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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<87>スプリントを中心にスペシャリストで勝利量産へ チーム ジャイアント・アルペシン 2015年シーズン展望

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 トップチームの多くが来シーズンに向けたトレーニングキャンプをスタートさせようとしています。布陣も整い、メンバー同士の関係づくりも大切となるこの時期。ここでの成功がレースにも反映されます。そこで今回はここ数シーズン、プロトン内でも際立って連携や統率が保たれているチームとして強さを見せてきた、チーム ジャイアント・シマノを紹介。2015年シーズンからは、「チーム ジャイアント・アルペシン」として戦います。

マルセル・キッテル、ジョン・デゲンコルプらトップスプリンターを抱えるチームの新名称は「チーム ジャイアント・アルペシン」に決定マルセル・キッテル、ジョン・デゲンコルプらトップスプリンターを抱えるチームの新名称は「チーム ジャイアント・アルペシン」に決定

新スポンサー獲得でチーム運営が安定

 2005年にシマノ・メモリーコープとしてスタートし、スキル・シマノ、チーム アルゴス・シマノ、2014年はチーム ジャイアント・シマノと名前を変えながら活動してきた。2015年シーズンからはヘアケア製品などを扱うドイツの医療品企業・アルペシン社がスポンサーに就任。同社とは4年間の長期契約を締結した。当面はセカンドスポンサーの立場であるが、将来的にはメーンスポンサーへの移行も見据えたものとしている。これまで、反ドーピングなどの倫理面や、ゼネラルマネージャーのイヴァン・スペークンブリンク氏らを筆頭とした首脳陣の指導力に高い評価がなされていたが、新スポンサー獲得を機に運営面での安定性も確保したことになる。

ツール・ド・フランス2014で4勝を飾ったマルセル・キッテル。来シーズンもチームの中心となるエースだツール・ド・フランス2014で4勝を飾ったマルセル・キッテル。来シーズンもチームの中心となるエースだ

 新スポンサー獲得の要因としては、ドイツ人ライダーの活躍が大きい。その筆頭は、やはりマルセル・キッテルだ。2014年シーズン、チームは41勝(勝利数は世界ランク2位)を挙げたが、そのうちキッテルは13勝。ツール・ド・フランスで4勝をマークしており、第1ステージでは2年連続の勝利を飾りマイヨジョーヌも獲得した。早々のリタイアとなってしまったジロ・デ・イタリアでも第2、第3ステージを連勝。レース規模の大小を問わず、スプリンターが主役になるものとあれば、決して力を出し惜しまない姿勢は、現在のプロトンにおけるナンバーワンスプリンターの走りそのもの。

ジョン・デゲンコルプはブエルタ・ア・エスパーニャ2014で4勝を挙げ、ポイント賞を獲得ジョン・デゲンコルプはブエルタ・ア・エスパーニャ2014で4勝を挙げ、ポイント賞を獲得

 キッテルとはジュニア時代からチームメートで、強い信頼関係にあるジョン・デゲンコルプも、2014年はさらに存在感を強めた1年だった。ヘント~ウェヴェルヘムで春のクラシック初優勝を挙げると、パリ~ルーベでも混戦のなか2位を確保。ブエルタ・ア・エスパーニャでは4勝を挙げ、初のポイント賞を獲得した。シーズン10勝を挙げ、UCIワールドツアー個人ランキングではキッテル(37位)より上の13位。同じスプリンターながら、キッテルとは脚質が異なり、上りや石畳での強さが魅力だ。また、ここ一番でのアタックや、平地での高速巡航にも対応できる。ツールではここ2年、スプリントトレインの中核を担い、ラスト約1.5kmから数百メートルにわたるハイスピード牽引という、新たな一面も見せている。

ジロ・デ・イタリア2014最終ステージでグランツール初勝利を飾ったルカ・メズゲッツジロ・デ・イタリア2014最終ステージでグランツール初勝利を飾ったルカ・メズゲッツ

 「上れるスプリンター」として成長し、チーム内でもキッテル、デゲンコルプに並ぶ存在となったのが、ルカ・メズゲッツ(スロベニア)。2013年はシーズン1勝ながら、ジロでステージ3位が3回と、可能性を見せた1年だった。迎えた今シーズンは、ヴォルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャ(カタルーニャ1周)でステージ3勝と圧倒的なスプリントを見せると、ジロ第21ステージで悲願のグランツール初勝利。その後は1勝にとどまったものの、ステージ上位をコンスタントにマークした。

 チームは、この3選手の棲み分けに着手することになる。それぞれの特性から見て、来シーズンのレースプログラムはこれまでと大きく変わることはないだろう。キッテルは調子のピークをツールへと持っていく。デゲンコルプは、まず春のクラシックを狙う。ミラノ~サンレモや春のクラシックでの優勝を目指し、シーズンインからエンジンは全開に。メズゲッツはステージレースを転戦し、スプリントステージで勝利を積み重ねたい。

