロールに加わってチームに貢献し、途中でリタイアした。

(文・平澤尚威、写真・砂田弓弦)

ツール・デ・フランドル結果
1 アレクサンドル・クリツォフ(ノルウェー、チーム カチューシャ) 6時間26分32秒
2 ニキ・テルプストラ(オランダ、エティックス・クイックステップ) +0秒
3 フレッヒ・ヴァンアーヴルマート(ベルギー、BMCレーシングチーム) +7秒
4 ペテル・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ) +16秒
5 ティシュ・ブヌート(ベルギー、ロット・ソウダル) +36秒
6 ラルス・ボーム(オランダ、チーム ロットNL・ユンボ) +36秒
7 ジョン・デゲンコルプ(ドイツ、チーム ジャイアント・アルペシン) +49秒
8 ユルヘン・ルーランツ(ベルギー、ロット・ソウダル) +49秒
9 ズデニェック・シュティバル(チェコ、エティックス・クイックステップ) +49秒
10 マルティン・エルミガー(スイス、イアム サイクリング) +49秒
DNF 別府史之(トレック ファクトリーレーシング)

この記事のコメント

利用規約順守の上ご投稿ください。

関連記事

この記事のタグ

UCIワールドツアー

  • 一覧

新着ニュース

もっと見る

ピックアップ

e-BIKE最新特集

スペシャル

自転車協会バナー

ソーシャルランキング

インプレッション

  • タイム
    アルプデュエズ01 ディスク

    ディスクブレーキで伝統の走りを進化

  • リブ
    AVAIL ADVANCED

    走る好奇心を止めない リブの新型‟無敵”ロードバイク

  • インプレッション一覧へ

    連載