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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<101>ポート、キンタナがグランツール制覇へ弾みをつける勝利 ミラノ~サンレモ直前情報も

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 2015年シーズンのUCIワールドツアーが、1月のツアー・ダウンアンダー後にブランクを経て再開されました。春を告げるステージレース「パリ~ニース」「ティレーノ~アドリアティコ」が行われ、それぞれ好レースが繰り広げられました。今回は両レースを総括し、活躍した選手たちの動きを押さえます。そして3月22日に開かれるビッグクラシック、ミラノ~サンレモの展望もお届けします。

リッチー・ポート(右)はパリ~ニースで、ナイロアレクサンデル・キンタナはティレーノ~アドリアティコで総合優勝を飾った<砂田弓弦撮影>リッチー・ポート(右)はパリ~ニースで、ナイロアレクサンデル・キンタナはティレーノ~アドリアティコで総合優勝を飾った<砂田弓弦撮影>

落車トラブルを乗り越えポートが逆転総合優勝

 “太陽へ向かうレース”パリ~ニースが3月8~15日、プロローグを含め全8ステージで開催された。大会終盤までもつれ込んだ僅差の戦いは、最終ステージを制したリッチー・ポート(オーストラリア、チーム スカイ)が総合成績で逆転。2年ぶり2回目の総合優勝を果たした。

 ポートは今回のクイーンステージだった第4ステージ(204km)の1級山岳頂上ゴールでライバルたちを圧倒。徹底マークにあいながらも、登坂力の違いを見せつけた。この時点でトップから1秒差の総合2位につけ、最終ステージに控えるエズ峠での山岳タイムトライアル(TT)を前に有利な状況に持ち込んだ。

クイーンステージで登坂力の違いを見せつけたリッチー・ポートが、アシストのゲラント・トーマスとワンツーフィニッシュを決めた(パリ~ニース2015)<砂田弓弦撮影>クイーンステージで登坂力の違いを見せつけたリッチー・ポートが、アシストのゲラント・トーマスとワンツーフィニッシュを決めた(パリ~ニース2015)<砂田弓弦撮影>

 そして圧巻の山岳TT。登坂距離9.6km、平均勾配4.7%、最大勾配8.5%の坂を駆け上り、ステージ優勝を飾るとともに、総合成績でも逆転に成功。前日の第6ステージ(180.5km)では雨に濡れた路面に悪戦苦闘し、ニースへ向かう下りで落車するトラブルもあったが、周囲の心配をよそに強さを見せつけた。初のグランツール制覇を目指して臨む5月のジロ・デ・イタリアに向けて、足場をしっかりと固めている印象だ。加えて、第4ステージで唯一、ポートの登坂についていったチームメイト、ゲラント・トーマス(イギリス)のアシストぶりも光った。

第1ステージを制してから5日間マイヨジョーヌを着用したミハウ・クフィアトコフスキー(パリ~ニース2015)<砂田弓弦撮影>[/caption]>

 3選手が同タイムにひしめく総合2位争いは、世界王者のミハウ・クフィアトコフスキー(ポーランド、エティックス・クイックステップ)が制した。プロローグ(6.7km)で勝利すると、総合首位のマイヨジョーヌを計5日間着用。第6ステージでライバルたちの猛攻にあってジャージを手放したものの、総合力の高さを証明している。

 総合3位にはシモン・スピラク(スロベニア、チーム カチューシャ)が入り、4位に入ったルイ・コスタ(ポルトガル、ランプレ・メリダ)は惜しくも表彰台を逃した。ともに第6ステージでの攻撃的な走りが上位進出の原動力となった。山岳にもTTにも強く、1週間程度のステージレースを得意とする2人だけに、今後のレースでもたびたび上位戦線に浮上してくることだろう。

アタックを決めて逃げ切ったトニー・ガロパン(パリ~ニース2015)<砂田弓弦撮影>アタックを決めて逃げ切ったトニー・ガロパン(パリ~ニース2015)<砂田弓弦撮影>