2014年の世界選手権個人タイムトライアルで銅メダルを獲得したトム・ドゥムラン2014年の世界選手権個人タイムトライアルで銅メダルを獲得したトム・ドゥムラン

 スプリンターチームとしての色濃さを見せてきたが、2014年はその趣きが少しずつ変わってきていることを示した。なかでも、トム・ドゥムラン(オランダ)とワレン・バルギル(フランス)の台頭は、あらゆる局面で戦えるチーム作りに着手した結果が反映されたものと言える。

 ドゥムランは2013年のエネコ・ツアーで総合優勝争いを演じ注目を集めたが、2014年はさらに飛躍した1年となった。初のオランダチャンピオンとなるなどタイムトライアル能力の高さを示してきたが、ハイライトは、世界選手権での個人TT銅メダル獲得。その走りが世界トップレベルにあることを証明したシーンだった。また、9月のGPケベック2位、GPモントリオール6位と、ワンデーレースへの適性も示した。オランダ最優秀選手となり、今後への期待も高まる。アルデンヌクラシックでの走りが計算できる点や、ツール・ド・スイス総合5位に入ったように1週間程度のステージレースで力を発揮するあたりに頼もしさを感じさせる。

グランツールで総合争いに加われる実力をもち、積極的な走りも魅力のワレン・バルギルグランツールで総合争いに加われる実力をもち、積極的な走りも魅力のワレン・バルギル

 2013年ブエルタ・ア・エスパーニャでステージ2勝と、彗星のごとく現れたバルギルは、再びブエルタで快走。総合優勝を争う選手たちを尻目に、再三のアタックでレースを盛り上げた。総合8位となり、グランツールで初のトップ10フィニッシュ。3週間をトータルに走ることができ、グランツールでの総合エースを担う資質を備えている。チームの育成方針によりツール出場が実現しておらず、2015年は初出場を見据える。スプリンターとの関係性や、課題のTTをどう克服するかがポイントとなってくる。今年のツールで活躍したティボー・ピノ(エフデジ ポワン エフエル)や、ロマン・バルデ(アージェードゥーゼール ラモンディアル)らに続くフレンチオールラウンダーとなれるか。

シクロクロスのオランダ王者ファンデルハールら注目の新加入選手

 チームは2015年シーズンも既存のメンバーで戦う方針を固めていたため、現状で確定している新加入選手は4人と少なめ。とはいえタレント候補、将来性が楽しみな選手ばかりだ。

オランダのシクロクロス王者、ラルス・ファンデルハール(手前)がロードのトップチームに加入するオランダのシクロクロス王者、ラルス・ファンデルハール(手前)がロードのトップチームに加入する

 オランダシクロクロス王者で、2011年と2012年にはアンダー23の世界王者にも輝いたラルス・ファンデルハールの加入が大きなトピック。この冬もシクロクロスを転戦中で、UCIワールドカップ第1戦ファルケンブルフ大会では優勝を飾った。23歳ながらエリートクラスでの実績が豊富。目下、世界選手権初優勝がターゲットだ。

 ロードでは今シーズン、チーム ジャイアント・シマノの下部組織にあたる育成チームに所属。UCI2クラスで1勝を挙げた。シクロクロスでは、ホールショット(スタートラインから最初のコーナーまでのダッシュ)やゴールスプリントを得意とする。しばらくはロードレースに慣れることに重点を置くが、ゆくゆくはスプリントや北のクラシックでの活躍が期待される。

 そのほかでは、3歳年上の兄トビアスとチームメートになるフレデリック・ルドヴィグソン(スウェーデン)、UCIアメリカツアーで活躍したオールラウンダーのカーター・ジョーンズ(アメリカ)、平地系ライダーのジーコ・ワイテンス(ベルギー)が加入する。

次世代のエース候補やアシストとして貢献する選手たち

 スプリント・山岳・TTとそれぞれのエースが確立され、あらゆるアプローチが可能な戦力だが、次世代を担うエース候補たちも押さえておきたい。

 クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ第3ステージで鮮烈な勝利を挙げたニキアス・アルント(ドイツ)、ワールド・ポート・クラシック第2ステージで勝ったラモン・シンケルダム(オランダ)は、ともにキッテルやデゲンコルプらの発射台を務めることが多い。自らもゴール勝負ができるスプリント力が持ち味だ。

 ツアー・オブ・カリフォルニア総合3位のローソン・クラドック(アメリカ)は、ジュニア時代から各年代のトップを走ってきた選手。山岳・TTに強く、ステージレースで上位進出の期待がかかる。

 若手ライダーが目立つ一方で、長年チームに貢献してきたベテランが精神的支柱として控える。アムステル・ゴールドレース6位のシモン・ゲシュケ(ドイツ)は、ワンデーレースで結果を求める。また、スプリントトレインの統率役でもあるクーン・デコルト、ロイ・クルフェルス、アルベルト・ティッメル、トム・フィーレルス(いずれもオランダ)といった選手たちの、順位には決して表れない「縁の下の力持ち」ぶりもしっかりとチェックしておいてほしい。

