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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<96>コスタを中心とした国際色豊かなメンバー ランプレ・メリダ 2015年シーズン展望

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 各地でレースが行われ、サイクルロードレースシーズンの始まりを少しずつ実感できる時期になりました。UCIワールドツアーがブレイク期間に入ったこともあり、注目チームの2015年シーズン展望を再開します。今回はランプレ・メリダ。イタリアカラーの強かったチームが、国際色を強めた新コンセプトのもと戦いを進めようとしています。

新シーズンを迎えたランプレ・メリダ。ウェアの方口だけでなくヘルメットもピンクになり、集団内でさらに目立ちそうだ ©Lampre - Merida新シーズンを迎えたランプレ・メリダ。ウェアの方口だけでなくヘルメットもピンクになり、集団内でさらに目立ちそうだ ©Lampre - Merida

ルイ・コスタがエース 照準はツールの総合争い

世界チャンピオンとしてツールに挑んだルイ・コスタだが、不調によりリタイアに終わった(ツール・ド・フランス2014)<砂田弓弦撮影>世界チャンピオンとしてツールに挑んだルイ・コスタだが、不調によりリタイアに終わった(ツール・ド・フランス2014)<砂田弓弦撮影>

 2014年シーズンは、前年の世界選手権ロードレースを制し、マイヨ・アルカンシエルを獲得したルイ・コスタ(ポルトガル)が加入。さらに、シーズン開幕直後の1月にはブエルタ・ア・エスパーニャ総合王者、クリストファー・ホーナー(アメリカ、現エアガス・セーフフェイ サイクリングチーム)とも契約。ジロはホーナー、ツールはコスタと、グランツールでエースを務める選手を確定させ、戦いの方向性が定まった。

 しかし、ホーナーが春にトレーニング中の事故で戦線離脱。代わってジロでエースを務めたディエゴ・ウリッシ(イタリア)がステージ2勝を挙げたが、総合ではダミアーノ・クネゴ(イタリア、現NIPPO・ヴィーニファンティーニ・デローザ)の19位が最高と、ホストレースで手痛い結果に終わった。続くツールもコスタが不調。第16ステージで大会を去り、復帰間もないホーナーが総合17位にまとめるのが精一杯。ブエルタではウィナーアンドルー・アナコナ(コロンビア、現モビスター チーム)、プシェメスワフ・ニエメツ(ポーランド)がステージ1勝ずつを挙げたが、グランツールの総合を狙うチームとしては課題の残る1年だった。

ルイ・コスタは安定感を発揮しシーズン終盤も好走を見せた(ジロ・デ・ロンバルディア2014)<砂田弓弦撮影>ルイ・コスタは安定感を発揮しシーズン終盤も好走を見せた(ジロ・デ・ロンバルディア2014)<砂田弓弦撮影>

 今シーズンはメンバー再編成によって、コスタがチームの絶対的エースの立場を固めている。総合リーダーとして、ツールでの戦いを見据える。昨シーズンはツールこそ不発だったものの、全体的には安定した戦いぶりが光った。“マイヨ・アルカンシエルの呪い”が不安視されたシーズン前半も、ステージレースの総合で2位や3位と上々の結果。ツール前哨戦の1つ、ツール・ド・スイスでは総合3連覇を達成するなど、世界王者に恥じない好走を披露した。その勢いは、ジャージを手放した後のジロ・デ・ロンバルディア3位、ツール・ド・北京での総合4位といったシーズン後半の走りにもつながった。

 今年は2月17日開幕のツアー・オブ・オマーンでのシーズンインを予定。3月のパリ~ニース、4月のブエルタ・アル・パイス・ヴァスコ(バスク一周)では総合優勝候補に名乗り出る。アルデンヌクラシック後は調整に充て、4連覇のかかるツール・ド・スイス、そしてツールに臨むスケジュールとなる。コスタにとって、得意とするTTの距離が短いツールをどう戦うかが焦点となる。現実的な目標を総合トップ10に置く彼の走りは、シーズン前半のステージレースである程度占うことができるだろう。

3月に復帰するディエゴ・ウリッシはジロの総合エース候補だ(ジロ・デ・イタリア2014)<砂田弓弦撮影>3月に復帰するディエゴ・ウリッシはジロの総合エース候補だ(ジロ・デ・イタリア2014)<砂田弓弦撮影>

 また、サルブタモールの陽性反応により長期の資格停止の可能性があったウリッシが、3月26日に復帰することもチームにとっては朗報だ。薬物違反は昨年のジロ第11ステージ終了後の検査で発覚。6月以降、チームは自主的にウリッシのレース活動をストップさせていたが(9月に1レースのみ出場)、「喘息治療薬として使用する中で過剰摂取に至った」との主張が通った。この決定によって戦力として計算できる目途が立った。順当にいけば、ジロで総合エースを務める可能性が高い。

