ジュニア・U23世代が火花“自転車の甲子園”「益田チャレンジャーズステージ」初開催 東京五輪世代の育成と町おこしを両立

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 ジュニア・U23世代の育成に特化したロードレース「第1回益田チャレンジャーズステージ」が11月16日、島根県益田市で開催され、U23では岡篤志(EQA U23)、U19では小山貴大(エカーズ)、U17では日野竜嘉(松山聖陵高校)がそれぞれ優勝した。レースの舞台は、9月に「益田I・NA・KAライド」が開かれたクルマも信号も少ない山陰の地方都市だが、将来の国際大会化も視野に入れた本格的なコースを設定。2020年東京オリンピックを見据えての若手選手育成と、「自転車を活用した町おこし」の両面で注目されるイベントとなった。 (文・写真 米山一輝)

U19・U17のレースでは、小山貴大(エカーズ)が4人のゴールスプリントを制し優勝U19・U17のレースでは、小山貴大(エカーズ)が4人のゴールスプリントを制し優勝

良質な公道コースで開催

 「100km信号ゼロ」を謳うロングライドイベント「益田I・NA・KAライド」が開かれる益田市は、良好なライド環境で知られる。今回のチャレンジャーズステージで使用される1周14.2kmの周回路も、市中心部から車で15分程度の近郊ながら、途中に信号が一つも存在しない。

 コースは1km付近の山岳賞ポイントまでを一気に上り、そこから5km付近までは上り基調のアップダウン。後半は道幅の狭い下りが約1km、その後はフィニッシュラインまで緩い下り基調のアップダウンが続く。前半の上り基調での攻撃力と耐久力、また後半の下り基調でスピードを維持する地力の両面が要求され、総合力のあるレーサーが有利なコースだ。

スタートには益田市の山本浩章市長が訪れ「信号のほとんどない道路で素晴らしい走りを」とエールスタートには益田市の山本浩章市長が訪れ「信号のほとんどない道路で素晴らしい走りを」とエール
コース立哨は地元・益田東高校の野球部員が担当したコース立哨は地元・益田東高校の野球部員が担当した

 この大会は前年のプレ大会を経て、本開催としては今年が第1回目。今回から日本自転車競技連盟(JCF)が大会主管となり、国際審判がチーフコミッセールを担当。コースも国際大会を開催できる10km以上の公道周回コースが設定された。JCFの松倉信裕常務理事によると、将来的に全日本選手権の開催に立候補できる場所を増やし、また国内でUCIポイントを獲得できる国際大会を増やすため、レースの公道開催に意欲的な地域で大会を育てていく考えだという。

 JCFが大会主管を務めたことで、各クラスとも10位以内に入れば翌年の全日本選手権ロードレースへの出場申込資格を得られる。このため中国・四国・九州地方だけでなく、近畿や関東からも選手が参加した。レースは各クラスとも5周回、71kmの距離で争われた。

U23は岡篤志が今季初勝利

EQA U23の同門対決を制した岡篤志が、U23のレースを制したEQA U23の同門対決を制した岡篤志が、U23のレースを制した

 U23(23歳未満、1992〜1995年生まれ)のクラスには、大会の5日前から益田市で合宿を行っていた日本ナショナルチームのメンバーがほぼ全員出場。出走人数やレース距離は小ぶりながら、国内トップクラスの選手による激しい戦いとなった。

U23ナショナルチームは5日前より合宿。来年に向けての顔合わせ的合宿で、ローテーション練習やタイム計測などを行なったというU23ナショナルチームは5日前より合宿。来年に向けての顔合わせ的合宿で、ローテーション練習やタイム計測などを行なったという
1周目の集団。雨澤、面手らが積極的に攻撃したという1周目の集団。雨澤、面手らが積極的に攻撃したという

 レース序盤、アタックがかかるものの集団は大きく崩れず、約15人の集団で1周目を終えたが、2周目に入ると最初の上りのアタック合戦で集団は分解。まず先頭が7人に絞られ、ここからさらに2人が先行。追走の5人から3人が下りで追い付き、5人の先頭グループが形成された。

 先頭5人は、岡篤志と清水太己(ともにEQA U23)、小石佑磨(ヴィーニファンティーニ・NIPPO・デローザ)、徳田優(鹿屋体育大学)、雨澤毅明(那須ブラーゼン)で、雨澤以外の4人はナショナルチームのメンバーだ。これを追走する後続グループも、ほぼナショナルチームメンバーの有力選手ということもあり、5人はレース後半まで協調体制をとって後続との差を広げた。

