イベントレポート「ツール・ド・三陸」で自転車イベント初出場 被災地のリアス式海岸を走った50km

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 Cyclist編集部と同じ部屋で働く影のスタッフCaeです。東日本大震災の津波を受けて唯一残った“奇跡の一本松”のことはご存知でしょうか。その一本松が立つ岩手県陸前高田市から、隣の大船渡市にかけて50kmあまりを走る「ツール・ド・三陸」が11月2日に開催され、1000人を超えるライダーが疾走しました。私もこのたび、生まれて初めて自転車ライドイベントに参加してきたので、その模様をレポートします。

第1エイドステーションの碁石海岸レストハウスにて。天気が最高です!=岩手県大船渡市第1エイドステーションの碁石海岸レストハウスにて。天気が最高です!=岩手県大船渡市

50kmコースをさらに速度別にグループ分け

前日の受付会場となった陸前高田市立第一中学校。雨でぬかるみ、せっかく設営したスタートゲートは使えませんでした前日の受付会場となった陸前高田市立第一中学校。雨でぬかるみ、せっかく設営したスタートゲートは使えませんでした

 開催前日の土曜日は、雨。出走の受付けをするため陸前高田市立第一中学校の仮設グラウンドへ行くと、足が埋まるほどのぬかるみになっていました。おそるおそる迎えた当日、天気予報は“曇りのち雨”でしたが、明けてみれば見事な青空が広がっていました!

 ただし、グラウンドは水はけが悪くぬかるんでいたので、せっかく用意したスタートゲートは使用できず、会場前の車道から順次スタートとなりました。

 ツール・ド・三陸のコースは2つ、50kmの健脚コースと18kmのファミリーコースで、さらに健脚コースは、時速25kmを保って走るAグループ、時速10km程度のBグループに分けられていました。私がエントリした健脚コース・Bグループは、9時近くにスタートしました。

 サイクリングリーダーの方に先導され、10人程度がまとまって走ります。しばらくは平坦な道のりが続きました。津波で被災した地域を全体的に盛土して市街地を再生する計画が進んでいるそうで、まだ何も建物のない平野が広がるなか、自転車は一列になって進みました。

碁石海岸にて、この見晴台の下は絶壁。かつて教科書で見たとおりのリアス式海岸です碁石海岸にて、この見晴台の下は絶壁。かつて教科書で見たとおりのリアス式海岸です
沿道の民宿が大漁旗を掲げて応援してくれていました沿道の民宿が大漁旗を掲げて応援してくれていました

 5kmくらい経過したところから、最初の坂が現れました。標高ほぼ0mから78mまで、傾斜はそれほどきつくなかったものの、長い坂がダラダラ続く辛い坂でした。さらにこの後、「三陸といえば」のリアス式海岸が登場し、高低差の激しい壁のような坂を何度も上ることに。ダラダラ坂も、激しい坂も、上り坂はどちらも遠慮したい…。

ツール・ド・東北のボランティア仲間とコース上で再会

 15km地点、碁石海岸に設置されたエイドステーションで、先に出発していた友人と合流しました。そこから少し歩いたところにある見晴台からの眺望が素晴らしかった! 水平線がふんわり丸くカーブして見えるんです。地球はやっぱり丸いんですね。

 エイドステーションに戻り、そろそろ出発と思ったときに、聞き覚えのある声が。見れば9月にボランティアとして参加したツール・ド・東北の決起集会でお話をうかがった方です。その時にツール・ド・三陸に参加されるとおっしゃっていたので。気にはしていたのですが、1000人がバラバラに走っていたので、まさかお会いできるとは思っていませんでした。こうした出会いや再会も、同じ趣味を持つ者ならではですね。

10年ぶりの友人との再会。ピースサインではなく三陸の「3」サイン10年ぶりの友人との再会。ピースサインではなく三陸の「3」サイン

 そうこうしているうちに、友人と2人してサイクリングリーダーを見失ったため、「しょうがないね」と独自に走ることに。運営の方には申し訳ないですが、このサイクリングリーダーシステムはほとんど機能していなかったかも知れません。自分のリーダーが誰か分からずにスタートしてしまいましたから。

 「制限時間はなし」と聞いていたので、のんびり安全運転で走りました。気になる景色があれば自転車を止めて写真を撮ったりと、大勢の方に追い抜かれつつ2つ目のエイドステーションに到着。すると残念なことに、補給食のバナナもおやきもなくなっているではありませんか…

 もちろん食べるのが目的ではないですが、「ない」と言われると食べたくなる。しかもそのおやきというのは、今回のコースが面している広田湾で取れたホタテやワカメの入った「めぐみ焼き」という特産なんだそうです。キーッ、くやしい! 「でも走り終わったら存分においしいものを食べるんだもんね」と気を取り直して、後半20kmを走りました。

声援に支えられて頑張ったリアス式海岸

 この先は、恐ろしいほどの上り坂がいくつも襲来。えっこら登っていると、沿道に座っているおばあちゃんたちが「がんばれー」と応援してくれたり、上り詰めるとキレイな海が見えたり、辛いながらも楽しく走ることができました。そして上りの後にはもちろん、ご褒美の下り坂が待っています。11月の岩手にしてはだいぶ暖かい気候で、下りの風が気持ちいいこと!

ツール・ド・フランスで3度の総合優勝を果たした英雄、グレッグ・レモンさんも参加! 気の良いおじさんでしたツール・ド・フランスで3度の総合優勝を果たした英雄、グレッグ・レモンさんも参加! 気の良いおじさんでした

 「ここが最後のピークだよ」とベテランらしき方が教えてくれました。坂を上り切ると、おっしゃるとおりその後はのんびりとした平地と緩やかな坂が続き、しばらくすると見覚えのある景色になってきました。スタート/ゴール地点に近づいてきたようです。あんなに辛かったのに終わってしまうとなると寂しい。平地だけならもう少し走っていたいくらいでした。

 後ろ髪を引かれる気持ちでゴール。グラウンドは朝よりだいぶ乾いてはいましたが、やはりまだ自転車で乗り込むのは気が引ける状態で、皆さん自転車を担いでゴールしていました。完走賞にノンアルコールビールをもらい、ゴール会場で開催されていた産業まつりで岩手和牛に舌鼓を打ち、無事の完走を祝い、三陸の復興を祈りました。もちろん自転車を片付けた後は、本物のビールで心身の疲れを癒しましたよ。

 初めてのライドイベントにはちょうど良い50kmという距離、秋の岩手、そして私事ですが陸前高田で復興支援の仕事をする友人と10年ぶりの再会。ツール・ド・三陸は、私にとって良いエッセンスが凝縮された大会になりました。

(レポート・産経デジタル 渡邉佳恵)

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