イタリア人選手の加入はゼロ チームのグローバル化を優先した補強

 メンバーは昨シーズンより1人少ない25人。UCIワールドチームにおける所属選手の下限ギリギリで今シーズンを戦う。特筆すべきは、イタリア籍のチームでありながら自国選手を1人も加入させなかった点だ。

 新加入の6選手はいずれも国籍が異なり、主要スポンサーであるランプレ社、メリダ社双方の狙いであるグローバル化を積極的に推し進める成果が出ている。

ツガブ・ゲブレマリアム・グルマイは総合11位と健闘(ツアー・ダウンアンダー2015)©Lampre - Meridaツガブ・ゲブレマリアム・グルマイは総合11位と健闘(ツアー・ダウンアンダー2015)©Lampre - Merida

 その中でいち早く結果を残したのが、ツガブ・ゲブレマリアム・グルマイ(エチオピア)。1月のツアー・ダウンアンダーではクイーンステージのウィランガ・ヒル(第5ステージ)でトップから38秒遅れの14位にまとめ、総合11位と健闘した。昨年まで2年間はMTN・クベカに所属。2013年のツール・ド・台湾第5ステージを制し、エチオピア人として初のUCIレース優勝の快挙を成し遂げた選手だ。ロード、TTともに同国では群を抜く存在で、クライマーとしての脚質やアフリカ人選手特有の身体能力に注目が集まっている。

逃げて存在感を示したフェン・チュンカイ(ドバイ・ツアー2015)©Lampre - Merida逃げて存在感を示したフェン・チュンカイ(ドバイ・ツアー2015)©Lampre - Merida

 昨年までUCIアジアツアーを主戦場としたフェン・チュンカイ(台湾)は、2月上旬のドバイ・ツアーで逃げに乗り存在感をアピール。グルマイ同様に同国の王者であり、今シーズンはチャンピオンジャージでトップシーンを駆ける。チーム2年目となるシュー・ガン(中国)との関係も良好で、さらには中国人スタッフが加わるなど、周囲の環境に恵まれている点もプラスに働くだろう。

 コスタの山岳アシストとして期待がかかるのは、ルーベン・プラサ(スペイン)。ベンフィカ、ケスデパーニュ、モビスター チームと、長年コスタとともに走り、信頼度の高さを買われた格好だ。また、コスタの実兄であるマリオ・コスタも加入。これまでポルトガルのレースをメーンに走ってきたが、この移籍を機にトップレベルでの活躍を目指すこととなった。

 そのほか、トレーニー(研修生)から昇格したイリア・コシェヴォイ(ベラルーシ)、ルカ・ピベルニク(スロベニア)ら若い東欧系ライダーも将来を嘱望されている。

ベテランのニエメツ、ポッツァートらの復調が戦力アップのカギ

 長年チームを支えた功労者のクネゴ、若手クライマーのアナコナが去り、これまでとは違った戦い方が求められる。ベテランと若い選手の力がマッチするかがポイントだ。

 グランツールでの実績豊富なニエメツは、再び総合トップ10を目指したい。2年前のジロ総合6位を上回る走りができるか。

ミラノ~サンレモと北のクラシックでの活躍を目指すフィリッポ・ポッツァート(ツアー・オブ・ジャパン2014)<田中苑子撮影>ミラノ~サンレモと北のクラシックでの活躍を目指すフィリッポ・ポッツァート(ツアー・オブ・ジャパン2014)<田中苑子撮影>

 ツアー・オブ・ジャパンでの来日が記憶に新しいフィリッポ・ポッツァート(イタリア)は、ミラノ~サンレモと北のクラシックでの結果を求める。昨年はゼネラルマネージャーのブレント・コープランド氏との確執も囁かれ、レースでも苦戦続きだったが、今年に入りドバイ・ツアー総合10位とまずまずの走りを見せている。クラシックシーズンの走りでインパクトを残し、世界選手権イタリア代表復帰を目指す。

 ポッツァートとともにミラノ~サンレモで軸となるのが、スプリンターのサーシャ・モドロ(イタリア)。2度のトップ10フィニッシュを経験し、今年はさらに上の順位を狙う。

 そのほか、実績豊富なスプリンターのロベルト・フェラーリ(イタリア)、TTスペシャリストのネルソン・オリヴェイラ(ポルトガル)、クライマーのホセロドルフォ・セルパ(コロンビア)といった実力者も控える。そして、ダウンアンダーでステージ10位以内に入ること4度のニッコロ・ボニファジオ、オールラウンダーのヴァレリオ・コンティ(ともにイタリア)の1993年生まれコンビも押さえておきたい存在だ。

