優秀な選手を育てる強豪校廃部の危機からインターハイ優勝へ 京都・北桑田高校自転車競技部インタビュー

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 京都の北桑田高校が、今年の全国高等学校総合体育大会(インターハイ)自転車競技において、5年ぶり2度目の総合優勝を挙げた。数々の名選手を輩出した伝統校の自転車部の成り立ちと、どんな活動をして、選手たちをどう指導しているのか、監督を務める田中良泰先生にインタビューを行った。また来年から大学進学する3年生の部員にも、今後について語ってもらった。 (レポート 中尾亮弘)

インターハイで大会新記録を樹立した3年生メンバーの練習。田中先生がバイクでペースを作る(中尾亮弘撮影)インターハイで大会新記録を樹立した3年生メンバーの練習。田中先生がバイクでペースを作る(中尾亮弘撮影)

 取材に訪れた合宿中の向日町競輪場では、ちょうどチームパーシュートの練習が行われていた。バンク内で4人1組で先頭交代しながら、4kmのタイムを競う。一糸乱れない隊列で周回を続ける姿は、とても美しく感じられる。

 田中先生はバイクペーサーで練習のコーチをしていた。運動部の顧問ということで厳しい人柄かと思っていたが、柔和な表情の方というのが第一印象だ。日本一の高校生選手を育て上げた先生と自転車競技部には、ここまでどういう歴史があったのだろうか。

京都国体から始まった歴史と廃部の危機からの勝利

インターハイのチームパーシュートで大会新記録を打ち立てた北桑田高校(中尾亮弘撮影)インターハイのチームパーシュートで大会新記録を打ち立てた北桑田高校(中尾亮弘撮影)

 京都府立北桑田高等学校は、京都市内から30kmほど北上した山間に位置する。自転車競技部は1988年に京都国体自転車競技が地元で開催されるのを契機に、1986年に創部された。

 田中先生は北桑田高校の出身で、教職を志し、母校である北桑田へと着任。1990年に自転車競技部の顧問に任命された。国体後ということもあって、その時、部員は3年生の2人だけだったという。生徒が引退する秋まで面倒を見ることになったが、「つぶれるクラブを立て直そう」と奮起した。

 「最初の5、6年は、自分が担任したクラスからしか部員が入らないので、3年に一度は廃部の危機がありました。ですが、少ない部員から全国大会優勝、国際大会に出場した女子選手が出てきました。しかし男子はなかなか結果を出すことができず、悔しい思いばかりでした。その後、1994年から1998年までインターハイに連続出場しましたが、ここでまた部員が0となり、翌年はインターハイ出場がかないませんでした。しかし2000年に男子が初入賞してからは、毎年複数名が結果を出してくれるようになり、学校対抗の入賞圏を狙えるチーム作りができるまでになりました」

 「創部してからの15年間は部員確保に苦労し、田舎の小さな公立高校なので機材確保も大変でした。その後、少しずつ結果が出始めると、本校は寮を持っているので広範囲から入部希望者が集まり始めました。最寄りの駅まで30km、コンビニまで25kmと、まさに陸の孤島といった不便な地域にある学校にもかかわらず、自転車競技部の門を叩いてくれる選手が出てきました」

ロードレースは草場啓吾が2位を獲得(写真・北桑田高等学校)ロードレースは草場啓吾が2位を獲得(写真・北桑田高等学校)

 2009年にはインターハイの学校対抗で初の総合優勝。今年は草場啓吾、孫崎大樹、村田瑞季、安田開の4人が、4kmチームパーシュートで4分24秒908の大会新記録を達成し、ロードレースでは草場が2位の好成績を残し5年振り2度目の総合優勝を達成した。

 「選手にはいつも、『顧問は何度でも結果を残すためにやり直しがきくが、選手は2度と帰らない3年間の高校生活を、悔いのないように一生懸命取り組め』と言っています。具体的な目標を定め、それに見合う努力をすることで結果はついてくると思います。『折れない心と、突き抜ける姿勢。そして自分をみがく、かがやく』この気持ちを忘れないように指導しています」

