title banner

福光俊介の「週刊サイクルワールド」<102>ミラノ~サンレモに照準を合わせたデゲンコルプ 選手コメントから勝負の明暗を探る

  • 一覧

 サイクルロードレース界に春を告げるミラノ~サンレモが3月22日に開催されました。ゴール地点の変更も関係して、近年とはひと味違った終盤の攻防が生まれ、ジョン・デゲンコルプ(ドイツ、チーム ジャイアント・アルペシン)が初制覇。293kmの長丁場のレースに、いったいどんなドラマが隠されていたのでしょうか。今回は、選手たちのコメントから明暗をピックアップします。

ミラノ~サンレモを制したジョン・デゲンコルプ。5大クラシックとされる「モニュメント」での初タイトルを獲得し晴れやかな表情を見せた(ミラノ~サンレモ2015)<砂田弓弦撮影>ミラノ~サンレモを制したジョン・デゲンコルプ。5大クラシックとされる「モニュメント」での初タイトルを獲得し晴れやかな表情を見せた(ミラノ~サンレモ2015)<砂田弓弦撮影>

キッテルではなくデゲンコルプで チーム方針がピタリ

雨の中を走るマーク・カヴェンディッシュ(ミラノ~サンレモ2015)<砂田弓弦撮影>雨の中を走るマーク・カヴェンディッシュ(ミラノ~サンレモ2015)<砂田弓弦撮影>

 3年連続となる悪天候下でスタートを切ったレースは、ゴールに近付くにつれコンディションが回復。ゴール地サンレモに到達する頃には晴れ間がのぞいた。とはいえ、路面は雨の影響でウェットな状態。下りでの落車が多発したなかで残った約30人が優勝争いの資格を得た。終盤に登場する2つの丘、チプレッサとポッジオで決定的な動きが起こらず、ゴールスプリントに勝負が委ねられたあたりは、昨年と似たようなレース展開だった。

 そうしたなか、最終局面までアシストがしっかりと機能したチームに勝利の女神がほほ笑んだ。優勝したデゲンコルプが「スタート前のニュートラルゾーンから位置取りに神経質になる」と語るほどの状況で、チームメートのチャド・ハガ(アメリカ)が冷静に集団をコントロール。チプレッサとポッジオでは、トム・ドゥムラン(オランダ)が好ポジションをキープした。デゲンコルプ自身は「脚を使わずにサンレモを目指す」ことをテーマにしていたといい、過去3回の経験が成功につながったと振り返った。

最後まで脚を残したジョン・デゲンコルプ(中央)が、スプリントでアレクサンドル・クリツォフ(左)を上回った(ミラノ~サンレモ2015)<砂田弓弦撮影>最後まで脚を残したジョン・デゲンコルプ(中央)が、スプリントでアレクサンドル・クリツォフ(左)を上回った(ミラノ~サンレモ2015)<砂田弓弦撮影>

 また、今シーズンはここまで1勝にとどまり、力強いスプリントが鳴りを潜めていた印象だったが、シーズンオフの冬場からミラノ~サンレモを見据えトレーニングを行っていたことも明かした。もう1人のエーススプリンターであるマルセル・キッテル(ドイツ)をメンバーから外し、デゲンコルプ勝負を早くから打ち出したチームの方針も見事にハマったと言えるだろう。

敗戦のなかに収穫を見出した選手たち

アレクサンドル・クリツォフはルカ・パオリーニ(先頭)の後ろについてポッジオを乗り切ったが、スプリントの最後で失速し連覇を逃した(ミラノ~サンレモ2015)<砂田弓弦撮影>アレクサンドル・クリツォフはルカ・パオリーニ(先頭)の後ろについてポッジオを乗り切ったが、スプリントの最後で失速し連覇を逃した(ミラノ~サンレモ2015)<砂田弓弦撮影>