ランプレ・メリダ チーム 2014-2015 選手動向

【残留】
ニッコロ・ボニファジオ(イタリア)
マッテーオ・ボーノ(イタリア)
マッティーア・カッタネオ(イタリア)
ダヴィデ・チモライ(イタリア)
ヴァレリオ・コンティ(イタリア)
ルイ・コスタ(ポルトガル)
クリスティアン・ドゥラセク(クロアチア)
ロベルト・フェラーリ(イタリア)
サーシャ・モドロ(イタリア)
マヌエーレ・モーリ(イタリア)
プシェメスワフ・ニエメツ(ポーランド)
ネルソン・オリヴェイラ(ポルトガル)
ヤン・ポランチ(スロベニア)
フィリッポ・ポッツァート(イタリア)
マクシミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチン)
ホセロドルフォ・セルパ(コロンビア)
ディエゴ・ウリッシ(イタリア)
ラファエル・バルス(スペイン)
シュー・ガン(中国)
【加入】
マリオ・コスタ(ポルトガル) ←OFM・キンタダリシャ
フェン・チュンカイ(台湾) ←チーム ガスト
ツガブ・ゲブレマリアム・グルマイ(エチオピア) ←MTN・クベカ
イリア・コシェヴォイ(ベラルーシ) ←ランプレ・メリダ(研修生)
ルカ・ピベルニク(スロベニア) ←ラデンスカ
ルーベン・プラサ(スペイン) ←モビスター チーム
【退団】
ウィナーアンドルー・アナコナ(コロンビア) →モビスター チーム
ダミアーノ・クネゴ(イタリア) →NIPPO・ヴィーニファンティーニ・デローザ
ルーカ・ドーディ(イタリア) →エリート2(無所属)
エリア・ファヴィッリ(イタリア) →サウスイースト
クリストファー・ホーナー(アメリカ) →エアガス・セーフフェイ サイクリングチーム
アンドレーア・パリーニ(イタリア) →スカイダイブドバイ プロサイクリングチーム
ルーカ・ヴァケルマン(イタリア) →サウスイースト

今週の爆走ライダー-サーシャ・モドロ(イタリア、ランプレ・メリダ)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシストや逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 プロ1年目の2010年、初出場のミラノ~サンレモでゴールスプリントに加わり4位でゴール。ビッグネームに割って入ったコルナゴ・CSFイノックス(当時)のジャージに「あれは誰だ?」と関係者が沸き立った。

 以来、イタリアきってのスプリンターに成長。2011年には世界選手権、2012年にはロンドン五輪のイタリア代表に抜擢されるまでに。規模の小さなプロコンチネンタルチームでの走りに満足していたが、勝利を重ねるたびにビッグチームでの活躍を夢見るようになっていった。

 2014年、念願かなってプロチームへの移籍を果たす。歴史と伝統のあるランプレ・メリダの一員となった。そして、喜びは走りに表れた。1月から2月にかけて4勝をマーク。ミラノ~サンレモでも8位入賞し、エーススプリンターの地位を確立した。

並みいるスプリンターを相手に勝利できる脚力をもつサーシャ・モドロ(ツール・ド・スイス2014)©Lampre - Merida並みいるスプリンターを相手に勝利できる脚力をもつサーシャ・モドロ(ツール・ド・スイス2014)©Lampre - Merida

 年間を通してハイレベルで走ることができるのが魅力だが、何よりシーズン序盤のスタートダッシュを得意とする。ビッグネームを次々と撃破し、自らの存在を誇示することで春のクラシックの走りにつなげてきた面がある。今年も1月のツール・ド・サンルイスでステージ3位が2回、4位が1回と上々の開幕となった。その先に見るターゲットはもちろん、ミラノ~サンレモだ。

 そのミラノ~サンレモは今年、サンレモ・ローマ通りのゴールが8年ぶりに復活する。数多くの名勝負を迎え入れた「ラ・プリマヴェーラ(春)」の名物が戻ってくるのだ。現役選手では誰ひとりとして、このゴールを制した者はいない。最初の勝者が自国のライダーであることを、イタリアのファンは願っている。モドロがその最右翼に挙げられるが、近年の活躍を見る限り、呼び声に違わず大きな仕事をやってのける可能性は十分だ。春を前に、彼をチェックしておいて損はないだろう。

文 福光俊介

福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、気がつけばテレビやインターネットを介して観戦できるロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。2011年、ツール・ド・フランス観戦へ実際に赴いた際の興奮が忘れられず、自身もロードバイク乗りになる。自転車情報のFacebookページ「suke’s cycling world」も充実。本業は「ワイヤーママ徳島版」編集長。

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