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布袋田沙織のパワートレーニングで速くなる!<4>乗鞍の優勝レースデータを解析 体感に頼らない「自分の本当の姿」を知って速くなろう

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現在、真冬の奈良でトレーニング中。路面があちこち凍結していて大変です現在、真冬の奈良でトレーニング中。路面があちこち凍結していて大変です

 すっかりご無沙汰してしまいました。遅ればせながら、Cyclist読者の皆様、あけましておめでとうございます(旧正月の挨拶か!?…^ ^;)

 2月は寒さのピークですが、みなさんは自転車と仲良く過ごせていますか。私は11月にオフシーズンに突入した気の弛みや引っ越し(奈良県民になりました!)などのバタバタで満足に自転車に乗れない日が続き、3kgの体重増加…。昨年夏頃から地道に積んできた事も、間が空いた途端に崩れてしまうものですね。そして、崩れるスピードの速さときたら(怖)。

◇      ◇

 昨年の地道なトレーニングと言えば、昨年9月上旬の全日本マウンテンサイクリングin乗鞍に向けたヒルクライムの練習が私のなかに印象深く残っています。連載4回目の今回は、初参戦したこの乗鞍のパワーデータを公開します。

「全日本マウンテンサイクリングin乗鞍」のMTB女子の部で優勝しました!「全日本マウンテンサイクリングin乗鞍」のMTB女子の部で優勝しました!

初挑戦の乗鞍、雨のち晴れで大絶景を堪能

 全日本マウンテンサイクリングin乗鞍は、長野県松本市にある乗鞍高原を舞台に繰り広げられる日本屈指の自転車ヒルクライムレースです。コースは全長20.5km、標高差1,260m、平均勾配6.1%、ゴール地点は国内ヒルクライム大会の中では最高所となる2,720m(!)という高難易度。それゆえに、好天に恵まれれば、北アルプス連峰を眺めながら苦楽を存分に楽しめるという、まさに「天上決戦」です。「乗鞍ヒルクライム」の名で親しまれ、毎年参戦していたり、ここでのリザルトを自身の競技レベルのベンチマークにしている方も多いですよね。

スタートを待つ私。あいにくの雨のなかでも、乗鞍初挑戦のワクワクは抑えられない!?スタートを待つ私。あいにくの雨のなかでも、乗鞍初挑戦のワクワクは抑えられない!?

 今回、私はマウンテンバイクで参戦することを決めていました。周りからは「そんなバイクで出るの?」と驚かれましたが、私の目的は順位よりも走行データ収集。なので、リアにはもちろんパワータップホイールをセット。さらに、主観とデータがどれだけ異なるのかを実感するために、あえてサイコンを見ないようにして走ることも決定!レースに対して不敬なことに映るかもしれませんが、どんな意図を持って、どのように楽しむのか、苦しむのかは人それぞれ。言うまでもなく、ふざけているわけでもありません! 今のすべては半年後、1年後、5年後のためだから!

 前年の当レースは天候不良でコースを短縮しての開催だったそうなので、「今回は何としても晴天!」と勢い込んで現地入りしましたが、その祈り虚しく、2年連続の悪天候(涙)。コースも全長19.1kmに短縮されてしまい、「日頃の行いが悪かったかな…(笑)」と懺悔しつつ、雨と寒さのなかでスタートを切りました。

 ところが、2000mを越えたところで天気はV字回復! 気持ちの良い青空のもと、1:35:33、399位でゴールすることが叶い、登りきった者だけが得られる大絶景を堪能しました。やっぱり日頃の行いが良かったんだ!(笑)

レースのデータを実際に分析

 それでは肝心のレースデータを見てみましょう。乗鞍のコースを初めて走って記録したこのデータが、1年後の同レースに挑むにあたって、非常に重要な道しるべとなります。当然このデータを上回る走りをしないといけないので、データ分析はしっかり行いますよ!

