現地レポート by 田中苑子<後編>「ツール・ド・ランカウイ」の表彰台に立ち、結果を残した“新生・愛三工業レーシング”

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 3月8日から全8ステージで開催されたアジア最高峰のステージレース「ツール・ド・ランカウイ」は、15日にマレーシアの首都クアラルンプールにゴールし、閉幕しました。アルジェリア人のヨウセフ・レグイグイ(MTNキュベカ)が総合優勝を果たし、愛三工業レーシングの早川朋宏が総合成績でアジア選手最高位のアジアンリーダー賞を獲得しました。<前編>に続き、レースを取材したフォトグラファーの田中苑子さんからの現地レポートをお届けします。

アブラヤシのプランテーションを抜ける起伏に富んだ一本道を行くプロトンアブラヤシのプランテーションを抜ける起伏に富んだ一本道を行くプロトン

<前編>20回目を迎えた灼熱の「ツール・ド・ランカウイ」

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ウミガメが産卵する海岸から摩天楼へ

トレンガヌ州を南下していった第5ステージ。ウミガメが産卵にくる美しいビーチがたくさんあるトレンガヌ州を南下していった第5ステージ。ウミガメが産卵にくる美しいビーチがたくさんある

 大会が後半戦に突入した12日の第5ステージは、マレーシア北東部・トレンガヌ州の州都クアラトレンガヌをスタート。プロトンは海岸沿いを南下するように進んでいった。ウミガメがマスコットのトレンガヌ州は、ウミガメが産卵にやってくる美しいビーチが連なる風光明媚なエリアだ。

 一方で、トレンガヌ州は国営企業ペトロナスの油田地帯を擁し、オイルマネーにより豊富な資金力を誇る。そのため、トレンガヌ州は昨年まで「ツール・ド・ランカウイ」のメーンスポンサーを務め、また2011年からはマレーシア最大のロードレースチーム「トレンガヌ サイクリングチーム」を運営している。

沿道には果物の露店がたくさん建ち並ぶ沿道には果物の露店がたくさん建ち並ぶ
ゴール地点に駆けつけたトレンガヌ州のファン。地元チームの「トレンガヌプロサイクリング」が圧倒的な人気を誇るゴール地点に駆けつけたトレンガヌ州のファン。地元チームの「トレンガヌプロサイクリング」が圧倒的な人気を誇る
マレーシアの観光地、ムルデカスクエアの正面を選手たちが駆け抜けるマレーシアの観光地、ムルデカスクエアの正面を選手たちが駆け抜ける

 そんなスポンサーとの関係から、大会では過去数年間、クアラトレンガヌで最終ステージを含む3ステージが開催されてきたが、今年はトレンガヌ州が大会スポンサーから外れたことで、クアラトレンガヌは第5ステージのスタート地点になったのみ。最終ステージは、ペトロナスツインタワーの麓を駆け抜けるクアラルンプール市内の周回コースが久しぶりに組み込まれ、観光客を含む大勢の観客たちに見守られて大会は華やかなフィナーレを迎えた。

クアラルンプールのシンボル、ペトロナスツインタワー下を駆け抜ける選手たちクアラルンプールのシンボル、ペトロナスツインタワー下を駆け抜ける選手たち

早川は総合成績でアジアンリーダー賞を獲得

 大会後半戦のクライマックスは、14日の第7ステージに組み込まれたフレイザーズヒルでの山岳決戦。大会直前にコースが変更され、レース距離は100kmから180kmに伸びた。標高約1100mの山頂でも汗が止まらない蒸し暑さのなかでタフなレースが展開された結果、10人の先頭集団によるゴールスプリントをヨウセフ・レグイグイ(MTNキュベカ、アルジェリア)が制して総合首位に立った。

最終ステージのスタート前、セレモニーを待つ4賞リーダージャージ着用選手たち最終ステージのスタート前、セレモニーを待つ4賞リーダージャージ着用選手たち
レース前に戦略を話し合う別府匠監督と中根英登レース前に戦略を話し合う別府匠監督と中根英登
最終ステージを制したアンドレア・グアルディーニ(アスタナ プロチーム)。今大会通算4勝目を挙げた最終ステージを制したアンドレア・グアルディーニ(アスタナ プロチーム)。今大会通算4勝目を挙げた

