バス専用レーンを自転車も通行可能に違法駐車を排除せよ! 国道246号に整備された「自転車ナビライン」で実走評価会を開催

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 クルマとバスの交通量が非常に多く、さらに自転車利用者が増加して混雑と混乱が起こっている東京都の国道246号「玉川通り」(渋谷~新二子橋間)。そこで、バスレーンに重ねる形で自転車の通行位置と方向を示す「自転車ナビライン」が設置され、新たな自転車通行空間として2月27日から供用が開始された。これを受けて、自転車の利用促進や交通行政への提言に取り組んでいるNPO法人「自転車活用推進研究会」(自活研)は、ナビラインの供用開始から間もない2月28日、サイクリストらによる実走評価会を開催した。(レポート:自転車活用推進研究会理事 瀬戸圭祐)

国道246号に整備された「自転車ナビライン」。このレーンはラッシュ時に自転車とバスの専用通行帯となる国道246号に整備された「自転車ナビライン」。このレーンはラッシュ時に自転車とバスの専用通行帯となる

ラッシュ時に自転車とバスだけが走れるレーン

青い矢印で自転車の通行位置と方向を示す「自転車ナビライン」。視認性は高い青い矢印で自転車の通行位置と方向を示す「自転車ナビライン」。視認性は高い

 国道246号の新しい自転車通行空間の特徴は、朝と夕方にバス専用通行帯となる道路左端のレーンに自転車ナビラインを重ねて設置したことだ。このため、最も交通量が増える朝夕のラッシュ時に、左端のレーンを自転車とバスだけが走れることが明確に示された。

 今回の自転車ナビライン設置・運用については、自活研が昨年5月に主催したシンポジウム「めざせ!TOKYO自転車革命」で、国土交通省の担当者が「(2014年)秋には実施させる」と表明していた。しかし世田谷区、警察、そしてバス会社や地元住民など利害関係者の意見調整に手間取り、予定より半年近く遅れて、実施区間も予定の半分(約1Km)の状態でようやく実現した格好だ。

自転車はナビライン上を、歩行者は歩道を通行するよう案内看板が立てられている自転車はナビライン上を、歩行者は歩道を通行するよう案内看板が立てられている
自転車ナビラインが描かれていると、クルマから見ても自転車の通行帯であることを認識しやすい自転車ナビラインが描かれていると、クルマから見ても自転車の通行帯であることを認識しやすい

違法駐車は“諸悪の根源” すべての交通の妨げに

国道246号の「新・自転車通行空間」整備区間(国土交通省プレスリリースより)国道246号の「新・自転車通行空間」整備区間(国土交通省プレスリリースより)

 この日、実走評価に参加した約40人は、国士舘大学(東京都世田谷区)を出発し、自転車ナビラインの西側の起点となる駒沢交差点へ。国道246号を走り始めると、ナビラインの整備に合わせて路面の段差や溝が平らに整えられており、安心感があってとても走りやすかった。

 しかし、それを分断する違法駐車車両が次々にレーンを塞いでいた。慢性的に交通量が多いこの道路での違法駐車は、渋滞を誘発し、自転車だけでなくすべての交通の妨げになる“諸悪の根源”でもある。今回の自転車通行空間整備を機に、違法駐車の取締りを徹底するなど、撲滅に向けてのアクションが望まれる。

自転車ナビラインの上に堂々と止めていたトラック自転車ナビラインの上に堂々と止めていたトラック
路上駐停車が多いと、自転車はこんなに走りづらくなる路上駐停車が多いと、自転車はこんなに走りづらくなる
交差点に描かれた自転車ナビライン。「車道の左側端を左側通行」という原則が貫かれている交差点に描かれた自転車ナビライン。「車道の左側端を左側通行」という原則が貫かれている

 国道246号が環状7号線と交わる上馬交差点や、駒澤大学駅前交差点では、自転車ナビラインが横断歩道に接することなく、交差点の車道上を直線的に進むように描かれている。しかし、一般のシティサイクル(いわゆるママチャリなど)の利用者は、ほとんどが自転車ナビラインを通ることなく、横断歩道を乗車したまま走っていた。横断歩道は自転車を押して歩かなければならないという認識は浸透していないようだ。

交差点で自転車ナビラインに沿って走る実走評価会の参加者交差点で自転車ナビラインに沿って走る実走評価会の参加者
交差点では、自転車ナビラインに従わず横断歩道などを通る自転車も多かった交差点では、自転車ナビラインに従わず横断歩道などを通る自転車も多かった
自転車ナビラインに従わず、横断歩道を通る自転車が多かった自転車ナビラインに従わず、横断歩道を通る自転車が多かった

