RENの「自転車のススメ」<12>サイクルトレインで楽々往復 「ステーションライドin南房総」で快適ライド&グルメ
11月8日午前6時、東京都墨田区のJR総武線両国駅にサイクリストが続々と集まってきた。駅前のロータリーと江戸東京博物館に挟まれたスロープを上っていくと、そこには重厚感を纏ったホームが…。
今回は、両国駅から房総半島へサイクルトレインで行く「Station Ride in 南房総」をレポートします。イベント全体のレポートは、すでにCyclist上にアップされていますが、RENと言えば“鉄”ということで、鉄道好き目線でのレポートをお届けしましょう!
風格あるかつての“始発駅”ホームから出発

さて両国駅と言えば、現在は中央・総武線各駅停車の中間駅で、黄色いラインの電車がひっきりなしに通り過ぎているのですが、かつてはここ両国駅が、千葉方面への始発駅となっていました。昔の資料を調べると、首都圏で屈指の乗降客数を誇っていたとか。その後、御茶ノ水方面の電車線の開通や、総武快速線の東京駅地下乗り入れ開業を経て、ターミナル駅としての役割は終えましたが、駅舎やホームはかつての面影をとどめています。
千葉方面の始発に使用されていたホームは、現在は臨時列車の始発ホームとして活用されています。始発駅には特別なオーラを感じませんか? この重厚感に納得です。
首都圏の鉄道網は縦横無尽に張り巡らされてきました。最近では湘南新宿ラインや、来春開業の上野東京ラインなど、便利な直通路線がどんどん開通して、わずらわしい乗り換えも不要になりつつあります。とはいえ、こうした始発駅の旅情が失われてしまうのは、ちょっと寂しい部分もありますね。
臨時列車用のホームに至るまでの事業用地では、普段見ることができない資材・機材を間近に見ることができました。辺りには使い古された枕木(線路の下に使用される固定用の木)がゴロゴロと転がっています。都市近郊の路線では近年、痛みが少ないコンクリート製の枕木が主流となっているので、ここにある朽ちかけた枕木がどのくらい前に使用されていたかは不明です。そして、真っ赤に錆びてボロボロになった線路! 時の流れをひしひしと感じますね…。



自転車は整然と固定 安心の列車の旅へ出発進行!
サイクルトレインに使用されるのは、JR東日本の通勤型車両「209系」。自転車と並んだ光景は何とも新鮮です。私が電車好きということもありますが、涙を流さずにはいられない素晴らしい光景…サイクリスト(自転車愛好者)が一般的な存在になってきた証だと思います。
さて、車内に自転車を積みましょう。

やってきたのは、幕張本郷の車庫に所属していて、普段は房総半島を走行している車両です。ちょっと前までは京浜東北線を走っていました。自転車を載せる部分の座席は、汚れないようにビニールシートで全体をしっかりとカバーされています。固定方法は、つり革とスタンドを駆使した複合技。スタッフの方々が手際良く作業し、次々とバイクを自立させていきます。
お話を伺うと、「何度もテストしたんですよ。この方法がベストです!」とのこと。万全の準備、お見事です!
「ふふふ…だがコレはどうかな?」

ちょっとした意地悪? 今回、私はダウンヒルやエンデューロ(耐久レースではなく下り系のMTB競技)で使用するキャノンデールのMTB「ジキル」を持ち込んだのでした。オフロードの下り系バイクということで、2.35インチ(約6cm)という太いタイヤ幅。用意されたスタンドには…やはり入りませんでした。もしMTBで参加する際は2.00インチ(約5cm)までのタイヤ幅にしましょうね。そんな人いないか?(笑)
特別列車はまさに夢の空間