 2位のアレクサンドル・クリツォフ(ノルウェー、チーム カチューシャ)は、惜しくも2連覇ならず。最高のポジションからスプリントを開始し、一瞬は勝利を意識したというが、ラスト50mで失速。デゲンコルプの逆転を許した。

 チプレッサでは集団後方へと下がり、あわやメーン集団から脱落かと思わせるシーンもあったが、ルカ・パオリーニ(イタリア)がポッジオ、その後のスプリントと見事なまでのお膳立て。ラスト300mからのスプリントを強いられたことには、「あと1人メンバーがいれば…」と悔いたが、「好調からほど遠った」というコンディションで勝負に絡むことができた原動力は、間違いなくアシストの存在にある。

ペテル・サガン(先頭)は位置取りに失敗し4位に沈んだ(ミラノ~サンレモ2015)<砂田弓弦撮影>ペテル・サガン(先頭)は位置取りに失敗し4位に沈んだ(ミラノ~サンレモ2015)<砂田弓弦撮影>

 一方で、3位のマイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)と4位のペテル・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ)は終盤、自らレースを組み立てたものの、勝利には結びつかなかった。マシューズはポッジオからゴールまで集団の前方をキープし続けたが、肝心のスプリントで伸びを欠いた。サガンも位置取りに失敗し、「後方からのスプリントを余儀なくされた」ことを敗因として挙げた。

ファビアン・カンチェッラーラはスプリンターたちに及ばず7位に終わった(ミラノ~サンレモ2015)<砂田弓弦撮影>ファビアン・カンチェッラーラはスプリンターたちに及ばず7位に終わった(ミラノ~サンレモ2015)<砂田弓弦撮影>

 7位に終わったファビアン・カンチェッラーラ(スイス、トレック ファクトリーレーシング)は、「私より上位の6選手はいずれもワールドクラスのスプリンターだ」とコメント。スプリント時の集団内での位置取りにミスがあったとしながらも、結果には一定の満足感を示した。また、チームのゼネラルマネジャーであるルーカ・グエルチレーナ氏は、293kmを平均時速44kmで推移したことを強調し、パンチャーやアタッカーが仕掛けるのは困難だったと説明。そこからは、スプリント狙いのチームによるレースコントロールが強固であったことがうかがえる。

 今回活躍したデゲンコルプ、クリツォフ、サガン、カンチェッラーラらは、北のクラシックでも主役となる選手たち。彼らによるハイレベルな戦いは、しばらく続くこととなる。

エティックスとBMCは数的優位を生かせず

 実力者をそろえたエティックス・クイックステップは、エーススプリンターのマーク・カヴェンディッシュ(イギリス)がチプレッサの上りでメカトラブル。かろうじて集団からの脱落は免れたが、続くポッジオで力尽きてしまった。今シーズンに入り、チーム内で同様のメカトラブルが続いていると言われており、今後のレースに向けて解決策が求められる。

 加えて、カヴェンディッシュに代わるカードとなるはずだったミハウ・クフィアトコフスキー(ポーランド)とズデニェック・シュティバル(チェコ)は、ともにポッジオの下りで落車に見舞われ、勝負に絡むことなくチームは終戦を迎えた。

 複数の選手が終盤までメーン集団に残っていたBMCレーシングチームも、フレッヒ・ヴァンアーヴルマート(ベルギー)がアタックに失敗し最終的に19位に終わった。フィリップ・ジルベール(ベルギー)は落車。ダニエル・オス(イタリア)が一時、集団から飛び出してトップを走るなど見せ場は作ったが、好リザルトには至らなかった。

ミハウ・クフィアトコフスキー(右)は落車で優勝争いに絡めなかった(ミラノ~サンレモ2015)<砂田弓弦撮影>ミハウ・クフィアトコフスキー(右)は落車で優勝争いに絡めなかった(ミラノ~サンレモ2015)<砂田弓弦撮影>
終盤にアタックするも不発に終わったフレッヒ・ヴァンアーヴルマート(ミラノ~サンレモ2015)<砂田弓弦撮影>終盤にアタックするも不発に終わったフレッヒ・ヴァンアーヴルマート(ミラノ~サンレモ2015)<砂田弓弦撮影>