 実際のデータはこちらです。

1時間半の苦しみから得た貴重な走行データ。よく見ると中盤でパワー(ピンクの線)の落ち込みが…1時間半の苦しみから得た貴重な走行データ。よく見ると中盤でパワー(ピンクの線)の落ち込みが…

 パワーメーターを使っているとよく分かるのですが、「あの登りはキツかったなぁー!」とか「あのセクションは上手く走れた!」といった主観と実際のデータが合致しないことがままあります。私のような経験の浅いライダーは特にそれが顕著ではないでしょうか。

 例えば、この乗鞍では中盤あたりで調子が良かったのですが、後半は非常に体力的にキツく感じ、タレタレで走っているイメージでした。ところがレース後にデータを見ると、意外にも後半は底力が出せていたのか、比較的良い数値。むしろ中盤の数値は芳しくなく、実は中だるみ状態で走っていたことを示しています。中だるみ状態を「呼吸も落ち着いて良く走れている」と勘違いしていたんですね(汗)。

 レースを3分割して30分毎のデータを見ると、序盤が飛ばし過ぎ、中盤の数値が軒並み落ち込んでいて、終盤に少し盛り返しているのが良く分かります。

体感とは裏腹に中盤には寂しい数字が並んでいます…(泣)体感とは裏腹に中盤には寂しい数字が並んでいます…(泣)
苦しい時間帯も耐え続けた甲斐あって、MTB女子の部で優勝の栄誉にあずかりました! チャンピオンジャージなんて人生初!苦しい時間帯も耐え続けた甲斐あって、MTB女子の部で優勝の栄誉にあずかりました! チャンピオンジャージなんて人生初!

 このように、パワーデータはスタートからゴールまでのパフォーマンスを1秒刻みで鮮明に映し出してくれます。これがなければ、私は体が感じた通りに実際とは真逆のレース分析をし、間違ったトレーニングを行うことになっていたと思います。これって経験豊富な選手でも、いざパワーメーターを使ってみると、体感と現実の乖離にビックリすることがあるんじゃないかな、なんて思ったりします。パワーメーターを導入しているプロ選手が多いことは、体感が導く誤った認識を極力排除することがいかに重要なことかを物語っています。

 ボイスレコーダーで録音した自分の声を聞くと、「あれ、自分はこんな声してたかな?」という感覚になったことがある方は少なくないと思います。私も自分でイメージしている動きと実際の動きは違っていることが多いので、MTBのスキル練習でもビデオカメラを用いて、頭で思い描いたライディングができるよう努力しています。トレーニングをパワーで管理するというのは、イメージとリアルの乖離をなくすという点では同じかもしれませんね。

グラフから分かること

 もう少し詳しく検証してみましょう。例えばパワーとケイデンス。グラフではこの2つの線が交差している箇所があれば、逆に仲良く上下している箇所もあります。これはどういうことでしょうか?

パワー=トルク(ペダルを踏む力の大きさ) x ケイデンス(ペダルを回す速さ)

パワーの計算式。厳密にはパワータップの場合、「パワー=ハブが捻じれる力の大きさ x ハブの回転スピード」となりますパワーの計算式。厳密にはパワータップの場合、「パワー=ハブが捻じれる力の大きさ x ハブの回転スピード」となります

 ケイデンスが高くなる、つまりペダルが速く回るとパワーは大きくなり、かつ、重いギアを踏むほどパワーは大きくなる。これが原理です。なのでアウタートップでペダルを高回転させるのが最も大きなパワーを出す方法となるのですが、現実は「軽いギアで回転数を高める」と「回転数を下げるかわりに重いギアを踏む」のどちらかの選択を迫られます。

 グラフでケイデンス(オレンジの線)とパワー(ピンクの線)が交差またはお互いに近寄ったり離れたりしている箇所は上記の現象(回転が上がってパワーが下がる、またはその逆)が起こっていることを示しています。ところが、1時間を過ぎた辺りから2本の線の動きが同調して下がるような箇所が増えていますね。

ケイデンスとともにパワーも降下している箇所。疲れがピークを迎える終盤でも綺麗なペダリングを意識するという課題も見つかりましたケイデンスとともにパワーも降下している箇所。疲れがピークを迎える終盤でも綺麗なペダリングを意識するという課題も見つかりました

 回転数を落としたにもかかわらず、パワーが下がってしまっているのです。コース2/3を経過して疲労の蓄積からペダリングが雑になり、踏み込む力がペダルに上手く伝わっていない証拠です。ペダリングのほか、脚力、脚質、傾斜に合ったギア選択ができていないとのこと。同じワットを出すにも、軽いギア+高ケイデンス、重めのギア+ゆっくりケイデンスのどちらが合っているかはライダーによるので、これからの練習でそのへんも見極めていきたいと思います。

ゴールした乗鞍山頂は気持ちの良い晴れ空に!ゴールした乗鞍山頂は気持ちの良い晴れ空に!

