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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<88>ロドリゲスとクリツォフを軸に、アシストは巧者ぞろい チーム カチューシャ 2015年シーズン展望

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 11月からスタートした2015シーズン展望。その後も次々にチームの陣容が明らかになっており、当コーナーで紹介したい有力チームが多くなってきました。今回は4チーム目、チーム カチューシャについてお届けします。先日の来日が記憶に新しいホアキン・ロドリゲス(スペイン)にとっては、リスタートのシーズンとなります。

2015年シーズンのジャージを発表したチーム カチューシャ ©Team Katusha2015年シーズンのジャージを発表したチーム カチューシャ ©Team Katusha

ツールで共闘予定のロドリゲスとクリツォフ

 12月5日にスペイン南東部の街・カルペでチームプレゼンテーションを開催したチーム カチューシャ。同時にウインタートレーニングキャンプもスタートした。2015年シーズンで、トップカテゴリー在籍7年目へと突入する。

 ロシア国家チームとしての側面があり、所属29選手中、自国選手は半数の15人。今シーズンの目標として、2016年リオ五輪のロードレースに向けてロシアに出場枠をもたらすことを挙げている。とはいえ、長年チームを支えてきたのは外国人選手。近年はロドリゲスがグランツールとアルデンヌクラシックで圧倒的な存在感を示している。

 そのロドリゲスは2014年、苦しい1年となった。好調で迎えたアルデンヌだったが、初戦のアムステル・ゴールドレースで落車して肋骨を骨折。痛みを押して出場したジロ・デ・イタリアでまたしても落車。けがを悪化させ、結果的にシーズン全体の走りに影響を及ぼした。

2014年のツール・ド・フランスは山岳賞狙いの走りとなったホアキン・ロドリゲス。来季は悲願の総合優勝を目指す<砂田弓弦撮影>2014年のツール・ド・フランスは山岳賞狙いの走りとなったホアキン・ロドリゲス。来季は悲願の総合優勝を目指す<砂田弓弦撮影>

 ブエルタ・ア・エスパーニャでの活躍を誓い、調整として臨んだツール・ド・フランスでは、山岳賞に色気を見せたものの失速。それでも、ブエルタでは調子を合わせて総合4位まで浮上した。本領発揮とはいかなかったものの、ブエルタでみせたパフォーマンスは、2015年を見据えるうえで、まずまずの走りだったという。

 再起をかける来シーズンは、ツールとブエルタでの総合優勝を視野に入れる。特にタイムトライアルの距離が個人・チーム合わせて42kmと短いツールは、典型的なクライマーのロドリゲスにとっては願ってもないチャンスだ。個人TTの距離が長いジロについては、現状では回避する見通し。5月には36歳となるが、年齢を感じさせず、年間を通してハイアベレージで走るのが彼の持ち味。もちろんアルデンヌでの優勝争いにも期待していいだろう。まずはクラシックシーズンに調子のピークを合わせるために、1月のツール・ド・サンルイス(アルゼンチン)でシーズンインする。2月にはドバイ・ツアー(UAE)、そして得意のツアー・オブ・オマーンへと転戦する。

 ロドリゲスが不振の間、チームの顔として大車輪の働きを見せたのがアレクサンドル・クリツォフ(ノルウェー)。2012年のチーム加入時にはスプリント時の発射台など、リードアウトマンとしての役割を期待された彼だったが、年々、勝利を積み重ね、自力でエーススプリンターの座をゲットした。そして迎えた2014年に大きな飛躍を遂げることとなった。

ミラノ~サンレモ優勝、ツールでステージ2勝をはじめとしてシーズン14勝を挙げたアレクサンドル・クリツォフ<砂田弓弦撮影>ミラノ~サンレモ優勝、ツールでステージ2勝をはじめとしてシーズン14勝を挙げたアレクサンドル・クリツォフ<砂田弓弦撮影>

