欧州キャンプリポート活躍誓う日本人3選手 プロコンとなるNIPPO・ヴィーニファンティーニ・デローザが体制を大幅に強化

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海も山もあり暖かいアブルッツォ州は、自転車のトレーニングに最適の場所。毎日さまざまなコースでトレーニングが行われた (田中苑子撮影)海も山もあり暖かいアブルッツォ州は、自転車のトレーニングに最適の場所。毎日さまざまなコースでトレーニングが行われた

 2015シーズンからイタリア籍のプロコンチネンタルチームとして活動するNIPPO・ヴィーニファンティーニ・デローザが、12月12日から21日まで、イタリア中部のアブルッツォ州オルトーナで第1次チームキャンプを行った。オルトーナはメーンスポンサーとなるファルネーゼ社(ヴィーニファンティーニはファルネーゼヴィーニ社が取り扱うワインのブランド名)が本社を構えるアドリア海沿いの小さな街。アブルッツォ州がワインの名産地であることが示すように、1年中温暖な気候で、キャンプ期間中も暖かい日差しが降り注ぎ、爽やかな青空のもとで選手たちは新しいチームメートたちと汗を流した。 (写真・文 田中苑子)

練習中に笑顔を見せるマッテア・ポッツォ(イタリア)。気さくで明るく、歌が好き。チームのムードメーカーの1人だ (田中苑子撮影)練習中に笑顔を見せるマッテア・ポッツォ(イタリア)。気さくで明るく、歌が好き。チームのムードメーカーの1人だ
登坂区間での計測結果について話しをするダミアーノ・クネゴ (田中苑子撮影)登坂区間での計測結果について話しをするダミアーノ・クネゴ

ジロ・デ・イタリアも視野 引き締まったチームの雰囲気

 キャンプに参加したのは、来季チームに所属する全選手。山本元喜、石橋学、黒枝士揮の日本人3人をはじめ、約半数の選手たちが2014シーズンのヴィーニファンティーニ・NIPPO・デローザから引き続き所属する。

トレーニング中の山本元喜。来季は「勝ちたい!」と話す (田中苑子撮影)トレーニング中の山本元喜。来季は「勝ちたい!」と話す
トレーニング中の石橋学(左)と黒枝士揮 (田中苑子撮影)トレーニング中の石橋学(左)と黒枝士揮

 さらに、チームのカテゴリーがコンチネンタルチームからプロコンチネンタルチームへと移行し、ジロ・デ・イタリアなどUCIワールドツアーを含めたトップレースへの出場も視野に入れるため、ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・メリダ)やダニエーレ・コッリ、マッテア・ポッツォ(ともにイタリア、ネーリ・ソットーリ)ら第一線のレースで戦ってきた選手たちも移籍加入し、チーム内の雰囲気がキリッと引き締まった印象だ。ヨーロッパではプロコンチネンタルチーム以上が“プロフェッショナル”とされており、2014年の体制から比べて、チームは大きなステップアップを遂げたといえる。

各選手は2014シーズンの所属チームのジャージを着てトレーニングキャンプに参加した (田中苑子撮影)各選手は2014シーズンの所属チームのジャージを着てトレーニングキャンプに参加した
登坂区間でのタイムにあたり、トレーナーのジャンニ氏から説明を聞く選手たち (田中苑子撮影)登坂区間でのタイムにあたり、トレーナーのジャンニ氏から説明を聞く選手たち
アドリア海沿いの道を駆け抜ける。週末になると大勢のサイクリストたちが走っている。また夏場はバカンス客であふれ返る場所だ (田中苑子撮影)アドリア海沿いの道を駆け抜ける。週末になると大勢のサイクリストたちが走っている。また夏場はバカンス客であふれ返る場所だ
トレーニングを終えた選手たち。手前はネオプロのイタリア人クライマー、ジャコーモ・ベルラート (田中苑子撮影)トレーニングを終えた選手たち。手前はネオプロのイタリア人クライマー、ジャコーモ・ベルラート

