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はらぺこサイクルキッチン<23>カンガルー肉もあるミールプランは圧巻のボリューム 豪サバイバルレース同行記

by 池田清子 / Sayako IKEDA
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 オーストラリアで10月18日から26日まで行われた9日間のステージレース「クロコダイルトロフィー」は、走行距離計770km、獲得標高計1万7000mという“世界一過酷なステージレース”。夫でありマウンテンバイクプロアスリートの池田祐樹選手が参戦し、私も同行してきました。今回は、大会が用意してくれたミールプランの内容を中心に紹介します。

後ろのバギーは撮影隊。撮影が難しそうな険しい道も身体を張って撮影してくださいました(写真提供: Crocodile Trophy/Regina Stanger)後ろのバギーは撮影隊。撮影が難しそうな険しい道も身体を張って撮影してくださいました(写真提供: Crocodile Trophy/Regina Stanger)

クロコダイル注意! エリート強豪選手のバトルフィールド

スミスフィールドからスタートして時計回りに進み、最終日はポートダクラスでフィニッシュを迎えますスミスフィールドからスタートして時計回りに進み、最終日はポートダクラスでフィニッシュを迎えます

 オーストラリアの北西に位置するケアンズで大会登録受付を済ますと、レースは内陸を目指しながら時計回りに進み、徐々に北上。初日のクロスカントリーレースと最終日のタイムトライアル以外は長距離のマラソンレースが続きます。最後はケアンズより北(赤道寄り)で観光地としても有名なポートダグラスのビーチでフィニッシュします。

 大会名に“クロコダイル”とあるとおり、川や海、街の至るところで「クロコダイル注意! ここで泳がないで!」という看板を目にしました。実際、祐樹さんもコースを試走したときに川で体長およそ1.5mのクロコダイルを見たと言っていました。コース上でも何度か川を渡ったので、ちょっとドキドキしてしまいました。ケアンズで行われた開会式では、2歳のクロコダイルが挨拶に来てくれましたよ。

開会式でお目見えしたクロコダイル。レーサーたちを盛り上げてくれました開会式でお目見えしたクロコダイル。レーサーたちを盛り上げてくれました

 今年で20周年という同大会、毎年コースは変わります。今回の参加者は130人。国籍は、オーストラリアはもちろん、オーストリア、イタリア、チェコ、オランダ、ドイツ、ベルギーなどヨーロッパ各国から多くの選手が参戦しました。意外にもアメリカはゼロ。アジアの選手は池田祐樹ただひとりでした。今年からクロスカントリーの「UCIカテゴリーS1」クラスに認定されたこともあって、ポイント獲得をねらって世界中からエリート強豪選手が集まったのも特徴です。

フォトシューティングの日が設けられ、一部の選手が集合。先住民族アボリジニの文化や伝統を伝える施設「ジャプカイ(Tjapukai)」にて行われましたフォトシューティングの日が設けられ、一部の選手が集合。先住民族アボリジニの文化や伝統を伝える施設「ジャプカイ(Tjapukai)」にて行われました
初めて顔を合わせる選手も多数。言葉も文化も様々ですが、ライバルでありながらもお互いを讃え合い、次第に親睦を深めていくのもステージレースの魅力のひとつ初めて顔を合わせる選手も多数。言葉も文化も様々ですが、ライバルでありながらもお互いを讃え合い、次第に親睦を深めていくのもステージレースの魅力のひとつ

食料自給率の高いオーストラリアで気がついたこと

地図を見ながら往復5kmの道のりを歩いて買い出しへ。探していたもの、日本では入手しにくいものを見つけると嬉しくなってしまいます。ここでも栄養満点のビーツは欠かせません地図を見ながら往復5kmの道のりを歩いて買い出しへ。探していたもの、日本では入手しにくいものを見つけると嬉しくなってしまいます。ここでも栄養満点のビーツは欠かせません

