現地レポート by 田中苑子<前編>20回目を迎えた灼熱の「ツール・ド・ランカウイ」 鈴なりのマレーシア国民が大声援

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 アジア最大のステージレース「ツール・ド・ランカウイ(UCI2.HC)」が3月8日から15日まで、8日間の日程で熱帯のマレーシアを舞台に開催されています。アスタナ プロチーム、チーム スカイ、オリカ・グリーンエッジ、ティンコフ・サクソの4つのUCI(国際自転車競技連合)ワールドチームに加え、7つのプロコンチネンタルチームが参加するアジア屈指の難レースで、日本からは愛三工業レーシングチームが6年連続で出場しています。レースを取材しているフォトグラファーの田中苑子さんから、Cyclistに現地レポートが届きました。<前編>は、第4ステージまでの模様をお伝えします。

第2ステージのスタート地点。華やかなモスクの前から、灼熱のレースはスタートする第2ステージのスタート地点。華やかなモスクの前から、灼熱のレースはスタートする

◇         ◇

名所「ゲンティンハイランド」の山頂ゴールはキャンセル

 本場ヨーロッパのロードレース関係者の間でもすっかり定着している「ツール・ド・ランカウイ」。近年では、南半球のオーストラリアで開かれる「ツアーダウンアンダー」や、中東のステージレースが、シーズンのより早い時期に開催されているが、春のクラシックを控えたこの時期のレースとしてはランカウイがもっとも古い歴史をもつ。

家の前でレースを観戦する住民たち。子どもから高齢者まで多くの人がレースを心待ちにしている家の前でレースを観戦する住民たち。子どもから高齢者まで多くの人がレースを心待ちにしている

 20回目の記念大会となった今年の大会は、大会名となっているマレーシアのリゾートアイランド、ランカウイ島で開幕し、マレー半島を時計回りに進み、最後はクアラルンプールでゴールするコースレイアウト。最終日前日に今大会のハイライトとなる名所、ゲンティンハイランドでの山頂ゴールが予定されていたが、工事区間が多く、選手の安全面を考慮して大会直前にキャンセルとなった。代わりにフレイザーズヒルでの頂上ゴールが組み込まれたが、ゲンティンハイランドに比べて難易度は下がる。

スタート前にマクドナルドで笑顔を見せるフランチェスコ・キッキ(イタリア、アンドローニ・ベネズエラ)スタート前にマクドナルドで笑顔を見せるフランチェスコ・キッキ(イタリア、アンドローニ・ベネズエラ)

 その他のステージはおおむね平坦基調で、また強豪チームがスプリンターを擁していることから、多くはゴールスプリントの展開になるというのが戦前の予想だ。しかし連日35度を超す暑さや、アブラヤシのプランテーションのあいだをゆく緩やかなアップダウンを利用して、果敢なアタッカーたちが逃げ切る展開が見られるかも知れない。

6年連続出場となる愛三工業レーシングチーム。スタート前にコースマップを確認する6年連続出場となる愛三工業レーシングチーム。スタート前にコースマップを確認する

日焼け止めを厚く塗り、冷水を浴びてクールダウン

 大会が開幕した8日、ランカウイ島をぐるっと1周する100kmの第1ステージを制したのは、大会の最多優勝記録をもつアンドレーア・グアルディーニ(イタリア、アスタナ プロチーム)。

開幕ステージを制したアンドレーア・グアルディーニ(イタリア、アスタナ)。圧倒的なスプリント力を誇る開幕ステージを制したアンドレーア・グアルディーニ(イタリア、アスタナ)。圧倒的なスプリント力を誇る

 グアルディーニは余裕を感じさせるゴールスプリントで、若いオーストラリア人選手のカレブ・イーウェン(オリカ・グリーンエッジ)やフランチェスコ・キッキ(イタリア、アンドローニ・ベネズエラ)、アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、サウスイースト)らを撃破した。

 寒さの残るヨーロッパとは対称的に、赤道に近い熱帯でのレースは、連日35度を越える灼熱に見舞われ、選手たちは、日焼け止めを厚く塗ってスタートし、レース中は何度も何度もチームカーから水を運び、ゴール後には主催者の用意する放水車で冷水を頭から浴びてクールダウンするのが毎日の恒例だ。

