title banner

はらぺこサイクルキッチン<24>“メイド・イン・ジャパン”の食材に囲まれた豪チームの食事情 強さと健康をつくるマクロビオティック

by 池田清子 / Sayako IKEDA
  • 一覧

 オーストラリアで10月18~26日に開催された9日間のマウンテンバイク(MTB)ステージレース「クロコダイルトロフィー」。この過酷な大会で2012年に総合優勝を果たしたアイヴァン・ライバリック選手(チェコ)が、今年の大会へ2年ぶりに参戦して注目を集めました。結果は、パンクに見舞われたステージの影響もあって総合成績は7位でしたが、第1ステージをはじめ第5、第8ステージでも優勝。その強さの秘訣と万全なサポート態勢について、ライバリック選手が所属するチームのベースキャンプを訪ねてたっぷりと話をうかがってきました。

チーム「Way2Live」のベースキャンプにおじゃましました。池田祐樹選手と私もテンションマックス。左がアイヴァン・ライバリック選手チーム「Way2Live」のベースキャンプにおじゃましました。池田祐樹選手と私もテンションマックス。左がアイヴァン・ライバリック選手

キャンプ先でもコンロは充実の5口

フィード時、あまりの暑さに「これは追加が必要だ!」と何の相談もなく梅肉をボトルに載せて渡してみました。「ビックリしたけど食べざるをえなかった」と祐樹さん。レース中、たまにはこんな変化があっても悪くないでしょう?フィード時、あまりの暑さに「これは追加が必要だ!」と何の相談もなく梅肉をボトルに載せて渡してみました。「ビックリしたけど食べざるをえなかった」と祐樹さん。レース中、たまにはこんな変化があっても悪くないでしょう?

 ライバリック選手に親近感を抱いたきっかけは、人づてに「彼はレース前に味噌汁と梅干しを食べている」と教えてもらったことでした。「チェコの選手がなぜ日本食を?」といった疑問とともに、梅干しは今回、夫でMTBプロアスリートの池田祐樹選手も重宝した疲労回復アイテムでもあったので、「何か共通の話ができるかも」とすぐに興味が沸いたのです。さらに、クロコダイルトロフィーのレース期間中、祐樹さんからも「ライバリック選手が先頭集団から飛び出して、誰もついていけなかった」と度々聞かされ、気になっていました。

 初めて会った時は、その体格のよさから話しかけるのに勇気がいりましたが、取材を申し込むと、予想に反して(失礼!)ソフトな口調と優しい笑顔。「お役に立てることがあれば何でも。僕らの料理を作ってくれている女性もいるので、いつでも僕らのベースキャンプに遊びに来てください」と、とても親切に接してくれました。そして早速お邪魔させてもらうと、そこには予想をはるかに超える光景が広がっていました。

フィニッシュ直後のアイヴァン・ライバリック選手と池田祐樹選手フィニッシュ直後のアイヴァン・ライバリック選手と池田祐樹選手
Way2LiveのベースキャンプとなったテントWay2Liveのベースキャンプとなったテント
素晴らしき5口コンロ。まるでレストラン素晴らしき5口コンロ。まるでレストラン

 レース中、彼らは大会のテントエリアとは少し離れた場所に独自のベースキャンプを設けていることは察していましたが、まぁビックリ! 大きなテントを張り、電気を引き、寝泊まりはキャンピングカーの快適なベッド。そして何より、屋外用とは思えない素晴らしいキッチンが設置されていたのです。大きなガス台にはコンロが5口もあり、お腹を空かせたチームメイトを満たすには十分なサイズの大きな鍋やフライパンも完備されていました。

ベースキャンプには溜まり醤油、梅干し、葛(くず)、海苔など、日本の食材も沢山ありましたベースキャンプには溜まり醤油、梅干し、葛(くず)、海苔など、日本の食材も沢山ありました

 持参している食材の数と種類の多さ、その内容にも驚きました。有機農法で作られた玄米、醤油、味噌、うどん、海苔、梅干し、くず、豆類、そば…“メイド・イン・ジャパン”の見慣れた食材が沢山ストックされていました。これは純粋に日本食が好き、というレベルを越えています。祐樹さんも私もテンションマックスでしたが、何とか胸を落ち着かせてお話をうかがいました。

薬に頼らず“マクロビオティック”食でレースに復帰

色々な質問に答えてくれたライバリック選手色々な質問に答えてくれたライバリック選手

 ライバリック選手は現在33歳。21歳の時に選手としてピークを作る激しい練習を行った際、オーバートレーニングによって肝臓を壊してしまったそうです。病院では薬を勧められましたが、「一時的に回復するだけで、根本的な改善は見込めないのでは」と考え、薬ではなく食事で回復させることを選択しました。

