神聖、過激…“あり得ない”ダウンヒルレース4クロスの決勝を井手川直樹が制圧 神社の石段を駆け下りた「レッドブル・ホーリーライド」

  • 一覧

 寺社の境内の石段を駆け下りるマウンテンバイク(MTB)ダウンヒルレース「Red Bull Holy Ride」(レッドブル・ホーリーライド)が11月29日、京都府八幡市の石清水八幡宮で開催された。降雨による難しいコンディションの中、4人1組で争う「4クロス」形式の決勝レースを井手川直樹(デヴィンチ/ストライダー)が制した。

(写真・文 中尾亮弘) 

決勝トーナメントは4人1組の4クロス形式で争われた (中尾亮弘撮影)決勝トーナメントは4人1組の4クロス形式で争われた

神社で争われるホーリー(聖なる)ライド

 日本の神聖なる場所、神社や寺院で行う自転車のダウンヒルレース「レッドブル・ホーリーライド」は、2010年に京都府の南に位置する八幡市の石清水八幡宮で初開催され、その話題性とレースの迫力から「都市型エクストリームレース」の草分けとなった。続く2011年では愛媛県・石鎚神社、1年を置いて3回目の2013年には大阪・勝尾寺と巡り、今回は再び石清水八幡宮と戻ってきた。

京都・石清水八幡宮に帰ってきたレッドブル・ホーリーライド (中尾亮弘撮影)京都・石清水八幡宮に帰ってきたレッドブル・ホーリーライド

 境内の表参道を使用するコースは、全長約800m、高低差約100m、階段の数396段。神社でお馴染みの石段を自転車で一気に下る、まさに“あり得ない”レースだ。2010年の初開催時は、初めて体験するコース設定に選手達が果敢に挑んだものの、路面が石と苔でとても滑り易く、転倒者が続出したことが思い出される。この時のレースは2人1組で対決していくトーナメント方式で争われ、栄えある初開催での栄冠を勝ち取ったのは青木卓也(ジャイアント)だった。

会場にはレッドブルガールも登場 (中尾亮弘撮影)会場にはレッドブルガールも登場

 今大会は130人分のエントリーが開始からわずか20分で締め切られるほどの人気となった。参加者は、北は北海道から南は熊本県まで全国から終結。日本のMTBレースで最も話題性のあるイベントと言えるだろう。初開催の勝者・青木と、第2、3回大会を連覇した世界的なエクストリームライダーでレッドブルサポート選手でもあるフィリップ・ポルクは今大会に出場しなかったものの、国内トップクラスのライダーが集結した。

神社で争われるホーリー(聖なる)ライド

 大会当日は朝方、雨が時折激しく降って開催が危ぶまれたものの、天候は回復するとの判断からスケジュールを遅らせてスタートとなった。今回のコースの目玉は、飛距離が4mもある大型のキャニオンジャンプ。相当なスピードで発射しないと超せないセクションのため、ライダーのテクニックが問われる。ジャンプを回避できるルートも並んで設けられ、選手が技量やレース展開によって選択できるようになっていた。

 まずは一般の参拝者の姿も見られる本殿の前で、レースの安全祈願を行ってから113選手による予選が開始された。

レース前に本殿前で行われた安全祈願 (中尾亮弘撮影)レース前に本殿前で行われた安全祈願
全国から113人のダウンヒル・ライダーが集まった (中尾亮弘撮影)全国から113人のダウンヒル・ライダーが集まった

 予選は、国内のMTBレース「Jシリーズ」のランキングを参考に、未登録選手から順に出走し、ランキングトップの選手が最後にスタートした。

雨上がりのヘビーウェットコンディションで始まった予選。表参道の鳥居からスタート (中尾亮弘撮影)雨上がりのヘビーウェットコンディションで始まった予選。表参道の鳥居からスタート

 スタート直後にライダーを待ち受ける難関が、左に曲がるコーナー。雨で滑りやすくなったこのコーナーで、すぐに転倒するライダーが続出し、コンディションがとても難しいことを感じさせた。しかし出走順が遅いランキング上位のライダーほど高いテクニックを披露し、キャニオンジャンプを飛ぶライダーも増えてきた。そんなライダー達の熱い走りが繰り返されると、詰め掛けたギャラリーは歓声に沸いた。

MTBダウンヒラーといえばこの人、全日本女王の末政実緒も男子に交じって出場し、見事に予選を通過 (中尾亮弘撮影)MTBダウンヒラーといえばこの人、全日本女王の末政実緒も男子に交じって出場し、見事に予選を通過
境内には約3000人のギャラリーが詰め掛けた (中尾亮弘撮影)境内には約3000人のギャラリーが詰め掛けた

 予選では、過去に全日本チャンピオンを獲得したことがある向原健司が1分28秒205をマークしてトップ。永田隼也(アキファクトリーチーム)、安達靖(ダートフリーク/サラセン)が続いた。

 4クロスによるトーナメント戦は、毎レース2人が勝ち残る。レースが進むにつれて有力選手同士の直接対決がみられ、ハイレベルの戦いに観客の興奮がますます増していった。

スタート直後のコーナーが勝負どころ (中尾亮弘撮影)スタート直後のコーナーが勝負どころ
石段を疾走する選手 (中尾亮弘撮影)石段を疾走する選手
狭い参堂の脇にギャラリーポイントがいくつも設けられた (中尾亮弘撮影)狭い参堂の脇にギャラリーポイントがいくつも設けられた
コースの目玉となった「キャニオンジャンプ」セクション (中尾亮弘撮影)コースの目玉となった「キャニオンジャンプ」セクション

