title banner

福光俊介の「週刊サイクルワールド」<84>ホーナー、サンチェスは2年連続で所属チームが未定 ティンコフ・サクソはキリマンジャロ登頂に成功

  • 一覧

 前回の記事でもお伝えしたように、シーズンオフとはいえチームや選手たちはさまざまな動きを見せ始めました。休養が明けてトレーニングを再開する選手、キャンプの準備を進めるチームなど、次なるシーズンに向けて話題は事欠きません。まもなくUCI(国際自転車競技連合)から2015年のチームライセンスについて発表が行われ、各チームの陣容が固まることでしょう。一方で今オフも、クリストファー・ホーナー(アメリカ、ランプレ・メリダ)、サムエル・サンチェス(スペイン、BMCレーシングチーム)といったビッグネーム数人は、所属チームを退団することが決まっていながら、移籍先が見つかっていません。そんなライダーに着目し、その理由と傾向を探ってみます。

チームビルディングキャンプで、キリマンジャロ登山にチャレンジしたティンコフ・サクソ ©Tinkoff-Saxoチームビルディングキャンプで、キリマンジャロ登山にチャレンジしたティンコフ・サクソ ©Tinkoff-Saxo

2015年の去就が未定の有力選手たち

 2014年シーズン、UCIに登録された男子ロードレースチームは211チーム。そのうち最上位カテゴリーにあたる「UCIプロチーム(2015年からの呼称はUCIワールドチーム)」は18チーム、セカンドカテゴリーの「UCIプロコンチネンタルチーム」は17チームだ。世界のトップシーンで走るには、これら上位チームに所属しなければならない。

 そうした中で、狭き門をくぐった若手選手が各チームへ数名ずつ加入するわけだが、同時に去る選手も発生する。結果を残せなかったり、チーム事情にマッチしなかったりすれば、残りたいという意思があっても居場所が失われるのは、サイクルロードレース界も他のプロスポーツと同様である。

 毎年、シーズンを終えると翌年の去就がなかなか決まらない選手が現れるが、近年はこれまでにも増して、ビッグネームが移籍先探しに苦悩する姿が目に付く。

43歳のクリストファー・ホーナー。2年続けて移籍することとなり、去就が注目される<砂田弓弦撮影>43歳のクリストファー・ホーナー。2年続けて移籍することとなり、去就が注目される<砂田弓弦撮影>

 その筆頭は、やはりホーナーだ。2013年ブエルタ・ア・エスパーニャを制しながら、当時所属していたレイディオシャック・レオパードを退団。年が明け、1月30日に現チームのランプレ・メリダ入りが決まった。それまでの間、エージェント(代理人)を代えるなど、身辺が落ち着かない日々が続いた。

 ジロ・デ・イタリアとブエルタを今シーズンの目標に定めたが、4月にトレーニング中の事故で戦線離脱。ツール・ド・フランス直前に復帰し、そのツールでは総合17位とまずまずの結果を残した。しかし満を持して臨むはずだったブエルタは、コルチゾール値の異常により開幕前日に出場取り止めとなってしまった。

 シーズンを終える段階ではチーム残留に意欲的だったが、ここにきて退団が確定。チームが、バイクスポンサーであるメリダ社の本拠地・台湾や中国のライダーを強化し、そこでの競技普及を優先事項としたことが主な理由だという。その証拠に、台湾の有力選手、フェン・チュンカイのランプレ・メリダ入りが決まっている。ホーナーの実力や人間性を買っていたゼネラルマネージャーのブレント・コープランド氏もこの決定を惜しんでいる。

 代理人のバーデン・クック氏によれば、ホーナーはヨーロッパのチームとの契約を望んでいるという。しかし、「それが叶わなければアメリカで走ることになる」とも。ヨーロッパ、アメリカともに数チームで獲得の噂があったものの、どのチームも否定。まだまだ高いモチベーション保つ43歳の進路決定には、もう少し時間がかかりそうだ。

フェルナンド・アロンソの新チーム設立が白紙になり、所属先が未定となっているサムエル・サンチェス<砂田弓弦撮影>フェルナンド・アロンソの新チーム設立が白紙になり、所属先が未定となっているサムエル・サンチェス<砂田弓弦撮影>

 ホーナーと同様、またしても進路が決まらないのがサンチェス。こちらは2月に現チームに合流し、春のクラシックやジロではアシストとして活躍。エンジンがかかったシーズン後半は、ブエルタで総合6位、ジロ・デ・ロンバルディア5位と実力を発揮した。