午前7時07分、サイクルトレインは定刻通りに出発しました。世界一時間に正確な日本の鉄道です。絶対に遅刻を待ってくれないので、乗車駅には時間に余裕を持って集合してくださいね。
車内では、地元千葉県のサッカーチーム「ジェフユナイテッド千葉」のスタジアムDJとしても活躍されている蒲田健(がまだ・けん)さんが、参加にあたっての注意事項等を渋い声で説明。イベントがグッと高級感のあるものに感じられます。蒲田さんご自身も、これまた渋いスチールのバイクで参加。休日にはサイクリングを楽しんでいるそうです。
移動中の車内で参加受付が行われます。これって凄く時間を有効活用できているのかも? 現地に着いてからの煩わしさがありません。
列車は定刻通りに走行します。特別なダイヤで運行しているので、普段の列車では味わえない特別な経験もできます。途中、稲毛駅と西千葉駅の間にある信号場で後続の特急列車の通過を待つという、鉄な方々にはたまらないマニアックな楽しみも用意されていました(マニアックすぎる!笑)。
そして…なんと蒲田さんに呼ばれ、生まれて初めて乗務員室でのトークショー! もちろん乗務員室のマイクを使って話します。
これは夢か幻か? 興奮を抑えきれない自分がいました。上手に話せていたでしょうか…? 心配です。
車内を見渡すと…それにしても女性の参加者が多い。4割に達しているのではないでしょうか? 男性は「輪行なんてできて当たり前!」と思いますが、女性だとやはり大変なこと。カーボンロードバイクや最新パーツで重量が軽くなったとはいえ、装備品を含めると10kgを超える重さになります。
それをパッキングせずそのまま載せられるというのは、本当に楽チン。サイクルトレインは女性のために走っているといっても過言ではないと思いました。
着いてからもラクチン
2時間ほどの夢のような列車の旅は、館山駅でおしまい。電車を降りると、スムーズにライドスタートです。実にストレスフリー!
館山駅から500mほど離れた北条海岸がライドの正式スタート地点。はやる気持ちを抑えつつ、少し急いで向かいます。バリバリのロードレーサーに跨ったライダーは一般的なロングライドイベントより少ない印象で、クロスバイクの方が多数いらっしゃいました。最長でも85kmという設定で、気軽に参加できるからかな?
そういえば…初心者の方が多い中、バイクの整備が行き届いていない人も見受けられました。チェーンがキシキシと音をたてる油膜切れや、クイックリリースの使用方法を間違えている方など…。気軽に参加できるイベントですが、どんな距離でも整備は万全に! 気をつけましょうね。

コースは房総半島の南端を時計回りにグルリと巡ります。海沿いのルート設定で、アップダウンが比較的少なく、初心者でも安心です。季節によっては風が強く吹いたりしますが、穏やかな日はとても走りやすいと思いますよ。ちなみに私は、下り系の全然進まないバイクに閉口していましたが…。
グルメを楽しむ「ステーション」めぐり
「ステーションライド」というイベント名は、駅から駅へと運んでくれるサイクルトレインにちなんだだけでなく、「エイドステーション」も意味しています。その名の通り、85kmのコース上には4つものエイドステーションが設けられていました。各エイドステーションではそれぞれ違った食べ物が用意されていて、のんびり走るには嬉しいサポートです。
特にRENのお気に入りは「さんがバーガー」。古くから房総に伝わる漁師料理「なめろう」を焼き、バンズで挟んだものです。少し濃いめの味がとっても美味しく、オススメですよ。



「もの足りない!」という方も安心。道の駅でご当地グルメを買い足すことができます。腹ペコな私はコロッケをおかわりするために走りましたよ(笑) 本当に美味しかった!
房総の景色を楽しみ、帰路へ
フラワーロードや漁村をかすめ、途中雨にも降られましたが、あっという間にゴール! 参加者の皆さんの完走率も高かったようです。充実した笑顔で記念撮影している姿が印象的でした。
あ、のんびりし過ぎは注意ですよ。帰りの列車もダイヤ通りに出発します。ちなみにライドでは回収車が用意されているので、走りで遅れても電車に乗り遅れることはありません。安心です。
もちろん帰りの列車もバイクをそのまま載せることができ、あのライド後の煩わしいパッキングから解放されるのです! 心地よい列車の揺れで、参加した皆さんの大勢が夢の中へ。とても幸せそうな空気に包まれていました。
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JR東日本千葉支社の尽力で運行されたこのサイクルトレイン、全国に広がっていくことを期待しています! 乗り物好きのRENは、どこへでも応援しに、そして乗りに(列車&自転車)行きますよ!

数々のCM・雑誌・ファッションショーで活躍するトップモデル。08年より本格的にスポーツサイクルに乗り始める。自転車媒体で見ない日はないというほどの“乗れるモデル”。アイアンマン北海道完走。特技はウィリー(映像を見る)。身長188cm、体重74kg。千葉県在住。オフィシャルブログ「REN’s World」。取材のお問い合わせはStudioREN(http://studio-ren.jimdo.com)まで