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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<新春特別編・前編>ツール・ド・フランス2015を大展望 栄光の4賞ジャージをめぐる争いや日本人選手の活躍を占う

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 サイクルロードレースファンのみなさま、新年あけましておめでとうございます! 2015年も世界各国で熱いレースが繰り広げられ、さまざまなドラマがわれわれを魅了することでしょう。そこで! 開催まで半年以上ありますが、新春企画として「ツール・ド・フランス2015」の展望と大予想を2回にわたってお届けします。<前編>では、4つのリーダージャージをめぐる争い、そして日本人選手が出場する可能性を探っていきます。

クラシックさながらの大会前半 総合争いはアルプスで決着

 まずは、10月に発表されたコースをおさらいしておこう。

 2015年大会のグランデパール(開幕地)はオランダ・ユトレヒト。戦いは14kmの個人TTで幕を開け、第3ステージまでオランダとベルギーをめぐる。その第3ステージは、フレッシュ・ワロンヌでおなじみの激坂、ムール・ド・ユイ(ユイの壁)の頂上がゴールだ。

ツール・ド・フランス2015のコースレイアウト ©ASOツール・ド・フランス2015のコースレイアウト ©ASO

 大会序盤の山場は第4ステージ。ベルギーとフランスの国境から、7セクター・計13.3kmにわたるパヴェ(石畳)区間が登場する。2014年の第5ステージ同様、波乱に満ちた1日となる可能性を秘める。第5~8ステージは、フランス北部をイギリス海峡に沿って西へと進む。第9ステージで28kmのチームTTが登場。また、ゴールでのボーナスタイム(1位10秒、2位6秒、3位4秒)が第1週限定で復活したため、総合優勝候補にとっては序盤から気の抜けない戦いとなる。

 第2週は、ピレネー山脈から中央高地を抜け、アルプス山脈を目指すルートだ。大会最初の山岳頂上ゴールは第10ステージ。そして第11ステージでは、おなじみのトゥールマレー峠を通過する。第12ステージは3つのカテゴリー山岳を通過後にプラトー・ド・ベイユの頂上を目指す。総合争いを左右するかも知れない。

 勝負の第3週では、アルプス山脈で待ち構える山岳4連戦が、大会のハイライトとなることは確実だ。第17、18ステージは下りの距離が長く、ダウンヒラーの見せ場か。序盤から上級山岳が連続する第19ステージ、さらに幾多の名勝負が生まれたテレグラフ、ガリビエ、ラルプ・デュエズを通過する第20ステージは、ともにレース距離が短く、有力選手たちがノーガードの打ち合いを演じることが期待される。第102回目のツール総合王者は、ラルプ・デュエズで確定する。

 そして、もちろんフィナーレはパリ・シャンゼリゼ。スプリンターの競演で大会は締めくくられる。

ポイントとなるステージを予想

 ここからは、4つのリーダージャージを獲得するであろう最有力選手を予想しよう。筆者なりの根拠を踏まえながら、その可能性を探っていきたい。もちろん、他の有力選手も押さえ、さらにはポイントとなるステージもチェックする。ぜひみなさんの予想や期待と比べてみてほしい。

マイヨジョーヌ(個人総合時間賞):アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)

 パリ・シャンゼリゼでマイヨジョーヌの栄誉を勝ち取るのは、コンタドールだと筆者は見ている。勝てば2009年以来6年ぶり3回目(2010年は薬物違反による記録抹消)の王座獲得となる。

6年ぶり3度目のツール・ド・フランス制覇を目指すアルベルト・コンタドール6年ぶり3度目のツール・ド・フランス制覇を目指すアルベルト・コンタドール

 山でのアタックのキレと抜群の勝負勘で、狙ったステージを確実にモノにするのが彼の持ち味。チャンスがあると見るや、残りステージなど関係なく突き進む。近年は、序盤か中盤のステージで決定的な攻撃を成功させるケースが多い。ライバルを一蹴する圧倒的な走りを見せ、終盤のステージではライバルを見ながらレースを進める。勘だけに任せるのではなく、しっかりと計算しながら走っているのだ。強力なアシストに恵まれていることも大きい。