 混戦のミラノ~サンレモでビッグクラシック初優勝を挙げると、ツールでも悲願のステージ初勝利を含む2勝。シーズン14勝は、勝利数世界ランク3位。UCIワールドツアーランキングでも8位と、グランツールレーサーが優位の現在のシステムにあって堂々たるランクインだ。現役ライダーきっての“上れるスプリンター”でありながら、ピュアスプリントにも自信を持ち、あらゆる局面に対応できるのが強みだ。

 そんなパワー自慢の彼の目標は、春のクラシックとツール。ミラノ~サンレモ2連覇はもとより、北のクラシックでの勝利にも目を向ける。今年はミラノ~サンレモで勝ち、絶対的な自信を持って臨んだパヴェ(石畳)でまさかの苦戦。特に、リタイアに終わったパリ~ルーベには大きなショックを受けたという。次世代のパヴェ王者と目される彼も27歳となり、いよいよ勝負のときがやってきたようだ。

 ツールでは、ポイント賞のマイヨヴェール獲得を目指す。次回大会からステージの難易度ごとにポイント配分が変わるレギュレーションとなるため、「本当に強い選手にグリーンジャージが渡るはずだ」と話す。賞レース参戦への意欲も十分だ。

 チームはツールにおいて、ロドリゲスとクリツォフのバランスを保てるよう戦術を考える必要があるだろう。ロドリゲスのツール、ブエルタへのダブル参戦宣言を受けて、クリツォフはジロ参戦が噂されたものの、本人は否定。このためツール、ブエルタでの共闘は濃厚な状況だ。ロドリゲスに関してはこれまでの実績から、ダニエル・モレノやアルベルト・ロサダ(ともにスペイン)ら、長年右腕として戦ってきた選手を揃えられれば問題ないと見ることもできる。レースをこなしていきながら、両エースの意向やコンディションをもとに布陣を整えることになるだろう。

大注目は“スーパールーキー”ビストラム

 2015年の新加入選手は5人。なかでも大きな注目を集めるのが、今年の世界選手権ロードでアンダー23世界チャンピオンに輝いた、スヴェンエーリク・ビストラム(ノルウェー)だ。

2014年世界選手権のアンダー23王者、スヴェンエーリク・ビストラムが正式契約を結んだ<砂田弓弦撮影>2014年世界選手権のアンダー23王者、スヴェンエーリク・ビストラムが正式契約を結んだ<砂田弓弦撮影>

 同年代では国内2、3番手の選手だったが、世界一を決める舞台で躍動。上りでアタックを決め、ゴールまでのダウンヒルも圧倒的なスピードで駆け抜けた。8月からトレーニー(研修生)としてチームに合流していたが、この活躍を受けて正式契約を締結。近年、ジュニア世代からの強化が実を結んでいるノルウェーから、大物候補がプロの世界へと乗り込む。

 ビストラムの脚質はパンチャー。将来的には、リエージュ~バストーニュ~リエージュのようなレースで勝利したいという。同郷の先輩であるクリツォフは、かねてからトレーニングをともにしており、その強さを知っていたと後に語っている。今後も一緒にトレーニングを行うといい、「私からはスプリントについて教えられるし、彼からは上りの走り方を教わりたい。それをミラノ~サンレモに生かせられれば」と明るいコメント。今年10月にはツール・ド・フランス さいたまクリテリウムで一緒に来日も果たしている。

チーム ネットアップ・エンデューラから移籍するティアゴジョセピント・マシャド<砂田弓弦撮影>チーム ネットアップ・エンデューラから移籍するティアゴジョセピント・マシャド<砂田弓弦撮影>

 移籍組は、派手さこそないものの、チームの補強ポイントに則して堅実な選手を獲得した。ティアゴジョセピント・マシャド(ポルトガル)は、チーム レイディオシャック時代にグランツールでエースを務めたこともある選手。1週間程度のステージレースを得意とし、今年はツアー・オブ・カリフォルニア総合4位、ツアー・オブ・スロベニア総合優勝。山岳のほかタイムトライアルにも強く、ロドリゲスにとってはツールのチームTTで心強い存在となりそうだ。

