スプリンター向け“北のクラシック”強風でレースが荒れた「ヘント~ウェベルヘム」 38歳のベテラン、パオリーニが初制覇

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 石畳のコースで行われる“北のクラシック”「ヘント~ウェベルヘム」が3月29日にベルギーで開催され、雨と強風に見舞われた239.1kmのサバイバルレースでルーカ・パオリーニ(イタリア、チーム カチューシャ)が初優勝を飾った。レース終盤で少人数に絞られた優勝争いのなか、38歳のベテランが巧みなレース運びで残り6kmからのアタックを決めた。

強風と雨に見舞われた「ヘント~ウェベルヘム」で初優勝を飾ったルーカ・パオリーニ強風と雨に見舞われた「ヘント~ウェベルヘム」で初優勝を飾ったルーカ・パオリーニ

雨と強風でレースは緊迫ムード

 平坦基調のコースには、9つの上りセクションが設けられている。そのうち周回コースで2度通過するセクションが3つあり、なかでも第5、第8セクションにあたるケンメルベルグは登坂距離530mで平均勾配6.2%、最大勾配では20%を超える箇所もある石畳の坂。下りもテクニカルで最も難易度の高いセクションだ。

 上りセクションがあるものの終盤30kmには上りがあまりないため、北のクラシックのなかでもスプリンターが有利のレースだ。海岸線などでの強風も特徴とされている。

 強い雨と風のなかで始まったレースは序盤に7人の逃げ集団が形成され、最大で8分以上の差がついた。メーン集団では落車やパンクが頻発するなど緊迫したムードで、悪天候を警戒してか早い段階からタイム差が詰まり始めた。

完全防備で雨と風をしのぐ選手たち完全防備で雨と風をしのぐ選手たち
石畳区間で集団落車が発生石畳区間で集団落車が発生

 雨は少しずつ弱まっていったが、例年以上に強い風が吹き荒れ、選手たちを苦しめた。コースの進路が変わるごとに横風になったり追い風になったりと、風向きが頻繁に変わっていった。横風によって、集団内にいても脚を使うことは避けられず、下手をすれば中切れしてしまうため集団内の位置取りも非常に重要になった。

強い横風で体を倒しながら走る選手たち

 逃げとメーン集団のタイム差が1分を切った残り128km、遮蔽物のない平坦区間で選手たちが強烈な風にさらされた。体を斜めに倒さないとまっすぐ走れないほどの風にあおられ、コースアウトする選手や落車する選手の姿が見られた。逃げを吸収したメーン集団は5つほどに分断され、パンクしたマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、エティックス・クイックステップ)ら有力選手たちが後方に取り残される荒れた展開になった。

強い横風で、斜め一列に走るペテル・サガン(先頭から2人目)ら強い横風で、斜め一列に走るペテル・サガン(先頭から2人目)ら

 集団が割れたまま、30人弱の先頭集団が第1セクションへ。ここで一旦横風がおさまり、集団は平静を取り戻した。このなかには昨年の優勝者で、前週のミラノ~サンレモを制しているジョン・デゲンコルプ(ドイツ、チーム ジャイアント・アルペシン)をはじめ、ペテル・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ)、ゲラント・トーマス(イギリス・チーム スカイ)、アレクサンドル・クリツォフ(ノルウェー、チーム カチューシャ)、セップ・ヴァンマルク(ベルギー、チーム ロットNL・ユンボ)といったエース級の選手が顔を連ねた。アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)らを含む20人程度の第2集団も懸命に巻き返し、残り101kmで合流した。

残り50kmで優勝争いは8人に

 合流でペースが落ちたタイミングで、マールテン・チャリンギ(オランダ、チーム ロットNL・ユンボ)がアタックして単独先頭に立った。チャリンギは20kmほど独走するも、1回目のケンメルベルグを経て失速。すると今度はユルヘン・ルーランツ(ベルギー、ロット・ソウダル)が抜け出した。これが効果的なアタックとなり、ルーランツの独走は終盤まで続くこととなった。

