現地レポート by 田中苑子<後編>日台交流のかけ橋となる「ツール・ド・台湾」 土井雪広が総合6位でUCIポイント獲得

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 3月22日に台北で開幕した今年の「ツール・ド・台湾」。その後、台湾の西側を日々南下していき、26日に台湾の南端に位置する高雄郊外の大鵬湾にゴールし、全5ステージにわたって繰り広げられたレースは無事に閉幕した。個人総合では、25日の第4ステージに組み込まれた超級山岳の山頂ゴールを制したミルサマ・ポルセイェディゴラコール(イラン、タブリーズペトロケミカル)が優勝。日本から参戦した日本ナショナルチーム、チームUKYO、宇都宮ブリッツェンの3チームの中では、チームUKYOの土井雪広が総合6位に入り、5日間の大会を通じてUCI(国際自転車競技連合)ポイントを20ポイント獲得した。

総合優勝を獲得し、イエロージャージに袖を通したミルサマ・ポルセイェディゴラコール(イラン、タブリーズペトロケミカル)©Aaron Lee | Impression Studio総合優勝を獲得し、イエロージャージに袖を通したミルサマ・ポルセイェディゴラコール(イラン、タブリーズペトロケミカル)©Aaron Lee | Impression Studio

<前編>地元で愛され世界でランクアップをめざす「ツール・ド・台湾」

悪天候にたたられた大会 イラン勢が総合3位までを独占

雨のスタートライン。軒下でマッサージを受ける鈴木譲(宇都宮ブリッツェン)雨のスタートライン。軒下でマッサージを受ける鈴木譲(宇都宮ブリッツェン)

 今大会は第4ステージの超級山岳を中心に、例年以上に厳しいコース設定だったうえ、さらに追い打ちをかけるように悪天候にも見舞われ、レースが進むにつれて厳しさを増していった。

 とくに天候がひどかったのは、2つの山岳ステージである第2ステージ(23日)と第4ステージだ。国際空港のある桃園での第2ステージは、激しい雨に加え、ときおり風が強く吹きつけるなかでスタート。レース中盤には一時小康状態となったものの、後半、山岳エリアに近づくにつれて再び痛いほどの強い雨となり、選手たちは5m先が見えないような状態で山頂のゴールを目指した。

近くのコーヒーショップでスタート準備を進め、笑顔を見せる土井雪広(チームUKYO)近くのコーヒーショップでスタート準備を進め、笑顔を見せる土井雪広(チームUKYO)
雨のなか手描きのボードをもってスタート地点に駆けつけた地元の小学生たち雨のなか手描きのボードをもってスタート地点に駆けつけた地元の小学生たち
降り続く雨のなか、ゴールをめざす選手たち降り続く雨のなか、ゴールをめざす選手たち
激しい雨のなかの第2ステージ。入部正太朗(日本ナショナルチーム/シマノレーシング)激しい雨のなかの第2ステージ。入部正太朗(日本ナショナルチーム/シマノレーシング)
台湾らしい華やかな看板が建ち並ぶ通りを駆け抜ける台湾らしい華やかな看板が建ち並ぶ通りを駆け抜ける

 24日の第3ステージでは晴れ間が見えたものの、クイーンステージ(最難関ステージ)となる第4ステージは、再び雨の降るなかでのスタートとなった。第2ステージのような激しい雨ではなかったものの、山岳エリアに入るとうっそうとした霧が選手たちを包み込み、山頂付近では気温10℃以下と、こんどは寒さとも戦うレースとなった。

 悪天候により落車や体調不良でリタイアする選手も多かったが、アジア最強クライマーと呼ばれる昨年のツアー・オブ・ジャパンの覇者ミルサマ・ポルセイェディゴラコール(イラン、タブリーズペトロケミカル)はしっかりと自分の走りに集中した。第2ステージ終了時点で総合2位につけ、第4ステージの超級山岳では暫定リーダーを1分57秒ほど引き離して圧巻の勝利。ここで総合首位に立ち、最終日までリードを守り切って総合優勝に輝いた。また第4ステージで上位を占めたイラン勢が、総合成績で1位から3位までを独占する結果となった。

大きな雨粒が路面に叩き付けるなかでレースが進んでいった第2ステージ大きな雨粒が路面に叩き付けるなかでレースが進んでいった第2ステージ
第4ステージ、雨と霧の中で超級山岳へと向かう選手たち ©Aaron Lee | Impression Studio第4ステージ、雨と霧の中で超級山岳へと向かう選手たち ©Aaron Lee | Impression Studio

気を吐いた土井雪広 総合6位でUCIポイント獲得

 日本ナショナルチームは、佐野淳哉が第2ステージ、入部正太郎が第4ステージでリタイアとなり、登坂力のある中根英登も第2ステージの序盤で落車に巻き込まれるアクシデントに見舞われた。またツール・ド・台湾初参戦の宇都宮ブリッツェンもエースの増田成幸が第2ステージで落車してしまい、両チームとも総合順位を狙うのは厳しい展開となった。絶対的なスプリンターを欠く両チームは、逃げ切り優勝をめざすべく、平坦ステージの第3、第5ステージで果敢に攻めるも、結果には結びつかなかった。