パワーメーターで自分の「本当の姿」を知ろう

 どうですか? パワーメーターをつけてレースを走るだけで、これだけの改善ポイントの洗い出しができました。技術的なことは一朝一夕で改善できませんが、意識するだけでタイムロスを防ぐことができる部分もたくさんあります。でもそれって、そもそもその問題点を把握できていてこそ! せっかく貴重な時間とお金をつぎ込んでレース遠征に来ているのに、漫然と走って帰ってくるだけでは非常にもったいないと思いませんか?

『ハイレベルなヒルクライムレースではアタックもありますが、まずは最速で頂上に到着する方法を模索するのが近道』とPeaks Coaching Groupの中田コーチ『ハイレベルなヒルクライムレースではアタックもありますが、まずは最速で頂上に到着する方法を模索するのが近道』とPeaks Coaching Groupの中田コーチ

 Peaks Coaching Groups(PCG)の中田コーチはヒルクライムのレースでタイムを縮めるためには、一度同じぐらいの山を全力で登って平均パワーを出し、それをペーサーにして走ることが基本だと教えてくれました。もし1時間かけて登れる山がなければ、30分程度のデータから本番レースに役立つ平均パワーを推定することも十分可能だそうです。

 レースになるとパワーメーターや心拍計をつけずに走るという人も多いと思いますが、前回も書きましたが、レース本番の「生きたデータ」からは本当に多くの発見があります。レース中に数値を確認することで防げるミスがあるし、たとえレース中は見る余裕がなくても、データを記録しておけばレース後の分析で、ライバルに振り落とされた局面で何が原因だったかを紐解く手がかりが見つかるかもしれません。その後のトレーニングの有効性も大きく違ってくるので、録れるデータはできる限り録るようにしたほうがいいですね。

 「ちょっとでも機材を軽くして臨みたいんだ!」というのが理由の人は、前回の中田コーチのお言葉『大丈夫、大丈夫! 100gや200gそこそこの重量差でレース順位がどうこうなることなんて、まずない。負ける原因は自分に力が足りないというだけのことだから』を思い出してみてくださいね。

 今の本格的に寒い時期は登坂能力の向上に最適です。走り終わったらゆったりとお風呂に入って、こたつみかんでパワー検証…というのも良いですね(^^)

布袋田沙織 布袋田沙織(ほていだ・さおり)

大学を卒業後、IT企業に務め2010年に独立。2012年に表参道にてパーソナルスタジオmiao(ミャオ)を開始。モデル、アナウンサー、スポーツ選手、一般の方々にトレーニングを指導。MTBは2013年より始め、初年度で表彰台を獲得。BH RACING MTB TEAM所属、バイシクルアドバイザー、ボディメイクトレーナー、パーソナルスタジオmiao 代表。ブログ:http://ameblo.jp/saoringo825/

【PowerTap Column<4>】パワーメーターはアフターケア必須の機材

他のパーツよりも不具合発生の確率が高いパワーメーターは修理も専用機材を要するため、安易に非正規品に手を出すのはリスク。1カ月もデータが欠けてしまうと、もはやパワートレーニングは成り立たないものと思いましょう他のパーツよりも不具合発生の確率が高いパワーメーターは修理も専用機材を要するため、安易に非正規品に手を出すのはリスク。1カ月もデータが欠けてしまうと、もはやパワートレーニングは成り立たないものと思いましょう

 精密機器であるパワーメーターは、デリケートさにかけては自転車機材のなかでもトップクラス。ライド前のゼロ点設定は必須ですし、おかしな出力の値が出るようになった…という経験をされた方も少なからずいるでしょう。

 パワータップも安さにつられて海外通販などで購入すると、あとあと面倒なことに。極端な話、届いて一週間で故障が発生した場合でも、国内では保証が適用されず有償修理となってしまいます。かといって、海外の販売元を通して修理を依頼すると1カ月はかかります。

 国内正規代理店であるキルシュベルクは自社でほとんどの修理が行え、預かりも1週間前後とスピーディーなので、パワートレーニングで足止めをくらうことを回避できます。保証期間中(2年)の安心や保証が切れた後の優遇措置などを考慮すると、パワータップは国内正規品を購入するのが賢明と言えるでしょう。

■保証サービス・修理ご依頼フォーム(キルシュベルク)

(文 なるしまフレンド神宮店 小畑郁)

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