 混戦を盛り上げた殊勲は、トニー・ガロパン(フランス、ロット・ソウダル)だ。第6ステージで後続に30秒以上の差をつける単独逃げ切りに成功し、マイヨジョーヌを獲得。ポートに対し36秒のリードを得て臨んだ最終の山岳TTで伸びず、総合6位に終わったが、ここ数年の快走がフロックではないことを十分に示した。エースとして戦うアルデンヌクラシックへの期待も高まる。

 なお、スプリントステージでは、第1ステージ(196.5km)をアレクサンドル・クリツォフ(ノルウェー、チーム カチューシャ)、第2ステージ(172km)をアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)、第3ステージ(179km)をマイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)、第5ステージ(192km)をダヴィデ・チモライ(イタリア、ランプレ・メリダ)がそれぞれ勝利している。

パリ~ニース2015 結果

■個人総合時間賞
1 リッチー・ポート(オーストラリア、チーム スカイ) 29時間10分41秒
2 ミハウ・クフィアトコフスキー(ポーランド、エティックス クイックステップ) +30秒
3 シモン・スピラク(スロベニア、チーム カチューシャ) +30秒
4 ルイ・コスタ(ポルトガル、ランプレ・メリダ) +30秒
5 ゲラント・トーマス(イギリス、チーム スカイ) +41秒
6 トニー・ガロパン(フランス、ロット・ソウダル) +1分3秒
7 ヤコブ・フルサング(デンマーク、アスタナ プロチーム) +1分5秒
8 ラファエル・バルス(スペイン、ランプレ・メリダ) +1分24秒
9 ゴルカ・イサギレ(スペイン、モビスター チーム) +1分38秒
10 ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・ソウダル) +2分18秒

■山岳賞
トマス・デヘント(ベルギー、ロット・ソウダル)

■ポイント賞
マイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)

■新人賞
ミハウ・クフィアトコフスキー(ポーランド、エティックス クイックステップ) 29時間11分11秒

■チーム総合
チーム スカイ 87時間41分5秒

キンタナが雪のなかの圧勝劇でティレーノ制覇

 イタリアで3月11日から開催されたティレーノ~アドリアティコは17日に最終ステージが終わり、ナイロアレクサンデル・キンタナ(コロンビア、モビスター チーム)が総合初優勝を遂げた。

降雪に見舞われた頂上ゴールで圧勝したナイロアレクサンデル・キンタナが総合優勝を手繰り寄せた(ティレーノ~アドリアティコ2015)<砂田弓弦撮影>降雪に見舞われた頂上ゴールで圧勝したナイロアレクサンデル・キンタナが総合優勝を手繰り寄せた(ティレーノ~アドリアティコ2015)<砂田弓弦撮影>

 キンタナは今大会で最大の山場となった第5ステージ(197km)、テルミニッロ峠の山頂ゴールで圧勝。ラスト4.8kmでアタックを成功させると、あとはゴールへまっしぐら。路面にタイヤの轍ができるほどの降雪のなかで、寒さをものともしなかった。2月のコロンビア選手権ロードではゴール前で落車し肩を負傷。出場予定だったルタ・デル・ソル(UCI2.1、2月18~22日)を回避してのティレーノ参戦だったが、その影響を感じさせない走りを見せた。まだ多少痛みが残っているというが、7月のツール・ド・フランス本番に向けては問題ないと見ていいだろう。

総合優勝候補だったアルベルト・コンタドール(左から2人目)は精彩を欠いた(ティレーノ~アドリアティコ2015)<砂田弓弦撮影>総合優勝候補だったアルベルト・コンタドール(左から2人目)は精彩を欠いた(ティレーノ~アドリアティコ2015)<砂田弓弦撮影>

