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栗村修の“輪”生相談<39>14歳男性「ロードバイク歴1年目なのですが、どうすれば将来プロレーサーになれますか」

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14歳の中学3年生です。

 ロードバイク歴1年目なのですが、1年目に気をつけた方が良いことはありますか。また、将来プロサイクルロードレーサーになりたいと思ってます。どうすればなれますか。

(14歳男性)

 シンプルですが、大切なご質問だと思います。同じ悩みを抱えている若い人も多いでしょうからね。何事も最初が肝心と言いますが、ロードレースも同じだと思います。プロを目指すならば、最初の1年はとても重要です。

 最初の1年のアプローチには、大きく分けて2通りあるのではないでしょうか。一つめは、「楽しさ」から入るパターン。トレーニングがどうこうとか、将来云々とかを考えずに、仲間と一緒に、理屈抜きで自転車を楽しむというスタイルです。楽しむことはとっても大切ですから、このやり方はひとつの真理ではあると思いますね。

 もう一つは、最初に、やるべきことを徹底してたたき込むスタイルです。一流のプロロードレーサーになるためには、条件がいくつもあります。まずは、メンタルが強くないといけません。肉体的な痛み、苦しみに耐えるメンタルです。落車などの危険も多い職業ですから、そういう恐怖とも戦わなければいけません。

プロロードレーサーは、気候を含めたあらゆる過酷な条件のなか、年間1万キロ以上の距離をバイクで走るプロロードレーサーは、気候を含めたあらゆる過酷な条件のなか、年間1万キロ以上の距離をバイクで走る

 テレビのレース解説でもお話ししたことがあるんですが、ロードレーサーになるということは、兵士として戦争に行くことに近いと、僕は思います。プロロードレーサーは、危険と隣り合わせの、苦しい仕事です。落車して大ケガをすることもあるでしょうし、時には命を落とすこともあるかもしれません。そういうリスクがある職業なんです。痛みやリスクを避けたいならば、選手を目指すのは難しいと思います。そういうメンタルというか、心構えを持つ。

 そしてもちろん、基礎的なフィジカルが強くなければいけません。中学生ならば、まだ成長期だと思いますから、陸上や水泳など、自転車同様「左右対称」の動きのスポーツで基礎体力を身に付けるのはいいかもしれません。それから、語学力は絶対に必要です。

 つまり、早いうちに、戦場のような過酷な状況でも動じないメンタルと、強靭な肉体、語学力の基礎を身に付けるという事です。ただし、追い込み過ぎは心身ともに取り返しのつかないダメージを受ける可能性があるので、この辺りのバランス感覚はとても大切です。もし、平日は水泳と陸上、そして英語の勉強をみっちりやって、週末には山ごもり、みたい生活を送っている、また、そういう生活を送れる中学生が自転車をはじめたら、ある程度のところまで行く気がします。

 自分が極端なことを言っている自覚はありますよ。でも、そういう職業なんです、ロードレーサーというのは。

 さて、前者のように、楽しみの延長線上で強くなるか、旧東ドイツのスポーツエリートのように、ガチガチのプログラムの中で自らを鍛えていくか。注意してほしいのは、どちらのタイプであっても、やらなければいけないことは結果的には同じだという事です。強いメンタルとフィジカル、そして語学力を身に付けなければいけないことには変わりはありません。でも、そのやり方が違うんですね。

猫型レーサーの代表格、トマ・ヴォクレール(チーム ヨーロッパカー)。パワーメーターどころか心拍計も使わない。サイクルコンピューターすら使わずに走ることも猫型レーサーの代表格、トマ・ヴォクレール(チーム ヨーロッパカー)。パワーメーターどころか心拍計も使わない。サイクルコンピューターすら使わずに走ることも

 どちらのほうが適しているかは、質問者さんのタイプによります。感覚的で、気分屋。楽しくないことには身が入らないけれど、気分が乗っているときは誰にも負けない…というタイプなら、前者。決まり事を作って、その中でコツコツと活動するのが得意ならば、後者です。ちなみに、僕は本の中などでしばしば、前者を“猫型”、後者を“犬型”と呼んでいます。これは生まれ持ったもので、変えられないと思いますよ。

 猫型の選手が、軍隊式のチームに入って苦しんだ例は多くあります。一方で、犬型のレーサーが、自由な環境に置かれてダメになっていくケースも、たくさん見聞きしました。まずは自分を知ることが、強くなるための第一歩です。

 質問者さんは、どちらのタイプですか?

(編集 佐藤喬・写真 砂田弓弦)

回答者 栗村修(くりむら おさむ)

 一般財団法人日本自転車普及協会 主幹調査役、ツアー・オブ・ジャパン 大会副ディレクター、スポーツ専門TV局 J SPORTS サイクルロードレース解説者。選手時代はポーランドのチームと契約するなど国内外で活躍。引退後はTV解説者として、ユニークな語り口でサイクルロードレースの魅力を多くの人に伝え続けている。著書に『栗村修のかなり本気のロードバイクトレーニング』『栗村修の100倍楽しむ! サイクルロードレース観戦術』(いずれも洋泉社)など。

※栗村さんにあなたの自転車に関する悩みを相談してみませんか?
ml.sd-cyclist-info@sankei.co.jpまでお寄せください。

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