国府田正司の「もう1つのツール」 stage6福島から岩手へ 被災地を走り抜ける意味

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 ※日本縦断自転車旅行「ツール ド ネットカフェ2012」に挑戦している“コーチャン”こと国府田正司さんによる連載です。
これまでの「国府田正司の『もう1つのツール』」
8月8日。福島県須賀川市で朝を迎える。ホテルの少ししか開かない窓を目一杯開けると、冷たく心地良い風が入ってくる。さすがに朝晩の過ごしやすさは都心とは違う。

 この日は1店舗訪れた後、100km先にある宮城県名取市までひたすら北上する道のりだ。日中の暑さは25℃前後と問題ない。だが、向かい風があり体力を奪われる。下り坂でも風のせいでスピードが乗らず、楽しくない。空気抵抗の少ないパニアバッグ(※1)や整流効果のあるのぼり旗があったら、高速系ランドヌール(※2)に需要があるのではないだろうか、などとくだらぬ妄想をしてしまう。

※1 パニアバッグ: リアキャリアにセットするツーリング向けのバッグ
※2 ランドヌール: ノーサポートの長距離サイクリング「ブルベ」を走るライダー

例の大学生3人組に再会。にわか“パンク修理教室”例の大学生3人組に再会。にわか“パンク修理教室”

 福島市へ入る手前で、見たことのあるシルエットを発見する。近づいてみると、果たして、前日チューブ交換をしてあげた例の3人組だった。同じ道を進む以上、また会うかもしれないとは思っていたが、まさかこんなに早く再会するとは…。しかも、またパンクしている。今度はママチャリがパンクしたようだ。

 私のアドバイスを守ってくれたのか、携行ポンプはどこかで手に入れたらしい。しかし、それしか持っていない。タイヤレバーと修理パッチを提供し、作業は彼ら自身にさせた。「してみせて 言って聞かせて させてみる」…という格言を思い出す。

 「まだ仙台までは長いから気をつけて! ちゃんと【plaync】って検索するんだぞ」と言い残し、彼らと別れた。またどこかで、会いたいものである。

◇      ◇

桃と桑折町を愛する「はねだ桃園」のみなさん=福島・桑折町(こおりまち)桃と桑折町を愛する「はねだ桃園」のみなさん=福島県桑折町

 福島市を抜けると、道路沿いに「桃 直売」「献上桃」といった看板が目立つようになる。福島でこの季節と言ったら、やはり桃だ。誘惑に耐えかね、直売所に立ち寄る。今が旬の「あかつき」をいただきながら、いろいろと話を伺った。

 ここ桑折町(こおりまち)は、桃の産地として有名である一方、「三元車」という日本最古の自転車が生まれた町でもあるらしい。それにちなんで、毎年「桑折サイクルフェスティバル」というサイクリングイベントが行われているそうだ。しかも今年で20回目を迎えるという。これは知らなかった。

 美味しい桃と、やたら元気な「はねだ桃園」の方々にパワーをもらい、宿泊地である名取市まで一気に走る。日が落ちてからは風向きが変わり、かなり楽に進むことができた。

松島、平泉では多数の観光客を目にすることができた松島、平泉には多数の観光客が訪れている

 8月9日。七夕まつりが終わったばかりの仙台市へ。祭りの期間中は、200万もの人が訪れたというから、大変な賑わいであったろう。無理にでも、祭りに合わせたスケジュールを組めばよかったと後悔する。

 仙台市から多賀城市へと向かう途中。リアタイヤに違和感を覚えた。今度は私がパンクだ。ここまで1,200km以上走り、初めてのパンク。例の3人組(「ズッコケ」と付けたくなる)から“パンクの神様”を譲り受けてしまったのだろうか…。手早くチューブ交換を済ませ、先を急いだ。

岩手・平泉の中尊寺で記念撮影岩手・平泉の中尊寺で記念撮影

 8月10日。最終日。登米市から田園地帯を通り、岩手県へ。一関市あたりから国道4号線に合流し、奥州市へ向かう。

 前日までは雲が多かったが、この日は快晴。湿度が低く、翆色の山野に囲まれながらのサイクリングは格別に気持ちがいい。このまま盛岡まで走りたかったのだが、人生つまずくこともある。まさに「馬の背を分けるような」、局地的な豪雨に遭遇。加えて時間的な制約もあったため、泣く泣く盛岡行きを断念し、そのまま関東へ戻ることとなった。返すがえすも残念である。

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時折現れる仮設住宅の案内標識時折現れる仮設住宅の案内標識

 今回、被災地を抜けてのツーリングとなった。道路のうねりや段差、時折現れる仮設住宅の案内標識から、間接的ではあるが未だ残る震災の影響をみた。だが、名取で泊まったホテルは“満室御礼”。祭りや観光地はたくさんの観光客で賑わっていた。また、国道4号線では、覚えているだけでも10人以上の自転車ツーリストと遭遇した。形は違えど、皆、東北を盛り上げようという意識で訪れているのだと思う。

 東北地方で行われる自転車のイベントは、年間を通じて多数ある。そういったイベントに参加したりしながら、楽しみながら復興支援というスタンスが、今は大事なのではないかと感じた東北ツーリングであった。なお、前出の「桑折サイクルフェスティバル」は、今年は9月23日(日)の開催。サイクリングとはいえ、17%の激坂を上る魅力的なルートが用意されている。
「ツール ド ネットカフェ2012」公式サイト

国府田正司国府田正司(こうだ まさし)
2008年よりダイエットのためロードバイクに乗り始め、現在では実業団レースなどへ積極的に出場。オンラインゲーム会社「NC Japan」社員。日本全国のインターネット・カフェを巡る企画を思いつき、単身、自転車旅に出る。好きなゲームは「タワー オブ アイオン」、好きな補給食はアンパン。特技は愛娘と特訓した「スマイルプリキュア!」ダンス。1977年生まれ、栃木県在住。

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