自転車観光を振興、新たなイベントの検討もロードレースを機に台風被害からの復興を 伊豆大島、2016年アジア選手権開催へ一丸

  • 一覧

 2016年1月に「アジア自転車競技選手権大会」のロードレース競技が行われる東京都大島町(伊豆大島)。離島とはいえ東京や伊豆半島からのアクセスが良く、観光やスポーツの島として親しまれてきた。しかし2013年10月、台風26号による土砂災害で大きな被害が発生し、現在も復興の途上にある。そんな中、来年のアジア選手権のリハーサルを兼ねたプレ大会「2015東京都個人ロードタイムトライアル大会」が1月19日に、またアジア選の試走サイクリングが前日の18日に開かれた。本番を1年後に控えた大島町の様子を取材した。
(文・写真 齋藤むつみ) 

天気が良ければ対岸に富士山を望めるサンセットパームライン沿いを走る参加者たち天気が良ければ対岸に富士山を望めるサンセットパームライン沿いを走る参加者たち

「夢のような話」 実現へ

 伊豆大島は長年、マラソン大会やトライアスロン大会の開催地として、スポーツによる地域振興に取り組んできた。自転車関連でも、海沿いのサイクリングを楽しめるサンセットパームラインを整備したり、島内10カ所に自転車整備工具と空気入れ(米・仏・英方式対応)を配備したりと、サイクリストの受け入れに力を入れている。

三原山側から大島町中心部を見下ろす。対岸は伊豆半島三原山側から大島町中心部を見下ろす。対岸は伊豆半島

 一方、2年前の10月16日に島を襲った豪雨で、中心街の元町付近に大きな土砂災害が発生。住宅街が流され、死者36人、行方不明者3人の甚大な被害が発生したことは記憶に新しい。

 そのような経緯の中で、2016年の自転車競技アジア選手権を伊豆大島で受け入れる話が持ち上がり、昨年10月に正式発表された。現在は本大会に向けて島全体で準備を進めているところだ。

 アジア選手権開催について、大島町の川島理史町長は「対岸の伊豆市(トラック)と、ここ伊豆大島(ロードレース、タイムトライアル)で種目を分けて開催する案を聞いた時には、それが実現したら夢のような話だと思いました。災害から1年3カ月が経ち、復興に向けての取り組みが本格化するなかで、島の『椿まつり』などと同様に成功させ、復興へつなげていくことができれば」と語った。

元町港客船ターミナルがプレ大会のスタート・ゴール拠点となった元町港客船ターミナルがプレ大会のスタート・ゴール拠点となった
東京都大島町の川島理史町長東京都大島町の川島理史町長

強風のなか行われた試走サイクリング

 ロードレースの予定コースを試走するサイクリングは18日に行われ、ロードの全日本チャンピオン、佐野淳哉(那須ブラーゼン)らエリート選手と、地元サイクリストら一般参加者が、小さな集団に分かれて元町港客船ターミナルをスタートした。

岡田港前をスタートするサイクリング参加者たち岡田港前をスタートするサイクリング参加者たち
本大会のスタート予定地点、大島支庁前を過ぎる参加者たち本大会のスタート予定地点、大島支庁前を過ぎる参加者たち
2016 アジア選手権ロードレースのコース2016 アジア選手権ロードレースのコース

 大島支庁前のT字路で右折し、海から離れて上りのルートをとる。勾配は、トップアスリートにはそれほど厳しくないものの、一般参加者には決して緩くはなく、周回を重ねればじわじわと脚に効きそうな坂道だ。

 コースが下り基調に変わってしばらくすると左折し、また海に向かう。下り坂は直線的で、やや荒れた路面もあった。大島空港の脇を過ぎて海岸線に出ると、タイムトライアルでも使用する予定のサンセットパームライン沿いの海岸線を進んでいく。この周回コースは一周約12km、男子エリートは15周で争われる予定だ。なお、本大会でのスタート地点は大島支庁になるという。

航空便が欠航…プレ大会で強風の影響を経験

 伊豆大島までは東京の竹芝から高速ジェット船で1時間45分と近く、同じくアジア選手権のトラック競技の開催地となる伊豆ベロドロームのある静岡県からは、熱海と下田から定期便が運航している。また、羽田と調布からは空路の利用も可能だ。しかし今回のプレ大会では、初日のサイクリングのスタートまでに到着するはずだった航空便が強風で欠航となり、出走できなかった選手もいた。

 この日の朝、取材陣が乗ったジェット船は予定通り辿り着いたものの、風速15mの強風が吹き荒れる中、途中で引き返す可能性もあったという。

初日のサイクリングでは、竹芝を出航したジェット船も危うく欠航するほどの強い風が吹いた初日のサイクリングでは、竹芝を出航したジェット船も危うく欠航するほどの強い風が吹いた
空路の玄関口、大島空港。滑走路をくぐるトンネルを抜けると、まもなく海沿いに出る空路の玄関口、大島空港。滑走路をくぐるトンネルを抜けると、まもなく海沿いに出る