 そのほか、UCIヨーロッパツアーやアジアツアーのステージレースで総合優勝を量産し、世界選手権ロードの代表にも抜擢されたイルヌール・ザカリンや、オールラウンダーのセルゲイ・ラグティン(ともにロシア)、スプリント力の高いヤコポ・グアルニエーリ(イタリア)が加わる。

チーム力を上げる、いぶし銀のベテラン

 エースクラスに続く選手たちも充実。レース展開次第でリーダーにもアシストにもなれる、自在な選手たちが揃う。

終盤の強力な集団牽引で、アレクサンドル・クリツォフの優勝をアシストしたルカ・パオリーニ(ミラノ~サンレモ2014)<砂田弓弦撮影>終盤の強力な集団牽引で、アレクサンドル・クリツォフの優勝をアシストしたルカ・パオリーニ(ミラノ~サンレモ2014)<砂田弓弦撮影>

 1月に37歳になるルカ・パオリーニ(イタリア)は今季、クリツォフのミラノ~サンレモ制覇に大きく貢献するなど、アシストの任務を全うした。リザルトこそジロ第21ステージの7位が最高だが、計算できる走りと、ここ一番での勝負強さはベテランならでは。パヴェはもちろん、スプリントや上りでのアタックで勝負に絡むこともしばしばあった。

 アルデンヌクラシックなどのワンデーレースでは、アレクサンドル・コロブネフ(ロシア)がレースを動かすシーンを見ることができるだろう。2007年と2009年には世界選手権ロード銀メダル、2008年北京五輪では銅メダル(薬物違反者が出たことによる繰り上げ)と、大舞台での実績に長ける。自身も薬物使用の噂が絶えず、レースに集中できない時期があったことから、全盛期の力からは多少劣っているものの、アシストとしてはまだまだ強力だ。

2014年のリエージュ~バストーニュ~リエージュで、勝利目前まで迫るアタックを見せたジャンパオロ・カルーゾ<砂田弓弦撮影>2014年のリエージュ~バストーニュ~リエージュで、勝利目前まで迫るアタックを見せたジャンパオロ・カルーゾ<砂田弓弦撮影>

 ブエルタ総合15位のジャンパオロ・カルーゾ(イタリア)は、ここ数年ロドリゲスのアシストをしながら、自らも好成績を収めている選手。リエージュ~バストーニュ~リエージュではあわや優勝かという走りを見せるなど、いつ大きな勝利を収めても不思議ではない。2015年のスケジュールは明らかにされていないが、ジロで総合エースを務める可能性がある。

 1週間のステージレースで結果を求めるのは、シモン・スピラク(スロベニア)。パリ~ニース総合8位、ブエルタ・アル・パイス・ヴァスコ(バスク一周)総合4位、ツール・ド・ロマンディ総合2位など、安定した成績をマーク。2015年も従来通りの路線で勝負することになる。

 チームの軸となるロシア人選手では、クリツォフの発射台として同国ロード王者のアレクサンドル・ポルセフが、スプリンターでは2013年に2勝を挙げているアレクセイ・ツァテヴィッチが嘱望される。アントン・ヴォロビエフは、2012年の世界選手権アンダー23個人TTの王者。ツアー・オブ・北京総合5位のセルゲイ・チェルネトスキーなどもタレント候補として控える。ベテランのユーリ・トロフィモフやエドアルド・ヴォルガノフなどが、若い選手を引っ張ることになるだろう。

