産経ニュース【松岡恭子の一筆両断】より自転車の活用広がる海外都市  日本も次世代に向け交通計画やまちづくりの見直しを

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 健康維持には歩くのがよい。もう常識になりましたね。各地で公園や川べりが、人気のウォーキングルートになっていると耳にします。治安のよい日本では、夜でも安心して歩ける場所が豊富なようです。

 自転車も人気です。通勤通学の手段だけでなく、サイクリングやスポーツとして楽しむ人口が増えているようです。ところで、自転車が主要な交通手段として利用されている最も有名な都市は、オランダ・アムステルダムでしょう。旧市街地は道路幅が狭く自動車が入りにくいことから、自転車やトラム(路面電車)を主な移動手段とし、自転車専用道路も整備されています。狭い道路を拡幅する日本の区画整理とは大きく異なる考え方です。

パリ、NYで先行する都市型レンタサイクル

 2007年に始まったパリの貸自転車システムは、自動車の渋滞緩和に役立つとして注目を集めました。ヴェリブという名前は、「自由な自転車」を意味する造語。町のあちこちに無人のステーションがあり、異なる場所での返却も可能なので、市民や来訪者の都市内移動に利用されています。ニューヨークの同様のシステムは、シティバイクという名前です。銀行のシティバンクがスポンサーの一つなので、マークもシティバンクとそっくり。広告媒体も兼ねているわけです。

パリ市全域を網羅するコミュニティーサイクル「ヴェリブ」。市民の足として普及している (小林成基さん提供)パリ市全域を網羅するコミュニティーサイクル「ヴェリブ」。市民の足として普及している (小林成基さん提供)
米ニューヨークの国連本部前で、「シティバイク」で借りた自転車に乗る男性 =2013年5月27日(共同)米ニューヨークの国連本部前で、「シティバイク」で借りた自転車に乗る男性 =2013年5月27日(共同)

 路面電車の人気も復興してきています。昭和の時代に廃止になった都市もありますが、富山市、熊本市、岡山市などの都市では、車体を美しくした路面電車が人気の交通手段になっています。ゆっくり車窓を楽しむことができ、ルートが分かりやすいので来訪者も利用しやすい交通機関と言えるでしょう。鹿児島市では軌道敷が美しく緑化され、街の景観アップに大きく寄与しました

 パークアンドライドという言葉はこの10年で随分浸透しました。通勤途中の駅にある駐車場で自動車を停め、公共交通に乗り換えるという移動方法のことで、都心に乗り入れる車の減少が期待されています。

つくり変えるべき「過去の制度」も

 コンパクトシティという概念を聞かれたことはあるでしょうか。市街地のスケール(規模)をコンパクトに維持して、住みやすいまちづくりを目指す考え方です。大都市では難しい、職住近接も可能なスケールとも言えます。日々の買い物も身近な商店で行い、郊外の生活と違い、自動車には頼らない暮らし方がイメージされています。

 一方、最近は都心回帰という言葉もよく耳にします。戦後の日本は、どんどん郊外に開発を進めてきましたが、人口減少と高齢化を背景に、郊外から都心への移住が進むことを指しています。医療施設などへ、運転せずに歩いて行ける暮らしに安心感もあるようです。

 ところで、福岡市には「福岡市建築紛争の予防と調整に関する条例」というものがあり、10戸以上の住戸がある集合住宅は一定台数以上の駐車場を設置することと、ずいぶん前から決められています。このため市内に建つマンションのほとんどが一階に駐車場を設置し、店舗を作りにくくなっています。福岡市は住戸数に対する集合住宅の割合が日本一高いのですが、さらに都心回帰に伴い集合住宅建設が増えるほど、歩行者目線の高さに駐車場が増え、街並みを楽しくする店舗が消えていくと思われます。各自治体が唱える「歩いて楽しいまちづくり」の逆とも言えます。前述のように暮らし方や状況が変わる中、見直すべき「過去の制度」の、良い例ではないでしょうか。

 少子化・高齢化を背景に、日本は今、様々な見直しを迫られています。その中で、交通計画はもはや交通機関そのものではありません。徒歩、自転車、バス、電車、自動車などを上手く使い分けながら、私たちがどのような街並みや都市空間をつくり、どんな暮らしを営むのかを考えることです。都市が成長していった時代に決めたことを見直し、未来のビジョンを描いてそれに適した制度につくり変えていくことは、次の世代に向けた、現代を生きる我々の責任だと思うのです。

松岡恭子松岡 恭子(まつおか・きょうこ)

昭和39年、福岡市生まれ。福岡県立修猷館高校、九州大工学部卒。東京都立大大学院修了、コロンビア大大学院修了。建築家。設計事務所スピングラス・アーキテクツ主宰。建築、土木、プロダクトなど幅広くデザインを手がける。NPO法人福岡建築ファウンデーション理事長として建築の面白さを市民に伝える活動も続けている。

産経ニュースより)

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