パブリックコメント募集は11月28日まで「多様な利用を保ち、MTBで地域貢献を」 東京都自然公園“乗り入れ禁止”問題で竹谷賢二さん寄稿

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竹谷賢二さん竹谷賢二さん

 東京都が今月公表した「東京都自然公園利用ルール(案)」の中に、自然公園内におけるマウンテンバイク(MTB)の利用禁止を示唆する表現が盛り込まれており、MTBライダーらの間で規制への懸念が強まっている。同ルール案は、11月14~28日の日程でパブリックコメントが募集され、その後、修正を経て正式に制定される見通しだ。“MTB禁止”に反対し、「老若男女が楽しめる多様性を保ちつつ、いかに問題を起こさないよう合理的に対処していくか」と訴える元MTB全日本チャンピオンの竹谷賢二さんが、Cyclistに寄稿してくれた。

◇         ◇

MTBと登山者との間でトラブルがあった?

 「東京都自然公園利用ルール(案)」を公表した東京都環境局のウェブサイトには、次のような説明が記されていました。

 「多摩地域の自然公園(高尾山や御岳山、雲取山等を含む国立公園や国定公園など)では、トレイルランニング大会が開催されたり、愛玩動物(ペット)を連れてハイキングを楽しむ人が増えるなど、利用形態が多様化してきています。これまで想定していなかった利用者の増加に伴い、自然公園を利用する全ての方がマナーのあり方を再確認するとともに、自然公園を管理する東京都は、新たな利用に対応するルールを定めていく必要があると考えています」

 今回示されたルール案は、このように利用形態の多様化を踏まえて、利用者全てのマナーのあり方を再確認することが目的のようです。しかしそのルール案の中に、非常に気になる記述がありました。

マウンテンバイクを楽しむ方へ(オフロードでの車両走行を目的とする方)
 
18 マウンテンバイクは登山道へ乗り入れないようにしましょう
  土壌・植生・歩道施設の損傷を防ぎ、また、歩行者に不安を与えないために
  登山道へのマウンテンバイクの乗り入れはやめましょう。

「東京都自然公園利用ルール(案)」より

 トレランやペット連れでの登山道利用も増えている中で、とりわけMTBと登山者との間でトラブルや苦情があったのではないかと想像できます。しかし、このルール案では事実上、”舗装路以外”におけるMTBでの走行の全面禁止に結びつくかもしれません。MTBに関わる全ての愛好家や企業、団体にとって極めて切実な問題です。

 私も過去の経験や様々な方々との対話の中から思うところがあります。まだルール案の段階ですから、「東京都自然公園利用ルール」が正式に制定される前のこの機会に、少しでも検討に加味してもらえるよう、意見書を提出したいと思っています。

野外活動で世代を超えた交流

 私は1990年代にMTBに乗り始め、ただの一愛好家から、MTBプロ選手になって2004年アテネオリンピックにも出場しました。その選手生活を通じて、様々な地域や、海外の国々をMTBで走ってきました。

 MTBを中心に欧米のアウトドア文化に触れる機会も多くありました。北米の山々では、登山としての利用以外に乗馬との共存という取り組みも歴史的に続けられています。アウトドア活動に取り組む人々も老若男女さまざまであり、日本に比べると非常に多くの人々が気軽に野外で過ごしていることが印象的でした。

米コロラド州「エイペックス&チムニーガルチトレイル」でMTBライダーに注意喚起する看板。かつてはこのトレイルを巡っても問題が起こったが、互いに納得できるルール制定で解決した(池田祐樹撮影)米コロラド州「エイペックス&チムニーガルチトレイル」でMTBライダーに注意喚起する看板。かつてはこのトレイルを巡っても問題が起こったが、互いに納得できるルール制定で解決した(池田祐樹撮影)

 野外は、ある程度の危険と背中合わせの状況にあり、そこでの活動を楽しむために、欧米ではそれぞれ自己責任による行動が徹底されています。既得権のような偏った力関係がなく、また若者のやることをまず認める価値観を感じました。お互いに譲り合って尊重しあう相互理解がそれを可能にしているのでしょう。

