title banner

はらぺこサイクルキッチン<29>「もっと強く」が原動力 スリランカのMTBステージレースの男女覇者に聞く“食”への意識

by 池田清子 / Sayako IKEDA
  • 一覧
フィニッシュ直後に2014年シーズンまで同チームだった池田祐樹選手と談笑するソーニャ・ルーニー・エウォナス選手。「すぐ後ろにソーニャが見えて焦ったよ! また速くなったね」と祐樹選手フィニッシュ直後に2014年シーズンまで同チームだった池田祐樹選手と談笑するソーニャ・ルーニー・エウォナス選手。「すぐ後ろにソーニャが見えて焦ったよ! また速くなったね」と祐樹選手

 スリランカで2014年11月、超ハードなアドベンチャー系マウンテンバイクステージレース「ランブル・イン・ザ・ジャングル(Rumble in the Jungle)」が初開催されました。その初代チャンピオンとなった男女各選手、イズメイル・ベンチュラ選手(Ismael Ventura、スペイン)と、ソーニャ・ルーニー・エウォナス選手(Sonya Looney Ewonus、カナダ)の食事スタイルを取材すると、日々食事にかなり気を遣っていることが伝わってきました。意識して「摂るもの」「摂らないもの」では、2人の共通点も発見しましたよ。「もっと強くなりたい」という気持ちが原動力となったプロの食事方法に迫ります。

ニュートリショニストの指導を受けた食事で実力アップ

レース後半の坂をトップで通過していくベンチュラ選手。2位とタイム差をつけてフィニッシュレース後半の坂をトップで通過していくベンチュラ選手。2位とタイム差をつけてフィニッシュ

 ランブル・イン・ザ・ジャングル男子優勝を果たしたベンチュラ選手はメキメキと実力を伸ばしている注目選手で、2012年以降参戦してきたレースでは上位入賞の連続。今レースでも大いに力を発揮し、本人も「2014年は今までで最も良い年になったよ」と充実した1年だったと語りました。そんなベンチュラ選手の食事スタイルをうかがってみました。

 優勝おめでとうございます! 食事について、何か気を付けていることはありますか?

ベンチュラ選手(以下、ベ) ありがとう。2年前(2012年)からアスリート専門のニュートリショニスト(栄養士)と契約し、食事指導・管理をしてもらっているんだ。

 アスリート専門ニュートリショニストという存在は知ってはいましたが、身近な人で実際に指導を受けているアスリートと出会ったのは初めてです。

 始めはトライアスロン選手のニュートリションについて勉強をしていた女性で、今では他のスポーツ選手数人の指導もしているよ。

とっても優しいベンチュラ選手。「食事についてはストレスなし!」という言葉が印象的でしたとっても優しいベンチュラ選手。「食事についてはストレスなし!」という言葉が印象的でした
スタート直前のウォーミングアップでは、リラックスモードなベンチュラ選手スタート直前のウォーミングアップでは、リラックスモードなベンチュラ選手

 なるほど、スポーツそれぞれの特徴など、幅広い知識が求められますね。食事指導を受け初めてからどのような変化がありましたか?

 いきなりガラッと食事内容を変えたのではなく、指導に従って少しずつ変えていった。最初と比べると2年間でだいぶ変わったけど、少しずつだったからストレスはなかったよ。成績も上がっている。食事はとても大事だと思うよ。ニュートリショニストからは、トレーニング期間の食事、レース前後及びレース中に何を食べるべきかの指導、リカバリー食の指導――つまり、食べるもの全ての管理を受けていて、当然レースの長さによっても食事内容は変化する。

 具体的な例としては、「(回復が遅くなるという理由から)赤肉はあまり食べない」「プロテイン源は主に魚と卵から摂る」「ライド後のリカバリーはフルーツ、ナッツ、ドライフルーツ等が中心」「サプリメントはなるべく摂らないで、食事から栄養を摂取する」といったことを実践しています。肌で感じた効果としてはまず体重は4kg減。身体が軽くなり、特に上りで大きな優位性を感じている。

◇         ◇

スペインのライダー達ともすっかり“仲間”に。沢山の刺激をもらいましたスペインのライダー達ともすっかり“仲間”に。沢山の刺激をもらいました

 ベンチュラ選手は実は2011年、テクニカルかつタフなコースで世界的に有名なイタリアのステージレース「アイアンバイク」で、大クラッシュによりヘリコプターで救急搬送されたことがありました。翌年、けがを乗り越えて果敢にチャレンジ。同レースで見事、優勝を飾った経験があります。その優勝した年が食事指導を受け始めた年でもあります。今回、私もレース中に彼の上りを見ていましたが、他の選手に比べてしなやか、そしてスムーズな上りが印象的でした。

