山下晃和の「ツーリングの達人」・アジア編<4>自転車旅に選ぶ“相棒”は「Traveler」 パーツから下着まで海外走破の装備を徹底紹介
これまで<1>、<2>、<3>とネパール、インド、バングラデシュ3カ国の旅をつづってきました。今回は、その旅の相棒、「REVOLVE(リボルヴ)」のセミオーダーツーリングバイク「Traveler(トラベラー)」と、持っていったアイテムについて書こうと思います。(山下晃和)
2万km以上を共にした「Made in Japan」
トラベラーは、「Made in Japan」を掲げる国内ブランドであるリボルヴがつくるバイクで、実は僕がプロデュースしています。今回の南アジア自転車旅以前にも、2011年に中南米11カ国を走破し、その後国内の各地を旅したので、もう2万km以上の付き合いになります。海外旅向けの自転車を選択するにあたっては、「GIANT(ジャイアント)」や「SURLY(サーリー)」が知られているほかに、MTBをカスタムしたり、ランドナー型をオーダーしたりすることになると思います。

トラベラーはセミオーダーシステムを採用していて、S~XLの4サイズだけを指定して、カラーリングやパーツを選ぶことができます。フレーム素材はクロモリ。軽量化しつつ必要な強度を確保するため、両端が厚い構造のダブルバテッドチューブを採用しています。
トップチューブ形状は、ホリゾンタル(地面に水平)ではなく絶妙にスローピングさせることによって、後ろに荷物を満載にした際にも跨りやすくしています。またサドル下をクロスドシートステイにして、昔ながらのキャンピング車のルックスを演出するとともに強度を上げています。こうしたクラシカルな見た目にも関わらず、MTB並みのBBハイトを確保、すなわち地面に対してクランク軸を高くしてあります。そうすることによって、海外のような凸凹の未舗装路でもペダルやクランクが地面に付きにくく、容易に走れるようになっているのです。


“国内唯一”と呼べる海外自転車旅向けキャンピング車
ホイールはMTBと同じ26インチを採用し。タイヤの太さは1.5インチ、1.75インチを選ぶことができ、最大2.1インチまで履けるようにしてあります。海外では26インチのタイヤやチューブが1番手に入りやすいからです。ギアは、シマノのMTBのコンポーネントである「Deore XT」を採用していますが、予算によって選べます。
キャリアは色々な種類が選べるようダボ(ネジ受け)を数カ所に配置。充分なホイールベースを確保するため、フロントフォークを「J」の文字のようにできるだけ前に曲げ、リアキャリアにサイドバッグやパニアバッグを付けた場合のペダリング時に、かかとが当たらないようチェーンステーを465mmとかなり長く設計しました。

ステムは、こういったクラシックなランドナー型にはクイルタイプが合うのですが、強度を考えてアヘッドタイプにしてあります。輪行のしやすさを考慮したカンチブレーキ、ボトルもたくさん付けられるよう配した3つのケージ穴もポイントです。ダウンチューブのケージには、ガソリンで使えるシングルストーブ用のボトルを入れると便利です。
ここまで海外自転車旅に焦点を絞ったキャンピング車は、国内にコレしかないでしょう。僕がこれまで海外で経験してきたことも、全てフィードバックさせています。紹介しきれないそのほかの特徴はリボルヴのウェブページでご確認ください。
トラベラーは、時代に左右されることなく、長く乗ることができるようなデザイン。海外だけでなく、国内のキャンプツーリングにも、街乗りにも、ものを多く運ぶお買い物にもオススメです。
世界の自転車ツーリストが選ぶ革サドル

旅する自転車のパーツとしてオススメなのは、お尻の痛みを避けられる「BROOKS(ブルックス)」の革サドル。ルックス、耐久性、座り心地どれを取ってもキングオブサドル! 革は最初は固いのですが、野球のグローブのように、座れば座るほど柔らかく馴染んできて、お尻の形に変化していきます。3カ月ほど馴染ませると、長い時間座っていても痛くならなくなり、さらに3年くらい使っているとお尻の形になっていきます。
世界標準と言ってもいいブルックスのサドルは、各地で出会う多くのサイクリストが使用していました。ラオスで出会ったドイツ人サイクリストが使い込んでいたものは凹みすぎていて、サドルといよりはむしろお尻でした。僕はチタン製レールのものを使っています。
タイヤは今回、「KENDA(ケンダ)」の超軽量「KOZMIK LITEⅡ(コズミックライト2)」の26インチをチョイス。パンクしにくいように、2.00インチと太いものを使用しました。また、ネパールの未舗装路の山道でもグリップするようMTBクロスカントリー用のトレッドパターンにしました。