スタートラインに並ぶ中根英登(日本ナショナルチーム/愛三工業)と土井雪広(チームUKYO)スタートラインに並ぶ中根英登(日本ナショナルチーム/愛三工業)と土井雪広(チームUKYO)
第2ステージ、中島康晴(日本ナショナルチーム/愛三工業)が集団を牽引し、逃げを吸収する第2ステージ、中島康晴(日本ナショナルチーム/愛三工業)が集団を牽引し、逃げを吸収する
第2ステージ、落車の影響で代車に乗ってゴールした中根英登(日本ナショナルチーム/愛三工業)第2ステージ、落車の影響で代車に乗ってゴールした中根英登(日本ナショナルチーム/愛三工業)
最終ステージを終えた内間康平(日本ナショナルチーム/ブリヂストンアンカー)©Aaron Lee | Impression Studio最終ステージを終えた内間康平(日本ナショナルチーム/ブリヂストンアンカー)©Aaron Lee | Impression Studio

 そんな中で、素晴らしい走りを披露したのが、31歳の土井雪広(チームUKYO)だった。第2ステージ(1級山岳)で9位、第3ステージ(3級山岳)で5位、そして最難関の第4ステージではトップから1分57秒差の13位と、強力な登坂力と安定したレース展開をみせて、UCIポイント圏内となる総合6位でレースを終えた。オフシーズンから今大会に照準を絞ってトレーニングを重ねていたと言う土井。登坂能力に長けるオスカル・プジョル(スペイン)ら新しいチームメンバーとともに、試行錯誤を繰り返しながら確かなチームワークを築き上げて、今後につながる大きな手応えを掴んだ。

第4ステージで勝負どころを待つ土井雪広(チームUKYO) ©Aaron Lee | Impression Studio	第4ステージで勝負どころを待つ土井雪広(チームUKYO) ©Aaron Lee | Impression Studio
第3ステージ、スタートラインで雑談する土井雪広(チームUKYO)とサルバドール・グアルディオラ(スペイン)とパブロ・ウルタスン(スペイン)第3ステージ、スタートラインで雑談する土井雪広(チームUKYO)とサルバドール・グアルディオラ(スペイン)とパブロ・ウルタスン(スペイン)
第2ステージ、激しい雨のなかで登坂区間へと向かう選手たち。土井雪広(チームUKYO)のチームメート、オスカル・プジョル(スペイン)が先行し、有利な展開に持ち込む第2ステージ、激しい雨のなかで登坂区間へと向かう選手たち。土井雪広(チームUKYO)のチームメート、オスカル・プジョル(スペイン)が先行し、有利な展開に持ち込む

自転車を通じて進む日台交流

 隣国・台湾で開催される唯一の国際レースであるツール・ド・台湾は、レース運営が安定していることから日本チームの間でも人気が高く、毎年、日本籍チームが欠かさず出場している。親日国として知られる台湾は、2011年の東日本大震災時に日本へ多大な寄付を贈り、その直後に開催された本大会では、日本からの感謝の気持ちを伝えるべく福島晋一(当時日本ナショナルチーム)がステージ優勝を挙げた。そして翌年は3月11日に宮澤崇史(当時サクソバンク)がイエロージャージを着用し、インタビューで震災への思いを語るとともに、台湾のファンの声援に涙する場面が見られるなど、レースの枠を越えて日台の親交を深めてきた。

第1ステージに続いて、第3ステージでもステージ優勝を挙げたワウテル・ウィッパート(写真中央左、オランダ)とチームメート。第2ステージでアダム・フェーランが落車リタイアした第1ステージに続いて、第3ステージでもステージ優勝を挙げたワウテル・ウィッパート(写真中央左、オランダ)とチームメート。第2ステージでアダム・フェーランが落車リタイアした
台湾の人気選手、フェン・チュンカイ(台湾ナショナルチーム/ランプレ・メリダ)台湾の人気選手、フェン・チュンカイ(台湾ナショナルチーム/ランプレ・メリダ)
第2ステージ第5ステージ、観光名所である「仏光山仏陀記念館」横を通り抜ける ©Aaron Lee | Impression Studio第2ステージ第5ステージ、観光名所である「仏光山仏陀記念館」横を通り抜ける ©Aaron Lee | Impression Studio

 今年は宇都宮市が大会に協賛。市内の観光やジャパンカップ開催を広くPRし、自転車レースを通じた国際交流を展開。その一環として宇都宮ブリッツェンが大会に初参加した。そして日本で5月に開催されるツアー・オブ・ジャパンには、台湾の人気選手フェン・チュンカイ(ランプレ・メリダ)の出場が予定されているため、台湾の記者団が訪日を検討しているという。レースの舞台裏で、両国が親交をいっそう深めていることも特筆したい。

文 田中苑子、写真 Peloton Images Asia・Aaron Lee | Impression Studio

田中苑子田中苑子(たなか・そのこ)

1981年、千葉生まれ。2005年に看護師から自転車専門誌の編集部に転職。2008年よりフリーランスカメラマンに転向し、現在はアジアの草レースからツール・ド・フランスまで、世界各国の色鮮やかなサイクルスポーツを追っかけ中。2015年、アジアのフォトグラファー仲間と共に、アジアのレース写真を中心としたイメージバンク『Peloton Images Asia』を設立した。

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