産経新聞オピニオン面掲載【イチから分かる】健康とエコで「スポーツサイクル」ブーム拡大

by 上野嘉之 / Yoshiyuki KOZUKE
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 スポーツサイクルのブームが続いている。大通りや郊外を自転車でさっそうと走る姿が増え、関連市場も活況を呈している。しかし一方で、危険な運転や、違法駐輪などマナーの問題も絶えず取りざたされ、“市民権”を得たとは言い難い。自転車はスポーツであると同時に交通手段そのものでもあり、社会や交通環境との調和が問われている。

 日本生産性本部がまとめた「レジャー白書」によると、自転車の参加人口は平成20(2008)年の950万人から、21(2009)年には1520万人と大きく伸び、ランニングと同様に市場の成長が続いているという。

 ブームを牽引しているのは30~40代の男性。健康管理やダイエットの一環でサイクリングに取り組み、夢中になったという例が少なくない。エコ意識の高まりを受け、ライフスタイルに自転車通勤を取り入れる人も増え続けている。

 サイクリングといえば、1970~80年代には自転車を使った長期の旅行や冒険への挑戦が注目を集めた。90年代になると、野山を駆けるマウンテンバイクの人気に火がつき、太いタイヤと無骨な車体の自転車が市街地でも急増した。

 しかし2000年代以降は、世界最大の自転車レース「ツール・ド・フランス」などを走る自転車と同じ種類であるロードバイク(長距離用競技自転車)が人気の中心だ。プロ顔負けのレース仕様車で街の中や郊外を走る人も多い。トップ選手が乗る高性能マシンが50万~60万円で手に入れられることがマニア心をくすぐり、ブームを後押ししている一面もある。

 サイクリングやレースといった自転車大会・イベントも盛況だ。特に最近、注目を集めているのが「ヒルクライム」大会。その名の通り、山道をひたすら自転車で上るストイックな競技だが、スピードが出にくいため危険が少なく、大自然の中で自分の限界に挑む充実感や達成感を得られることが人気の秘訣だ。

 ただ、趣味でスポーツサイクルを楽しむ場合も、ほとんどの場合は一般公道を走るため、安全の確保が最重要課題。原則として原付きバイクなどと同様に車道の左端を走る必要がある。

 しかし、時速40~50キロにも簡単に到達するスポーツサイクルの“安全な乗り方”を、体系的に指導している機関はほとんどなく、愛好者らの口コミに頼っているのが現状だ。ブレーキのないピストバイク(トラック競技用自転車)が警察に摘発される例が相次ぐなど、事故防止の機運が高まったとは言い難い。ブームに対応すべく、公的機関や業界団体などによる安全啓発の取り組み拡充が求められている。

 また、自転車通勤の広がりが歩道などでの違法駐輪を生み、ひいては駐輪マナー低下や放置自転車の増加を招く皮肉な現象も起こっている。サイクリストは、自動車や歩行者を含め交通全体への影響に配慮する必要がある。一方で自治体や、都市の施設・ビル管理者は、スポーツサイクルの需要増大や、交通環境の変化を念頭に、駐輪設備の拡充や適正配置について再考すべき時期を迎えている。

車体、装備、乗り方で「安全確保」を

 これからスポーツサイクルを始める人が、安全のため気をつけるべきことは、まず用途にあった車体選びだ。人気のロードバイクは速く、遠くまで走ることができるが、タイヤが細く、重心が高く、前傾姿勢が深いためふらつきやすい。スピードにこだわらないならば、タイヤが太めのクロスバイクなど安定性の高い車体が向いている。

 また、安全のための装備はしっかりそろえたい。転倒時に脳へのダメージを防ぐヘルメットと、手をついた際のけがを和らげるグローブは欠かせない。夜も走るなら、前後のライトで視認性を確保しよう。靴は底の薄い運動靴が最適で、ハイヒールやサンダルはNGだ。

 最も肝心なことは、事故を招かない乗り方だ。歩行者や車の運転手と目を合わせて互いを確認する「アイコンタクト」を心がけたい。信号無視や、車やオートバイの流れに逆らって道路の右側を“逆走”することは、最も危険な行為だと肝に銘じてほしい。

MSN産経ニュースより)

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