 この第7ステージで健闘した早川朋宏(愛三工業レーシング)はアジア選手で首位に立ち、翌15日の最終ステージもアドバンテージを守りきり、アジアンリーダー賞を獲得して表彰台に立った。個人総合成績は16位だった。

得意の登坂力を生かしてアジアンリーダー賞を獲得した早川朋宏得意の登坂力を生かしてアジアンリーダー賞を獲得した早川朋宏

 最終ステージを走り終えた早川は、「周回コースに入ってからのハイスピードな展開で位置取りに苦労したが、チームメイトに助けられて走りやすかった」と笑顔を見せ、今後に向けては「登りとスピードの強化が課題。山はもちろんのこと、スプリント力やタイムトライアルも強化しないとヨーロッパの総合系の選手に張り合えないので、そこを強化していきたい」と語った。

西谷、盛の後継者たちがみせた責任感

大会終了後にお互いの走りをねぎらう愛三工業レーシングチームの選手たち大会終了後にお互いの走りをねぎらう愛三工業レーシングチームの選手たち

 今大会で愛三工業レーシングチームは、早川のアジアンリーダー賞だけでなく、第2ステージで福田真平が6位に、第5ステージで中島康晴の4位に入る好成績を残した。チームがレース前に設定していた「ステージ優勝と総合10位以内」という高めの目標には及ばなかったため、別府匠監督は「選手たちは今回の結果に満足していないと思う」と話すが、それでも「シーズン初戦として、この結果は上出来だった」と評価した。

レースを終えて、西谷泰治テクニカルディレクターが中島康晴にアドバイスをするレースを終えて、西谷泰治テクニカルディレクターが中島康晴にアドバイスをする

 昨シーズンを終えた時点で、チームの主力選手だった西谷泰治(現テクニカルディレクター)と盛一大が引退したため、周りからは「戦力が落ちた」と評されることもあるが、別府監督は「彼らがいなくても、選手たちは責任感をもって自分たちの走りができる。この調子で戦っていきたい」と“新生・愛三工業レーシング”の舵取りに自信をみせた。

4賞獲得選手。左からポイント賞のカレブ・イーウェン(オリカ・グリーンエッジ)、総合優勝のヨウセフ・レグイグイ(MTNキュベカ)、山岳賞のキール・レイネン(ユナイテッドヘルスケア)、アジアンリーダー賞の早川朋宏(愛三工業レーシング)4賞獲得選手。左からポイント賞のカレブ・イーウェン(オリカ・グリーンエッジ)、総合優勝のヨウセフ・レグイグイ(MTNキュベカ)、山岳賞のキール・レイネン(ユナイテッドヘルスケア)、アジアンリーダー賞の早川朋宏(愛三工業レーシング)

 今大会で最も輝いた早川について、別府監督は「山での強さが引き立ったが、向上心はすごく高いので、今回の結果に満足せず、もっと強くなってほしい」。また、西谷の後継者としてエーススプリンターを務めた福田真平については、「チームワークと彼の力でステージ6位に入ることができた。彼も満足はしていないが、昨年までは最高15位にとどまっていたので、UCIポイントを獲得する結果が残せて良かった。エースとしての自覚が出てきた」と、さらなる活躍に期待を寄せた。

(文 田中苑子・写真 Peloton Images Asia

6回目のツール・ド・ランカウイを走り切った愛三工業レーシングチーム6回目のツール・ド・ランカウイを走り切った愛三工業レーシングチーム
田中苑子田中苑子(たなか・そのこ)

1981年、千葉生まれ。2005年に看護師から自転車専門誌の編集部に転職。2008年よりフリーランスカメラマンに転向し、現在はアジアの草レースからツール・ド・フランスまで、世界各国の色鮮やかなサイクルスポーツを追っかけ中。2015年、アジアのフォトグラファー仲間と共に、アジアのレース写真を中心としたイメージバンク『Peloton Images Asia』を設立した。

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