マキノ、野辺山の3戦ともアベック優勝「来年も日本で走りたい」 シクロクロスの男女U23イタリア王者に独占インタビュー

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 2014-15年のシクロクロス・シーズンにおいて、日本で開催されるUCI(国際自転車競技連合)公認レースは、11月に開かれた「関西シクロクロス・マキノラウンド」と「野辺山シクロクロス」の2大会だけ(野辺山は2レース開催)。そこで3戦全勝をおさめた男女のイタリアU23チャンピオン、ジョエーレ・ベルトリーニとアリスマリア・アルツッフィ(ともにセライタリア・グエルチョッティ所属)が12月1日、Cyclist編集部を訪れて独占インタビューに応じ、今後の活躍と再来日を誓った。また、電車の運転士として働きながらシクロクロス世界選手権で2度の優勝を成し遂げた経歴をもつヴィト・ディターノ監督は、ベルギーやオランダといった“シクロクロス大国”と戦う厳しさを語った。

(文・平澤尚威 写真・上野嘉之、平澤尚威)

日本行われたシクロクロスUCI公認レースで3連勝を飾ったアリスマリア・アルツッフィ(左)とジョエーレ・ベルトリーニが、チームスポンサーのグエルチョッティのロードバイクとともに記念撮影 =12月1日、東京・大手町の東京サンケイビル前日本行われたシクロクロスUCI公認レースで3連勝を飾ったアリスマリア・アルツッフィ(左)とジョエーレ・ベルトリーニが、チームスポンサーのグエルチョッティのロードバイクとともに記念撮影 =12月1日、東京・大手町の東京サンケイビル前

「コースを見る力」をもつベルトリーニ 19歳で大器の片鱗

U23イタリアチャンピオンのジョエーレ・ベルトリーニは19歳U23イタリアチャンピオンのジョエーレ・ベルトリーニは19歳

 滋賀県高島市で11月23日に開かれた関西シクロクロス・マキノラウンドと、長野・野辺山高原で11月29、30日に開かれた野辺山シクロクロス。その男女エリートカテゴリーは、すべてU23イタリアチャンピオンである19歳のベルトリーニと20歳のアルツッフィが優勝を飾った。まだ若い2人の圧倒的な走りは、会場に集まった日本の観客を大いに驚かせた。

 ベルトリーニは自分のことを「スピードマン」だと語る。シクロクロスの勝敗を左右するといわれるスタートダッシュも得意だ。また、ディターノ監督はベルトリーニについて「テクニシャンだし、レース勘がいい。それに視覚の情報を処理する能力が高い」と評する。コースコンディションが刻々と変わるシクロクロスにおいて、瞬時にコースの状態を見極め、最適なラインへとバイクを進められる能力は大きなアドバンテージとなる。

「野辺山シクロクロス」初日、危なげない走りで優勝したジョエーレ・ベルトリーニ「野辺山シクロクロス」初日、危なげない走りで優勝したジョエーレ・ベルトリーニ
「野辺山シクロクロス」第2日、男子エリートの表彰式「野辺山シクロクロス」第2日、男子エリートの表彰式

 1995年生まれの19歳。ジュニアカテゴリーからU23へ上がったばかりで、まだ獲得したUCIポイントが少ないため、世界ランキングは50位以内に入っていない。しかし世界ランキング10位台の選手を上回ったレースもあり、トップレベルで渡り合える実力を示している。

瞬時にコース状態を見極める能力が高いというジョエーレ・ベルトリーニ。ディターノ監督は「テクニシャンで、レース勘がいい」と称賛する瞬時にコース状態を見極める能力が高いというジョエーレ・ベルトリーニ。ディターノ監督は「テクニシャンで、レース勘がいい」と称賛する

 日本では3レースとも強さを見せつけたが、決して余裕があったわけではないという。野辺山シクロクロス第2日では、1周目にやや出遅れたものの、コースやコーナーの状態をしっかり確認。次の周回に備える冷静な判断を下し、その後の独走態勢につなげた。

 シクロクロスシーズン以外の3月から9月にかけてはマウンテンバイク(MTB)クロスカントリーの選手として、イタリア籍の「メリダ イタリアチーム」で活動している。どちらかに絞るのではなく「シクロクロスもMTBも全力でがんばっていく」と宣言。メリダがスポンサーを務めるなかでもメーンとなるMTBチーム「マルチバン・メリダ バイキングチーム」への加入にも意欲を示した。また「東京にどんなMTBコースがあるのかな」と気にしていて、2020年の東京オリンピック出場も目標に入れているようだ。

「ジロ・ローザ」も走った20歳の乙女アルツッフィ

シクロクロスU23イタリアチャンピオンのアリスマリア・アルツッフィシクロクロスU23イタリアチャンピオンのアリスマリア・アルツッフィ

 アルツッフィは上りを得意とする選手だ。ディターノ監督は、レースに向けてしっかりとトレーニングを積み準備できる真面目さ、ひたむきさを高く評価している。東京に宿泊したこの日も、朝からジョギングをしようとしたので、監督は知らない土地ということも考慮し「危ないからやめなさい」と止めたという。

 シクロシーズン以外はロードレース選手として過ごしている。2014年は「アスタナ・ビーピンク ウィメンチーム」に所属し、来季はイタリアのプロコンチネンタルチームであるネーリソットーリの女子チーム「ジョスフレッディ」に移籍する。今年の女子版ジロ・デ・イタリア「ジロ・ローザ」に出場しており、第3ステージで3位に入った日本の萩原麻由子(ウイグル・ホンダ)について「強い選手ね」と印象を語った。また、ヨーロッパのシクロクロスに参戦してきた豊岡英子(パナソニックレディース)も、ワールドカップ会場などで知っていた選手だと話した。