 決勝には現全日本ダウンヒルチャンプの安達、過去にチャンプとなった井手川、またBMXレースにも出場する高山祐次郎(AST)、黒沢大介(ラブバイクス/FUST)の4人がスタートグリッドに並んだ。

選手が飛び出すジャンプ台は高さ1.6m (中尾亮弘撮影)選手が飛び出すジャンプ台は高さ1.6m
ジャンプで技をメイクする選出も現れ、会場は大興奮 (中尾亮弘撮影)ジャンプで技をメイクする選出も現れ、会場は大興奮

念願の優勝を果した井手川直樹

フィニッシュラインをトップで駆け抜けた井手川直樹 (中尾亮弘撮影)フィニッシュラインをトップで駆け抜けた井手川直樹

 スタート直後のコーナーから先頭に飛び出したのは井手川。続く3人のうち安達はキャニオンジャンプの着地に失敗してクラッシュしてしまった。その後、「七曲がり」と呼ばれるつづら折りの石段のヘアピンコーナーで高山と黒澤が絡んで失速。大差をつけた井手川は、ゴール前に後ろを振り返ってリードを確認、両腕を上げてガッツポーズを見せてフィニッシュゲートをくぐった。

観客の前でガッツポーズをする井手川直樹 ( 中尾亮弘撮影)観客の前でガッツポーズをする井手川直樹
家族の前で勝利を祝う井手川直樹 (中尾亮弘撮影)家族の前で勝利を祝う井手川直樹

 過去に2位が2回と悔しい思いをしてきた井手川は、レース後に勝利の喜びを爆発させた。

 「4回目にして優勝できた。続けていればいい事があると思う。(今回は)ポルク選手が来なかったので、次回は彼に来てもらって勝ちたい。路面はすごく難しくて、途中ダートも入り、急ブレーキをかけないよう、ABSのようにコントロールした」

 またMTBの普及に熱心な井手川は、大勢の観客で盛り上がったレースについての感慨も語った。

 「そう、ここは特別なレース。(会場は)街から近く、メディアの方にも多く来てもらった。MTBが普及していくことに特別な思いがある。是非広めてほしい」

2位の黒沢大介(左)と3位の高山祐次郎 (中尾亮弘撮影)2位の黒沢大介(左)と3位の高山祐次郎

 2位の黒沢大介は、「初めてこういうレースで勝ち上がって、最後はスプリント勝負で楽しめた。相手(2位を争った高山)はBMXの選手なので、漕ぎが強くてヤバいかなぁと思ったが、ちょっとの差で勝てて良かった」と振り返った。

 3位の高山は、「滑るコースだったが、実際に走ってみると楽しいコースで、しかも決勝まで残って黒沢選手とバトルできて楽しかった」と語った。

生還できる大会から魅せる大会へ 「いいグルーブ感で進行」

 大会のプロデューサーを務めた壇琢磨氏はこう締めくくった。

大会プロデューサーを務めた壇琢磨氏 (中尾亮弘撮影)大会プロデューサーを務めた壇琢磨氏

 「天候のせいでスタートが遅れ、みんな精神状態がばたついてしまったが、こういう神聖な場所のレースで、お祓いをしてもらい、大きなけがなく終わったことが一番良かった。こういう場所で走れる喜びをライダー自身が理解していることが、この大会を続けられている大きな要因。いいグルーブ感で進行できたと思う」

 「これまでは安全に走れて生還出来る事をコンセプトにしてきたが、これからは魅せる大会にしたい。今回は大きなターニングポイントになった。あと、日本のライダーのレベルを上げるというミッションがある。世界レベルで走るポルク選手のアドバイスを受け、ジャンプ台の高さ1.6m、飛距離4mのキャニオン越えを彼から指示されて作った。初めは距離2.5mだったが、前日にテストを重ねた結果、ポルクのいうサイズになった。こういう大会を続けて選手のレベルアップを図り、世界に発信していきたい」

レッドブル・ホーリーライドの表彰台に立った(左から)2位の黒沢大介、優勝の井手川直樹、3位の高山祐次郎 (中尾亮弘撮影)レッドブル・ホーリーライドの表彰台に立った(左から)2位の黒沢大介、優勝の井手川直樹、3位の高山祐次郎

 現地での観客はおよそ3000人、ウェブによる生中継の視聴者は約4万7000人にのぼったレッドブル・ホーリーライド。今後、J SPORTS によるテレビ放映も予定されており、まさに日本を代表するMTBイベントに成長した。来年以降も、日本のどこかの境内で熱い戦いが繰り広げられることを期待したい。

■レッドブル・ホーリーライド 決勝
1位 井手川直樹(デヴィンチ/ストライダー)
2位 黒沢大介(ラブバイクス/FUST)
3位 高山祐次郎(AST)
DNF 安達靖(ダートフリーク/サラセン)

関連記事

この記事のタグ

MTBレース ダウンヒル

  • 一覧

新着ニュース

もっと見る

ピックアップ

ショップナビ

スペシャル

自転車協会バナー
新春初夢プレゼント2019

ソーシャルランキング

インプレッション

インプレッション一覧へ

連載