集団落車が連続する大波乱Jプロツアー開幕戦「宇都宮クリテリウム」を窪木一茂が制す チームUKYOが万全のスプリント

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 国内ロードレースシリーズ「Jプロツアー」の今季開幕戦「JBCF宇都宮クリテリウム」が3月15日、宇都宮市の清原工業団地で開催され、窪木一茂(チームUKYO)が大集団のゴールスプリントを制し、シリーズ戦首位の証であるルビーレッドジャージに袖を通した。(レポート 米山一輝)

波乱のレースを制したのは窪木一茂(チームUKYO)。現役日本人トップスプリンターの一人だ波乱のレースを制したのは窪木一茂(チームUKYO)。現役日本人トップスプリンターの一人だ

周辺イベントも充実 来場者は昨年の1.5倍超

 「宇都宮自転車王国」と銘打たれたこの日の大会には、ステージイベントやブース出展、子供向けのランニングバイクレースや移動動物園も用意された。曇り空でやや肌寒い一日となったが、昨年の7100人を大きく上回る1万1000人の来場者が沿道を埋め、選手らに声援を送った。

 レースは1周3kmの公道周回コースを使用。昨年から1周300m延長され、Jプロツアーは20周で争われた。今シーズンは各地に新チームが誕生し、また中堅・下位チームがいくつか統合したことで、各チームの勢力図が大きく変わった。この日の初戦には20チーム、141選手が出走した。

こちらも大盛り上がりのランニングバイクレースこちらも大盛り上がりのランニングバイクレース
「弱虫ペダル」作者の渡辺航さんのトークショー「弱虫ペダル」作者の渡辺航さんのトークショー
「那須どうぶつ王国」からアルパカがやってきた「那須どうぶつ王国」からアルパカがやってきた

和田選手への黙祷と、追悼のパレードラン

マトリックスパワータグの選手を最前列に、一分間の黙祷が捧げられたマトリックスパワータグの選手を最前列に、一分間の黙祷が捧げられた

 スタート地点では、1週間前の3月8日にロード練習中の事故で命を落としたマトリックスパワータグの和田力選手を悼んで黙祷が捧げられた。

 続いて同チームの安原昌弘監督があいさつし、「われわれの商売は日頃からこういうことがあると覚悟をしておりますが、実際に起きてみると、やっぱり悔しさ、空しさ、残念さ、言葉では表現できません。日頃、気軽に乗っている自転車には、こういう危険が伴うと、彼が知らしめてくれたような気がします」と語った。

 安原監督は時折、言葉を詰まらせながら、自転車で走行する際に注意を怠らないよう改めて呼びかけ、「皆に愛されて、将来を嘱望されていた、和田力という選手がいたことを、皆さん忘れないでください」と結んだ。

 レースは1周目が追悼のパレードランとされ、マトリックスの選手が集団の先頭で横一列になり、和田選手を偲びながらゆっくりとコースを巡った。

マトリックスパワータグの安原昌弘監督マトリックスパワータグの安原昌弘監督
レース1周目は追悼のパレードランが行われたレース1周目は追悼のパレードランが行われた

積極的なブラーゼン 静かに集団を支配するUKYO

 2周目にレースの火蓋が切られ、序盤は小さな逃げができては潰される展開に。8周目に小集団が逃げ、そこから9周目に雨澤毅明(那須ブラーゼン)とサルバドール・グアルディオラ(チームUKYO)の2人が抜け出すことに成功。集団はチームUKYOが一旦抑え、しばらく2人の逃げが続くが、13周目に吸収された。

アタックを見せる中山卓士(ヴィクトワール広島)と山下貴宏(シエルヴォ奈良 ミヤタ-メリダ)アタックを見せる中山卓士(ヴィクトワール広島)と山下貴宏(シエルヴォ奈良 ミヤタ-メリダ)
アタックする川田優作(ホンダ栃木)と倉林巧和(群馬グリフィン)アタックする川田優作(ホンダ栃木)と倉林巧和(群馬グリフィン)
選手の間近で観客が応援選手の間近で観客が応援
今年新たに設けられた180度ターンのコーナー今年新たに設けられた180度ターンのコーナー
逃げグループからさらにアタックする雨澤毅明(那須ブラーゼン)逃げグループからさらにアタックする雨澤毅明(那須ブラーゼン)
2人の逃げとなったサルバドール・グアルディオラ(チームUKYO)と雨澤毅明(那須ブラーゼン)2人の逃げとなったサルバドール・グアルディオラ(チームUKYO)と雨澤毅明(那須ブラーゼン)

 代わって積極的な動きを見せたのが、全日本チャンピオンの佐野淳哉(那須ブラーゼン)。何度かアタックを繰り返したあと、15周目には単独での抜け出しに成功する。佐野はいったん吸収された後、再びグアルディオラと、ロイック・デリアック(キナン サイクリングチーム)と共に逃げを見せ、会場を沸かせた。

単独アタックを見せる佐野淳哉(那須ブラーゼン)単独アタックを見せる佐野淳哉(那須ブラーゼン)
グアルディオラ、デリアック、佐野の3人の逃げグアルディオラ、デリアック、佐野の3人の逃げ

