ドイツの高級車が自転車イベントをサポートスポーツサイクルは革新的なクルマに通じる 大喜多寛・アウディ ジャパン社長インタビュー

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 流れるように美しく未来的なデザインや、革新的テクノロジーを備えた製品で存在感を放つ「Audi(アウディ)」。そのドイツの高級車ブランドが、島根県益田市を舞台とするサイクリングイベント「益田 I・NA・KAライド」や、若手ライダー育成に特化したロードレース「益田チャレンジャーズステージ」の大会運営をサポートしている。「技術による先進(Vorsprung durch Technik)」を掲げて進化を続けるアウディが、日本で自転車のイベントやレースを支える意義は何か? 「アウディ ジャパン」の大喜多寛社長に聞いた。

(聞き手 Cyclist編集長・上野嘉之、編集 柄沢亜希)

「益田 I・NA・KAライド」の会場に展示された「アウディ TT RS プラス クーペ」 =2014年9月、島根県益田市の島根県芸術文化センター「グラントワ」「益田 I・NA・KAライド」の会場に展示された「アウディ TT RS プラス クーペ」 =2014年9月、島根県益田市の島根県芸術文化センター「グラントワ」

日本にはない価値観を提案していきたい

大喜多寛・アウディ ジャパン社長 (撮影・瀧誠四郎)大喜多寛・アウディ ジャパン社長 (撮影・瀧誠四郎)

――なぜ、「益田 I・NA・KAライド」をサポートするのか?

 アウディが掲げるブランドイメージは、「Progressive(革新的)」「Sporty(スポーティー)」「Sophisticated(洗練)」。私たちから見てサイクリングは、スポーツとして洗練されている印象です。また機材にはカーボンや超軽量素材など最先端技術が投入されているとあって、アウディと相性がいい。

「益田 I・NA・KAライド」の参加者を先導するアウディの大会関係車両 =2014年9月「益田 I・NA・KAライド」の参加者を先導するアウディの大会関係車両 =2014年9月

 また、益田 I・NA・KAライドは競技ではなく、一般の人たちが参加するイベントというところもポイントです。

 私は個人的に、アウディを含めドイツとかかわる仕事に15年間就いています。ドイツの人たちは仕事ぶりもすごいけれど、土日や長期休暇にはプライベートを思い切り楽しむ。そのバランス感がすごい。

 クルマと趣味が一体化したライフスタイルは、アウトバーン(ドイツの高速道路)を少し走れば見て取れます。イタリアやスペインへ向かっていくクルマがボートをけん引していたり、自転車をルーフ(天井)に3~4台積んだ家族がいたりと、決してワンパターンでない休暇スタイルがそこにはあります。

 益田 I・NA・KAライドをサポートをしながら、日本にはないこういった価値観を提案していきたい。最初は小規模だったこのイベントへ、そのうちに全国から、できればアウディのクルマに自転車を載せて訪れる人が増えたらいいなぁ、という夢があります。

「益田チャレンジャーズステージ」でレースの模様を撮影するアウディの大会関係車両 =2014年11月「益田チャレンジャーズステージ」でレースの模様を撮影するアウディの大会関係車両 =2014年11月

――イベントにとどまらず、若手ライダーのためのレースのサポートも始めました

 2015年で4回目を迎える益田 I・NA・KAライドに加えて、若手選手向けの「益田チャレンジャーズステージ」が昨年スタートし、サプライヤーとして参加しています。

 アウディでは、世界を舞台に活躍していく人に対して「アンバサダー」制度を設けて、クルマを提供するなどの方法でバックアップしています。それと同じ精神で、ユースやU23といったこれからはばたく人も応援していきたい。

 益田市というローカルな土地で、地元を盛り上げようとチャレンジするオーガナイザーの姿勢に共感しサポートを決めたという点にも、アウディのそういった精神が背景にあります。

「益田チャレンジャーズステージ」で選手たちを支えるアウディの大会関係車両 =2014年11月「益田チャレンジャーズステージ」で選手たちを支えるアウディの大会関係車両 =2014年11月

アウトドアで「最も使い勝手がいいクルマ」

――ブランドイメージのうち「スポーティー」とは?

 スポーティーであることを具現化するため、スポーツシーンでのスポンサーシップは重要視してきました。メーンは、耐久レースの世界選手権「WEC」や「スーパーGT」といったモータースポーツのスポンサーシップ。次いで、4輪駆動車「クワトロ」との親和性が高いスキー、革新的なイメージが高いヨット、ドイツが本拠地ということもあってサッカーなどが挙げられます。

大喜多寛・アウディ ジャパン社長 (撮影・瀧誠四郎)大喜多寛・アウディ ジャパン社長 (撮影・瀧誠四郎)

 またアウディの価値は、アウトドア・アクティビティを楽しむ人にこそわかってもらえると考えています。アウディの日本国内シェアのうち6割くらいがクワトロで、これは各国と比較しても高い水準。クワトロは全天候で安全に走行できる駆動配分が特徴とあって、雪山に出かけたり、キャンプをしたり、カメラが趣味であちこちへ撮影に行ったりする人たちに、最も使い勝手がいいクルマです。

 そんな風にアウトドアに親しんでいる人たちには、アウディのアバント(ワゴン車)やSUV車の人気が高いです。山をはじめいろいろな場所へ出かけ、趣味を楽しんでいるサイクリストにもきっと合うことでしょう。

――アウディを選ぶ人に特徴はありますか?

