Cyclist的エンタメ観戦記:stage3ゆるいイラストで熱く描く 『くるくる自転車ライフ』

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右からこやまけいこさん、にゃんこ先生、相方さん右からこやまけいこさん、にゃんこ先生、相方さん

 イラストレーターこやまけいこさんが、自転車をめぐる日々を描いた4コマ漫画の単行本『くるくる自転車ライフ』(イースト・プレス、1048円+税)を8月に発売した。かわいらしいタッチのイラストで描かれたストーリーの主な登場人物は、こやまさんと、同居する「相方」さん、愛猫の「にゃんこ先生」。ツール・ド・フランスやジャパンカップの観戦、そしてツーリングを楽しむおふたりの“自転車ライフ”は、漫画そのものににぎやかだった。(聞き手 柄沢亜希)

「これいいね」って初めに言ったのは私なんだけど…

 「それまでママチャリにしか乗ったことがありませんでした」と口をそろえるこやまさんと相方さん。ふたりが小径スポーツ車「BD-1」を買い求めたきっかけは、4年前、相方さんの故郷で利用したレンタル自転車が、ボロボロだったことにある。

色違いの「CARRY ME」を持つこやまさんと相方さん色違いの「CARRY ME」を持つこやまさんと相方さん

 「相方の実家が五島列島(長崎)の一番大きな島、福江島にあり、レンタサイクルで観光しようとしたのですが、進まないその自転車ではどうしようもなくて、結局、車が中心の旅になってしまいました」と残念そうに振り返るこやまさん。「ただ、8kmほど自転車で走った“旅路”の心地よさが強く印象に残り、次回はぜひ自転車を持参しようと思いました」。

 もともと旅が好きで、20代はバックパッカーとしてヨーロッパや国内各地を歩いてまわったという。30代は仕事でフリーランスに転向し、忙しい日々を送った。そして40代。ちょうど、ひとりで作業場にこもりがちな毎日に、閉塞感を感じていた頃だった。

 一方、こやまさんから自転車のカタログを見せられた相方さんは、はじめは「自転車に15万円なんてバカじゃないの!」という反応を示したが、その後にひとりで横浜の小径車専門店「グリーン・サイクル・ステーション」へ。「どんなものか試してやろうじゃないか、という気持ちで見に行ったんです。試乗して『港の見える丘公園』への急坂を上ったところ、まるで羽が生えたように感じました」と“デビュー”時の衝撃を語る。その場で購入を決め、こやまさんに電話で伝えて驚かせた。

 勢いづいた相方さんの愛車は、現在は4台にまで増えた。うち2台はロードバイクで、お気に入りのコガ「KIMERA」は自作の新デザインのジャージカラーに合わせて選び、自身で組み上げたという。

 “高い買い物”には少々あきれ顔のこやまさんだが、インドア派だった相方さんが「外に出るようになったのはよいこと」と目を細める。相方さんも「健康でありがたいな、と思いながら楽しんで走っている」と応える様子が温かい。

“ゆるかわ”タッチの自転車イラスト本

これまで自費出版してきた冊子と今回発売の単行本『くるくる自転車ライフ』これまで自費出版してきた冊子と今回発売の単行本『くるくる自転車ライフ』

 雑誌や書籍などの印刷媒体で、子供や女性向きのイラスト・漫画を描くことが多いこやまさん。一方で、ウェブ用のイラストやFlashアニメなどデジタル系の仕事にも積極的に取り組んでいる。また「コミティア」「コミックマーケット」といった自主制作漫画の展示即売会にも参加してきた。そんなこやまさんに、自転車を始めて1年ほど経った頃の即売会で、携帯向け有料コンテンツとして4コマ漫画執筆の声がかかった。

