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“自転車革命都市”ロンドン便り<11>東京オリンピックにもいかが? ロンドン発のおしゃれ駐輪ソリューション「サイクルフープ」

by 青木陽子 / Yoko AOKI
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2011年に開催されたロードレース・イベントでも「サイクルフープ」が駐輪スペースの運営を担当していた。スタッフには明るく楽しい人たちが多い2011年に開催されたロードレース・イベントでも「サイクルフープ」が駐輪スペースの運営を担当していた。スタッフには明るく楽しい人たちが多い

 ロンドンを日々自転車で移動していると、ときどき「これはイイッ♡」と思わず小さく叫んでしまうような自転車アイテムを見つけることがあります。その代表格が、アンソニー・ラウさんが創設した会社「サイクルフープ」の製品。走行中にいいものを見つけ、Uターンをして近寄ってチェックすると、「ああ、またアンソニーの会社の製品だ!」ということも増えてきました。そこで先日、サイクルフープを訪ねて取材をしてきました。

街で目に留まったポップなカラー

既存の交通標識の支柱に取り付けることで、細めのDロックが使えたり、前後2ヶ所をロックしやすくなる「サイクルフープ」。そのまま社名にもなった既存の交通標識の支柱に取り付けることで、細めのDロックが使えたり、前後2ヶ所をロックしやすくなる「サイクルフープ」。そのまま社名にもなった

 ロンドンでは、各区や市交通局の駐輪ラックが毎年万単位で増設されているのですが、自転車人口の急増に予算が追いついていない状態がずっと続いています。つまりわれわれサイクリストは、自転車をロックできる建造物を常に血眼で探している状態。

 そんなバックグラウンドもあって5年前、都心を走っていた際にサイクルフープのカラフルな駐輪用の輪っかが目に留まりました。既存の交通標識に後付けで設置されたサイクルフープに、「なんて賢い、しかもかわいいデザイン!」と感動したのでした。新たに路面を掘りおこす必要がないので、けっこうな税金の節約になっているはずです。

 その後たまたま出向いたサイクルショーに出展していたサイクルフープのブースには、実物大のクルマをかたどった移動式の駐輪ラック「カー・バイク・ポート」も。機能だけでなく、「乗用車1台のスペースに自転車なら10台もとめられますよ」というメッセージになっているとひと目でわかるのも心憎い。その場にいた社長のアンソニーをつかまえ、褒めちぎったのでした。

 それからも、サイクルカフェそばの歩道上に“生えていた”空気入れや整備スタンドをよく見ると、サイクルフープ製だった――という経験が続き、今回、取材に踏み切ることにしたのです。

ポップな色が街の雰囲気を上げてくれる。従来型のコの字を伏せた駐輪ラックは敷設まで1本300ポンド(5万7000円)ほどかかるが、サイクルフープなら170ポンド(3万3000円)ほどで済む ©cyclehoopポップな色が街の雰囲気を上げてくれる。従来型のコの字を伏せた駐輪ラックは敷設まで1本300ポンド(5万7000円)ほどかかるが、サイクルフープなら170ポンド(3万3000円)ほどで済む ©cyclehoop
クルマの駐車スペース1台に自転車10台の駐輪スペースを作り出す「カー・バイク・ポート」。オーストラリアやニュージーランドでは商店街に駐輪ラックを作ると商店街の売り上げが格段に上がるという調査結果も上がってきている ©cyclehoopクルマの駐車スペース1台に自転車10台の駐輪スペースを作り出す「カー・バイク・ポート」。オーストラリアやニュージーランドでは商店街に駐輪ラックを作ると商店街の売り上げが格段に上がるという調査結果も上がってきている ©cyclehoop
ロンドンの路上や鉄道駅にポツリポツリと現れ始めている公共の空気ポンプ。いたずらされても壊れにくいようにかなり頑丈にできている ©cyclehoopロンドンの路上や鉄道駅にポツリポツリと現れ始めている公共の空気ポンプ。いたずらされても壊れにくいようにかなり頑丈にできている ©cyclehoop
空気ポンプと一緒に敷設されていることが多い自転車修理スタンド。ドライバーやアレンキーが備わっているので、ディレイラーの調整などをさっとできる ©cyclehoop空気ポンプと一緒に敷設されていることが多い自転車修理スタンド。ドライバーやアレンキーが備わっているので、ディレイラーの調整などをさっとできる ©cyclehoop

盗難の経験が製品のアイディアへ

ロンドン生まれのアンソニー・ラウさん。駆け出しの建築家だったとき、通勤用の自転車を盗まれたのがきっかけで、サイクルフープのデザインを思いついたロンドン生まれのアンソニー・ラウさん。駆け出しの建築家だったとき、通勤用の自転車を盗まれたのがきっかけで、サイクルフープのデザインを思いついた