 アウディのクルマを選ぶ理由として、本当にクルマ・ドライブが好き、ということ以外に、「自分の趣味に合うから」とおっしゃる人が多い。例えば、カメラが好きで、撮影機材を積んで雪道を行くために選ぶとか。自分のライフスタイルやファッションに合ったクルマだから選ばれている。

 クルマ選びは、もっと個性を出してもいいと思います。みんなが同じようなカラーやデザインのクルマに乗っていて、自分のクルマが駐車場で分からなくなってしまった…なんてことは、僕にとっては信じられない。アウディは過去8年間、販売台数が伸び続けていることでも分かるとおり、スタイリングを含め個人の価値観がアウディと合致する人が、着実に選んでくれています。

 アウディはまた、走っている姿が綺麗。自転車を積載するためのルーフレールとのコンビネーションも美しい。益田 I・NA・KAライドでは、そんなクルマを多くの人に実際に見てもらい、感じてもらいたいなぁと思います。

「益田 I・NA・KAライド」のコースとなった萩・石見空港の滑走路で参加者を先導するアウディの大会関係車両 =2014年9月「益田 I・NA・KAライド」のコースとなった萩・石見空港の滑走路で参加者を先導するアウディの大会関係車両 =2014年9月

都市の未来を開く自転車の役割

――ご自身の自転車に対する想いを教えてください

大喜多寛・アウディ ジャパン社長 (撮影・瀧誠四郎)大喜多寛・アウディ ジャパン社長 (撮影・瀧誠四郎)

 日本国内で自転車の競技人口はまだまだ少ないけれど、趣味を大切にしている人はバックアップしていきたい。自転車が趣味という人は、いまとても多いですよね。(アウディ・ジャパンの)社内で自転車に乗っている人が多かったり、広島~愛媛間の「しまなみ海道」を走ってきた話を同級生から聞かされたりと、僕らの世代でも頻繁に話題になっています。

 ただし、日本の交通マナーの悪さは課題だと思う。せっかく自転車道・自転車レーンが敷かれていても、そこを歩く人がいたり、駐輪スペースになってしまっていたり。東京都内は本当に交通環境が良くないので、それこそ自転車が走りやすいところへ、クルマに積んで気軽に出かけ、100km、200kmを走ってくるのもいいと思う。

 ヨーロッパは自転車のアクティビティが盛んで、どこへ行ってもルーフキャリアに積んでいる光景を見かける。山のふもとにクルマを置いて、10人くらいのグループで走っていたりね。だから、ドライバーも自転車には優しい。(クルマで)あれだけ飛ばすドイツ人でも、山道で自転車を見かけるとゆっくりと追い抜いていく。そんな様子を見ていると、こっちも気持ちよくなります。

「軽量化を追求する自転車の高い技術力は、革新的なクルマを生み出すアウディに通ずる」と話す大喜多寛・アウディ ジャパン社長 (撮影・瀧誠四郎)「軽量化を追求する自転車の高い技術力は、革新的なクルマを生み出すアウディに通ずる」と話す大喜多寛・アウディ ジャパン社長 (撮影・瀧誠四郎)

――インフラとしての自転車の役割は、どのようにとらえていますか?

 先日、ハイブリッド車「e-tron(eトロン)」の試乗会を開催したコペンハーゲンでは、どうやってクルマが共生すべきかをアウディとしても検証しながら走ってきました。コペンハーゲンでは自転車通勤が奨励され、公務員は基本的にはクルマでの通勤はダメ。クルマは郊外から市内に入る手前に設置された駐車場にとめて、市内は全部自転車を使うというスタイルでした。市内には、市民が安価に利用できるバイクシェアリングシステムも用意されていました。

 コペンハーゲンのような事例もしかり、極端ですが「何時から何時までは車道を自転車道に変える」というようなことを実験的にでもやっていく都市が、日本でも生まれたらいいと思う。都市や建築といった世界各都市の計画や構想を競う「アウディ・アーバン・フューチャー・アワード」(隔年開催)は、都市インフラなどを熱く議論できる場をつくり出しています。ニューヨーク、上海、ジャカルタ、そして東京など、都市の未来は、渋滞を避けるために自転車をいかにインフラに取り込むかも課題です。

 自転車でも進んでいる製品の軽量化は、エコの視点でもとても大事。軽ければパワーは少なくて済むし、パワーが少ないということは燃費や排気が少なくて済む。材料の削減としても効果がある。レース技術から取り入れたハニカム構造は、エコな技術のひとつ。

 製品としての自転車という点では、アウディではこれまで、メーカーとのコラボや各国のアウディで独自に作ったマウンテンバイクやクロスバイクがあります。技術面でも、自転車とクルマはめざす方向が同じ。アウディ ジャパンでも、いつか作ってみたいと思っています。

◇         ◇大喜多 寛(おおきた・ひろし)
1960年生まれ。83年に関西学院大学経済学部卒業後、東洋工業(現マツダ)に入社。国内営業、経営企画、販売会社社長などを経て、2002年1月にビー・エム・ダブリューへ入社、MINIブランドダイレクターを務める。06年、アウディ ジャパンに取締役営業担当として移籍し、10年9月より社長を務める。

「益田チャレンジャーズステージ」で選手たちを支えるアウディの大会関係車両 =2014年11月「益田チャレンジャーズステージ」で選手たちを支えるアウディの大会関係車両 =2014年11月

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