素人がイチから学んで製作自作のクロモリフレームで快走! 女性メンバーも溶接や塗装を楽しむ「チームびわこぐま」

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 滋賀県を拠点とする自転車愛好家集団「チームびわこぐま」は、自分たちの手で溶接した「自作フレーム」で、さまざまなサイクリングイベントに参加している。フレームは自転車店で購入するのが当たり前という中、びわこぐまのメンバーは、さながらフレームビルダーのようにクロモリフレームをパイプから手がける。なぜフレームを手作りするようになったのか? 2015年の初頭に開かれたチームびわこぐま「新春オールスター茶話会ライド」に参加し、話を聞いた。(文・写真 中尾亮弘)

自作バイクを手にする「チームびわこぐま」のモモさん(右)とマリアさん自作バイクを手にする「チームびわこぐま」のモモさん(右)とマリアさん

チームが集えば女子会風

和菓子屋さんとロードバイクという組み合わせ和菓子屋さんとロードバイクという組み合わせ

 新春オールスター茶話会ライドの集合場所は、滋賀県大津市の石山寺にある「茶丈藤村」という和菓子店。古民家風の店舗に、たくさんのサイクリスト達が集まった。趣のある和菓子屋と派手なジャージとのギャップは、インパクトが大きい。

 店頭に設置されたバイクラックには、“これぞクロモリ”という風情の、パイプとラグで構成されたロードバイクが何台も置いてあった。

実は和菓子屋の店員さんのロードバイクも自作、そして初めてのスポーツバイクだ実は和菓子屋の店員さんのロードバイクも自作、そして初めてのスポーツバイクだ

 標準的な700Cよりも一回り小さい650Cのホイールサイズは、身長の低いライダーが乗るのだろう。ロード以外にも、シクロクロスバイクなどさまざまなバイクがみられた。目を凝らせば、プロの塗装職人が手がけたかのような綺麗なバイクから、あまり上手くない塗装状態のものもあり、まさに「自作」というオーラを放っていた。

 集合したメンバーの半分は女性で、きゃぴきゃぴとした会話で盛り上がっている。「フレームを自作しよう」というよりも、「お菓子を作ろうよ」といった雰囲気だ。

集合したチームびわこぐまの皆さん集合したチームびわこぐまの皆さん

 筆者が初めてびわこぐまのバイクを見たのは、2014年の夏の終わりの「キャットアイ草津ナイトレース」。「琵琶湖博物館」が位置する滋賀県草津市の烏丸(からすま)半島で開催されたイベントだった。その会場で、ピンクのクロモリフレームを手にする女性が「このロードバイクは私が作りました」と見せてくれたのだ。溶接から塗装までの詳細な工程を聞いていくうちに、「実際に彼女自身の手で作ったのだ」ということを実感し、驚かされた。

 その後、教えてもらった「チームびわこぐま」という名称をインターネットで検索すると、「自作フレームプロジェクト」という企画のページがヒットした。チームメンバーは数人。フレームを自分で製作し、その自作バイクで、八ヶ岳で開かれた女性だけのロングライドイベント「ラファ Women’s Prestige Yatsugatake」に参加するなど、かなり走る人たちのようだった。

自作を始めたきっかけは「大会参戦に間に合わせるため」

 「茶話会ライド」はにぎやかな雰囲気でスタート。一行は山道を走り、たぬきの置物の里ともいえる信楽にある、おしゃれなレストランでコースのランチにたどり着いた。

チームびわこぐま代表の石津毅さんチームびわこぐま代表の石津毅さん

 楽しく食べながら、チーム代表の石津毅さんに話を聞くと、フレームの自作を始めたきっかけば、チームびわこぐまの結成以前に「地元開催の『比叡山ヒルクライム』に参戦しようと思い立ったこと」だったという。

 石津さんは当時、ロードバイクを購入しようとカタログを吟味した結果、クロモリフレーム、それもオーダーフレームにしたいという考えに行き着いた。そこで、京都の「岩井商会」の女性フレームビルダー北島有花さんを訪ねた。競輪選手のフレームを手がける北島さんの腕に納得し、北島さんにロードバイクを注文しようと決めたのだが、大会参戦には納期が間に合わないことが判明。あきらめかけていたところ、北島さんから「溶接ができる工房を利用して、ご自身で製作されたら」と助言されたのだという。