 昨年まで所属したエウスカルテル・エウスカディの解散決定時は、チームを引き継ぐとされたF1ドライバーのフェルナンド・アロンソのプロジェクトに加入するものと見られていた。しかし、プロジェクトそのものが白紙となったことで、所属先決定が遅れてしまった。現時点では、チームに残留する可能性も残っているといわれる一方、ランプレ・メリダが獲得に動いているとの情報もある。

来シーズンは新天地で走るアレッサンドロ・ペタッキ<砂田弓弦撮影>来シーズンは新天地で走るアレッサンドロ・ペタッキ<砂田弓弦撮影>

 10月に来日し、ジャパンカップクリテリウムで元気な姿を見せたアレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、オメガファルマ・クイックステップ)。マーク・カヴェンディッシュ(イギリス)のリードアウトマンとしてモチベーションが高かったが、今シーズン限りでの退団が決定した。

 数々のレースを制してきた“アレ・ジェット”は、40歳を迎え「自らの経験を伝授していきたい」と、若い選手との共闘を楽しむ姿勢だ。当初はジャパンカップを終え次第、移籍先を発表できるとしていたが、先送りになっている。かねてからネーリソットーリ入りが濃厚と言われており、よほどの問題がなければ来シーズンも現役続行となりそうだ。

 2012年のアムステルゴールドレースを制したエンリーコ・ガスパロット(イタリア、アスタナ プロチーム)も、未だ所属先が決まらない1人。クラシックレースで強さを発揮し、今シーズンもアムステル8位、9月のグランプリ・シクリスト・ド・ケベック8位、グランプリ・シクリスト・ド・モントリオール9位と、一定の成績は残している。しかし、グランツール路線を強化するチーム体制のあおりを受けてしまった。彼に対しては、クラシック系選手を補強しているベルギーのプロコンチネンタルチーム、ワンティ・グループゴーベルや、ポーランドのCCCスプランディ・ポルコヴィツェ(旧CCCポルサト・ポルコヴィツェ)が獲得に動いていると見られている。

ツール・デ・フランドル2011の覇者ニック・ナイエンスにとって、今シーズンは不本意な結果となった<砂田弓弦撮影>ツール・デ・フランドル2011の覇者ニック・ナイエンスにとって、今シーズンは不本意な結果となった<砂田弓弦撮影>

 ここ数年、けがや不整脈手術などで不本意なシーズンを送っているニック・ナイエンス(ベルギー、ガーミン・シャープ)には、ガスパロット同様にワンティ・グループゴーベルが接触しているもようで、さらに来シーズンのプロコンチネンタルチーム昇格が濃厚なクルトエナジー プロサイクリング(デンマーク)もチームの目玉としてナイエンス獲得に乗り出している。大混戦の中、劇的な優勝を飾ったツール・デ・フランドルから3年、復活の足掛かりとすることはできるか。

 ツールのメンバー選考から漏れ、チーム批判をしたとされるヘルト・ステーヒマンス(ベルギー、オメガファルマ・クイックステップ)は、チーム ロットNL(旧ベルキン プロサイクリング)か、ワンティ・グループゴーベルが有力。山岳アシストでおなじみのシルヴェスター・シュミット(ポーランド、モビスター チーム)は、自国のCCCスプランディ・ポルコヴィツェ入りが噂されている。また、モビスター勢では、ホセイバン・グティエレス、フランシスコホセ・ベントソ(ともにスペイン)も退団が決まっていながら、移籍先が見つかっていない。

 プロキャリアの浅い選手であれば、トップシーンで走った経験が買われ、カテゴリーを問わず移籍先が見つかりやすい傾向にあるが、ここに挙げた選手たちはいずれも30歳を過ぎたベテラン。前述のホーナーのケースで、コープランド氏が「移籍先探しにおいて、年齢が最大のネックとなっている」と述べたように、選手の実績が豊富であるがゆえに、チーム側は相応の報酬を支払わなければならず、それだけ契約のハードルが上がってしまう。どのチームもできる限り若くて実力のある選手たちで戦いたいと思うのが自然の流れである。

 ベテラン選手にとっては、「まだまだやれる」といった手応えや、残り少なくなったキャリアをトップシーンで過ごしたいとの思いが強く働いているはずだ。さまざまなチーム事情がせめぎあう中で、生き残りをかけた戦いを最後まで見守っていきたい。

登山でも脚の違いを見せつけたコンタドール

 前回の記事でも触れたティンコフ・サクソのチームビルディングキャンプ。アフリカ最高峰のキリマンジャロ(標高5895m)を5日間かけて征服しようという試みは、見事に成功を収めた。

キリマンジャロ登山を通して、結束を強めたティンコフ・サクソの選手たち©Tinkoff-Saxoキリマンジャロ登山を通して、結束を強めたティンコフ・サクソの選手たち©Tinkoff-Saxo

