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“自転車革命都市”ロンドン便り<15>海を渡れば“自転車天国”オランダ 街なかや都市間の移動は自転車がキホン!?

by 青木陽子 / Yoko AOKI
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オランダのシティサイクルは乗車姿勢がほぼ直立。子どもや動物、荷物を運べるカーゴ車もとても多いオランダのシティサイクルは乗車姿勢がほぼ直立。子どもや動物、荷物を運べるカーゴ車もとても多い

 今回もロンドン事情から少々脱線しますが、オランダ・アムステルダムに出張する機会があったので、折りたたみ自転車のブロンプトンを持って行ってまいりました。そのレポートをお送りします。

 「Cyclist」読者のみなさんならご存知の通り、オランダは自転車利用先進国。70年代にはすでに自転車利用の促進を決め、自転車レーンの整備などを進めてきています。オランダとイギリスは狭い海峡を挟んで隣同士、雨が多いなど気候も似ているのに、自転車利用に関しては天と地ほどの差があります。

 イギリスとくにロンドンは、すぐお隣にいい先輩がいるじゃないかと、自転車のための交通プロジェクトに「オランダ式」と名前をつけるほど熱心にそのやり方を学ぼうとしています。一方オランダも、ロンドンで開かれる自転車利用推進会議に在英オランダ大使館がお金を出して協賛したりと、自分たちが築き上げてきた成功例をシェアすることに積極的な様子です。

オランダの大きな川にかかる自転車と歩行者のための専用橋。長くゆるい傾斜のスロープの弧が印象に残る美しさオランダの大きな川にかかる自転車と歩行者のための専用橋。長くゆるい傾斜のスロープの弧が印象に残る美しさ

幅広の自転車レーンがくまなく敷かれたアムステルダム

金融街シティにある、ロンドンのリバプールストリート駅を19時半に出発! お供はブロンプトン。2泊分の荷物でバッグがパンパン金融街シティにある、ロンドンのリバプールストリート駅を19時半に出発! お供はブロンプトン。2泊分の荷物でバッグがパンパン

 旅をするときはなるべく化石燃料消費の少ない交通手段を選ぶことにしているので、今回は列車とフェリーの組み合わせでロンドン~アムステルダム間を往復することにしました。小さくたためるブロンプトンなら、英仏海峡トンネルを走る「ユーロスター」の自転車保管スペース(有料)を予約しなくても乗れますが、夜行フェリーで旅気分を味わうのもいいかなというわけです。

 ロンドン都心のリバプールストリート駅を19時半に出て、イングランド東岸にある港まで急行で1時間半。駅から直結している港で出国手続きをし、そのまま船内へ。トイレ・シャワーとテレビ付きの個室キャビンはモダンで清潔、熟睡して翌朝目覚めたときにはオランダの港の灯りが見えました。そこからふたたび列車で1時間強、朝10時にはもうアムステルダムです。

 まずは、オランダの自転車事情にアツい眼差しを送っているイギリスの自転車推進派の間では有名な、アムステルダム中央駅の巨大自転車駐輪場をチェック。現時点で6500台(!)のキャパシティがありますが、まったく足りていないので、1万7500台を駐輪できるようにする計画が進んでいるとか。この規模はオランダでは珍しくなく、同駅から南東のユトレヒト駅には2万台規模の駐輪スペースがあるそうです。

アムステルダム中央駅の駐輪場。収容1万7500台弱を目指した拡張プランもある。自転車修理引受コーナーもアムステルダム中央駅の駐輪場。収容1万7500台弱を目指した拡張プランもある。自転車修理引受コーナーも

 運河が同心円状に広がるアムステルダムの中心部では、人々の移動の60%を自転車が担っているとか。走りだしてみれば、主要な道にはほぼすべて自転車レーンが用意されていて、その多くが車道と物理的に仕切られていました。しかもその幅が広い!

 わたしも目撃しましたが、2台横に並んだカップルがずーっと手をつないだまま走っているのが普通の光景らしいです(うらやましい)。ペダルを逆向きに回して止まるコースターブレーキ車が主流だから、なおさら手も繋ぎやすいのでしょう。横に並んだまま信号待ちでキスをしているカップルも見ました(う、うらやましい!)。

観光資源としても活用されている自転車

 翌朝の通勤ラッシュ時にもカメラを持って街角に出てみました。どんな雰囲気なのかは以下の動画をご覧ください。

※動画中のスクーター(日本で言うところの原チャリ)について。オランダでは、小排気量のスクーターは時速25kmまでなら自転車レーンを走っていいことになっているそうなのです(ヘルメット着用義務もなし)。ただ最近はスピードの出る車種が増えており、スクーターの台数も増えているため、スクーターにヘルメットの着用を義務化した上で車道に出すことが検討されているとか。