 北桑田高校の在校生は230人で、各学年約75人という京都府でもっとも小規模な学校。そのなかで自転車競技部の部員は20人で、女子部員も途切れずに在籍している。部員確保の苦労はなくなったが、2009年度の初優勝以降、いいメンバーがそろっていた年もあったが結果が出ず、選手育成の難しさと勝利すること難しさを感じたそうだ。

 「今年春の全国高校選抜大会では、選手たちの心の弱さがでてしまい、総合優勝を逃しました。その悔しさをバネに、この夏は堂々と自信をもって戦いに挑めました。また、顧問も3人体制になり、5年前よりさらにきめ細かく選手指導に当たることができています。応援してくれる地域や学校関係者のサポーターを始め、全国でも有数の環境で自転車競技に打ち込める環境を作っていただいていると思います」

今年のインターハイ、5年ぶり2度目の団体優勝を飾った(写真・北桑田高等学校)今年のインターハイ、5年ぶり2度目の団体優勝を飾った(写真・北桑田高等学校)

世界のレースを走る部員とOBたちの活躍

 部員のなかには、ジュニアナショナルチームとして参加した海外遠征で好結果を残した選手もいる。4月にクロアチアで行われたツール・ド・イストニアは、これまで日本人選手は完走することも難しかったレース。ここで3年生の孫崎が個人総合39位と日本人最高順位、草場は第3ステージで16位に入った。5月のカザフスタン・カラガンダで開催された第21回アジア・ジュニア自転車競技選手権大会では草場が男子ジュニア個人タイムトライアルで第3位に入る健闘を見せた。

 7月にカナダで開催されたUCIジュニアネイションズカップ、ツール・ド・ラビティビィの第7ステージでは孫崎大樹がステージ優勝の快挙。ラビティビィ以外にもネイションズカップを転戦してポイントを獲得し、世界20カ国に与えられる、ロード世界選手権ジュニアの国別代表枠の4人を確定させた。

 そして9月27日にスペイン・ポンフェラーダで開催された世界選手権では、落車の多いサバイバルレースで草場啓吾79位、孫崎大樹はDNFとなったものの、世界のレベルに近づく結果を残している。

全日本ロードU23で兄弟ワンツーを飾った徳田鍛造・優は、ともに北桑田高校出身(米山一輝撮影)全日本ロードU23で兄弟ワンツーを飾った徳田鍛造・優は、ともに北桑田高校出身(米山一輝撮影)
全日本ロードジュニアでも、北桑田高校OBの松本祐典が優勝した(米山一輝撮影)全日本ロードジュニアでも、北桑田高校OBの松本祐典が優勝した(米山一輝撮影)

 北桑田高校のOBも活躍している。今年6月の全日本選手権では男子ジュニアで松本祐典(明治大)が優勝。また徳田鍛造が弟の優(ともに鹿屋体育大)とワンツーでU23クラス2連覇を果たし、続く8月のインカレでは逆に優が鍛造と共にワンツーで2連覇る快挙を達成した。

 「優勝を目指し取り組んではいるものの、高校時代は常に積極的なレースを心がけるよう指導しています。その結果、2、3着が多いのも北桑田の特徴かもしれません。優勝の喜びの涙より、悔し涙を流した分だけ強くなり、選手として長く活躍してくれる。生徒とはそんな出会いをしたいものです。今年度で卒業するチームパーシュートの4人は、大学に進み自転車競技を続けます。東京オリンピックや国際舞台で活躍できる選手、また将来は指導者として活躍してくれる人物になっていってほしいものです」

大学進学から世界、そして東京オリンピックへ

 来春から孫崎は早稲田大学、村田は中央大学、草馬は日本大学、安田は日本体育大学へと、自転車競技を続けるために進学する。孫崎にインターハイの感想と大学進学への抱負について聞いた。

来春、早稲田大学に進学する孫崎大樹(中尾亮弘撮影)来春、早稲田大学に進学する孫崎大樹(中尾亮弘撮影)