 車道から見ると、自転車ナビラインはとてもわかりやすく視認できるが、歩道から見ると、車道との間にあるフェンスや街路樹によって青い矢印を視認しにくい。歩道を走る自転車を車道に移動させるには、もう一工夫する必要性を感じた。

 実走評価は、2015年度中に整備予定の三軒茶屋まで走行して折り返した。未整備区間に入ると、自転車ナビラインがあった方が走りやすいことを再認識できた。視覚的な安心感があって心強い。クルマに対しても、自転車の通行を意識させられるだろう。

自転車利用者の意識向上が「最大の課題」

 国士舘大に戻ってからは評価意見交換会が行われ、約70人が参加した。

国土交通省東京国道事務所の西尾崇所長は、全国の自転車事故の31.1%が東京都内で発生していることなどを紹介した国土交通省東京国道事務所の西尾崇所長は、全国の自転車事故の31.1%が東京都内で発生していることなどを紹介した

 最初に国土交通省東京国道事務所の西尾崇所長が、今回の自転車通行空間整備の目的や背景を説明。全国の自転車事故発生件数の31.1%が東京都で発生していることなどを紹介した。西尾所長は「自転車利用者のマナーやルール順守意識が最大の課題」と指摘し、自転車ナビラインが意識向上のきかっけになればと語った。

自転車先進国のデンマークを視察した際の経験を語った保坂展人・世田谷区長自転車先進国のデンマークを視察した際の経験を語った保坂展人・世田谷区長

 世田谷区の保坂展人区長は、自転車先進国であるデンマークを視察した際の経験を紹介。デンマークでは40年前から自転車走行レーンの整備に取り組んでおり、鉄道路線を屋根で覆った上に自転車レーンを設ける構想もあるという。また保坂区長は、世田谷区では交通事故に自転車が関わる比率が4割を占め、全国平均の2倍にのぼると説明した。

 都市評論家の亘理章氏は、欧州では道路の優先序列が「歩行者>自転車>バス>クルマ」と明確であり、日本でも優先権を明確化する必要があると訴えた。

国会まで自転車通勤をしている小泉昭男参院議員は、違法駐車への対策を関係省庁に要請しているという国会まで自転車通勤をしている小泉昭男参院議員は、違法駐車への対策を関係省庁に要請しているという

 国会議員による「自転車活用推進議員連盟」の座長で農林水産副大臣の小泉昭男参議院議員は、川崎市の自宅から国会まで約30kmを毎日、自転車で通勤しており、この日視察した国道246号も通勤経路だそうだ。日ごろから違法駐車が多すぎると感じ、関係省庁にその対策を要請しているという。小泉氏は、2020年の東京オリンピックまでに自転車通行空間を整備し、タンデム車(2人乗り自転車)や、下半身に障害がある人が利用するハンドサイクルなども走れる街にしたいとの思いを述べた。

昭和40年代から進んでいない自転車関連の法整備

熱心な議論が展開された評価意見交換会熱心な議論が展開された評価意見交換会

 岩手県立大学の元田良孝教授は元建設省の官僚だが、これまでの道路整備には自転車レーンという認識すらなかったとことや、現場の警察官は自転車の取り締まりを最も嫌がっているという実態を“暴露”した。自転車関連の法整備は昭和40年代からほとんど進んでいないため、自転車の交通違反には行政罰である反則金制度がなく、いきなり刑事罰が科される赤キップでしか取り締まれないという。また、違反が多すぎて対処できないのが実情で、そうした状況の改善が必要だと提言した。

 国士舘大学の寺内義典教授は、世田谷区周辺の厳しい道路環境を説明した上で、「困難も多いだろうが、区はここが頑張りどころ」とエールを送った。

自転車がバスの横をすり抜けるように走ると、バスの運転手は大きなストレスを感じるという自転車がバスの横をすり抜けるように走ると、バスの運転手は大きなストレスを感じるという

 参加者からは実走評価の様々な感想や意見が出た。議論の的となったのは、バスとの共存について。現役の路線バス運転者からは、バスは道路の状況に合わせて走るだけでなく、客の快適乗車が義務付けられていることや、自転車が突然バスの前や横に現れたり、歩道とバスの間をすり抜けたりする予測できない動きに大きなストレスを感じていることが紹介された。

 これを聞いたパネラーや参加者からは、「(国道246号の)1車線はバスと自転車の専用レーンにした方がいい」「バス運転手のストレス改善を」といった意見が多く出された。

 東京でも最も混雑する道路といえる世田谷区内の国道246号に整備された自転車ナビライン。この新しい自転車通行空間が機能して交通事故減少やマナーアップにつながるよう期待し、そして成功例としてどんどん全国に広がって行くことを願いたい。

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