「クルマによる自転車の右折巻き込み(日本などでの左折巻き込みに相当)に気をつけろ」という注意喚起標識「クルマによる自転車の右折巻き込み(日本などでの左折巻き込みに相当)に気をつけろ」という注意喚起標識

 動画の最後のほう、自転車レーン専用の信号が、クルマの信号よりも数秒早く青色に変わるのに気づきましたか? こうして自転車が先に交差点内に入るようにすることで、右折(日本やイギリスなど左側通行国にとっての左折に相当)するクルマが直進する自転車に突っ込む可能性を下げているのです。この方法はデンマークやドイツでも採用されていると聞いています。

 ほかに、ラウンドアバウト(ロータリー)では自転車が常に優先というのも、実際に目の当たりにすると感動を覚えます。自転車はクルマよりも円の外側の専用レーンを走っているので、円の内側から右折して出ようとするクルマとまだラウンドアバウトの中を直進する(回っている)自転車の進路が交錯するわけですが、クルマは自転車を先に行かせないといけないという絶対ルールになっているのです。

 また今回、観光客用のレンタル自転車がだいぶ増えていたことに気がつきました。10年ちょっと前にアムステルダムで自転車に乗ってみたいと考えたとき、観光客用レンタルバイクを探すのに少し手間取った記憶があるのですが、今回は街のそこここに「貸し自転車あります」の看板がありました。自転車が観光資源にもなってきているようです。

自転車レーンの信号がクルマのレーンよりも早く青になった瞬間。大型車ドライバーのための広角ミラーが設置されていることにも注目!自転車レーンの信号がクルマのレーンよりも早く青になった瞬間。大型車ドライバーのための広角ミラーが設置されていることにも注目!
ラウンドアバウト(ロータリー)では、より外周を走る自転車が常にクルマに優先するという鉄則が守られているラウンドアバウト(ロータリー)では、より外周を走る自転車が常にクルマに優先するという鉄則が守られている

オランダでは都市間をつなぐのも自転車の役割

 滞在の最後には、アムステルダムを出てユトレヒトの方面まで郊外も走ってみることに。ほとんど自転車専用レーンだけを通って街中を抜け、そのまま郊外の堤防沿いのサイクリングロードを走りました。高い堤防に囲まれた牧草地で牛や羊が草をはんでいる、「まさにオランダ!」という景色が広がっていました。

 途中には、自転車と歩行者専用の立派な吊り橋も。自転車のためのアプローチは斜度3%もないくらいゆったりと計算されているのがまたニクい。夏場はきっとサイクリングとピクニックを楽しむ家族連れなどで賑わうのでしょう。

壮麗なアムステルダム国立美術館の地上階にはなんと自転車レーンが貫通していて、通勤通学やショッピングの市民が大勢行き交っている壮麗なアムステルダム国立美術館の地上階にはなんと自転車レーンが貫通していて、通勤通学やショッピングの市民が大勢行き交っている
観光客用のレンタサイクルにまたがり、運河を背景にセルフィー棒で自撮りする女性たち。イギリスから観光に来ているそう観光客用のレンタサイクルにまたがり、運河を背景にセルフィー棒で自撮りする女性たち。イギリスから観光に来ているそう

 アムステルダムの市街を出て、人家も見えなくなってから10km弱かというところで1台の自転車を追い抜いたのですが、なんと前に1歳くらいの赤ちゃんを乗せた女性でした。パニエに荷物もたくさん積んでいたので、お買い物か通勤か。都市の中だけでなく、都市間をつなぐある程度の距離を走る人も少なくないのだろうと思わせられました。イギリスや日本なら、間違いなく小型車や軽自動車を選んでしまいそうな環境なのに。オランダのみなさん、リスペクトです。

◇         ◇

一夜明けて走りだしたロンドンのみじめな自転車レーン。こんな幅でもあるだけマシか一夜明けて走りだしたロンドンのみじめな自転車レーン。こんな幅でもあるだけマシか

 そしてまたフェリーに乗って翌朝到着したロンドン。駅から自宅に向かって走りだしたわけですが、クルマドライバーは自転車に威圧的だし、自転車レーンがあっても狭いし路肩はボロボロ。「こりゃあロンドン、まだまだ頑張らないといけないぞぉ!」と歯ぎしりしながら家路を急いだのでした。次回は、そんなロンドンの自転車レーン事情を赤裸々にレポートしたいと思います。

青木陽子青木陽子(あおき・ようこ)

ロンドン在住フリー編集者・ジャーナリスト。自動車専門誌「NAVI」、女性ファッション誌などを経て独立起業、日本の女性サイトの草分けである「cafeglobe.com」を創設し、編集長をつとめた。拠点とするロンドンで、「運転好きだけれど気候変動が心配」という動機から1999年に自転車通勤以来のスポーツ自転車をスタート。現在11台の自転車を所有する。ブログ「Blue Room」を更新中。

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