チーム カチューシャ 2014-2015 選手動向

【残留】
マキシム・ベルコフ(ロシア)
ジャンパオロ・カルーゾ(イタリア)
セルゲイ・チェルネトスキー(ロシア)
マルコ・ハラー(オーストリア)
ウラジミール・イサイチェフ(ロシア)
パヴェル・コチェトコフ(ロシア)
アレクサンドル・コロブネフ(ロシア)
ディミトリー・コゾンチュク(ロシア)
アレクサンドル・クリツォフ(ノルウェー)
ビアチェスラフ・クズネツォフ(ロシア)
アルベルト・ロサダ(スペイン)
ダニエル・モレノ(スペイン)
ルカ・パオリーニ(イタリア)
アレクサンドル・ポルセフ(ロシア)
ホアキン・ロドリゲス(スペイン)
リュディゲル・ゼーリッヒ(ドイツ)
エゴル・シリン(ロシア)
ガティス・スムクリス(ラトビア)
シモン・スピラク(スロベニア)
ユーリ・トロフィモフ(ロシア)
アレクセイ・ツァテヴィッチ(ロシア)
アンヘル・ビシオソ(スペイン)
エドアルド・ヴォルガノフ(ロシア)
アントン・ヴォロビエフ(ロシア)
【加入】
スヴェンエーリク・ビストラム(ノルウェー) ←チーム アステル フス・リドレー
ヤコポ・グアルニエーリ(イタリア) ←アスタナ プロチーム
セルゲイ・ラグティン(ロシア) ←ルスヴェロ
ティアゴジョセピント・マシャド(ポルトガル) ←チーム ネットアップ・エンデューラ
イルヌール・ザカリン(ロシア) ←ルスヴェロ
【退団】
パヴェル・ブルット(ロシア) →ティンコフ・サクソ
ウラジミール・グセフ(ロシア) →スカイダイブドバイ プロサイクリングチーム
ペトル・イグナテンコ(ロシア) →ルスヴェロ
ミハイル・イグナチェフ(ロシア) →エリート2(トラック転向)
アレクサンドル・クシェンスキー(ベラルーシ) →チーム ミンスク
アレクサンドル・リバコフ(ロシア) →ルスヴェロ

今週の爆走ライダー-ダニエル・モレノ(スペイン、チーム カチューシャ)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシストや逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 ロドリゲスが絶大な信頼を寄せるアシストだが、自身もロドリゲスに匹敵するほどの実力を持つ。2013年のフレーシュ・ワロンヌでは、けがを抱えていたロドリゲスに代わってユイの壁を激走。クラシック初優勝を挙げた。

2013年のフレーシュ・ワロンヌでクラシックレース初優勝を飾ったダニエル・モレノ<砂田弓弦撮影>2013年のフレーシュ・ワロンヌでクラシックレース初優勝を飾ったダニエル・モレノ<砂田弓弦撮影>

 シーズン通して上位で走る力を持ち、グランツールやクラシック問わずしっかりと結果を残す。激坂ハンターとしての資質も十分なあたり、ロドリゲスと同じ脚質と言える。彼がロドリゲスと異なるのは、アシストとしての自覚とそれを誇りにしているあたりではないだろうか。「“プリート”(ロドリゲスの愛称)をしっかりとアシストするが、彼に何かがあれば自ら勝負に行く」。ビッグレースを前にコメントを求められると、決まってこうした言葉を残す。

2009年、ケスデパーニュ時代のダニエル・モレノ(左)とホアキン・ロドリゲス<砂田弓弦撮影>2009年、ケスデパーニュ時代のダニエル・モレノ(左)とホアキン・ロドリゲス<砂田弓弦撮影>

 ケスデパーニュ時代には、力がありながら2人揃ってアシストに甘んじたこともあった。活躍の場を求めて2010年に加入したオメガファルマ・ロット(当時)は、典型的なベルギー色のチームゆえ、フィットすることができなかった。苦労が多かった分、自らのチャンスだけしか見ないといった、高い理想を追い求めることはしない。アシストの職務を全うするか、リーダーとして勝負に出るかの境目を見極める眼力は、自分が持ち得るセンスであることを自らが一番よく理解している。

 確立したスタイルは、2015年も崩さない。チームメートも、「モレノさえいれば、“プリート”は大丈夫」と口にするほどの存在感と絶妙な走りのテクニック。それが冴えわたる日々が、再びやってこようとしている。

文 福光俊介

福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、気がつけばテレビやインターネットを介して観戦できるロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。2011年、ツール・ド・フランス観戦へ実際に赴いた際の興奮が忘れられず、自身もロードバイク乗りになる。自転車情報のFacebookページ「suke’s cycling world」も充実。本業は「ワイヤーママ徳島版」編集長。

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