 行き着いたのが、日本の“玄米菜食”を基本としたマクロビオティックでした。彼は3週間、厳密にマクロビオティックの食事を続け、その直後に出場したレースで優勝し、短期間で見事な復活を遂げました。以降、独学で学んだマクロビオティックの食事をベースに、その日の気候や感覚によって何を食べるかを決めるなど、いまも食生活の基本としているそうです。梅は疲労回復にも欠かせないそうです。日本食とその食材は海外のアスリートにも高く評価されているのですね。

コースを疾走するアイヴァン・ライバリック選手(写真提供: Crocodile Trophy)コースを疾走するアイヴァン・ライバリック選手(写真提供: Crocodile Trophy)

 ちなみにマクロビオティックとは、医食同源の考えで、食事の約半分を玄米を主とする全粒穀物、他に豆類や海藻類、汁物などをバランスよく食べる玄米菜食を日本人が海外で伝えたものです。ファストフードなどの影響で本来の食文化が失われつつある日本でも、逆輸入的に広まっています。動物性の食材は、禁止ではありませんが基本的には食しません。ライバリック選手の場合は、体調などに合わせて魚や肉などの動物性を摂ることもあるそうです。

 ライバリック選手は2年前にプロとしてのキャリアを終え、現在はコーチングの会社「CISTY SPORT」を立ち上げ、チェコを拠点にトレーニングと食を合わせた指導や合宿を行っています。「いまはホビーレーサーだよ」と微笑むライバリック選手ですが…いまでも、プロ顔負けの強さ!

食のパワーに感銘を受けて食材輸入会社を設立

 そんなライバリック選手のコーチングを受け、大きく生活が変化した選手がいました。オンドレイ・スリザック選手(Ondrej Slezak、オーストラリア)は2011年、オーストラリアに長期滞在していたライバリック選手と偶然出会い、3カ月間、食を含めたコーチングを受けました。

 そこで「大きな手応えを感じられた」というスリザック選手は、翌2012年のクロコダイルトロフィーにピークを持ってこられるよう、彼の指導のもとさらに約1年間みっちりとトレーニングを受講。その結果、スリザック選手はなんと25kgの減量に成功し、総合で5位という好成績を残しました(指導をしていたライバリック選手は総合優勝)。

全てのステージを終えて。2014年の「クロコダイルトロフィー」出場選手全員、いい笑顔!(写真提供:Crocodile Trophy/Kenneth Lorentsen)全てのステージを終えて。2014年の「クロコダイルトロフィー」出場選手全員、いい笑顔!(写真提供:Crocodile Trophy/Kenneth Lorentsen)
選手が帰ってくるたび、一人一人に昼食をよそうハナ。選手達はこれをご褒美に頑張れますね!選手が帰ってくるたび、一人一人に昼食をよそうハナ。選手達はこれをご褒美に頑張れますね!

 ここで終わらないのがすごいところで、この結果に感銘を受けたスリザック選手はパートナーでありチームの料理担当であるハナ・コシコヴァさん(Hana Koshikova)と一緒に、マクロビオティックの食材の輸入販売などを行う会社「Way2Live」を設立。Way2Liveでは食材の輸入販売のほかに、レシピの提供、料理教室の開催を行っているということで、大量の食材にも納得です。

 それと同時に、同名のバイクチームを作りました。今回ライバリック選手も、チーム「Way2Live」として大勢のチームメイトとともに参加していました。選手8人、サポーター2人の計10人という大所帯です。

カテゴリー毎にラベルを貼って、沢山の食材を効率よく管理カテゴリー毎にラベルを貼って、沢山の食材を効率よく管理
ハナが「バイブルにしている」というマクロビオティックの本ハナが「バイブルにしている」というマクロビオティックの本

 以前、マクロビオティックの学校に2年間通っていた私。現在はプラントベースの食事を実践していることもあり、ハナとすぐに意気投合しました。ハナが「友達からもらってバイブルにしている」と見せてくれたのは、使い込まれたマクロビオティックの本でした。そしてありがたいことに、ハナが「折角だから明日のレース後、昼食を食べに来て」と誘ってくれたのです。

次回へつづく>

池田清子池田清子(いけだ・さやこ)

アスリートフード研究家。モデル事務所でのマネージャー経験を生かし2013年夏よりトピーク・エルゴンレーシングチームUSA所属ライダー、池田祐樹選手のマネージメントを開始、同秋結婚。平行して「アスリートフードマイスター」の資格を取得。アスリートのパフォーマンス向上や減量など、目的に合わせたメニューを日々研究している。ブログ「Sayako’s kitchen」にて情報配信中。

この記事のコメント

利用規約順守の上ご投稿ください。

関連記事

この記事のタグ

MTBレース ニュートリション はらぺこサイクルキッチン

  • 一覧

新着ニュース

もっと見る

ピックアップ

e-BIKE最新特集

スペシャル

自転車協会バナー

ソーシャルランキング

インプレッション

  • タイム
    アルプデュエズ01 ディスク

    ディスクブレーキで伝統の走りを進化

  • リブ
    AVAIL ADVANCED

    走る好奇心を止めない リブの新型‟無敵”ロードバイク

  • インプレッション一覧へ

    連載