マネージャー役は益子直美さん山本雅道選手のショップ「BFY」が実業団チーム結成 きっかけは中学生の「レースに出たい」

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 ロードレースの元全日本アンダー23王者で、今シーズンにキナンサイクリングチームから現役復帰する山本雅道選手が営むサイクルショップ「BYCYCLE FACTORY YAMAMOTO」(バイシクル ファクトリー ヤマモト=BFY、神奈川県藤沢市)が、「チーム BFYレーシング」を発足させた。「レースに出たい」とショップの門を叩いた中学生の情熱に応え、本格的なレース経験を積めるよう、戦いの舞台を実業団に定めた。所属する9選手のうち3人が中学生だ。山本選手は「ロードレースを始めたい子供たちのために、競技への入口を作りたい」と意気込んでいる。 (レポート 平澤尚威)

山本雅道選手(前列右から2人目)のサイクルショップから誕生した「チーム BFYレーシング」山本雅道選手(前列右から2人目)のサイクルショップから誕生した「チーム BFYレーシング」

子供が競技を始める道筋を作る

それぞれアドバイザー、マネージャーとして「チーム BFYレーシング」をサポートする山本雅道選手、益子直美さん夫妻それぞれアドバイザー、マネージャーとして「チーム BFYレーシング」をサポートする山本雅道選手、益子直美さん夫妻

 BFYレーシング発足のきっかけは、「レースに出たいんですが、どうしたらいいですか」とショップを訪ねてきた中学生たちの存在だ。ショップに集う大人たちもチームに参加するが、「本格的に競技をやりたい中学生たちのためのチーム」としての役割が大きいという。

 その背景にあるのは、サイクルショップでの出会いを通してプロ選手への道が開けたという山本選手自身の経験だ。「同じようなチャンスがもっとあれば、強い選手が増えてくるはずです」と、才能ある若手の発掘を狙う。これは、山本選手が実行委員を務める「JrIDE PROJECT」(ジェイ・ライド・プロジェクト)による、サイクルロードレースのメジャースポーツ化を目指して子供たちを育成するという活動の趣旨にも合致している。

 近年はロードレースの人気が少しずつ高まっているものの、自転車好きの子供がどうしたらレースに出られるか、どうしたらプロ選手になれるのかの道筋は、あまり知られていないのが現状だという。山本選手は、面接を通してやる気などを見極めながら、プロ選手を目指す中学生を受け入れていく考えだ。主な対象は中学生だが、部活がある高校生でも、相談しながらBFYレーシングで活動することが可能だという。

湘南地域の代表的なスポット、江ノ島周辺を走る「チーム BFYレーシング」湘南地域の代表的なスポット、江ノ島周辺を走る「チーム BFYレーシング」

 山本選手は今季、キナンの選手として活動するため、BFYレーシングの監督はショップスタッフの加藤司馬(かずま)さんが務める。加藤さんは20歳という若さながら、スミタ・ラバネロや湘南ベルマーレ(当時)で走っていた元選手だ。山本選手はシーズン中、レースやトレーニングのため店を空けることが多くなるが、これまでのプロ選手経験やレース現場の情報を伝授するアドバイザーとして関わっていく。

目標は「ヨーロッパでプロとして走る」

(左から)2年生の福田圭晃くんと白石光くん、1年生の五十嵐洸太くん(左から)2年生の福田圭晃くんと白石光くん、1年生の五十嵐洸太くん

 チームに所属している中学生は、2年生の福田圭晃くんと白石光くん、1年生の五十嵐(いからし)洸太くんの3人。「小さい頃からツール・ド・フランスをテレビで見ていました」という福田くんが白石くんを誘い、競技を始めたいとBFYの門を叩いた。五十嵐くんは、もともとBFYに通っていた大学生の兄から影響を受け、ロードバイクに興味をもったという。

 平日は学校が終わってからBFYに来て練習を積んでいるほか、週末にも指導を受けている。出場するレースは、JBCF(全日本実業団自転車競技連盟)のジャパンユースツアーを中心に、主に関東から参加しやすい地域の大会となる予定だが、山本選手は「経験させたい大きなレースには、遠くても連れていきたい」と考えている。今夏には、山本選手の知人を頼ってヨーロッパへ短期留学させる予定もあるという。

山本雅道選手の指示のもとローラー台でトレーニングする福田圭晃くん山本雅道選手の指示のもとローラー台でトレーニングする福田圭晃くん

 3人は昨年の夏から秋頃にレースデビューを果たしている。福田くんは「ヨーロッパでプロとしてレースを走ること」が目標だ。今年は「アタックして逃げて勝ちたい。あと、山本雅道さんを倒します」と、自信たっぷりに語った。白石くんと五十嵐くんはそれぞれ「福田くんに勝ちます」「先輩2人に勝てるようになりたい」と語り、ともに「ツール・ド・フランス出場」を目標を掲げた。3人とも、身近な存在を超えたいという思いと、プロになるという将来の大きな目標を抱いている。

プロとしての振る舞いを身につけるチャンス

 チームのマネージャー役となる山本選手の妻で元バレーボール全日本代表の益子直美さんは、「周りの大人たちが中学生たちをうまくサポートしてくれている」と話す。「『お父さんとお母さんに感謝しなさい』とか、高校時代に海外留学した方が『早いうちに海外を経験してみたら?』といったアドバイスをくれるんです」。自転車競技を続けるためには、親の協力は欠かすことができない大切な要素だ。

店内に集った「チーム BFYレーシング」の選手たち店内に集った「チーム BFYレーシング」の選手たち
湘南の海沿いを走る選手たち湘南の海沿いを走る選手たち

 BFYレーシングには、若い選手を育てたいという山本選手の活動を応援する地元企業などがスポンサーについた。自転車関連の企業だけでなく、飲食店も名を連ねている。スポンサードされていることで選手たちの意識が高まるだけでなく、「プロとしての振る舞いを子供のうちから学んでもらえる」という効果も生まれた。支援により得た資金は、主に中学生たちの競技活動に充てられる。

中学生と若手選手に「経験を伝える」

キナンサイクリングチームのユニフォームで走る山本雅道選手キナンサイクリングチームのユニフォームで走る山本雅道選手

 一方で「自転車のプロの現実を見せてあげないといけない」とも山本選手は語る。収入が低いという問題や、与えられた機材で走らなければならないという制約など、「ロードレースのプロとは何か」を教えられる存在がいることは、中学生たちが目標に向かって成長していうえで貴重な財産となることだろう。

 3年間のブランクを経て現役復帰する山本選手自身にとっては、自身の選手活動と若手育成という2つの挑戦を前に、「こんなチャンスを与えていただけることが嬉しい」と意欲を燃やしている。

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