たくさんの子どもたちが沿道で選手たちに声援を送るたくさんの子どもたちが沿道で選手たちに声援を送る

第2ステージ6位と健闘した福田真平 「スピードでは負けていない」

 フェリーを使ってマレー半島本土に渡って9日に開催された第2ステージでも、グアルディーニは難なく2勝目を挙げた。

 この第2ステージでは、愛三工業レーシングチームの新キャプテンであり、大きな期待のかかるスプリンター、福田真平がゴールスプリントで6位に入賞し、UCIポイントを獲得する活躍を見せた。

第2ステージ、福田真平(愛三工業レーシング)がゴールスプリントに挑み6位でゴール第2ステージ、福田真平(愛三工業レーシング)がゴールスプリントに挑み6位でゴール

 福田は、さらなる上位を目指して次のように語った。

世界トップのスプリンターに果敢に挑む福田真平。愛三工業レーシングチームはゴールスプリントでの上位入賞が今大会の大きな目標世界トップのスプリンターに果敢に挑む福田真平。愛三工業レーシングチームはゴールスプリントでの上位入賞が今大会の大きな目標

 「大会初日が今年の初レースだったので、第2ステージになって調子もあがり、チーム内での連携もうまくいった。最低限の目標であったUCIポイントを取れたので良かった。これからは表彰台圏内の3位以内を目指していきたい。今日のレースで、他のスプリンターたちとスピードでは負けてはいないということはわかった。グアルディーニとイーウェンは格が違うなと思ったが、タイミングがあえば一緒に戦える可能性はあると思う」

 10日に行われた第3ステージは、マレー半島北部をタイとの国境に沿って西から東へ、途中で1級山岳を越えながら横断するコース。ここで、登坂が苦手のグアルディーニの弱点を突いて激しい攻撃がかかった。オリカ・グリーンエッジやチームスカイが中心となって集団を分断した結果、約40人ほどに絞られた先頭集団によるゴールスプリント勝負となり、後方に取り残されてしまったグアルディーニに代わって、活躍が期待されている20歳のカレブ・イーウェン(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)がステージを制し、総合首位のイエロージャージも獲得した。

 愛三工業レーシングは早川朋宏が先頭集団でゴール。後続集団とは約24分半もの差がついたため、総合優勝争いは先頭集団でゴールした選手たちに絞られた。

40人ほどの先頭集団でのゴールスプリントを制した弱冠20歳のカレブ・イーウェン(オリカ・グリーンエッジ)40人ほどの先頭集団でのゴールスプリントを制した弱冠20歳のカレブ・イーウェン(オリカ・グリーンエッジ)
第3ステージを終えて、総合リーダージャージを着るカレブ・イーウェン(オリカ・グリーンエッジ)第3ステージを終えて、総合リーダージャージを着るカレブ・イーウェン(オリカ・グリーンエッジ)

テレビが連日生中継 注目度高まる自転車競技

 ツール・ド・ランカウイはその20年の歴史のなかで、開催国マレーシアの人たちにすっかり浸透してきた。子どもから大人まで数えきれないほどの人たちが沿道に鈴なりになって声援を送り、今大会はテレビでも連日、生中継も行われている。また大会の人気を受けて、マレーシアでは年々、自転車競技への注目度が高まっており、北西部のトレンガヌ州では、自治体がスポンサードする「トレンガヌ サイクリングチーム(TSG)」がアジア屈指の強豪チームとして活躍している。

大きなマレーシア国旗を掲げて応援する大きなマレーシア国旗を掲げて応援する

 マレーシアの東海岸北端の街、コタバルから南下する11日の第4ステージでは、第3ステージで勝利を逃したグアルディーニが圧勝。これで自身のもつ最多ステージ優勝記録を17に伸ばした。早川は第4ステージを終えて総合23位、アジアンライダー賞の4位となり、アジアトップの中国人選手との差はわずか2秒の位置につけている。

 大会の折り返しを迎える12日の第5ステージは、マレーシアの人気チーム「TSG(トレンガヌサイクリングチーム)」が拠点とするクアラトレンガヌをスタートし、200kmほど南下してクアンタンにゴールする平坦コース。第7ステージのフレイザーズヒルでの山岳決戦を控え、スプリンターが区間優勝を狙うステージが続くだろう。

(文 田中苑子・写真 Peloton Images Asia

田中苑子田中苑子(たなか・そのこ)

1981年、千葉生まれ。2005年に看護師から自転車専門誌の編集部に転職。2008年よりフリーランスカメラマンに転向し、現在はアジアの草レースからツール・ド・フランスまで、世界各国の色鮮やかなサイクルスポーツを追っかけ中。2015年、アジアのフォトグラファー仲間と共に、アジアのレース写真を中心としたイメージバンク『Peloton Images Asia』を設立した。

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