MTBジャパンシリーズ ダウンヒル第3戦・野沢温泉井手川直樹が気合の優勝で今季2勝目

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ゲレンデ正面の山腹から見たコース上部。右上やや中央に少しだけ見えている白い小屋がスタートゲートである。ゲレンデの中を茶色く通るダウンヒルコースが確認できる。ここから後半にかけてコースは右下の森に入っていくゲレンデ正面の山腹から見たコース上部。右上やや中央に少しだけ見えている白い小屋がスタートゲートである。ゲレンデの中を茶色く通るダウンヒルコースが確認できる。ここから後半にかけてコースは右下の森に入っていく

 マウンテンバイクのジャパンシリーズ、ダウンヒル第3戦となる野沢大会が8月26日、長野県野沢温泉村が開催された。男子エリートは井手川直樹(Devinci/SUNSPI.com)が第1戦以来の今季2勝目、女子は末政実緒(FUNFANCY/INTENSE)が開幕から3連勝を挙げた。ポイントランキングでも両者が首位を守っている。

ダウンヒルの要素が凝縮されたコース

 今回新規大会として開催された野沢温泉のレース。Jシリーズのために使われたコースは、ゴンドラ中間駅を下車してしばらくアスファルトの道路を下ったところにあるゲレンデハウスをスタートゲートとしていた。このような小屋からのスタートはワールドカップなどではよく見かけるスタイルなのだが、日本のJシリーズにも取り入れたかった、という井手川直樹のアイデアだ。今大会の開催にあたっては、海外経験も豊富な井手川が企画段階から大きく関わっている。

 序盤はゲレンデを広く使うレイアウト。緩やかなコーナーをいくつか過ぎるうちに斜度がきつくなり、中盤では放っておくといくらでもスピードが出てしまうような直線を走り抜ける。

“ワールドカップ風”にゲレンデハウスからスタートする。スタートのスロープは今大会のために設置されたものだ“ワールドカップ風”にゲレンデハウスからスタートする。スタートのスロープは今大会のために設置されたものだ
コース後半に今大会のために新設されたシングルトラック。地面を這う木の根を飛び越えてクリアしていく清水一輝コース後半に今大会のために新設されたシングルトラック。地面を這う木の根を飛び越えてクリアしていく清水一輝

 後半は長いペダリングセクションを経て今回のレースのために用意されたシングルトラックを駆け下り、最後のゲレンデのジャンプを飛んだらゴールである。

 野沢温泉のMTBコースは夏期営業されているので今回のレースコースの大半は誰でも走る事ができるのだが、トップライダー達がレーススピードで走る機会は初めてとあって、路面はどんどん荒れていく。ワールドカップのコースではよくあるコンディション変化なのだが、国内のレース会場ではあまり体感できない事だろう。刻々と変化する高速セクションに限界の速度で進入するのだから、選手達は精神的なタフさも要求される事となった。

今回のコースで最も速度が出る区間に進入していく永田隼也。決勝で6位となった黒沢大介(Team GT/FUST)が前日の試走中にここで転倒し、ヘルメットを破損するほどのダメージを受けたセクションだ今回のコースで最も速度が出る区間に進入していく永田隼也。決勝で6位となった黒沢大介(Team GT/FUST)が前日の試走中にここで転倒し、ヘルメットを破損するほどのダメージを受けたセクションだ

 ダウンヒル競技では一般的に、選手とバイクはゴンドラやリフトを使ってスタート地点へ搬送される。ダウンヒル競技が夏のスキー場で行われる事が多いのにはそういう理由がある。野沢温泉は夏期もMTBコース向けにゴンドラを営業しているだけあって、バイクをゴンドラに積み込むための方法はしっかりと確立されており、またゴンドラの乗車には係員がついているので初めて訪れた人も迷う事はないだろう。

ゴンドラには前輪を上げて乗り込む。2名と自転車2台で乗り込んでも快適な広さだゴンドラには前輪を上げて乗り込む。2名と自転車2台で乗り込んでも快適な広さだ
ゴンドラ駅舎内は自転車用のスロープも設置されており、スムーズにアクセスできるゴンドラ駅舎内は自転車用のスロープも設置されており、スムーズにアクセスできる

 

“地の利”を生かした井手川

決勝のスタートを切る末政美緒。ワールドカップで使われるようなスタート台は参加した選手達にも好評だったようだ決勝のスタートを切る末政美緒。ワールドカップで使われるようなスタート台は参加した選手達にも好評だったようだ