メカニック4人、マッサージャー5人…スタッフ増強

 チームの初戦は1月下旬にアルゼンチンで開催される「ツール・ド・サンルイス」。どのトップチームにも言えることだが、近年、シーズンの開幕が非常に早くなっており、チームはそれに合わせてかなり早い時期から翌シーズンの準備を始める。選手たちのオフが短くなったと聞くが、それはチームの運営陣やスタッフにも言えること。つまり、12月の最初のキャンプと言えども、1月からすぐにレースで戦うための実戦的な内容となり、チームは秋頃から本格的に2015シーズンの準備に追われてきた。

チームの監督を務めるステファノ・ジュリアーノ氏(左)とマリオ・マンゾーニ氏。ともにジロ・デ・イタリアでステージ優勝経験をもつ元選手で、名将として知られている (田中苑子撮影)チームの監督を務めるステファノ・ジュリアーノ氏(左)とマリオ・マンゾーニ氏。ともにジロ・デ・イタリアでステージ優勝経験をもつ元選手で、名将として知られている
たくさんのチームキットを仕分けし、選手に渡していくのも大仕事だ (田中苑子撮影)たくさんのチームキットを仕分けし、選手に渡していくのも大仕事だ

 キャンプ初日の12月12日朝、チームバイクのデローザ「プロトス」が選手たちに渡された。この日に間に合うようにと、大急ぎでメカニックたちが組み上げたもので、来季からメカニックとしてチームに正式採用される鹿屋体育大学4年の福井響も、ベテランメカニックに混ざって、ミラノにあるデローザの工房で作業を進めた。

ミラノにあるデローザの工房でチーム仕様の「プロトス」を手にするデローザの創始者ウーゴ・デローザ氏。彼をもう一度ジロに連れて行くことがチームに課せられた使命でもある (田中苑子撮影)ミラノにあるデローザの工房でチーム仕様の「プロトス」を手にするデローザの創始者ウーゴ・デローザ氏。彼をもう一度ジロに連れて行くことがチームに課せられた使命でもある
創始者ウーゴ・デローザ氏の息子で、現在のデローザ社マネージャーであるクリスティアーノ氏がメカニックたちの作業を見守る (田中苑子撮影)創始者ウーゴ・デローザ氏の息子で、現在のデローザ社マネージャーであるクリスティアーノ氏がメカニックたちの作業を見守る
チームのチーフメカニックを務めるアンドレア・ディマルコは何度もジロを経験しているベテランだ (田中苑子撮影)チームのチーフメカニックを務めるアンドレア・ディマルコは何度もジロを経験しているベテランだ

 チームNIPPOは長年、スタッフの育成にも力を入れており、2月からチームに合流する同じく鹿屋体育大学のマッサージャー坂本拓也を含めて、若い日本人スタッフ2人がチームで働きながら、本場のレーススタッフの仕事を学ぶことになる。チームがプロコンチネンタルに上がったことは、新人スタッフにとって、ハードルは上がるものの、より多くのチャンスや学びに満ちた環境になるだろう。

デローザの工房でチームバイクを組む福井響。現在、鹿屋体育大学の4年生で、卒業後はチームに就職する (田中苑子撮影)デローザの工房でチームバイクを組む福井響。現在、鹿屋体育大学の4年生で、卒業後はチームに就職する

 チームがプロコンチネンタルチームに昇格することで、スタッフの増強も行われる。メカニックは4人、マッサージャーは5人。また監督として、ジロでステージ優勝した経験をもつイタリア人マリオ・マンゾーニ氏が新たに加わり、チームの運営陣も大きくパワーアップした。ちなみに来季、チームがイタリアで所有する車両は、チームカー5台、大型バス1台、メカニックトラック2台、バン(選手らの移動用)2台で、ボローニャ近郊にサービスコルス(チーム拠点)を構える。