 残り69km、メーン集団からはスティーン・ヴァンデンベルフ(ベルギー、エティックス・クイックステップ)がアタック。これにトーマス、ヴァンマルク、ダニエル・オス(イタリア、BMCレーシングチーム)、イェンス・デビュッシュール(ベルギー、ロット・ソウダル)が続いた。さらにメーン集団からブリッジをかけたパオリーニとニキ・テルプストラ(オランダ、エティックス・クイックステップ)が合流し、クラシックレースを得意とする7人の追走集団が形成された。

 有利な展開なのは、チームメートのルーランツが逃げているため脚を温存できるデビュッシュールと、2人を送り込んだエティックス勢だ。パオリーニはここまでクリツォフのアシストのため集団を牽引する時間が多かったが、自ら勝負することを決断した。一方で、残り50kmを過ぎるとメーン集団はペースを落としてタイム差が一気に拡大。優勝争いはルーランツと追走集団を合わせた8人に絞られた。

巧みなレース運びで掴んだ勝利

 2度目のケンメルベルグに入ると、上りでちぎれかけたパオリーニが平坦区間で追走集団に復帰したものの、下りで遅れたオスはそのまま脱落。さらに、60kmほど独走したルーランツも残り18kmでついに吸収された。

牽制状態のスキをついてアタックを決めたルーカ・パオリーニ牽制状態のスキをついてアタックを決めたルーカ・パオリーニ

 このタイミングでテルプストラがアタックを仕掛け、パオリーニがチェック。協調して逃げる2人をトーマス、テルプストラ、ヴァンマルク、デビュッシュールが追う展開になった。なんとか4人が追いついて牽制状態になると、今度はパオリーニが残り6kmでアタック。これが決定打となり、残された5人がお見合いしているうちに、あっという間にリードを広げていった。テルプストラ、トーマスが追い上げを試みるが、すでにタイム差は20秒近く開いていた。38歳のベテランが強風と雨にさらされた6時間20分のレースを制し、北のクラシック初優勝を成し遂げた。

 パオリーニといえば2014年のミラノ~サンレモを筆頭に、エースのクリツォフを牽引する姿が印象的な選手。今回はアシストとして脚を使いながらも、メーン集団から飛び出した判断、そしてアタックのタイミングなど勝負勘が冴えわたっていた。自身の勝利は2013年のジロ・デ・イタリア第3ステージ以来だが、同年には石畳と急坂が登場するセミクラシック、オムループ・ヘット・ニュースブラッドでも優勝を飾っていて、石畳を得意としている。表彰式ではたっぷりとヒゲを蓄えた顔に満面の笑みをたたえ、シャンパンを自ら浴びて勝利の美酒を味わった。

(文・平澤尚威、写真・砂田弓弦)

自らシャンパンを浴びるルーカ・パオリーニ自らシャンパンを浴びるルーカ・パオリーニ

ヘント~ウェベルヘム結果
1 ルーカ・パオリーニ(イタリア、チーム カチューシャ) 6時間20分55秒
2 ニキ・テルプストラ(オランダ、エティックス・クイックステップ) +11秒
3 ゲラント・トーマス(イギリス・チーム スカイ) +11秒
4 スティーン・ヴァンデンベルフ(ベルギー、エティックス・クイックステップ) +18秒
5 イェンス・デビュッシュール(ベルギー、ロット・ソウダル) +26秒
6 セップ・ヴァンマルク(ベルギー、チーム ロットNL・ユンボ) +40秒
7 ユルヘン・ルーランツ(ベルギー、ロット・ソウダル) +1分51秒
8 ダニエル・オス(イタリア、BMCレーシングチーム) +4分15秒
9 アレクサンドル・クリツォフ(ノルウェー、チーム カチューシャ) +6分54秒
10 ペテル・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ) +6分54秒

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