 一方、総合優勝候補の筆頭と目されていたアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)は山岳で精彩を欠き、総合5位に終わった。第4ステージでは下りで落車。また、大会前のトレーニングでも落車していたとの情報もあり、それが走りに影響した可能性はある。今大会は新加入のイヴァン・バッソ(イタリア)や、ロマン・クロイツィゲル(チェコ)らがアシストを務める強力メンバーで臨んだが、それを生かすことはできなかった。

 総合争いが大きく動いた第5ステージでキンタナを追ったのは、ラスト3kmを切って単独で追走したバウケ・モレマ(オランダ、トレック ファクトリーレーシング)のみ。他の選手には効果的な動きが見られず、キンタナのアタックを許す格好となった。グランツールを控えた現時点で、有力選手たちの仕上がりにバラつきがあるのは明白だ。

 そのほか、最大勾配15%のクリスピエロを2度上る第4ステージ(226km)ではヴァウテル・プールス(オランダ、チーム スカイ)が、雨の中のスプリントとなった第6ステージ(210km)ではペテル・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ)が、それぞれ移籍後初勝利を挙げた。

トレック ファクトリーレーシングに加入しエースとして期待されるバウケ・モレマは総合2位で終えた(ティレーノ~アドリアティコ2015)<砂田弓弦撮影>トレック ファクトリーレーシングに加入しエースとして期待されるバウケ・モレマは総合2位で終えた(ティレーノ~アドリアティコ2015)<砂田弓弦撮影>
ティンコフ・サクソ移籍後初勝利を飾ったペテル・サガン(ティレーノ~アドリアティコ2015)<砂田弓弦撮影>ティンコフ・サクソ移籍後初勝利を飾ったペテル・サガン(ティレーノ~アドリアティコ2015)<砂田弓弦撮影>

サンレモ・ローマ通りのゴールが復活 ミラノ~サンレモ展望

 いよいよ春のクラシックシーズンが到来。そのトップを飾るのは、“ラ・プリマヴェーラ(春)”の愛称を持つミラノ~サンレモだ。

激しい攻防が繰り広げられる「ポッジオ」(ミラノ~サンレモ2014)<砂田弓弦撮影>激しい攻防が繰り広げられる「ポッジオ」(ミラノ~サンレモ2014)<砂田弓弦撮影>

 数あるワンデーレースの中でも、ひときわレース距離が長いのが特徴で、今年は293kmで争われる。この大会を語るうえで毎年焦点となるのは、ゴールが集団スプリントとなるのか逃げきりとなるのか。そのカギを握るのが、ラスト30kmを切ってから迎える「チプレッサ」(登坂距離5.6km、平均勾配4.1%、最大勾配9%)と「ポッジオ」(登坂距離3.7km、平均勾配3.7%、最大勾配8%)の2つの丘である。

 チプレッサで最初のアタック合戦とメーン集団の絞り込みがあり、ポッジオで各チームのエースクラスが勝負のアタックを繰り出す。ポッジオ頂上からゴールまでは5.5kmで、その間約3kmにわたるテクニカルなダウンヒルが待ち受ける。ここで下りのスペシャリストを中心に数選手が抜け出すことも考えられる。スプリンターで勝負を狙うチームは、先頭集団に数人のアシストを残してゴールに向けた態勢を整えたい。

8年ぶりにサンレモ・ローマ通りのゴールが復活する(ミラノ~サンレモ2007)<砂田弓弦撮影>8年ぶりにサンレモ・ローマ通りのゴールが復活する(ミラノ~サンレモ2007)<砂田弓弦撮影>

 そして今回は、2007年以来8年ぶりにサンレモ・ローマ通りのゴールが復活。最終ストレートは約750mで、スプリントトレインが形成できればエーススプリンターの勝機が一気に高まる。対して、単独または数人での逃げを狙う場合は、大集団の標的になりやすいため、駆け引きや仕掛けどころがポイントとなる。