石津毅さんの自作ロードバイク石津毅さんの自作ロードバイク

 クロモリフレームの材質である鉄は、アルミやカーボンに比べて加工しやすい。すぐさま北島さんの工場に通ってフレーム作りの基礎を教えてもらい、道具を借りて製作を開始した。大会参戦にも無事に間に合い、大会後には一年に一度、滋賀から東京まで往復するツーリングを行うほど自転車にはまった。走ればドシッと重いものの、足には優しい――そんなクロモリフレームの魅力に取り付かれたのだという。

初めてのクロモリバイクで、塗装は自分で行った初めてのクロモリバイクで、塗装は自分で行った
細いチューブがクロモリらしい細いチューブがクロモリらしい

 サイクリングを楽しむために結成したチームびわこぐまのメンバーにも「自作フレームによる展覧会をしよう」と呼びかけ、それが「自作フレームプロジェクト」へと発展した。メンバーたちは、金属加工や溶接についてはまったくの工作素人。仕事の合間をみては、溶接に使うトーチとヤスリを持って自作ロードバイクの製作に励み、2014年3月には滋賀県近江八幡市で「ハンドメイドクロモリ自転車大展覧会」を開催するに至った。

 実際にフレームを製作する際には、「フィレット溶接をしたい」「テーパーヘッドにしたい」など、作り手側の要望をいかに工程に落としこむかの調整作業が大変だったという。ジオメトリー(各部位の配置や寸法)といったフレーム製作の根幹に関わる部分は、多くのバイクを参考にしながら、それぞれ製作者の体格に合うようにパイプの長さを0.1mm単位でこだわって調整した。展示会の会場には15台のフレームが並び、やがて「チームびわこぐま」の名は、自分が乗るフレームを自分で作っているチームとして知れ渡っていった。

女性がていねいに作り上げた美しいフレーム

 ライドのスタート地点に戻ってから、女性メンバーのバイクを見せてもらった。モモさんの愛車は茶色のシクロクロスバイクで、八ヶ岳のイベントで走るために製作したという。

モモさんのシクロクロスバイクモモさんのシクロクロスバイク

シートステイが微妙にカーブしている加工や、ラグのハートマーク、ヘッドバッヂといった加工もすべてモモさんが手がけたという。塗装は、メッキ処理を業者に依頼し、その後は自分でペイント。ブラシに塗料をつけて振って飛ばす「アクションペインティング」で個性を演出した。

ラグにはハートを施した。塗装はアクションペインティングを施してあるラグにはハートを施した。塗装はアクションペインティングを施してある
シートスティは曲げ加工がしてあるシートスティは曲げ加工がしてある

 マリアさんのロードバイクは、「身長157cmの小さい体にあうホリゾンタル(水平)フレーム」をテーマに、650Cホイールを採用して設計・製作された。ラグにはスペードのマークを施し、クラシックなパーツを磨いて組み付けた。

マリアさんのロードバイクは小柄な体型に合わせて650Cマリアさんのロードバイクは小柄な体型に合わせて650C
パーツはクラシックなものをチョイスパーツはクラシックなものをチョイス
こちらもスペードのラグ加工を施したこちらもスペードのラグ加工を施した

 もう1台のシクロクロスバイクは、モモさんと八ヶ岳を走るために製作したもので、こちらもフレームの曲げ加工や塗装を自身で手がけた。

マリアさんのシクロクロスバイクマリアさんのシクロクロスバイク
シートスティは大きく曲げ加工されているシートスティは大きく曲げ加工されている
モモさんのバイクと同じくアクションペインティングを施してあるモモさんのバイクと同じくアクションペインティングを施してある

 どちらのバイクも、初心者の製作とは思えないほどの完成度。「溶接や加工といった作業は、女性には難しいのでは?」と問う筆者に、石津さんは「女性の方がていねいに作れる」のだと教えてくれた。

◇         ◇

 材料費や、工房を使うための費用は、製作者自身の負担となる。素人の作業なので、手間がかかり、失敗すれば追加の費用も発生するため、プロのフレームビルダーに任せたほうが楽なことは間違いない。ここは製作者本人の「作りたい」という気持ちが問われるところだ。自作フレームのバイクでサイクリングを楽しむチームびわこぐまの取り組みを取材して、挑戦する精神と、自らの手で成し遂げる行動力の素晴らしさを感じた。

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