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栗村修の“輪”生相談<37>30代男性「レース運営にはお金がいくらくらいかかりますか?」

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いつも楽しく拝見させて頂いております。

 レース運営には「お金」と「手間」がとてもかかると伺いました。今回の質問として「お金」の面で、具体的項目として「何に」「いくらくらい」かかるのか教えて頂ければ幸いです。ツール・ド・フランスやジロ・デ・イタリアとかでは規模が大きすぎてあまり現実味がないので、例えば今回のツアー・オブ・ジャパン(TOJ)を例題にご返答願えませんでしょうか?

追記:
スポンサー収入等も大口で***円でこんな広告表示、小口で***円でこれくらいの広告表示等と料金目安が公になっていたら、「よし、じゃあウチも…」という企業がひょっとしたら出てくるのではないでしょうか?

(30代男性 レースファン)

 いやあ、とうとう、こんなご質問を頂ける時代になりました。レース作りに関わっている立場としては、興味を持っていただけるのはありがたいお話ですね。

 まず、ご質問では「ツールやジロではなく、TOJで」という分け方になっていますが、実際は、TOJくらいのレースになると、ツールやジロと比べて作業項目的には大きく変わりません。もちろん、仰るように予算規模は違いますよ。でも逆に言えば、違うのは規模くらいです。内容は基本的に一緒なんです。内容が異なるのは、プロのレースと、たとえばエンデューロレースなどの、市民参加型レースです。そういう分け方は可能です。

 さて、それでは、ツール、ジロ、TOJなどにかかるお金についてお話ししますが、細かいところまでお話ししているとキリがありません。それほど、多方面にお金がかかるものなんです。それに、レース形態によって、内訳はずいぶんかわります。だから、大枠をお話ししましょう。

2014ツアー・オブ・ジャパン(伊豆ステージ)のスタート/ゴール地点2014ツアー・オブ・ジャパン(伊豆ステージ)のスタート/ゴール地点

 レースを行う上で絶対に必要なのは、場所、つまりコースですよね。でも、サイクルロードレースは基本的にスタジアムを使いませんから、実はコース代金はかかりません。公道使用許可は必要ですし、それをとるのは簡単ではないのですが、しかしタダが基本です。もちろん、スタート/ゴール地点の建物を借りるとか、駐車場を用意するなどお金がかかる場合もありますが、それほどの金額ではありません。

 しかし、コース使用料がタダでも、それに付随するお金はかかります。それは、観客席やプレスルームなどの、会場作りですね。大型ビジョンを設置したり、ゴールのアーチを置いたり、MCさんに来てもらったり。ただ、これも金額はピンキリで、極端な話、手作りに近いところもあれば、1レースあたり数千万円かける場合もあります。TOJでも、全ステージ合わせれば数千万の単位です。
 
あと、会場設営と並んで意外と大きいのは、警備費です。日本のレースでは、警備の方々はボランティア、プロ、警察関係者の3種類に分かれますが、プロに支払う金額が、たとえばTOJ東京ステージならば数百万円単位です。警察に公道使用許可を貰う際に、警備体制がしっかりしていないと許可が下りませんから、ここにはお金をかけなければいけません。

 選手やチームスタッフの移動・宿泊費も、かなりの金額になります。TOJでは、総額は数千万円。もちろん、削ろうと思えば削れる部分ですが、当然そんなレースの評判は落ちますよね。海外チームの場合、日本までの渡航費も大きいのですが、実はここはグレーです。基本、コンチネンタルチームは渡航費は自腹です。プロチームは、渡航費もこちらが負担しないと来てくれません。プロコンは、レースによりますね。これもけっこうな金額になります。

「2014ツール・ド・フランス さいたまクリテリウム Presented by ベルーナ」のスタート/ゴール地点。冠スポンサーの看板が連なる「2014ツール・ド・フランス さいたまクリテリウム Presented by ベルーナ」のスタート/ゴール地点。冠スポンサーの看板が連なる

 さて、かかるお金の内容については、ツールやジロとTOJなど日本のレースは大きくは変わらないとお伝えしましたが、収入に関しては決定的な違いがあります。それは、あちらでは収入の一番大きなウェイトを占めている放映権が、日本では取れていない点です。ジャパンカップですら、「広報費」としてお金を払って放送してもらっているのが現状です。本来なら収入になるテレビ放送が、支出になってしまっているんです。これは大きな問題です。

 他にも、細かい支出は無数にありますが、この辺にしておきましょう。経費の総額は、TOJ、ジャパンカップ、さいたまクリテリウムなど大きなレースでは、億の単位に届きます。実業団レースは数百万円レベルですね。

 スポンサーのお話ですが、これはTOJに限ってのお話はできないので、日本のレースの一般論を申し上げます。だいたい、1000万円以上を用意すれば、そのレースの「冠スポンサー」になれると思ってください。「Presented by ○○○」の○○○に名前が入るんです。小さいロゴを入れる小口スポンサーならば、50万円くらいから探せるでしょう。これは、観客数を考えると格安だと思うのですが、いかがでしょうか。

(編集 佐藤喬・写真 米山一輝)

回答者 栗村修(くりむら おさむ)

 一般財団法人日本自転車普及協会 主幹調査役、ツアー・オブ・ジャパン 大会副ディレクター、スポーツ専門TV局 J SPORTS サイクルロードレース解説者。選手時代はポーランドのチームと契約するなど国内外で活躍。引退後はTV解説者として、ユニークな語り口でサイクルロードレースの魅力を多くの人に伝え続けている。著書に『栗村修のかなり本気のロードバイクトレーニング』『栗村修の100倍楽しむ! サイクルロードレース観戦術』(いずれも洋泉社)など。

※栗村さんにあなたの自転車に関する悩みを相談してみませんか?
ml.sd-cyclist-info@sankei.co.jpまでお寄せください。

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