メカニックトラックの内装について話し合うメカニックたち。自分たちが使いやすいようにカスタマイズしていく (田中苑子撮影)メカニックトラックの内装について話し合うメカニックたち。自分たちが使いやすいようにカスタマイズしていく
トラック前方にあるマッサージャーたちのスペース。まずは大掃除! (田中苑子撮影)トラック前方にあるマッサージャーたちのスペース。まずは大掃除!
チームのプロモーションビデオも撮影。監督陣がパソコンに映された映像を真剣に覗き込んだ (田中苑子撮影)チームのプロモーションビデオも撮影。監督陣がパソコンに映された映像を真剣に覗き込んだ
ゼネラルマネージャー(GM)に就任したフランチェスコ・ペロージ氏が、選手たちにSNSの活用法を説明する。マーケティングを専門とする31歳がGMを務めるのは、イタリアの自転車界にとっても新しい試みとなる (田中苑子撮影)ゼネラルマネージャー(GM)に就任したフランチェスコ・ペロージ氏が、選手たちにSNSの活用法を説明する。マーケティングを専門とする31歳がGMを務めるのは、イタリアの自転車界にとっても新しい試みとなる
ダニエーレ・コッリ(イタリア)らとトレーニング前に話をするマリオ・マンゾーニ監督。選手たちと積極的にコミュニケーションをとる (田中苑子撮影)ダニエーレ・コッリ(イタリア)らとトレーニング前に話をするマリオ・マンゾーニ監督。選手たちと積極的にコミュニケーションをとる

世界の最前線をいくトレーニングとドーピング対策

腕周りを測定するダミアーノ・クネゴ (田中苑子撮影)腕周りを測定するダミアーノ・クネゴ (田中苑子撮影)

 キャンプの期間中、選手たちは毎日、3〜5時間前後のトレーニングライドを行い、その合間にキエーティ・ペスカーラ大学スポーツ医学研究所で詳しいメディカルチェックと各種計測を行った。心肺機能や骨の状態、最大出力などを計測し、選手たちの得意分野や潜在能力を専門の医師らが解析していく。また来季からベテラントレーナーのジャン二・テンドラ氏がチームに加わり、彼を中心にメンタルトレーニングも本格的に行われる予定となっており、最先端のトレーニング環境が構築される。

心電図を取る石橋学 (田中苑子撮影)心電図を取る石橋学
心臓エコー検査を受ける黒枝士揮 (田中苑子撮影)心臓エコー検査を受ける黒枝士揮

 キャンプ期間中には全選手を対象とする抜き打ちのドーピング検査がチームホテルにやってきたが、チームは昨季に引き続き、厳しいドーピング対策を行う予定だ。独自のシステムで、全選手がチームの公式サイト上にバイオロジカルパスポートの数値を公開する。年に最低4回、血液等のデータを取るもので、チームとして公開するのは新しい試みとなる。

キャプテンのクネゴを中心に一致団結

 第1次キャンプの大きな目的は、チーム内のコミュニケーションを図り、ともに戦う1つのチームとして信頼関係を築いていくこと。キャンプ期間中、トレーニングや日々の生活面でチームをリードしていたのは、キャプテンのダミアーノ・クネゴだった。率先してコミュニケーションを取り、若手選手らと一緒になってはしゃぐような場面もあり、クネゴ自身が新チームでのキャンプを人一倍楽しんでいる様子がみてとれた。キャンプの印象を聞くと、「モルト ベーネ(とってもいいよ)!」と即答。チーム全体がイタリア人らしい人なつっこさでまとまり、キャンプは常に笑い声が途切れない良い雰囲気で最終日まで続いた。

トレーニング中のダミアーノ・クネゴ(左)とネオプロでU23世界選手権6位のユリ・フィロージ(イタリア) (田中苑子撮影)トレーニング中のダミアーノ・クネゴ(左)とネオプロでU23世界選手権6位のユリ・フィロージ(イタリア)
アブルッツォ州の名菓を味わうダミアーノ・クネゴ (田中苑子撮影)アブルッツォ州の名菓を味わうダミアーノ・クネゴ
ヴィットリアのシューズをフィッティングするアントニオ・ニーバリ(イタリア)とダミアーノ・クネゴ(イタリア) (田中苑子撮影)ヴィットリアのシューズをフィッティングするアントニオ・ニーバリ(イタリア)とダミアーノ・クネゴ(イタリア)
ファンティーニのスプマンテ(発砲ワイン)をグラスに注ぐチームキャプテンのダミアーノ・クネゴとダニエーレ・コッリ (田中苑子撮影)ファンティーニのスプマンテ(発砲ワイン)をグラスに注ぐチームキャプテンのダミアーノ・クネゴとダニエーレ・コッリ
ファルネーゼ社の社長ヴァレンティーノ・ショッティ氏が訪問。ダミアーノ・クネゴらと談笑した (田中苑子撮影)ファルネーゼ社の社長ヴァレンティーノ・ショッティ氏が訪問。ダミアーノ・クネゴらと談笑した
スポンサーを囲んで記念撮影。アブルッツォ州には多くのスポンサーやファンがいる (田中苑子撮影)スポンサーを囲んで記念撮影。アブルッツォ州には多くのスポンサーやファンがいる