 「インターハイは僕と草場が海外遠征していた関係でぶっつけ本番でした。村田以外の3人は去年も団抜き(チームパーシュート)を走っていて、そんなに練習はしなくても連携は大丈夫だったので、遠征の疲れを残さないようにしました。今年のインターハイは去年から勝つことを目標にしていました。北桑田高校というだけでマークも厳しくて、それでもしっかり結果を残せることを考えました」

 「中学の頃から自転車競技をしています。普段の練習では競輪場に来られないので、公道で平日に50~60km、休日は100~200kmの長距離を走っています」

 「来年もナショナルチームの強化指定選手になっていて、常に世界のレースを意識しています。大学進学をしても海外にいけると思います。海外遠征をして感じたのは日本のレースは、海外と全然違っていて、レース展開も違う。海外遠征の経験がなければ通用はしないと感じました。大学へ進学してもロード・トラック両方で通用できるように練習して、東京オリンピックに向けてどちらからも選ばれる万能な選手になっていきたい。6年後だと24歳、年齢的にもいい時期だと思います」

高校で自転車競技をするためには

インターハイ・ロードレースを走る北桑田高校(写真・北桑田高等学校)インターハイ・ロードレースを走る北桑田高校(写真・北桑田高等学校)

 全国高校体育連盟に加盟している自転車競技部は237校(2014年秋時点)で、選手は約1800人。少子化の影響もあり競技人口は減少傾向だったが、昨今の自転車ブームから再び増加に転じ、新しく加盟校も増えつつある。自転車競技部がある高校は都市部が多く、地方では各県に大体1~4校となっている。また女子部員もガールズケイリンを目指す選手が現れ、競技人口とともに競技レベルの向上が見られる。

 インターハイには、各地区のブロック予選を勝ち抜いた約100校が参加できる。ロード・トラックを得意とする学校に分かれ、トラックの短距離は競輪場で練習しやすい場所にある学校が力を入れ、北桑田高校は山間部にある学校なのでロード練習がメーンとなる。

 中学を卒業した子供たちが、高校で自転車競技部に入るにはどうしたらいいのか、田中先生に聞いた。

 「自転車競技部を持つ学校は多くの県で1~4校程度で、東京や大阪など都心部だともう少し多い。そして工業高校や農業高校、私立高校に多いのも特徴でしょう。自分の学びたい分野や学力、通学距離などの条件が合えば学校を決めることができるでしょう。また、自分の行きたい学校や住んでいる地域に自転車部がない場合は、入学前に同好会や部として高体連加盟してもらえるかどうか、あらかじめ高校に問い合わせてみるのもいいと思います」

 全国大会には、自転車競技部に所属していないと出場できないのだろうか。

 「インターハイに関しては、高体連に加盟していない学校の生徒に出場権はないのですが、日本自転車競技連盟主催の大会(全日本選手権や国体、ジュニアオリンピックなど)には個人やショップチームなどから出場することは可能です」

 自転車競技部のある高校のなかからは、どのように選べばいいのだろうか。

 「部活動としてどうしても自転車競技がやりたい場合は、公立、私立を問わず学校見学会やオープンスクールに参加し、顧問や高校の先生方に直接質問してみましょう。自分はピスト(トラック競技)をメーンでやりたいのかロードをメーンでやりたいのかといったことでも選ぶ学校は変わってきます。個人でも十分できる競技ではありますが、みんなと競い合い合宿や遠征で競技力が格段に高まるのも魅力でしょう」

 最後に、田中先生に北桑田高校自転車競技部の来年の目標を聞いた。

 「春の全国高校選抜を制覇してから、夏のインターハイでのチームパーシュートの3連覇、そして全国高校総体総合優勝の連覇です」

左から北桑田高校の田中良泰先生、孫崎大樹、安田開、草場啓吾、村田瑞季、上田敬史先生(中尾亮弘撮影)左から北桑田高校の田中良泰先生、孫崎大樹、安田開、草場啓吾、村田瑞季、上田敬史先生(中尾亮弘撮影)

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