万全の体調を生む野菜中心の生活

レース中のエウォナス選手。この日も快調で、男性も合わせた総合で5位という好成績レース中のエウォナス選手。この日も快調で、男性も合わせた総合で5位という好成績

 そしてもうひとり、女子優勝者のエウォナス選手。このレースを最後にチームが変わってしまいましたが、プロMTBライダーで夫の池田祐樹選手のチームメイトだったということもあり永く付き合いのある選手です。2014年の春から、肉・卵・乳製品を極力摂らない食生活にガラッと変えました。全ては、選手としてより強くなるため。週に1回ほどは魚を食べていて、寿司が好きなのだそうです。

 優勝おめでとう! 野菜中心の食事にしてから約9カ月(インタビュー時)経つけれど、どうですか?

エウォナス選手 沢山の変化があったわ! 見た目では、太もも、ウエスト、腕が細くなった。それから調理は油ではなく、水を使うことが多くなったわ。パワー数値(ワット)が上がり、体重は15ポンド(約6.8kg)減。

 コントロールできない環境のときは柔軟にならなきゃいけない。そんな時は肉を食べることもあるの。大事なのはストレスを感じないことね。スリランカには沢山いい野菜があったから今回は特別に食材やサプリメントを持ち込んだりはしなかったわ。

 肉に含まれるコレステロールを摂ると血流が鈍る。野菜中心だと何がいいって、血液の循環がスムーズになることね。血液循環が良くなった結果、酸素がよりスムーズに運搬され、筋肉の動きもよくなる。回復も速いわね。この食事法が気に入っているの。体重は減ったけど、体調はいいし、(レースでは)むしろ速くなっている。いいことばかりよ。

「太もも、ウエスト、腕が細くなった」と話すエウォナス選手。見た目でもすぐ分かるほどスリムに「太もも、ウエスト、腕が細くなった」と話すエウォナス選手。見た目でもすぐ分かるほどスリムに
2014年に結婚したばかりのマット・エウォナスさんと並んだソーニャ・ルーニー・エウォナス選手。最初はマットの影響でベジタリアンになり、その後卵と乳製品も止めたそう2014年に結婚したばかりのマット・エウォナスさんと並んだソーニャ・ルーニー・エウォナス選手。最初はマットの影響でベジタリアンになり、その後卵と乳製品も止めたそう

◇         ◇

 エウォナス選手が会う度にどんどんスリムになっていく様子は、私から見ても一目瞭然でした。祐樹さんの選手目線でも「どんどん速くなっている」そう。肌はツヤツヤ、元気いっぱい。私もいつも彼女からパワーをもらっています。

「食事がパフォーマンスを左右する」という意識

ランブル・イン・ザ・ジャングル表彰式に並んだ男子優勝のベンチュラ選手(向かって右から3人目)と女子優勝のエウォナス選手(右から5人目)。2人とも食への意識が高いランブル・イン・ザ・ジャングル表彰式に並んだ男子優勝のベンチュラ選手(向かって右から3人目)と女子優勝のエウォナス選手(右から5人目)。2人とも食への意識が高い

 ベンチュラ選手とエウォナス選手に共通しているのは、肉をあまり積極的に食べず、魚は食べているという点。そして、食事は「パフォーマンス向上と身体作りに欠かせないこと」という共通認識がありました。

 食事スタイルを長期的に見直し、効果や変化を実感しながらアスリートとしての結果も出ている。だからこそ、一層食事を大切にしているのだなと感じました。これからも世界中の選手の様々な食生活をのぞいていきたいと思います。

池田清子池田清子(いけだ・さやこ)

アスリートフード研究家。モデル事務所でのマネージャー経験を生かし2013年夏よりトピーク・エルゴンレーシングチームUSA所属ライダー、池田祐樹選手のマネージメントを開始、同秋結婚。平行して「アスリートフードマイスター」の資格を取得。アスリートのパフォーマンス向上や減量など、目的に合わせたメニューを日々研究している。ブログ「Sayako’s kitchen」にて情報配信中。

関連記事

この記事のタグ

MTBレース ニュートリション はらぺこサイクルキッチン

  • 一覧

新着ニュース

もっと見る

ピックアップ

e-BIKE最新特集

スペシャル

自転車協会バナー

ソーシャルランキング

インプレッション

インプレッション一覧へ

連載