 現地時間11月1日に標高1828mのマチャメ・ゲートを出発した一行は、順調に歩みを進め、3日間で同4600m付近にまで到達。目標は5日朝の登頂。キリマンジャロの頂から日の出を見るというミッションだ。4日午後11時30分に最後の上りへとスタートし、頂上となる同5895mのウフルピークを目指した。

 この登山において、驚異的なスピードで登頂したのはエースのアルベルト・コンタドール(スペイン)。ここでも脚の違いを見せつけた格好だ。5日午前4時30分、チーム一番乗りで頂上へと到達。「この新たな挑戦では、自分の体がどんな反応をするのか想像がつかなかった。感触は良くて、標高5400m付近で胃の不快感があったものの、すぐに解消された」と振り返った。コンタドールとともに、ミケル・ヴァルグレンアンデルセン(デンマーク)、新加入のロベルト・キセルロウスキー(クロアチア)もトップグループで上りきったという。

エースのアルベルト・コンタドールが驚異的なスピードで登頂に成功した ©Tinkoff-Saxoエースのアルベルト・コンタドールが驚異的なスピードで登頂に成功した ©Tinkoff-Saxo

 宮島正典マッサーを含め、選手・スタッフ総勢72人が参加したキリマンジャロ登山は、70%のメンバーが頂上へと到達。コンタドールは「我々には困難な瞬間があった。私は標高の影響はなかったものの、途中で引き返したメンバーや助けを借りないと上れない人もいた。ベースキャンプに戻るまで、何が起こったかを理解できないメンバーさえいた。そのような厳しい状況下で助け合い、お互いを知ることがキャンプの目標でもあった」と説明した。

 キャンプは無事終了。来シーズンへの弾みとなる良い機会だったようだ。コンタドールは改めて、ジロとツールの“ダブルツール”狙いを宣言。2015年のビッグチャレンジに向けて、いよいよバイクトレーニングにシフトする。

今週の爆走ライダー-ベン・スイフト(イギリス、チーム スカイ)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシストや逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

ミラノ~サンレモ2014で3位に入ったベン・スイフト<砂田弓弦撮影>ミラノ~サンレモ2014で3位に入ったベン・スイフト<砂田弓弦撮影>

 膝のけがや体調不良に苦しんだ2013年を乗り越え、今シーズンはミラノ~サンレモ3位と復活をアピール。同時に、「上れるスプリンター」であることを印象付けることとなった。

 「バンチスプリントも楽しいが、得意なのはヒリアースプリント(アップダウンを経てのスプリント)。集団が40人程度に絞られてからがボクの見せ場だ」と自己分析する。確かに、ブエルタ・アル・パイス・ヴァスコ(バスク一周)第5ステージでの勝利は、22人の小集団スプリントだった。

 今季は個人での勝利数こそ2つに終わったが、自身の走りを確立し、キャリアのターニングポイントとなるシーズンを送った。9月の世界選手権ではイギリスチームのエースに抜擢され、12位に入るなど自信を深めた。来たる2015年シーズン最大の目標に掲げるのは、ミラノ~サンレモ優勝だ。ゴール前でのスピード、クライマーやクラシックハンターと戦える登坂力、そしてときにはアタックでレースを動かせる器用さを兼ね備えたライダーにとって、十分に実現可能な目標と言えるだろう。

世界選手権にイギリスのエースとして臨んだベン・スイフト(前から2番目)<砂田弓弦撮影>世界選手権にイギリスのエースとして臨んだベン・スイフト(前から2番目)<砂田弓弦撮影>

 ウインターシーズンにはトラックレースに参戦。現在は、自国のシリーズ戦「レボリューションシリーズ」を転戦する。レースクオリティはもとより、エンターテインメント性も高い舞台で、そのスピードと駆け引きに磨きをかける。

 一冬を越えて、進化を遂げた先に見せる走りはいかなるものか。ミラノ~サンレモ制覇に向けて、シーズン序盤から真価が試されることになる。

文 福光俊介

福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、気がつけばテレビやインターネットを介して観戦できるロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。2011年、ツール・ド・フランス観戦へ実際に赴いた際の興奮が忘れられず、自身もロードバイク乗りになる。自転車情報のFacebookページ「suke’s cycling world」も充実。本業は「ワイヤーママ徳島版」編集長。

この記事のタグ

週刊サイクルワールド

  • 一覧

新着ニュース

もっと見る

ピックアップ

e-BIKE最新特集

スペシャル

自転車協会バナー

ソーシャルランキング

サイクリストTV

インプレッション

インプレッション一覧へ

連載

連載