日本人3選手はリラックスして合流

 日本人3選手は、エリートカテゴリーで1、2年目の若手ながら、みな2014年から引き続いて所属することもあり、久しぶりに会うチームメートやスタッフらとともにリラックスした雰囲気でキャンプに参加した。プロコンチネンタルチームに所属するという緊張感や責任感のなかで、それぞれ来季への思いを胸に、帰国の途についた。

■狙って1勝したい 山本元喜

全日本選手権タイムトライアルを走る山本元喜(2014年6月27日、岩手県八幡平市)全日本選手権タイムトライアルを走る山本元喜(2014年6月27日、岩手県八幡平市)

 「自転車選手を続けて上を目指していくなかで、レベルアップしてトップカテゴリーでも走れる力をつけたい。今年はヨーロッパに来られたのが春と夏だけだったこともあり、高いレベルに合わせた準備ができていないと感じることが多かった。来年は本格的にイタリアに住むので、レースを走りながらレベルを上げていきたい。まずはシーズン入りが早いので、すぐに仕上げていかなければいけないと思っている。アジアのレースも多く走る予定なので、狙えるところは狙って1勝したい」

■チームに貢献できる走りを 石橋学

新しいヴィットリアのシューズを試着する石橋学 (田中苑子撮影)新しいヴィットリアのシューズを試着する石橋学

 「今年はアンダー23ナショナルチームの遠征があったりと、ヨーロッパで走る機会が多かったが、来年からはもっと出られるレースが増え、レベルの高いレースも増えてくるので、そういうところで活躍できるように頑張りたい。チームにはスプリンターが多いので、彼らのアシストをすることが増えると思うが、そこでチームに貢献できる走りをしたい。これまでの2シーズン、学校があったためヨーロッパと日本の行き来が多かったけれど、来季から長い期間ヨーロッパに滞在できるので、レースだけでなく練習もしっかり落ち着いてできると思う」

■一発ガツンと決めて認めてもらいたい 黒枝士揮

今年のチームマネージャー、ファルネーゼ社のロッコ・メンナ氏と再会を喜ぶ黒枝士揮 (田中苑子撮影)今年のチームマネージャー、ファルネーゼ社のロッコ・メンナ氏と再会を喜ぶ黒枝士揮

 「今季は3月に大学を卒業して、ヨーロッパで本格的に走ったが、レベルが高くてそう簡単にはいかないと思った。ただ今年1年やって慣れてきた。スプリンターの多いチームだけれど、そのなかで自分の持ち味を活かしてチャンスを掴みたい。今回の合宿を走ってみて、同じスプリンターでもタイプが違うということがわかった。スプリンターは、まずは認めてもらわないといけない。一発ガツンと決めて、チームから認めてもらえるように走りたい」

◇         ◇

 チームは1月8日から第2次キャンプに入る予定。山本元喜を含め「ツール・ド・サンルイス(2.1)」へ出場する選手たちは、14日に移動し、いよいよ20日から新チームでの初戦を迎える。ヨーロッパでの初戦は2月2日の「GPコスタ・デリ・エトルスキ(1.1)」、アジアツアーは3月9日からの「ツール・ド・台湾(2.1)」への出場が決まっている。

2015シーズンの成功を願って、キャンプ最終日にチームで乾杯!(日本人選手は直前のフライトで帰国していた) (田中苑子撮影)2015シーズンの成功を願って、キャンプ最終日にチームで乾杯!(日本人選手は直前のフライトで帰国していた)

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