 サイクルフープのオフィスは都心から自転車で30分弱、小さな工場が集まったエリアの2階にありました。久しぶりに会ったアンソニーは相変わらずの好青年でした。10代を過ごした香港で自転車が大好きになり、建築家として働き始めたロンドンでも自転車通勤をしていたのだそうです。

 ところがある日、交通標識の柱につないでいた愛車が盗難に遭遇してしまいます。「しっかりしたロックを使っていたけれど、自転車をロックごと持ち上げ、2m以上ある標識の上から抜いて盗られてしまったんです」と当時を振り返ったアンソニー。そしてその経験が、サイクルフープのアイディアにつながったと言います。

 アンソニーが製作したサイクルフープは2006年にデザインの賞を受け、2008年には初めてロンドンの2つの区から受注がありました。その後、“駐輪ソリューションのスペシャリスト”としての起業に至ったのです。

オフィスのホワイトボードには、サイクルフープのデザイン案スケッチが残されていたオフィスのホワイトボードには、サイクルフープのデザイン案スケッチが残されていた

 会社を興してからは、ロンドンの行政各区などとの仕事が評価され、自転車の活用が謳われた2012年のロンドン・オリンピックでも活躍。同オリンピックでは、前記の「カー・バイク・ポート」などを使って観客やスタッフのために1万2000台分の駐輪スペースを提供しました。単に納品するのではなく、「駐輪場の管理・運営・撤収まで手がけるスタイルが特徴」で、いまではノウハウも蓄積してきたそうです。

欧州で勢いを増す自転車業界

 いまいちばん力を入れているのが、かまぼこ型の鍵付き駐輪庫「バイクハンガー」です。サイズは、区の予算でこれまで住民に与えられていた路上のクルマの駐車スペース1/2台分ほど。サイクルフープは、利用希望者の受付けから利用料の徴収といった管理業務を担当します。南ロンドンのランベス区ですでに100基のバイクハンガーが稼働しているほか、集合住宅の敷地内用としても引き合いが多いとか。

6台の自転車を安全に収納することができるバイクハンガー。区の予算で作られるが、実際の運営など細かい仕事はサイクルフープが受け負うため、区も導入しやすいのだとか6台の自転車を安全に収納することができるバイクハンガー。区の予算で作られるが、実際の運営など細かい仕事はサイクルフープが受け負うため、区も導入しやすいのだとか
ロンドンも平均的な家は狭く、とくに集合住宅などで自転車を置けないために自転車通勤をしたくてもできない人が多いから、こういう収納は需要がある。料金は場所によるが、年間5000~6000円程度だロンドンも平均的な家は狭く、とくに集合住宅などで自転車を置けないために自転車通勤をしたくてもできない人が多いから、こういう収納は需要がある。料金は場所によるが、年間5000~6000円程度だ

 サイクルフープ製の駐輪ラックは、自転車利用が延びているスウェーデンやニュージーランドなどから引き合いが増え、業績はもちろん「絶好調」。アンソニーは、「フルタイムの従業員はいまや23人。いまの工場兼オフィスはすでに手狭なので、次の工場物件を購入したばかり」とその成長っぷりを教えてくれました。

 英紙「ガーディアン」においても11月12日、「EUにおける鉱物掘削業の雇用は61万5000人、鉄鋼業の直接雇用は35万人。対して自転車関連は65万人に達した」という記事が掲載されていました。今回のサイクルフープ取材ではまさに、その勢いを目撃した実感があります。

◇         ◇

 10月にロンドンを訪問した東京都の舛添要一知事が、「東京と同じように道幅などが狭いロンドンの自転車事情が参考になる」と言っていましたが、そのロンドンで伸びてきた駐輪ソリューションも導入を検討してみてはどうでしょう。アンソニーからも「東京の自転車事情はどう? 東京ならではのニーズがあれば、デザインの提案もしてみたい」と意欲的な発言が飛び出しました。サイクルフープのカラフルでポップなデザインは、東京の街角にこそ似合うような気もします。

青木陽子青木陽子(あおき・ようこ)

ロンドン在住フリー編集者・ジャーナリスト。自動車専門誌「NAVI」、女性ファッション誌などを経て独立起業、日本の女性サイトの草分けである「cafeglobe.com」を創設し、編集長をつとめた。拠点とするロンドンで、「運転好きだけれど気候変動が心配」という動機から1999年に自転車通勤以来のスポーツ自転車をスタート。現在11台の自転車を所有する。ブログ「Blue Room」を更新中。

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