 前回お伝えしたように、厳選した幾つかの食材を持ち込んだ私たち。テント生活で補助的に取り入れたかった食材、は全て現地で調達することができました。オーガニック専門店での品揃えにはテンションが上がりました。

 ちなみに、ケアンズ空港では入国の際に持ち込み品を正直に申告。カバンの中身を全て広げてのかなり厳重な確認がありました。機内で食べ損ねたふかし芋は見事に没収されました。通常、調理していればよいそうなのですが、「原型を留めているから念のためね」とのこと。

 ほかにも「持っている靴を全部出してください」という指示があり。タイヤやバイクシューズにわずかに付着した泥をチェック。害虫などを持ち込まないためですね。洗ってきたシューズも奥の部屋でさらに細かく泥を払い落とされて返却されました。過去にここまでチェックされた国はなかったので、徹底していると感じました。

スパゲッティについている緑色のカンガルーのマークが「Australian made」の証。国旗もついていて、初めて目にしてもその意味が分かりやすかったスパゲッティについている緑色のカンガルーのマークが「Australian made」の証。国旗もついていて、初めて目にしてもその意味が分かりやすかった
レース開始前の数日間はキッチン付きのホテルに滞在。必要な道具がほぼ揃っていて、とっても便利。栄養バランスの面でも安心ですレース開始前の数日間はキッチン付きのホテルに滞在。必要な道具がほぼ揃っていて、とっても便利。栄養バランスの面でも安心です
35歳の誕生日をケアンズで迎えた祐樹さん。夕食はコース風にしてみました。乾杯の飲み物は炭酸水で35歳の誕生日をケアンズで迎えた祐樹さん。夕食はコース風にしてみました。乾杯の飲み物は炭酸水で

 スーパーマーケットでは、自国生産の商品には共通のマークが付いていて、一目でオーストラリア産と見分けられる工夫があったことが印象的でした。またほとんどの商品に自国産か否かという選択肢があるため、食料自給率の高い国だということに加え、消費者がそれらを選ぶことでさらに自給率を上げていく仕組みになっているのだと感じました。

 レースまでの数日間はキッチン付きのホテルで自炊。雑穀や豆、野菜を中心にバランスのよい食事を心がけました。調味料としても重宝したのが、日本から持参した「梅干し」。酸味と塩気が一度に取れるので、身体にいいだけでなく調理にもとても便利でした。個人的には大豆で作られたヨーグルトが奥深い味わいで大ヒット。生クリームの代わりに料理にも使用しました。

ある日の夕食。ビーツのパスタには、大豆ヨーグルトとヘンプシードをトッピング。サラダにはブロッコリーのスプラウトやブルーベリーを添えて。オーストラリア産の果物は手頃な価格でとってもおいしかったある日の夕食。ビーツのパスタには、大豆ヨーグルトとヘンプシードをトッピング。サラダにはブロッコリーのスプラウトやブルーベリーを添えて。オーストラリア産の果物は手頃な価格でとってもおいしかった
とってもおいしかった大豆でできたヨーグルト。ベージュ色で、砂糖は入っていませんがほのかに大豆の甘みを感じます。料理にも使いました。忘れられない味!とってもおいしかった大豆でできたヨーグルト。ベージュ色で、砂糖は入っていませんがほのかに大豆の甘みを感じます。料理にも使いました。忘れられない味!

肉の総量はおよそ400kg! ミールプランの食材リストを入手

テントの中には簡易ベッドが設置され予想以上に広くて快適でしたテントの中には簡易ベッドが設置され予想以上に広くて快適でした

 レースが始まると、2日目からテント生活に入りました。食事は朝・昼・夜の3回。多くの選手やサポーターは大会の用意するミールプランを利用していました。ごく一部の選手はチームのバンで寝泊まりしたり、自炊したりしていました。ミールプランの主食はパスタが多く、コメは期間中1回きりでした。ときおり設けられた「パスタパーティー」では、特別に麺が2種・ソースが4種になり、パスタのサラダも登場しました。