 また、この時期特有の不安定の気象状況もレースを左右することが多く、雨や風が強まると波乱の展開も起こり得る。

昨年はアレクサンドル・クリツォフが初優勝。ファビアン・カンチェッラーラは自身3度目の2位だった(ミラノ~サンレモ2014)<砂田弓弦撮影>昨年はアレクサンドル・クリツォフが初優勝。ファビアン・カンチェッラーラは自身3度目の2位だった(ミラノ~サンレモ2014)<砂田弓弦撮影>

 昨年優勝したクリツォフは今シーズンも好調で、2連覇の可能性は十分。過去に2位になること3回のファビアン・カンチェッラーラ(スイス、トレック ファクトリーレーシング)は、7年ぶり2回目の優勝を目指す。ここ数年、勝利を期待されながらあと一歩及ばないサガンは悲願達成なるか。同じく初優勝を狙うフィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシングチーム)は、いつにも増してモチベーションが高い。

 近年の傾向として、有力チームの多くがスプリント、逃げのどちらのケースにも対応できるよう“Wエース”布陣を整える点が挙げられる。2009年以来の優勝を狙うスプリンターのマーク・カヴェンディッシュ(イギリス)と下り巧者のクフィアトコフスキーを擁するエティックス・クイックステップ、好調のグライペルとガロパンで挑むロット・ソウダル、勝負強いサーシャ・モドロ(イタリア)とアタックが魅力のコスタが控えるランプレ・メリダ―などのチーム力が高い。ダークホースは、フアンホセ・ロバト(スペイン)が率いるモビスター チームだ。

今週の爆走ライダー-トマス・デヘント(ベルギー、ロット・ソウダル)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシストや逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 パリ~ニースで再三の逃げを見せ、山岳賞を獲得した。特に第4ステージでは、設定されたカテゴリー山岳を次々トップ通過。ポイントを荒稼ぎすると、その後に山岳賞ジャージを脅かすライバルが現れることはなかった。

得意の逃げでポイントを稼ぎ山岳賞を獲得したトマス・デヘント(パリ~ニース2015)<砂田弓弦撮影>得意の逃げでポイントを稼ぎ山岳賞を獲得したトマス・デヘント(パリ~ニース2015)<砂田弓弦撮影>
第1ステージで大逃げを決めたトマス・デヘント(パリ~ニース2011)<砂田弓弦撮影>第1ステージで大逃げを決めたトマス・デヘント(パリ~ニース2011)<砂田弓弦撮影>

 もとより、パリ~ニースとの相性は抜群。ヴァカンソレイユ・DCM入りした直後の2011年大会では、第1ステージで大集団の猛追を振り切って大逃げに成功。さらに第4ステージでもエスケープを成功させ、マイヨジョーヌを計3日間着用する栄光に浸った。

 ファンや関係者を驚かせるトップシーンへのデビューだったが、第4ステージでともに逃げたトマ・ヴォクレール(フランス、チーム ヨーロッパカー)に言わせれば「彼は有名な逃げ屋だよ。何で誰も知らなかったの?」とのこと。その走りの巧さは選手間で一目置かれる存在だったという。

 山岳やTTにも強く、2012年のジロ・デ・イタリア第20ステージではステルヴィオ峠の頂上ゴールを制し、総合でも3位となる大活躍。グランツールの総合成績を競える力があることをアピールした。

 ここ数年はチーム方針にそぐわず、移籍先探しに苦慮するオフシーズンを繰り返してきたが、それでも“逃げ”のポリシーは崩さない。チャレンジが成功した際にもたらされるものが大きいことは、自らが一番よく知っているからだ。

 現チームも有力選手がひしめくが、その中で存在感をどうアピールしていくか。あらゆるコースに対応できる万能ライダーは、今シーズンも幾度となく挑戦するシーンを見せることになるはずだ。

文 福光俊介

福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、気がつけばテレビやインターネットを介して観戦できるロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。2011年、ツール・ド・フランス観戦へ実際に赴いた際の興奮が忘れられず、自身もロードバイク乗りになる。自転車情報のFacebookページ「suke’s cycling world」も充実。本業は「ワイヤーママ徳島版」編集長。

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