 今大会のコース設定は「コンタドール向き」との声が多く聞かれるが、それが形になるのは、第12ステージと予想する。3つの山岳をこなした後のプラトー・ド・ベイユで、“エル・ピストレロ”の走りが炸裂するはずだ。ここでライバルに差をつけ、その後の中央高地、アルプスでは落ち着いてレースを進めていくことだろう。

クリストファー・フルームは2年ぶりの総合優勝を狙うクリストファー・フルームは2年ぶりの総合優勝を狙う

 コンタドールに並んで総合優勝の期待がかかるのは、クリストファー・フルーム(イギリス、チーム スカイ)。互いに「最大のライバル」と名指しするなど、常に意識する関係にある。フルームにとっては、アドバンテージを築けるタイムトライアルの総距離が42kmと短い点がどう影響するか。一方で、総合優勝を果たした2013年当時のレベルで山岳を走ることができれば、ライバルを一歩も寄せ付けない格好にもなりうる。この冬のテーマである、“クライマー仕様”の脚づくりが功を奏すか。

連覇がかかるヴィンチェンツォ・ニバリ。連覇がかかるヴィンチェンツォ・ニバリ。

 連覇を目指すヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、アスタナ プロチーム)、2年ぶりのツール参戦となるナイロアレクサンデル・キンタナ(コロンビア、モビスター チーム)も黙ってはいない。前回のツールではコンタドール、フルームとも途中リタイアとなったため、ニバリとしては2人を倒して“真の王者”であることを証明したい。キンタナは、いまや彼らと並び“ビッグ4”の1人に。山での強さは誰もが知るところだが、勝つためには3人が武器にする一撃必殺のアタックに対応するとともに、それに匹敵するパンチ力を身に付けたい。

 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、チーム カチューシャ)、バウケ・モレマ(オランダ、トレック ファクトリーレーシング)、ティージェイ・ヴァンガードレン(アメリカ、BMCレーシングチーム)らは“ビッグ4”に割って入れるか。昨年総合2位のジャンクリストフ・ペロー(フランス、アージェードゥーゼール ラモンディアル)、同3位のティボー・ピノ(フランス、エフデジ)ら、フレンチクライマーにもチャンスは十分にある。アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター チーム)は、キンタナをアシストしながら上位を狙うことになる。

マイヨヴェール(ポイント賞):マルセル・キッテル(ドイツ、チーム ジャイアント・アルペシン)

 レギュレーションの見直しでポイント配分が変更され、ステージ難易度によって、与えられるポイントが変動することになった。平坦なステージほどポイント配分が大きくなるため、“一番強い”スプリンターが、ポイント賞ジャージのマイヨヴェールに袖を通しやすくなると見られている。その恩恵にあずかるのはマルセル・キッテルだと予想する。

レギュレーションの変更でマイヨヴェール獲得の可能性が高まったマルセル・キッテルレギュレーションの変更でマイヨヴェール獲得の可能性が高まったマルセル・キッテル

 大会最初のスプリントステージとなる第2ステージからエンジン全開。フランス北部が舞台の第5~8ステージで勝利を重ねることができれば、栄冠の可能性がグッと広がる。焦点は、中央高地をどうクリアするか。アップダウンを繰り返すコースではあるが、ここでスプリントに持ち込むことができれば、シャンゼリゼを前にポイント賞を濃厚にしている状況も考えられる。ピレネー、アルプスのステージでは、グルペットで上手くクリアしたい。

 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、エティックス・クイックステップ)は、4年ぶりのマイヨヴェール返り咲きを狙う。地元開幕に燃えた昨年は、第1ステージの落車であえなく大会を去った。近年はキッテルの勢いに押されがちだが、マーク・レンショー(オーストラリア)やトム・ボーネン(ベルギー)らアシスト陣とのホットラインで、勝利量産といきたい。