「野辺山シクロクロス」初日、女子エリートの表彰式「野辺山シクロクロス」初日、女子エリートの表彰式
2日連続で圧勝したアリスマリア・アルツッフィ2日連続で圧勝したアリスマリア・アルツッフィ
シクロクロスU23イタリアチャンピオンのアリスマリア・アルツッフィシクロクロスU23イタリアチャンピオンのアリスマリア・アルツッフィ

 来日する直前の11月19日に20歳の誕生日を迎えたアルツッフィは、ロードレースよりもシクロクロス選手としての大成に意欲を燃やしているようだ。理由は「ロードだとエースのために走る必要があるけれど、シクロクロスは自分のために走れるところが好き」。

 アルツッフィは泥まみれのシクロクロスを制する猛者でありながら、髪をグラデーションに染め、アクセサリーを着こなし、ネイルの手入れも怠らないなど乙女の魅力をふりまいている。今はMTBのイタリアチャンピオン、ルカ・ブライドットと交際中という。またアルツッフィの妹、アレグラは、姉と同じチームでジュニアカテゴリーを走っている選手だ。

強くなるためには「スタートダッシュが大事」

 どうやったらシクロクロスで強くなれるかを尋ねると、2人は「スタートがとにかく大事」と口をそろえた。スピードのあるベルトリーニに対し、アルツッフィはスピードが弱点なので、スタートダッシュの練習を重ねている。また、2人ともトレーニングのなかにランニングを取り入れていて、レース日の朝でも走っているという。

シクロクロスでおなじみの「担ぎ」のポーズでおどけてみせるジョエーレ・ベルトリーニシクロクロスでおなじみの「担ぎ」のポーズでおどけてみせるジョエーレ・ベルトリーニ

 2人は今回が初来日。日本の印象を聞くと「巨大な国だ」と語るベルトリーニ。どうやら東京のビル群のインパクトが強かったようだ。アルツッフィも「完璧を求める都市、という印象。みんな歩くのが速いわね」と驚いていた。逆に野辺山については「イタリアに近い」と、馴染み深い雰囲気を感じたようだ。10日ほどの滞在のなかで気に入った食べ物について、アルツッフィは「寿司、刺身がおいしかった」と笑顔を見せた。そしてベルトリーニは「全部好き」ときっぱり。

 2人の今シーズンの目標は、1月のイタリア選手権と、2月の世界選手権。来シーズンについては「会場に集まったファンの熱気を感じられたから、また日本で走りたいね」と話してくれた。

監督は世界を制した“フルタイムワーカー”

シクロクロスチーム「セライタリア・グエルチョッティ」のヴィト・ディターノ監督シクロクロスチーム「セライタリア・グエルチョッティ」のヴィト・ディターノ監督

 セライタリア・グエルチョッティは、1977年から続くイタリアの名門シクロクロスチームで、8人の選手が在籍している。ベルトリーニとアルツッフィを含め有力なイタリア人選手を抱えており、イタリアナショナルチームのような構成だ。在籍4年目となるベルトリーニとアルツッフィの成長を支えてきたディターノ監督の指導方針は、「選手はいきなり強くなったりしない。少しずつ育てていく」というものだ。

 ただ、イタリアの強豪チームとはいえ、シクロクロス大国であるベルギーやオランダの選手に対抗するのは大変なことだという。「ベルギーは競技人口は少ないが、シクロクロスは“国家的”なスポーツなので、レースの入場料やテレビ放映権料など収入がある。しかもレース会場では4万人もの観客に囲まれて走っており、そのプレッシャーが選手を強くしている」とディターの監督。ヨーロッパのなかでも競技のレベルや人気には差があるのが実情だ。

ヴィト・ディターノ監督はシクロクロス世界選手権を2度制した経歴を持つヴィト・ディターノ監督はシクロクロス世界選手権を2度制した経歴を持つ

 ディターノ監督自身、1979年と86年にシクロクロス世界選手権のアマチュアカテゴリーを制した名選手だ。アマチュアとはいえ、当時は実力ある東欧諸国の「ステートアマ」(国家的アマチュア選手)選手たちが出場し、プロに劣らずハイレベルだった。しかもディターノ氏の本業は、電車の運転士。有給休暇をとって遠征に臨み、世界王者に上りつめた“働くシクロクロッサー”だった。

 そんな環境のなかで2度のチャンピオンとなったディターノ氏に対し、UCIが敬意を表して、2003年のシクロクロス世界選手権は彼の故郷であるモノポリが舞台に選ばれた。ディターノ氏は自ら大会をオーガナイズし、コースも設定した。また現在も監督を務めながら、2014-15シーズンのイタリア選手権の運営に携わるなど、イタリアシクロクロス会の“大御所”といえる存在だ。

 日本では近年、ようやくシクロクロスが盛り上がりを見せつつある。イタリアのシクロクロスシーンの歴史を作ってきたディターノ監督は「伝統あるチームのなかでジュニア世代を育てて、ワールドカップで通用する選手を輩出してきた。こどもたちを育成していけば、日本もきっと強い国になっていくよ」と語り、日本のシーンのさらなる盛り上がりに期待を寄せた。

「セライタリア・グエルチョッティ」の(左から)アリスマリア・アルツッフィ、ヴィト・ディターノ監督、ジョエーレ・ベルトリーニ「セライタリア・グエルチョッティ」の(左から)アリスマリア・アルツッフィ、ヴィト・ディターノ監督、ジョエーレ・ベルトリーニ

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