2周目、先頭は5人に絞られた2周目、先頭は5人に絞られた
協調して逃げ続ける先頭5人協調して逃げ続ける先頭5人

 いよいよ最終の5周目、前半の上りでまず清水がアタック。これに岡が反応してさらにペースアップ。EQA U23の2人が他の3人に差を付けることに成功した。今回のレースではチームプレーは行なわず、全員が個人として勝ちを狙う方針だったというが、結果的にEQA U23の2人の利害は一致。ゴール前まで協調して後続に決定的な差を付けた。

 ゴール勝負はチームメート同士のガチンコ対決。「後ろに付いて、自分の距離でスプリントした」という岡が、清水を寄せ付けず優勝した。

最終周回、岡と清水が先頭に立つ最終周回、岡と清水が先頭に立つ
先頭でペースを上げる岡篤志(EQA U23)と清水太己(同)先頭でペースを上げる岡篤志(EQA U23)と清水太己(同)
EQA U23同士のゴール対決EQA U23同士のゴール対決
3位はゴール前で雨澤をかわした小石が取った3位はゴール前で雨澤をかわした小石が取った

 岡は昨年の個人タイムトライアル・ジュニア王者。高校を卒業した今年から欧州を拠点にネイションズカップなどのレースに出場している。「今シーズンはフィジカル的にも落ち込む時期が多く、反省点も一杯でした。チャンスは一杯もらったんですけど、それを生かすことができなかった」とU23の1年目は、世界レベルの厳しい洗礼を受けた。この大会が今季初勝利になるという。

U23表彰。(左より)2位の清水、優勝の岡、3位の小石。副賞はANAの旅行券7万円分U23表彰。(左より)2位の清水、優勝の岡、3位の小石。副賞はANAの旅行券7万円分

 「合宿もあまり調子良くなくて、レースも前半本当にキツかったんですけど、逃げが決まってからは調子が上がってきたので、スプリント賞や山岳賞も狙わずにゴールに集中した」と語る岡。来シーズンに向けては「今シーズンの反省を生かして、結果を出していきたい」と語った。

U19は小山貴大が優勝 来年は欧州へ

U19とU17が同時出走で行なわれたU19とU17が同時出走で行なわれた

 U19(1996~1997年生まれ)は、いわゆる高校2年・3年生のジュニア世代。レースはU17(1998~1999年生まれ)と同時発走で行なわれた。今年ジュニアのネイションズカップで入賞している小山貴大(エカーズ)らが積極的にペースアップ。徐々に集団は小さくなり、最終的に4人の先頭集団となった。

 ゴール地点はゆるい上り坂。「集団を絞り、最後は独走に持ち込んで優勝しようと思っていた。ゴールスプリントは苦手」という小山だったが、「愛媛の日野選手と野本選手が組んでいるのは分かっていたので、野本選手の後ろに付いてまくりに行った」という冷静なレース運びを見せ、勢い良く先頭に出てそのままガッツポーズでゴールを切った。

 小学校のときにツール・ド・フランスをテレビで見てロードレースを始めたという小山。来年はU23に上がり、本格的に本場欧州でプロを目指すという。「将来はツール・ド・フランスで勝つ選手になりたい。世界のトップとはまだ差があるので、頑張っていきたい」と意気込みを語った。

上りで積極的にペースを上げる小山貴大(エカーズ)上りで積極的にペースを上げる小山貴大(エカーズ)
最終周回、先頭は4人に最終周回、先頭は4人に
小山が低い姿勢で鋭いスプリントを見せた小山が低い姿勢で鋭いスプリントを見せた

 U17は日野竜嘉(松山聖陵高校)が、4人の先頭集団にU17の選手から唯一入り、ゴールでも全体で3着に入る健闘を見せてクラス優勝。スプリント賞と山岳賞も独占した。しかし本人は「ジュニア(U19の選手)に勝ちたかった」と悔しい表情。得意な上りでアタックしたが決められなかったという。将来の夢は「ツール・ド・フランスに出てステージ優勝や総合に絡める選手になりたい」という。まずは次世代のジュニアナショナルチーム入りを目指す。