 肉料理が出た3回のうち1回はカンガルーの肉。私たちは普段は菜食を続けていますが、ミールプランでは食事の種類が限られるため、肉も食べました。カンガルーなどご当地ものは「この土地に来た」という感じが増しす。脂が少なく、あっさりとした味と食感でした。

 全体としては、衛生面の問題もあるかと思いますが、もう少し野菜が多ければより栄養のバランスが取れるかなという印象です。とはいえ、早朝からほぼ一日中、沢山のスタッフが料理を作っている姿に感動。とてもありがたかったです。

アサートンでの夕食はカンガルーの肉。ご当地食材を食すことができたことに加えて「おいしい!」と選手たちも大喜びでしたアサートンでの夕食はカンガルーの肉。ご当地食材を食すことができたことに加えて「おいしい!」と選手たちも大喜びでした
はらぺこな選手たちのため調理スタッフはフル稼働(写真提供: Crocodile Trophy/Regina Stanger)はらぺこな選手たちのため調理スタッフはフル稼働(写真提供: Crocodile Trophy/Regina Stanger)
衣装ケースのような物に作っていた大量のサラダ。右にはカットされたじゃがいもがスタンバイ衣装ケースのような物に作っていた大量のサラダ。右にはカットされたじゃがいもがスタンバイ

 今回作ってくださった料理の食材の総量を入手しました。

「クロコダイルトロフィー」ミールプラン食材総量

40-50kg 肉/日
180個 卵/日
20L 牛乳/日
60-65kg 乾燥パスタ/日
15kg ベーコン/日
250斤以上 パン/トータル
400kg メロン/トータル
1200本 バナナ/トータル
<使用例>
アサートンでの夕食: 40kgのカンガルー肉と50kgのじゃがいも

大きな鉄板で沢山の牛肉を焼いています。はみ出してますね…大きな鉄板で沢山の牛肉を焼いています。はみ出してますね…

 こうしてみると、圧巻の量。毎朝15kgのベーコンを焼き続けるというのは、根気がいる作業ですね。サラダは衣装ケースのようなものに大量に作られていました。あまったフルーツは翌朝火をとおし、フルーツポンチのような物に変身していました。

 食材がそのまま選べるスタイルの朝食では、同じ食材でも選手それぞれの組み合わせや食べ方があり、新鮮でした。私たちのように食事の場にプラスアルファの食材を持って来ている選手もチラホラ。偶然なのか否か、私が見かけたそのような選手は、全員トップ10に入る選手でした。シリアルそのものを複数持参する選手、用意されたシリアルにゴジベリー(クコの実)をかける、または近くでフルーツを買ってくる選手も。

夕食は6時から。まだ明るいですが食べ終わる頃には真っ暗になるので、ヘッドライトを持参して食事へ向かうことを覚えました夕食は6時から。まだ明るいですが食べ終わる頃には真っ暗になるので、ヘッドライトを持参して食事へ向かうことを覚えました
強風に飛ばされないようにしながらチアシード、ビーツパウダー、ヘンプシード、モリンガパウダーをパスタにかけて食べる祐樹さん。全てを混ぜると“魔女の秘薬”を思わせる不思議な色になっていましたが、味はおいしいのです強風に飛ばされないようにしながらチアシード、ビーツパウダー、ヘンプシード、モリンガパウダーをパスタにかけて食べる祐樹さん。全てを混ぜると“魔女の秘薬”を思わせる不思議な色になっていましたが、味はおいしいのです
朝食時。パンやシリアル、フルーツやナッツバーが並んだミールプランのテーブル朝食時。パンやシリアル、フルーツやナッツバーが並んだミールプランのテーブル

 3日目の朝からは「グルテンフリーコーナー」も設置され、パンやシリアルが選択できました。買い物をしていても感じましたが、海外で“グルテンフリー”という言葉はかなり浸透していますね。店頭のラインナップの多さにも驚きました。