 有力チームの苦戦は、ミラノ~サンレモがいかにチーム力や個の能力だけでは図れないレースであるかを意味しているといえる。

 なお、レースディレクターのマウロ・ヴェーニ氏は、8年ぶりに復活したサンレモ・ローマ通りのゴールスプリントに手ごたえをつかんだとし、2016年大会以降も同地をゴール地点とする方向で考えるという。近年はポンペイアーナの丘越えをコースに組み入れる計画もあったが、それも当面は見送られる可能性が高まっている。今後もしばらくは、“スプリンターズクラシック”としてのミラノ~サンレモを見られそうだ。

北のクラシック前半戦展望 強豪集うカタルーニャ一周も

 ここからはスペインで開幕したステージレースと、ベルギー・フランドル地方へ舞台を移すクラシックレースへ目を移そう。

■ボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャ/カタルーニャ一周(スペイン、3月23~29日、UCIワールドツアー)

 春のクラシックシーズンが盛り上がりを見せるなか、スペインではステージレースが本格化。スペイン・カタルーニャ州の急峻な山々で展開される全7ステージは、グランツールを見据える総合系ライダーには脚試しの場となる。標高1725mラ・モリーナの頂上ゴールとなる第4ステージ(188.4km)が、総合争いにおいて大きなウエイトを占める。

 今大会には、アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)、クリストファー・フルーム(イギリス、チーム スカイ)、アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター チーム)、リゴベルト・ウラン(コロンビア、エティックス・クイックステップ)らビッグネームが多数集結。トレック ファクトリーレーシングからは、別府史之もメンバー入りしており、アイマル・スベルディア(スペイン)らのアシストを務める。

山岳ステージだらけのボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャ。第1ステージはピエール・ローラン(先頭)ら3人の大逃げが決まった ©Volta Ciclista a Catalunya / Jon Herranz山岳ステージだらけのボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャ。第1ステージはピエール・ローラン(先頭)ら3人の大逃げが決まった ©Volta Ciclista a Catalunya / Jon Herranz

 レースは進行中で第1ステージ(185km)では、マチェイ・パテルスキー(ポーランド、CCCスプランディ・ポルコヴィツェ)、ピエール・ローラン(フランス、チーム ヨーロッパカー)、バルト・デクレルク(ベルギー、ロット・ソウダル)が大逃げに成功。メーン集団から2分40秒のリードを得て、最後はパテルスキーがステージを制している。一部チームからは、主催者によるレース中のタイム差伝達に問題があったとの声が挙がっており、それがレース展開に影響したことが考えられる。

■ドワーズ・ドアー・フラーンデレン(ベルギー、3月25日、UCI1.HC、200.2km)

 ベルギー北部の使用言語、フラマン語で「フランドル横断」を意味し、東西に進路をとる。パヴェ(石畳)と急坂合わせて15のセクションで選手たちの力が試される。UCIワールドツアーではないものの、その後のビッグレースに向けた調整として臨む選手が多い。今回は、ナイロアレクサンデル・キンタナ(コロンビア、モビスター)やクフィアトコフスキーらが、ツール・ド・フランスのパヴェステージ(第4ステージ)の予行演習として参戦する。

■E3 ハーレルベーク(ベルギー、3月27日、UCIワールドツアー、215km)

ペテル・サガン(先頭)は“仮想ツール・デ・フランドル”連覇とともに、“本番”の制覇も狙う(E3ハーレルベーク2014)<砂田弓弦撮影>ペテル・サガン(先頭)は“仮想ツール・デ・フランドル”連覇とともに、“本番”の制覇も狙う(E3ハーレルベーク2014)<砂田弓弦撮影>