ペダルは「MKS(三ヶ島製作所)」の「シルバン ツーリング」。トゥークリップは靴を選ぶので、トレッキングシューズやトレランシューズなどの厚底系と、サンダルやスニーカーなど、どんな靴でも対応できるよう「RESISTANT(レジスタント」のペダルストラップにしてあります。非常に丈夫で、中南米から南アジアまで壊れることなく現在に至ります。
メカトラに対処するための工具類とインフレーターは、「LEZYNE(レザイン)」を使っています。デザインが美しく、使いやすいからです。それ以外に、小さなモンキーレンチやタイラップ数本も持っていたほうが無難です。


抗菌消臭機能付きウェアは自転車旅で大活躍

ウェア類のオススメは、アウトドアブランド「モンベル」のゴアテックス素材を用いた超軽量レインウェア「トレントフライヤー ジャケット」。ゴアテックスの完全防水ながら、350mlペットボトル以下のサイズになる非常に軽量な製品は、ほかになかなかありません。旅サイクリストには絶大なる人気です。
さらにモンベルの「WIC.サイクルジャージ」は、光触媒で抗菌消臭機能付き、速乾性も伸縮性も抜群で、海外旅にぴったりです。「プラズマ 1000ダウン ジャケット」は、軽量で保温性の高いダウンインナーです。
帽子類は、撥水性や携帯性を考え「NEW ERA(ニューエラ)」の「OUTDOOR LINE(アウトドアライン」を2つ。ヘルメットは、抗菌消臭ストラップを装備した「KABUTO(カブト)」の「ステアー」です。


ショートパンツは「ROKX(ロックス)」のクライミング系、「Club Ride(クラブライド)」のMTB系、「Berghaus(バーグハウス)」のトレッキング系パンツの3本をローテーション。下着は速乾性が高く、ペダリング時も抜群の伸縮性を誇る「BETONES(ビトーンズ)」を3枚持参しました。
腕時計は、高度計と電子コンパスを装備した「SUUNTO(スント)」の「コア」。登山でも、サイクリングでも、街使いでも大人気なので、知らない人はいないかもしれません。以前、ベトナム山間部で道が分からなくなった時、とにかく「W」(西)を指す方を数km走ったら国道にリカバリーでき、無事にラオスに辿り着けたことがありました。その際はスントの時計を神のように崇めたものです。高度計を見ればどの辺の高さにいるかが分かり、ウェアリングの参考にもなります。

サングラスは、頑強で視界が広い「ESS(イーエスエス」。防水バッグは登山用で軽量の「GRANITE GEAR(グラナイトギア)」。シューズは「KEEN(キーン)」のトレッキングシューズとサンダル。キーン製品の特徴はトゥープロテクターがあって、つま先をガードしてくれるところです。靴紐がわずらわしくならないように、挟んで結びます。また今回は、“持ち運べる洗濯機”こと「スクラバ」というウォッシュバッグが大活躍しました。


盗まれにくいパッキングの秘訣

この家財道具一式を自転車に取り付けるためのフロントバッグ、サイドバッグ、パニアバッグなどは全て「オーストリッチ」でした。オーストリッチのバッグには、数多くの先輩旅人たちの意見がフィードバックされ、常に進化しています。世界130カ国を自転車で旅した中西大輔さんも同じバッグでした。
特に、パニアバッグは左右合わせて74Lと超大容量。雨の時は、レインカバーをかぶせ、ウェア類や電子機器類をすべてグラナイトギアの防水バッグに入れたので、中身は濡れませんでした。
パッキングの際は、右に立てかけるためフロントのサイドバッグの右側にはPCなどの高価なものを入れると盗まれにくいのがポイントです。左側はアクセスしやすいので、雨具、行動食を入れておきましょう。リアは大きくてかさばるウェア類やテント、シュラフ、マットなどの寝具類を。リアパニアでも前方の身体に近いほうに重いものを入れ、離れるほど軽いものを入れると自転車の重さに身体が振られません。


今回紹介してきたアイテムは、この旅に向けて買い足したものはスクラバくらい。あとは、自転車も含め日常的に使っているものです。海外という未知の文化圏に行く場合は、使い慣れているもののほうが、とてつもない安心に繋がるからです。なので、普段から旅に使えるアイテムかどうかを考えてものを買うようにしています。旅はそこから始まっているのです。

タイクーンモデルエージェンシー所属。雑誌、広告、WEB、CMなどのモデルをメインに、トラベルライターとしても活動する。「GARRRV」(実業之日本社)などで連載ページを持つ。日本アドベンチャーサイクリストクラブ(JACC)評議員でもあり、東南アジア8カ国、中南米11カ国を自転車で駆けた旅サイクリスト。その旅日記をもとにした著書『自転車ロングツーリング入門』(実業之日本社)がある。趣味は、登山、オートバイ、インドカレーの食べ歩き。ウェブサイトはwww.akikazoo.net。