 これまでマイヨヴェールに色気を見せていなかったアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)は、今回のルール変更にどう動くか。トップスピードに乗れば、その走りはキッテルやカヴェンディッシュをも凌駕する。スプリントトレインが上手く機能するかどうかがカギだ。

2014年は第1ステージでツールを去ったマーク・カヴェンディッシュ。マイヨヴェール返り咲きを狙う2014年は第1ステージでツールを去ったマーク・カヴェンディッシュ。マイヨヴェール返り咲きを狙う
アンドレ・グライペルはポイント賞を狙うかどうかが注目されるアンドレ・グライペルはポイント賞を狙うかどうかが注目される
ポイント賞争いに意欲を見せるアレクサンドル・クリツォフ(先頭左)。ペテル・サガン(同右)が4連覇を狙うにはコンスタントなポイント獲得が必要になるポイント賞争いに意欲を見せるアレクサンドル・クリツォフ(先頭左)。ペテル・サガン(同右)が4連覇を狙うにはコンスタントなポイント獲得が必要になる

 第3ステージ(ユイの壁)、第4ステージ(パヴェ)の走りいかんでは、第1週目でマイヨジョーヌを着用する可能性もあるのが、アレクサンドル・クリツォフ(ノルウェー、チーム カチューシャ)。「本当に強い選手にマイヨヴェールが渡るはずだ」と述べるなど、賞レース参戦に前向きな姿勢を見せる。大会序盤でマイヨジョーヌ着用となれば、その後のマイヨヴェール争いも優位に進められるだろう。

 マイヨヴェール3連覇中のペテル・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ)は、新たな戦い方を求められる。ティンコフ・サクソへ移籍して初めて迎える今ツールでは、ポイント配分変更という環境の変化だけでなく、コンタドールのアシストというミッションも課される。マイヨヴェール争いとエースのアシストという役割をどう両立させるか。ゴールスプリントでは前述4選手から一歩劣るため、コンスタントに上位に食い込むことに加え、中級山岳ステージでもポイントを稼ぐレース運びが必要となりそうだ。

 そのほかでは、アルノー・デマール(エフデジ)、ナセル・ブアニ(コフィディス ソリュシオンクレディ)、ブライアン・コカール(チーム ヨーロッパカー)ら若きフレンチスプリンターも有力だ。

マイヨアポア(山岳賞):トマ・ヴォクレール(フランス、チーム ヨーロッパカー)

 頂上ゴールは前回より少ない5つ。また、逃げ向きのステージがいくつかあることから、今回は登坂力のある“逃げ屋”に山岳賞が渡ると予想する。そこで推したいのが、不運続きだった2014年シーズンを忘れたいであろうトマ・ヴォクレール。しっかりと体を作り直し、ツールで再び“お祭り男”ぶりを発揮してくれるはずだ。山岳賞を獲得できれば、3年ぶりとなる。

2014年シーズンの雪辱を晴らしたいトマ・ヴォクレール。逃げて山岳ポイントを稼げるか2014年シーズンの雪辱を晴らしたいトマ・ヴォクレール。逃げて山岳ポイントを稼げるか

 また例年のように、総合争いから脱落したクライマーやオールラウンダーが、大会途中から山岳賞狙いへと切り替えてくるだろう。こうした動きが、総合上位陣の動きを惑わすケースも多いだけに、よりレースをおもしろくする要素となることに期待をしよう。

マイヨブラン(新人賞):ナイロアレクサンデル・キンタナ(コロンビア、モビスター チーム)

 プロトン内の「ゴールデンエイジ」といわれる1990年生まれの選手たちにとっては、最後の新人賞対象年度にあたる。キンタナ、ピノ、サガン、ブアニ、ファビオ・アール(イタリア、アスタナ プロチーム)、ロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール ラモンディアル)、ミハウ・クフィアトコフスキー(ポーランド、エティックス・クイックステップ)、トム・ドゥムラン(オランダ、チーム ジャイアント アルペシン)、マイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)、ローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)、ヨハンエステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ)…、とにかくそうそうたる面々だ。そのなかでも“ビッグ4”の一角を担うキンタナの受賞が有力だ。

