工具はともだち<60>パーツを固定するボルト・ナット しっかり締め付けるためのカギは「摩擦力」と「軸力」

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 サイクルモードが終わると、そろそろ年末の雰囲気。自転車通勤も寒さが少々辛くて挫折しそうですが、新しいライトを装着したので、何となく夜の走行が楽しみです。以前に買ったものと同じ価格で、より性能が向上したライトを買うことができました。安くて高性能の製品がどんどん登場するので、ついつい衝動買い…なんて方も多いのでは? 実は私もその傾向があります。気が付けば身の周りにモノがあふれている、なんてことにならないよう、自分に必要な工具をスマートに収納できる工具ケースやバッグをお使い下さいね。

長い歴史をもつボルト・ナット類

 ボルト・ナット類は、どのような役割をはたしているのでしょうか?今回は、そんなお話をしていきます。

 ボルトがもつ役割は単純。固定できるということです。自転車においては、フレームとステム、ステムとハンドルといった具合に、ボルトがそれぞれのパーツを一体化させてくれます。いわゆる締結部材と呼ばれるものです。

 接着材を使った接着という方法もありますが、こちらは分解には適していません。ボルトによる締結は分解、締結の繰り返しができることが大きなメリットです。自転車が全て接着されていたら、パーツ交換などの楽しみがなくなってしまいますよね。

ボルト・ナットとともに、スパナも長い歴史をもつ工具ボルト・ナットとともに、スパナも長い歴史をもつ工具

 このボルト・ナット、歴史は紀元前400年まで遡ることができるそうですが、どうやら今のような形に進化したのは、この150年ほどの間だそうです。さまざまな産業が発展するのに合わせて、ネジも現在の形に近づいたということです。

 それにつれて、部品をより強く固定することができるようになりました。すると、人の力では緩めたり、締め付けたりすることが簡単ではなくなったため、工具が開発されたといわれています。

一番重要なのは「元の形に戻ろうとする力」

 では、ボルト・ナットはなぜ、工具が必要とされるほどしっかりと締まるのでしょう。答えは、3つの力が働くからです。

 1つは、ネジ部(ネジ山があるところ)に発生する摩擦力。そして、ネジ頭部が締め付ける部品と接する部分(座面)の摩擦力。ほぼ90%は、この2つの力のおかげでボルトが締め付けられているとお考えください。ただしこれでは、ボルトと部品が単に接地しているだけの状態。振動などの影響を与えるとすぐに緩んで部品がバラバラになってしまいます。

ボルトにかかる摩擦と軸力ボルトにかかる摩擦と軸力

 最後に威力を発揮するのが、力を加えられ変形したボルトが、元の形に戻ろうとする力です。この力が発生することにより、「締まる」といった現象が成り立つのです。専門的にはこの力を、ボルトを軸とし、その軸に適切に力を与える「軸力」と呼んでいます。ボルトの締め付け関係においては、決して大きな比率を持つ力ではありませんが、この「軸力」が、ボルト締め付けの一番の目的となります。

 自転車に使われているボルトを適切に締め付けるというのは、ボルトにこの「軸力」を与えるということ。もうお分かりですよね。この「軸力」が弱いと振動などで緩みが発生し、逆に強すぎると、部材の破損に繋がるといった現象を起こしてしまうわけです。

 しかし残念ながら、この力を具体的に測定することは困難です。ですので、代用として固定したモノを回転させようとする大きさを表す「トルク」を管理することで、適切に締め付ける力を決めているのです。

 セミナーなどを開催させていただいて、ボルトを締め付ける力はなんでしょうと問いかけると、摩擦力とお答えいただく方が多くいらっしゃいます。ほぼ正解なのですが、ぜひこの「軸力」が大切ということをご理解下さいね。

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 さて、あと1カ月もすれば、クリスマスシーズン。私たちKTC(京都機械工具)からのプレゼント、いかがですか?

小池覚(こいけ・さとる)

KTC(京都機械工具)へ入社後、販売企画や商品開発に携わる。学生時代から二輪、四輪が趣味で、整備経験が豊富。自転車は実は始めたばかりだが、工具のプロとして、サイクリストにも整備の“いろは”を伝えることに燃えている。

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