■チーム ジャイアント・アルペシン 2014-2015 選手動向

【残留】
ニキアス・アルント(ドイツ)
ワレン・バルギル(フランス)
ローソン・クラドック(アメリカ)
ロイ・クルフェルス(オランダ)
ベルト・デバッケル(ベルギー)
クーン・デコルト(オランダ)
ジョン・デゲンコルプ(ドイツ)
トム・ドゥムラン(オランダ)
ヨハンネス・フレリンガー(ドイツ)
シモン・ゲシュケ(ドイツ)
チャド・ハガ(アメリカ)
ティエーリー・ユポン(フランス)
マルセル・キッテル(ドイツ)
トビアス・ルドヴィグソン(スウェーデン)
ルカ・メズゲッツ(スロベニア)
ダアン・オリヴィエ(オランダ)
ゲオルク・プライドラー(オーストリア)
ラモン・シンケルダム(オランダ)
トム・スタムスナイデル(オランダ)
アルベルト・ティッメル(オランダ)
トム・フィーレルス(オランダ)
【加入】
カーター・ジョーンズ(アメリカ) ←オプトゥム p/b ケリーベネフィットストラテジーズ
フレデリック・ルドヴィグソン(スウェーデン) ←デベロップメント チーム ジャイアント・シマノ
ラルス・ファンデルハール(オランダ) ←デベロップメント チーム ジャイアント・シマノ
ジーコ・ワイテンス(ベルギー) ←トップスポルト ヴラーンデレン・バロワーズ
【未発表】
ジ・チェン(中国)
シーコン・ロー(マレーシア)
【退団】
ヨナス・アールストランド(スウェーデン) →コフィディス ソリュシオンクレディ
ブリアン・ブルハック(オランダ) →未定
トマ・ダミュソー(フランス) →ルーベ・リール メトロポール
ドリース・デヴェニンス(ベルギー) →イアム サイクリング
レイナールト・イェンスファンレンスブルフ(南アフリカ) →MTN・クベカ
トーマス・ピーターソン(アメリカ) →未定

今週の爆走ライダー-クーン・デコルト(オランダ、チーム ジャイアント・シマノ)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシストや逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 キッテルやデゲンコルプを支えるスプリントトレインを指揮する立場にあり、チームのキャプテンでもある32歳。どこか、さまざまなチームを渡り歩いた選手のような雰囲気を醸し出すが、それは幾多の苦楽を経験したからなのだろう。実際はプロキャリアで所属したのは2チームのみ。プロキャリアは10年目を終えたところだ。

「2014ツール・ド・フランスさいたまクリテリウム」で来日し、マルセル・キッテルの勝利をアシストしたクーン・デコルト「2014ツール・ド・フランスさいたまクリテリウム」で来日し、マルセル・キッテルの勝利をアシストしたクーン・デコルト

 上位戦線で姿を見せることは少ないが、アシストとしては一流。リスクを恐れず攻撃的に走る。それゆえ、落車負傷に見舞われることもしばしば。次々と体に刻み込まれる傷跡が悩みの種だった。

 それを隠すために始めたタトゥーは、いまや全身のいたるところに彫り込まれた。彼なりのキャリアの証なのだとか。最近はむしろ、タトゥーを増やすことが楽しみになっているとかいないとか…。

 情報通でもあり、プロトン内の動向をいち早く察知するライダーとしても評判だ。オーストラリアのウェブサイトに、プロトン内の話題を選手の立場から匿名で伝える「シークレット・プロ」という連載記事があり、これを彼が執筆しているのではないかともっぱらの噂になっている。本人は否定しているが、真相はいかに。

2013年のツール・ド・フランス第10ステージ、マルセルキッテルを勝利に導き喜び合うクーン・デコルト(左)とジョン・デゲンコルプ2013年のツール・ド・フランス第10ステージ、マルセルキッテルを勝利に導き喜び合うクーン・デコルト(左)とジョン・デゲンコルプ

 キッテルと勝利数を賭けた結果敗れ、罰ゲームとして“キッテルヘアー”にさせられるなど、レース外の話題も多い彼だが、きっとそれも若い選手たちとの信頼関係を築く術なのだろう。そうでなければ、長年同一チームでアシストを務めるなどなかなか見られないことだし、確実に仕事をこなすことさえ難しい。何より、アシストの立場を誇りにしていることも、彼の人間性を表していると言えそうだ。

 現チームで迎える7年目のシーズン。エースライダーたちが新たな歴史を築くため、背中を押す日々となる。“ミスター ジャイアント・アルペシン”が見せる、アシストによるもう1つの戦い。それもまた自転車競技の醍醐味であることを、我々は忘れてはならない。

文 福光俊介、写真 砂田弓弦

福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、気がつけばテレビやインターネットを介して観戦できるロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。2011年、ツール・ド・フランス観戦へ実際に赴いた際の興奮が忘れられず、自身もロードバイク乗りになる。自転車情報のFacebookページ「suke’s cycling world」も充実。本業は「ワイヤーママ徳島版」編集長。

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