 レースは試走時間から決勝まで、安定した好天の中、終始ドライコンディションで進行した。

 前日のタイムドセッションでは2分54秒650のトップタイムをマークしたのは井手川直樹。マシンセッティングを含めて、さすがにこのコースをよく知っているだけあって安定した走りだ。

 午前中に行われた予選ではやはり井手川がトップ通過、次いで全日本選手権2連覇中の清水一輝(AKI FACTORY TEAM)、3番手には井手川と共に野沢でのトレーニングを取り入れていた永田隼也(A&F/RockyMountain)という順。注目は1年間のブランク(自転車販売店への就職)を経て、久しぶりにエリートで走る門脇翔(ARIGER Racing Factory)だろう。エリート末尾となるゼッケン74をつけて予選の最終走者として出走し、5位のタイムでゴールし健在ぶりをアピールした。

 8月をカナダ、ウィスラーバイクパークでの走り込みで過ごし、帰国した直後の井本はじめ(Team Transition Racing)と九島勇気(玄武/NinjyaTV)は共に前半の高速コーナーで転倒し、井本が15位、九島が23位となった。今回のコースはショートコースだけに一つミスをすると優勝に絡むことはできなくなってしまうだろう。

予選の高速コーナーで転倒する井本はじめ。時間と共にコンディションが大きく変わっていったコーナーのひとつだ予選の高速コーナーで転倒する井本はじめ。時間と共にコンディションが大きく変わっていったコーナーのひとつだ
木漏れ日が射すシングルトラックを走る青木卓也。決勝では3位と勝負強さを見せた木漏れ日が射すシングルトラックを走る青木卓也。決勝では3位と勝負強さを見せた

 午後からは決勝が行われたが、ここでも井手川の速さと安定感は抜群で、自身が企画に取り組んだ野沢での、初開催となるJ1レースを制した。

 「いやぁ、ホンダ時代も含めて、今回ほどプレッシャーのかかったレースは久しぶりですよ。どうしても勝ちたかったし、勝ててホッとしました。」と井手川。

エリート男子は井手川直樹がタイムドセッションから予選、決勝まで全てトップタイムをマークして優勝したエリート男子は井手川直樹がタイムドセッションから予選、決勝まで全てトップタイムをマークして優勝した
コース上部の高速セクションを走る清水一輝。この大会の直後、翌週に行われる世界選手権に参加するためオーストリアへ旅立ったコース上部の高速セクションを走る清水一輝。この大会の直後、翌週に行われる世界選手権に参加するためオーストリアへ旅立った

 2位となった清水一輝は表彰台でマイクを渡され、翌週にオーストリアで開催されるMTB世界選手権にダウンヒル日本代表として参加する事を報告し、「頑張ってくるので応援して下さい!」とコメント。3位にはTEAM GIANTの青木卓也が入った。

 女子は王者、末政美緒が貫禄勝ち。ワールドカップを知り尽くしている彼女からも「ハードなコースでしたね」という言葉が聞かれた。

 清水と末政は翌週にオーストリアで開催される世界選手権に出場する事になっている。

エリート女子は末政実緒が貫禄の3連勝エリート女子は末政実緒が貫禄の3連勝
男子エリート表彰台。地元の特産品などが副賞として授与された男子エリート表彰台。地元の特産品などが副賞として授与された
男女エリートの表彰式ではシャンパンファイトも男女エリートの表彰式ではシャンパンファイトも
競技を終えた選手達のために、ゴール地点ではスイカやきゅうり、トマトが振る舞われた競技を終えた選手達のために、ゴール地点ではスイカやきゅうり、トマトが振る舞われた

男子エリート結果
1 井手川直樹(Devinci/SUNSPI.com) 2:51.600(48.25km/h)
2 清水一輝(AKI FACTORY TEAM) 2:53.669
3 青木卓也(TEAM GIANT) 2:54.635
4 永田隼也 神奈川県(A&F/RockyMountain) 2:54.960
5 九島勇気(玄武NinjyaTV) 2:56.930
6 黒沢大介(Team GT/FUST) 2:59.096

女子エリート結果
1 末政実緒(FUNFANCY/INTENSE) 3:15.731(42.30km/h)
2 中川弘佳(RingoRoad.com) 3:28.320
3 中川綾子(GDR/髑髏団) 3:29.982

(文・写真 中川裕之)

中川裕之中川裕之(なかがわ ひろゆき)
’06年、大きな病気を乗り越える課程で写真を撮り始める。
’11年からは活動の場を海外に広げ、山の中を走る自転車レースを追いかけている。
MTBのコアな部分にフォーカスした雑誌SLmの発行人。
http://www.slmedia.jp/slm-mtbphotojournal/

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