 UCIワールドツアー入りは2012年と新しいが、古くから「仮想ツール・デ・フランドル」と言われ、実際に同レースをダブル優勝した選手も多い。17セクションにも及ぶ急坂が立ちはだかり、なかでもゴール前42kmから登場するカぺルベルグ(登坂距離1260m、平均勾配7.1%)、パテルベルグ(362m、12%)、アウデ・クワレモント(2200m、4.2%)、カルネメルクベーク(1530m、4.9%)で大きな動きが見られるはずだ。

 注目は、2連覇がかかるサガン、4度目の優勝を目指すカンチェッラーラ、ロードレース引退が近づくブラッドリー・ウィギンス(イギリス、チーム スカイ)ら。

■ヘント~ウェヴェルヘム(ベルギー、3月29日、UCIワールドツアー、239km)

昨年はジョン・デゲンコルプが優勝。連覇へ向け出場する予定だ(ヘント~ウェヴェルヘム2014)<砂田弓弦撮影>昨年はジョン・デゲンコルプが優勝。連覇へ向け出場する予定だ(ヘント~ウェヴェルヘム2014)<砂田弓弦撮影>

 北のクラシックでは数少ないピュアスプリンター向けのレース。多くのスプリンターが、シーズン前半の目標に据える。最大勾配24%、テクニカルな下りも控えるケンメルベルグ、同じく難所のモンテベルグをそれぞれ2回通過するが、これらをどうクリアするかがポイント。

 終盤は強風に見舞われる可能性が高く、それを利用して集団分断を図るチームが現れることだろう。昨年はデゲンコルプが優勝しており、今回も2連覇をかけて出場する予定だ。

今週の爆走ライダー-チャド・ハガ(アメリカ、チーム ジャイアント・アルペシン)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシストや逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 エーススプリンターのデゲンコルプが4度目の挑戦で悲願の頂点に立ったミラノ~サンレモ。その王者が勝利の立役者として、26歳のアメリカ人の名を挙げた。昨年のチーム合流以降、集団コントロールなどでレースを組み立てる役割を担うが、大舞台でもしっかりと任務を果たした。

 本来はオールラウンダー。山岳、タイムトライアルともに強さを発揮し、早くから国内では注目される存在だった。アメリカを拠点に走っていた2013年のツアー・オブ・カリフォルニアでは、名だたる強豪に割って入り総合10位フィニッシュ。その後のレースでもたびたび上位進出し、トップチームからのオファーを受けるまでになった。

集団コントロールを任せられるチャド・ハガ。オールラウンダーとしての飛躍も狙う(ティレーノ~アドリアティコ2015)<砂田弓弦撮影>集団コントロールを任せられるチャド・ハガ。オールラウンダーとしての飛躍も狙う(ティレーノ~アドリアティコ2015)<砂田弓弦撮影>

 昨年のブエルタ・ア・エスパーニャではアシストとして結果を残し、スプリンターからの信頼を勝ち取った。それでも、やはり狙うはステージレースの総合成績。今シーズンは、凱旋レースとなるカリフォルニアで自らの結果を求める予定でいる。

 才能の宝庫であるチームから、また1人逸材が飛躍のときを迎える。可能性に満ちたアメリカンオールラウンダーが、いよいよ本領発揮となりそうだ。

文 福光俊介

福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、気がつけばテレビやインターネットを介して観戦できるロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。2011年、ツール・ド・フランス観戦へ実際に赴いた際の興奮が忘れられず、自身もロードバイク乗りになる。自転車情報のFacebookページ「suke’s cycling world」も充実。本業は「ワイヤーママ徳島版」編集長。

関連記事

この記事のタグ

UCIワールドツアー 週刊サイクルワールド

  • 一覧

新着ニュース

もっと見る

ピックアップ

e-BIKE最新特集

スペシャル

自転車協会バナー

ソーシャルランキング

インプレッション

インプレッション一覧へ

連載