 「2011年4月までおよそ9カ月間、自転車の4コマを描きました。ただ、有料だった上にガラケー(従来型の携帯電話)向けだったこともあり、スマートフォン比率が高いサイクリストの目にはあまり届かなかったかもしれません。連載終了後は、とりあえず人に読んでもらいたくて、ちびちびと自費出版を重ねていきました」。そうやって試行錯誤を重ねて発行していた冊子が、今度は出版社の目に留まった。

 単行本化では、これまで描いてきた4コマに加えて、初心者にもわかりやすい自転車解説や旅行記などを描き下ろし、幅広い層が楽しめるように工夫した。また、たくさんの自転車やグッズ、パーツが登場するため、その描写には特に気をつけているという。自転車もデフォルメしたゆるい雰囲気やタッチで描いているが、「構造的に大きな間違いがないようにしています」とのことだ。

 ほのぼのとしたストーリー展開は、老若男女を問わず楽しむことができ、友人からは「自転車に詳しくない(年配の)両親がハマってしまった」と打ち明けられたそうだ。

ふたりの“くるくる自転車ライフ”

 生活の中心がもっぱら自転車となったこやまさんと相方さん。自由業のふたりが「通勤のことは考えなくていいので」と選んだ引っ越し先は、多摩川サイクリングロードへのアクセスがいい東京都府中市だった。とはいえ、いっしょにサイクリングへ出かけるのかというと、今のところほとんど別行動という。

 「日常的に自転車に乗るというよりは、輪行で出かけ、旅先の知らない場所を走る」のがこやまさん流だ。「BD-1」購入後は、さっそく岐阜の知人のもとへ新幹線輪行と峠越えを重ねて訪れた。他方、相方さんは「平日の午前中に30~40kmほどの距離をお散歩する」というスタイル。

長崎・福江島(五島)南西部の峠から海を望む。こやまさんの「BD-1」と相方さんの「KHARMA」長崎・福江島(五島)南西部の峠から海を望む。こやまさんの「BD-1」と相方さんの「KHARMA」

 相方さんがロードバイクに乗るようになってからは、テンポが合わずなかなかいっしょには走らないというふたりだが、今年の春、念願だった長崎・福江島でのサイクリングを楽しんだ。福江島は「道は良い、信号・車は少ない」と自転車で走るのに好条件がそろっている。海沿いの景観を楽しめる1周100kmほどのコースには、鬼の角のように見える鬼岳や、歴史のある教会など観光スポットが多くある。「とびきりおいしい魚」も魅力のひとつだそうだ。

こやまさんと相方さん。「CARRY ME」で買い物へこやまさんと相方さん。「CARRY ME」で買い物へ

 インタビューの日は、そろって台湾・パシフィック社製の折りたたみ自転車「CARRY ME」に乗っていた。8インチの超小径タイヤと持ち運び用のキャスターが備わり、折りたたむと1mにも満たないコンパクトな自転車だ。越えられない段差にさえ気を付ければ、意外に走行性能はよいという。

 「スポーツ自転車ってこんなに軽いんだ」という驚きや、「8段変速だとこんなに坂が上れるんだ」という感動からスタートしたこやまさんの自転車ライフ。現在は“ロードバイク貯金”に励んでいるそうで、「坂道や向かい風に負けずに、もう少し距離を伸ばしたい」と意気込んでいる。これに対し、「道具を替えればもっと走れるっていう淡い期待だね」と、冷やかしとも自虐ともとれる言葉を投げかけつつ、こやまさんを温かく見守る相方さん。ふたりの“くるくる自転車ライフ”は、この先もわくわくするような展開が待っていることだろう。

 インタビュー後、「CARRY ME」に乗ったこやまさんと相方さんは、「これから買い物です」と街の中へ去っていった。

◇      ◇

 こやまけいこさんの次回「コミティア」出展は9月2日(日)。有明・東京ビッグサイトの東5・6ホールで11:00~16:00、サークル名は「こぐま工房」、スペース番号は「026a」。『くるくる自転車ライフ』の販売も予定されている。


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