 山で起こる問題に対し、合理的な対処をしていることも印象的でした。「ここは登山客だけ」「ここは登山とMTB」「ここは登山と乗馬」などとお互いの通行帯を決めたり、ある場所では、MTBの通行する時間や方向を限定したりもしていました。また、路面など環境保全に対しては、登山、ラン、MTBの総通行量を規制するケースがみられ、利用者が遵守すべき事項がマップや公園の入口にわかりやすく注意喚起されていることも多々ありました。

 日本でも、MTBに乗っていると多くの登山の方々と触れ合う機会があります。前方に登山者の姿を確認すると、停車して、端に寄って道を譲ります。そんな時、多くの方は「こんなところまで自転車で来たの?」と驚かれ、MTBがマイナーな存在であることを自覚させられます。

 また「大変だねぇ」とねぎらいの言葉をかけてもらったり、その後の会話で「オリンピックに出るために体力を鍛えているんですよ」と言うと「頑張って」と応援されたりしたこともありました。とりわけ峠で休憩しているときは触れあいが多く、年配の方と話していて飴やみかん、おにぎりを頂いたりもすることもあり、私は野外活動で世代を超えた交流ができることを嬉しく思ってきました。

MTBを通じて地域に貢献したい

 山を利用することは、山間地の地域振興に貢献する側面もあります。自転車の場合、登山道にたどり着くまでの道のりや帰り道を広範囲にとることができるので、大勢のMTB仲間で美味しい食事処に立ち寄ったり、帰りに温泉に入ったりと、近隣施設の利用を通じて経済効果を感じてもらったりもしています。

 人気の少ない登山道を訪れると、イノシシに根を掘り起こされるなど、害獣を目にすることもあります。そんな時には「人の気配を感じさせて害獣を遠ざける“予防的な効果”をもっと発揮できないか」と思ったりもします。山間地域では今後十数年で、少子高齢化や過疎化に拍車がかかることでしょう。MTBを通して地域に貢献していきたいという私の思いは、愛好家共通の願いでもあります。

譲り合いと相互理解の精神を大切にし、山の多様な利用を守りたい (写真は法政大学多摩キャンパスの「法政MTBパーク」 小林廉撮影)譲り合いと相互理解の精神を大切にし、山の多様な利用を守りたい (写真は法政大学多摩キャンパスの「法政MTBパーク」 小林廉撮影)

 6年後の東京オリンピックでもMTBは正式種目になっており、世界のトップ選手たちがメダルを目指して東京の山を走ります。その東京の山でMTBの走行が禁止になりそうだ―という事実を、欧米の自転車先進国の方々が知ったらとても驚かれることでしょう。MTBによる野外活動で楽しさを見つけた子どもたちの中から、未来のオリンピック選手が生まれるかもしれないのに。

 老若男女が楽しめる多様性を保ちつつ、いかに問題を起こさないよう合理的に対処していくか、そして過疎化の進む山間地域にどう貢献していくかを、MTB愛好者からも積極的に提案、行動していきたいものです。(竹谷賢二)

竹谷 賢二(たけや・けんじ)竹谷 賢二(たけや・けんじ)

1969年11月7日、東京都生まれ。フルタイムワーカーとして働きながらMTBレースに参戦し、2000年以降にMTB全日本選手権クロスカントリーを4度制覇。2002年釜山アジア大会で金メダル獲得、2004年にはMTBアジア選手権でも優勝。2004年アテネオリンピックに出場した。2009年にMTBプロライダーを引退後は、スポーツバイク・アドバイザーとして活動。また2012年より本格的にトライアスロンに参戦。国内外のトライアスロン大会で活躍し、プロに迫る成績を残している。2014年10月、エンデュランススポーツ(持久スポーツ)を通して生涯現役をサポートする「エンデュアライフ」を設立。オフィシャルウェブサイト「TakeyaKenji.com

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