2013年ツールのマイヨブラン、ナイロアレクサンデル・キンタナ。総合優勝争いに絡めれば、新人賞獲得は濃厚だ2013年ツールのマイヨブラン、ナイロアレクサンデル・キンタナ。総合優勝争いに絡めれば、新人賞獲得は濃厚だ

 メンバーからしてマイヨブラン獲得の条件は、総合上位に入ること、それどころか総合表彰台に上ることが必要かもしれない。近年稀にみるハイレベルなヤングライダーの戦いとなるだろう。

日本人選手出場の可能性 ワイルドカード5チームの行方は?

 最後に、日本人選手の出場可能性と、出場する見込みのチームについて触れたい。

4年連続6回目のツール出場が有力視される新城幸也4年連続6回目のツール出場が有力視される新城幸也

 ツール出場が最も有力視される日本人は新城幸也(チーム ヨーロッパカー)。チームは資金不足の影響でプロコンチネンタルチーム(第2カテゴリー)へ降格となったが、フランスを拠点に活躍しているチームであることや、過去のツールでの実績から、ワイルドカード(主催者推薦)選出は確実だ。新城がメンバー入りすれば4年連続6回目の出場となる。

 クラシックレースではエースを任されるほどの信頼を勝ち取り、グランツールでもステージ優勝にいつ届いてもおかしくないポジションにいる。チーム内ではエース待遇を受けており、ツールに臨む9人のベストメンバーに今年も加わることは濃厚だ。

どんなステージでオールラウンドに力を発揮できる別府史之。6年ぶりの出場なるかどんなステージでオールラウンドに力を発揮できる別府史之。6年ぶりの出場なるか

 日本人で唯一、UCIワールドチーム(第1カテゴリー)に所属する別府史之(トレック ファクトリーレーシング)も、6年ぶりのツール出場を見据える。チームはモレマを総合エースに置くことから、そのアシストとなる選手が脇を固める。オールラウンダーの別府にとっては、平地・山岳・パヴェを問わず堅実な仕事をこなせることはプラス材料。また、チームTTでの貢献度も高いことから、第9ステージでの走りも期待できる。まずはシーズン序盤で好走し、チームへのアピールを重ねたい。

 出場チームについては、第1カテゴリーの17チームは自動的に選出される。

出場確定チーム

アージェードゥーゼール ラモンディアル(フランス)
アスタナ プロチーム(カザフスタン)
BMCレーシングチーム(アメリカ)
チーム キャノンデール・ガーミン(アメリカ)
エティックス・クイックステップ(ベルギー)
エフデジ(フランス)
チーム ジャイアント・アルペシン(ドイツ)
イアム サイクリング(スイス)
ランプレ・メリダ(イタリア)
ロット・ソウダル(ベルギー)
モビスター チーム(スペイン)
オリカ・グリーンエッジ(オーストラリア)
チーム カチューシャ(ロシア)
チーム ロットNL・ユンボ(オランダ)
チーム スカイ(イギリス)
ティンコフ・サクソ(ロシア)
トレック ファクトリーレーシング(アメリカ)

 残る5つの椅子を第2カテゴリーのチームが争う。フランスを本拠地とするチーム ヨーロッパカー、ブルターニュ・セシェ アンヴィロヌモン、コフィディス ソリュシオンクレディの3チームは選出が濃厚だ。また、近年の実績やチーム力を加味し、ボーラ・アルゴン18(ドイツ、旧チーム ネットアップ・エンデューラ)、MTN・クベカ(南アフリカ)も出場が有力視されている。

◇         ◇

 <後編>では、各ステージのレース展開を予想していきます。

文 福光俊介

<後編>全21ステージのレース展開を大予想 

福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、気がつけばテレビやインターネットを介して観戦できるロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。2011年、ツール・ド・フランス観戦へ実際に赴いた際の興奮が忘れられず、自身もロードバイク乗りになる。自転車情報のFacebookページ「suke’s cycling world」も充実。本業は「ワイヤーママ徳島版」編集長。

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