終盤の落車で有力選手が去る波乱

 佐野らは残り3周を前に吸収。集団はゴールスプリントに向けて各チームの位置取り争いと牽制が激しくなってきた。この道幅一杯に広がった不安定な集団の真ん中付近で、落車が発生。最初の落車が十人ほどを巻き込むと同時に、これを避けようとした別の場所でも落車が起こり、有力チーム・選手を含む数十人が巻き添えとなった。

残り3周目前で発生した集団落車残り3周目前で発生した集団落車
落車が集団全体に広がった落車が集団全体に広がった

 落車で遅れた選手には「猶予周回」が適用され、次の周回で元いた集団に復帰することができる。だが、この集団復帰があだになった。大人数の選手がコースの半分をふさぎながら、スピードが上がって残り2周に突入したメーン集団に復帰しようとしたのだ。

 復帰に失敗した選手が落車し、メーン集団の選手をなぎ倒すように、再び大落車が発生した。集団先頭付近での落車となったため、最初の落車以上の規模となり、さらに多くの有力選手が巻き込まれることになってしまった。

集団合流のために再発進する落車したグループだが、後ろから来るメーン集団と交錯し新たな落車に…集団合流のために再発進する落車したグループだが、後ろから来るメーン集団と交錯し新たな落車に…
前の周の落車よりも大規模な落車になった前の周の落車よりも大規模な落車になった

 特に、地元期待の宇都宮ブリッツェンは、アシストに引っ張られていたトレインの後半分のスプリンター勢、鈴木真理、鈴木譲、大久保陣の3人が揃って落車。残り2周を切って猶予周回が適用されないため、50人近くがこの落車でレースを終えることになった。

体調不良を跳ね返したエース

 ラスト1周に突入した集団は、60人弱とスタートの半分以下。集団先頭はチームUKYO、マトリックスパワータグ、キナン サイクリングチームらが争う形だが、ほぼ全員が無傷で集団先頭を固めるチームUKYOが有利な形だ。

完璧なチームプレーから完璧なスプリントを見せた窪木が勝利完璧なチームプレーから完璧なスプリントを見せた窪木が勝利

 最終コーナーからは、長い800mのホームストレートからのゴール勝負。スペイン人3選手に導かれる形で吉田隼人(マトリックスパワータグ)が先頭を狙うが、ベテランスプリンターのパブロ・ウルタスン(チームUKYO)が万全のリードアウトを見せると、その後ろから発射した窪木が先頭でゴールラインを駆け抜けた。

 前年の大会では3位だった窪木。その雪辱を果たした形だが、実は数日前から風邪をひいて体調は悪かったという。しかし前日のミーティングで、チームキャプテンの土井雪広からエースに指名され、最後のゴールだけを狙って走った。「チームメートが完璧に動いてくれて、自分は最後200mをスプリントしただけ」と話す窪木。責務を全うするエースの強さと、エースを万全な状態でゴールに届けたUKYOのチーム力が光るレースとなった。初戦の優勝で、窪木は自身初となるルビーレッドジャージに袖を通した。

P1表彰。(左から)2位の吉田隼人、優勝の窪木一茂、3位のパブロ・ウルタスンP1表彰。(左から)2位の吉田隼人、優勝の窪木一茂、3位のパブロ・ウルタスン
ルビーレッドジャージは初獲得となる窪木ルビーレッドジャージは初獲得となる窪木

 そして窪木にとって、急逝した和田選手は日大自転車部の2年後輩。同じ和歌山県登録として、今年地元で開催される国体を目指して共に切磋琢磨してきた仲間だった。窪木もまた、この日のレースに特別な思いで臨んだ一人だ。「レース前に皆で和田選手のことを思って黙祷してくれたので、それをしっかり心に刻んでスタートできました」と真っ直ぐな視線で窪木は語った。

ピュアホワイトジャージの城田大和も初獲得ピュアホワイトジャージの城田大和も初獲得
ポイント賞獲得の4人。(左から)北野普識、阿部嵩之、サルバドール・グアルディオラ、ロイック・デリアックポイント賞獲得の4人。(左から)北野普識、阿部嵩之、サルバドール・グアルディオラ、ロイック・デリアック
那須町の高久勝町長は6月の全日本ロードを「全町をあげておもてなしをしたい」とアピール。那須町の高久勝町長は6月の全日本ロードを「全町をあげておもてなしをしたい」とアピール。
佐藤栄一・宇都宮市長は、「ますます自転車のために頑張っていきたい」とコメント佐藤栄一・宇都宮市長は、「ますます自転車のために頑張っていきたい」とコメント

P1結果(60km)
1 窪木一茂(チームUKYO) 1時間23分43秒
2 吉田隼人(マトリックスパワータグ) +0秒
3 パブロ・ウルタスン(チームUKYO) +0秒
4 野中竜馬(キナン サイクリングチーム) +0秒
5 畑中勇介(チームUKYO) +0秒
6 中里仁(レモネード・ベルマーレ レーシングチーム) +0秒
7 増田成幸(宇都宮ブリッツェン) +0秒
8 中村龍太郎(イナーメ信濃山形) +0秒
9 小畑郁(なるしまフレンド レーシングチーム) +1秒
10 木村圭佑(シマノレーシング) +1秒

Jプロツアーリーダー(ルビーレッドジャージ)
窪木一茂(チームUKYO)

U23リーダー(ピュアホワイトジャージ)
城田大和(宇都宮ブリッツェン)

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