MTBのカッコよさを伝えたい「レース運営が夢でした」 平野志磨子さん、MTB「ダウンヒルシリーズ」で奮闘中

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 今年スタートしたマウンテンバイク(MTB)のシリーズ戦「ダウンヒルシリーズ」。その裏方を務める平野志磨子さんは、大会の広報からレース会場での受付、表彰まで、事務作業を一手に引き受けている。テキパキと仕事をこなし、選手や関係者と朗らかにコミュニケーションをとりながら、「夢」だったレース運営を楽しむ大会スタッフの紅一点。12月13、14日に熊本県御船町の吉無田高原DHコースで行われたシリーズ最終戦の会場で、奮闘する志磨子さんの姿を追った。

(文・写真 平澤尚威)

「ダウンヒルシリーズ」の大会事務局で運営に携わる平野志磨子さん。「夢でした」と語るMTBレースの運営を楽しんでいる「ダウンヒルシリーズ」の大会事務局で運営に携わる平野志磨子さん。「夢でした」と語るMTBレースの運営を楽しんでいる

レース運営をも楽しむ筋金入りのMTBファン

 今年7月以降、中部以西で全6戦が開催されたダウンヒルシリーズ。MTB界に新しいムーブメントを巻き起こそうという意欲的な取り組みで、西日本のマウンテンバイカーたちに新たな喜びや活躍の舞台を提供した。

「ダウンヒルシリーズ」最終・第6戦の舞台となった大分・吉無田高原DHコース「ダウンヒルシリーズ」最終・第6戦の舞台となった大分・吉無田高原DHコース
コース沿いで観客が見守る中、下り坂を一気に駆け下りる選手コース沿いで観客が見守る中、下り坂を一気に駆け下りる選手
「ダウンヒルシリーズ」を主催するSL mediaの(左から)山村優介さん、中川裕之さん、平野志磨子さん「ダウンヒルシリーズ」を主催するSL mediaの(左から)山村優介さん、中川裕之さん、平野志磨子さん

 このシリーズを主催してきた団体「SL media」は、代表を務めるフォトグラファーの中川裕之さん、映像担当の山村優介さん、そして広報など事務的な仕事を担当する志磨子さんによる、わずか3人の組織だ。そのためレースの運営においては、志磨子さんの業務は多岐にわたる。ウェブサイトやFacebookでの大会告知、エントリーの募集、参加者への案内、出展ブースとのやり取り、メディアへの情報配信―などなど。

 レース当日、取材に訪れると「やること、あんまりないですよ!」とはにかんで笑ったが、参加者の受付の合間にもいろいろな仕事が舞い込んでくる。また、地元のショップやライダー、出展ブースのスタッフとコミュニケーションをとることも忘れない。タイミングがあれば会場にいる色々な人に話しかけ、会場の雰囲気を伝えるため彼らを撮影してはFacebookで発信している。受付のテントを離れられないため、なかなかレースを見ることはできないが「受付でいろいろな人と話せるのが楽しい」と屈託ない。

パソコンで会場の案内を作成中パソコンで会場の案内を作成中
会場の受付で選手を案内する会場の受付で選手を案内する

 コアな自転車ファンならご存じかもしれないが、志磨子さんは八重洲出版で自転車専門誌「サイクルスポーツ」の編集部員として、読者投稿コーナー「マダム志磨子の部屋」などで活躍している。

 そんな志磨子さんが、華やかな雑誌編集の舞台の一方で、MTB大会の裏方を務めている現状はちょっと意外にも見える。だが、本人は「大会の運営が夢でした」と言い切る。というのも、志磨子さんが自転車の世界に足を踏み入れたのは、MTBレースのファンになったことがきっかけだった。

各地のレースを1人でまわった大学時代

 志磨子さんは愛媛県出身。「小学生の頃は自転車に乗れなかったから嫌いだった」と振り返るように、自転車には縁がなかったそうだ。

受付業務は身体を動かさないから寒い!受付業務は身体を動かさないから寒い!

 ところが中学3年生の時に知人に誘われ、愛媛県八幡浜(やわたはま)市で開催されたMTBジャパンシリーズ(Jシリーズ)を観戦。アテネオリンピックの代表選考会を兼ねた大会だったためハイレベルな選手がそろっていた。そこでレースを初めて見た志磨子さんは、「こんなにカッコいいものがあるんだ」と衝撃を受け、すっかりMTBに魅了された。

 それ以降、MTBファンとしての生活が始まった。大学生になってからは、週末は1人で各地のMTBレースに足を運んだ。「とりあえず夜行バスとかで会場に行って、レースが終わったら会場で”ヒッチハイク”してました」。行動力と交渉力を発揮して、大学生には大きな負担となる交通費を削減していたという。「女子大生は珍しいから」ということもあり、レース会場で選手や関係者からかわいがられる存在になっていったそうだ。

ダウンヒルの女王・末政実緒選手(中央)、クロスカントリーで北京・ロンドン両五輪に出場した片山梨絵選手(右)と一緒に =2012年3月ダウンヒルの女王・末政実緒選手(中央)、クロスカントリーで北京・ロンドン両五輪に出場した片山梨絵選手(右)と一緒に =2012年3月
山本和弘&幸平、末政実緒、片山梨絵の各選手と一緒に =2012年3月山本和弘&幸平、末政実緒、片山梨絵の各選手と一緒に =2012年3月

 また、アルバイトとして色々な自転車レースの運営を手伝いなどもしていたという。レース運営に興味を持ったのはこの頃のこと。そして、Jシリーズの会場で中川さんと出会い、その後「本場を見てないやつがファンを名乗るな」と“煽られた”ことで、2012年3月に大学の卒業旅行もかねて、ワールドカップの南アフリカ大会を現地で観戦。その直後にサイクルスポーツ誌の編集部員の一員となり、今年からはダウンヒルシリーズの運営にも携わるようになった。

平野志磨子さん(右)と、宮崎市から出展したショップ「車楽屋輪店」を営む野下誠さんと絵美子さん夫妻平野志磨子さん(右)と、宮崎市から出展したショップ「車楽屋輪店」を営む野下誠さんと絵美子さん夫妻
MCとの打ち合わせも重要MCとの打ち合わせも重要

MTBにとって「大事なのは今」

ダウンヒルシリーズ全戦に出店したパン屋「アッチャルポーネ」のブースで腹ごしらえダウンヒルシリーズ全戦に出店したパン屋「アッチャルポーネ」のブースで腹ごしらえ

 MTBに夢中になり始めた当初は、クロスカントリー観戦が中心で、ダウンヒルはあまり見る機会がなかったという。しかしMTBの魅力を存分に知った今では、「ダウンヒルはわかりやすいから人に勧めやすい。自転車を知らない友達をレースに連れていっても、カッコよさが伝わる」と語る。

 競技人口の少ないダウンヒルだが、1998年と2000年代初頭には、新潟県新井市でMTBワールドカップが開催され1万人を超える観客が集まっていた。当時まだMTBと出会っていなかった志磨子さんは、こう話す。

 「新井でのワールドカップを見た人は『あの頃はよかった』という話をするんですよ。でも私は、『大事なのは今なんだ』っていう気持ちでやっています。もう一度、日本でワールドカップがやりたいんです」

 その表情には、MTBの“いま”と“これから”を支えたいという真摯な気持ちが浮かんでいた。

レース終了後、表彰状に選手の名前を手書きしていくレース終了後、表彰状に選手の名前を手書きしていく
レースレポートを作成するため、最終戦で優勝した井本はじめ選手にインタビューレースレポートを作成するため、最終戦で優勝した井本はじめ選手にインタビュー

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