レースには医療スタッフが同行

大会が用意するテントプランに申し込みました。移動の度にテントを張ったり畳んだりもスタッフが行ってくれるので助かりました大会が用意するテントプランに申し込みました。移動の度にテントを張ったり畳んだりもスタッフが行ってくれるので助かりました

 9日間続くレースに医療スタッフが帯同していることも、心強いですね。全身大けがで処置を施してもらっている選手もいました。またレース後半には、ニュートリション(補給食)の摂り過ぎが原因で胃腸の不調を訴える選手を度々見かけましたが、医療スタッフの帯同による精神面での安心感も選手にはかなりあったと思います。

 今年はキャンプ場が森林や湖に近い場所だったため、例年より気温が10℃ほど低く、脱水症状などで棄権する選手は少なかったそうです。日中はジリジリと照りつける陽射しが痛いほどに強烈なのですが、ひとたび太陽が雲で覆われると、ジャケットが必要なくらい寒くなりました。就寝時、特に明け方は底冷えという感じで何度も目が覚め、寝袋の中では下3枚・上6枚を着込んでやっと眠れるくらいでした。この激しい気温差によって体調を崩しそうになりましたが、着衣による体温調節をこまめに行い適応していくことができました。

近くでパパイヤを入手してきたコーリー・ウォレス選手(KONA Factory Team)。一口もらいましたが、柔らかくて絶品のおいしさでした近くでパパイヤを入手してきたコーリー・ウォレス選手(KONA Factory Team)。一口もらいましたが、柔らかくて絶品のおいしさでした
レース前後の変化を見るために、体脂肪を計測中。部位毎に細かく計っていきますレース前後の変化を見るために、体脂肪を計測中。部位毎に細かく計っていきます

 また大会の開会式では、レジストレーションと共にやるべきことがありました。それは、上半身裸になり、医療スタッフに身体中の体脂肪を計測・記録してもらうこと。お腹だけでも、左右真ん中上下など場所を分けて6カ所も測ります。全身を細かく記録することで、レースが前後で身体のどの部分がどの位変化しているかを見るためです。結果はレース後2週間ほどで、各選手に直接メールでデータが送られてくることになっています。

 祐樹さんは計測時、脚は2%台の体脂肪率を叩き出していました。過酷なレースの連続で純粋に身体が絞られることもあるかと思いますが、急激な変化は時として不足しているものの現れだったりもしますので、体調や健康の管理の面でも参考になります。部位毎の違いや左右差なども見えてきそうですね。

◇         ◇

 次回は2012年に今大会で優勝したアイヴァン・ライバリック選手(Ivan Rybarik、チェコ)の卓越した食事内容についてお伝えします。今回も本当に強かった!

今大会に参戦していたアイヴァン・ライバリック選手(左)、そしてチームの料理担当でもあるハナ・コシコヴァ(Hana Koshikova)さん(右)のベースキャンプにお邪魔して、お話をうかがってきました!今大会に参戦していたアイヴァン・ライバリック選手(左)、そしてチームの料理担当でもあるハナ・コシコヴァ(Hana Koshikova)さん(右)のベースキャンプにお邪魔して、お話をうかがってきました!

※なお、今回のレースは日本からTVドキュメンタリー番組制作スタッフの方々も同行していました。年明けの放送を予定しているそうです。マウンテンバイクレースの貴重な映像、選手たちの闘う姿、共同生活の模様などを様々な角度から撮影していました。ぜひ多くの方にご覧いただけると幸いです。放送日など詳細が決まり次第、ウェブサイトなどでお知らせしますね。

池田清子池田清子(いけだ・さやこ)

アスリートフード研究家。モデル事務所でのマネージャー経験を生かし2013年夏よりトピーク・エルゴンレーシングチームUSA所属ライダー、池田祐樹選手のマネージメントを開始、同秋結婚。平行して「アスリートフードマイスター」の資格を取得。アスリートのパフォーマンス向上や減量など、目的に合わせたメニューを日々研究している。ブログ「Sayako’s kitchen」にて情報配信中。

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