U19表彰。(左より)2位の野本、優勝の小山、3位の黒川。優勝の小山には、益田ドライビングスクールの合宿免許取得権が副賞として贈られたU19表彰。(左より)2位の野本、優勝の小山、3位の黒川。優勝の小山には、益田ドライビングスクールの合宿免許取得権が副賞として贈られた
U17表彰。(左より)2位の岡本、優勝の日野、3位の岡本U17表彰。(左より)2位の岡本、優勝の日野、3位の岡本
山岳賞表彰。(左より)U17の日野、U19の野本、U23の徳田山岳賞表彰。(左より)U17の日野、U19の野本、U23の徳田
スプリント賞表彰。(左より)U17の日野、U19の渡邉、U23の小石スプリント賞表彰。(左より)U17の日野、U19の渡邉、U23の小石

将来は全日本選手権開催への立候補も

益田市・町おこしの会理事長の吉村修さん益田市・町おこしの会理事長の吉村修さん

 大会はU19・U17のみで行なわれたプレ大会に続き、今回はU23が加わったが、若い世代のみのレースとして開催されている。

 主催したNPO法人益田市・町おこしの会の吉村修理事長によると、地方都市の例に漏れず益田市でも人口減少、高齢化、過疎化が進んでおり、地域を元気付けたいという思いから、青少年のためのレース開催に至ったという。「地域によっては本当に老人しかいない。そこに若者が来ると元気をもらえると喜ばれます」と吉村理事長は語る。

 さらに意識するのは、地域の全国的なアピールだ。「残念ながら益田という名前は全国区ではありません。ただ発信することでなく、焦点を絞ることが肝心。こういう青少年のレースをやって、例えば野球の甲子園、ラグビーの花園、自転車の益田という具合になっていけば」と夢を語る。将来的には県内の別の都市と合わせての複数日開催や、全日本選手権開催への立候補も視野に入れているという。

益田市出身のプロレスラー、日高郁人さんもロードレースを初観戦。集団のスピードに息を呑んでいた益田市出身のプロレスラー、日高郁人さんもロードレースを初観戦。集団のスピードに息を呑んでいた
大会運営スタッフは、JCF、地元NPOに加え、島根県、広島県の競技連盟スタッフらが担当した大会運営スタッフは、JCF、地元NPOに加え、島根県、広島県の競技連盟スタッフらが担当した
近所から観戦に訪れ「去年のプレ大会よりも人数が増えて嬉しい」という青木さん一家近所から観戦に訪れ「去年のプレ大会よりも人数が増えて嬉しい」という青木さん一家
益田市立東陽中学の吹奏楽部が、選手通過時にマーチを演奏して応援益田市立東陽中学の吹奏楽部が、選手通過時にマーチを演奏して応援
ジェイ・ライド・プロジェクトの新人発掘ユースキャンプの優秀者4人もレース出場ジェイ・ライド・プロジェクトの新人発掘ユースキャンプの優秀者4人もレース出場

U23結果(71.0km)
1 岡篤志(EQA U23) 1時間50分56秒
2 清水太己(EQA U23) +0秒
3 小石祐馬(ヴィーニファンティーニ・NIPPO・デローザ) +1分51秒
4 雨澤毅明(那須ブラーゼン) +1分59秒
5 徳田優(鹿屋体育大学) +2分24秒
6 黒枝咲哉(鹿屋体育大学) +5分17秒
山岳賞・徳田優(鹿屋体育大学)
スプリント賞・小石祐馬(ヴィーニファンティーニ・NIPPO・デローザ)

U19結果(71.0km)
1 小山貴大(エカーズ) 1時間57分32秒
2 野本空(松山工業高校) +0秒
3 黒川晴智(東岡山工業高校) +4秒
4 北野龍人(立命館大学) +3分08秒
5 岡部祐太(広島城北高校) +3分10秒
6 平林楓輝(松山聖陵高校) +4分12秒
山岳賞・野本空(松山工業高校)
スプリント賞・渡邉大悟(九州学院高校)

U17結果(71.0km)
1 日野竜嘉(松山聖陵高校) 1時間57分33秒
2 奥村十夢(榛生昇陽高校) +7分00秒
3 岡本篤樹(榛生昇陽高校) +7分04秒
4 三好憲士郎(榛生昇陽高校) +10分58秒
5 源田真也(花園高校) +12分19秒
6 鈴木史竜(JRIDE) +13分14秒
山岳賞・日野竜嘉(松山聖陵高校)
スプリント賞・日野竜嘉(松山聖陵高校)

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