 大島観光協会の白井岩仁会長によると、この季節は偏西風の影響で海が時化(しけ)ることはよくあり、来年の本大会でもその可能性は想定しているそうだ。「(この日)極端な天候や風の影響を経験できたのは、来年に向けて対策をしっかりと考える機会になり、主催者側としても良かった」とも語った。プレ大会は、事故や大きなトラブルもなく無事に終えられただけでなく、経験の面からも成功だったといえるだろう。

大島観光協会の白井岩仁会長大島観光協会の白井岩仁会長

 そして大会後についても、「(自転車の)選手たちの合宿地として利用して頂きたい。サイクリングやホビーレースイベントの新たな開催についても考えていきたい」と、スポーツサイクルで島の観光をさらに盛り上げていきたいという意気込みを語った。

レースは上り区間と風がキーポイント

 ロードレースのコースに対する選手の印象は、やはり上り区間と、海沿いの風が勝敗に影響しそうなポイントだという。全日本王者の佐野は、厳しいレース展開を予想する。

上りは後半のほうが勾配がきつくなるので、勝負のポイントの一つになると予想される上りは後半のほうが勾配がきつくなるので、勝負のポイントの一つになると予想される

 「上りが長く勾配もあったので、後半に集団がバラけそうな、思っていたよりも厳しいコースだなと思いました。テクニックを要求されるところもあり、最終的には少人数しか残れない展開になるのでは。また、強い風が吹いた時には、集団が分断されると戻れないようなレースになると思います」

 日本ナショナルチームを率いる浅田顕ロード強化ヘッドコーチは、折り返しのコース設定を取るにタイムトライアルついて、対面通行だとコース上にクルマが入りにくい点と、選手同士が追い越す際の危険性の問題点を指摘した。ロードレースのコースについては、「レースにはある程度の風はつきものなので、強い風、弱い風のときにそれぞれの対策を準備したい。エリートには強い風があるくらいで良い、全体としてはエリートからジュニアまで同一コースを使用するには、適度でバランスの取れたコースだと思います」と評価した。

 また、大会運営の技術的な側面としては、「今回は選手たちがそれぞれ1台のバイクを持ち込んでいますが、本大会ではロードもタイムトライアルも出る選手ならば2台、そして選手の数も多くなりますし、関係者も多数来ますので、クルマや機材、選手たちの荷物が円滑に運搬できる環境を整えて欲しい」と語った。

全日本王者の佐野淳哉(中央)は、プレ大会で優勝を飾った全日本王者の佐野淳哉(中央)は、プレ大会で優勝を飾った
ロードレースの日本ナショナルチームを率いる、浅田顕ロード強化ヘッドコーチロードレースの日本ナショナルチームを率いる、浅田顕ロード強化ヘッドコーチ

高まる期待 「島全体でおもてなしを」

火山の噴火で形成された平坦なカルデラと三原山火山の噴火で形成された平坦なカルデラと三原山

 観光資源が豊富な伊豆大島。夏には海水浴や、三原山のハイキングを楽しむ訪問者も多い。しかし来年のアジア選手権開催時には、アジア各国の代表選手が来訪する。島がこれほど国際色豊かになることはこれまでになく、様々な面で準備が必要となるだろう。

 プレ大会を終えて、川島町長は「大島の景色の中を選手たちが颯爽と走り抜けていくのを見て、来年にはアジアのトップ選手たちが集まり、駆け抜けていくのかと考えると、期待感が高まるばかり」と、改めてアジア選手権への意欲を語った。また「これまでのフルマラソン大会やトライアスロン大会開催の経験を生かして、島全体でおもてなしをし、応援できる雰囲気作りを進めたい」と述べ、島が一丸となっての取り組む決意を強調した。

元町港からすぐにある浜の湯温泉は、海を見晴らせる水着着用の露天風呂施設。三原山の噴火で湧きだしたお湯を利用している。道路を挟んで向かい側には町営の御神火温泉もある元町港からすぐにある浜の湯温泉は、海を見晴らせる水着着用の露天風呂施設。三原山の噴火で湧きだしたお湯を利用している。道路を挟んで向かい側には町営の御神火温泉もある
椿は大島を代表する植物。紅色、白、ピンクなどの色の種類があり、種子から取った椿油は島の特産品だ椿は大島を代表する植物。紅色、白、ピンクなどの色の種類があり、種子から取った椿油は島の特産品だ

この記事のコメント

利用規約順守の上ご投稿ください。
  • 一覧

新着ニュース

もっと見る

ピックアップ

e-BIKE最新特集

スペシャル

自転車協会バナー

ソーシャルランキング

インプレッション

インプレッション一覧へ

連載